仕事にやりがいを感じても、月100時間を超える残業には深刻なリスクがあります。
毎月100時間を超える残業が続く状態は、法律上の問題だけでなく、心身への深刻なリスクも見逃せません。評価や人間関係の悪化が怖くて断れないときは、違法のおそれがあります。
過重労働のストレスは軽視できず、時間外労働が月80時間を超えると「過労死ライン」を超え、最悪は命の危機もありますが、月100時間の残業は、その水準をさらに上回ります。法改正によって時間外労働には上限が設けられ、一定の時間数を超えると労働基準法違反となります。無制限に残業させてよいわけではなく、違反には罰則もあります。
今回は、残業100時間の法的な位置づけとその違法性、労働基準法違反となるケースにおける具体的な対処法を、労働問題に強い弁護士が解説します。
- 月の残業が100時間を超える状態は労働基準法違反となり、違法であるのが原則
- 管理監督者や役員、裁量労働制の社員など、違法でない場合もあるが例外的
- 月100時間を超える残業のつらさを理解し、健康を損なう前に救済を求める
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残業100時間の違法な実態

まず、残業100時間の違法な実態について解説します。
月100時間の残業はどれほど忙しいのでしょうか。仕事に忙殺されると正常な判断力を失い、冷静に考えられなくなるので、客観的な数値で想像してください。
月の労働日数を20日、1日8時間労働と仮定した場合、「月100時間残業=1日5時間の残業」となり、1日の総労働時間は約13時間となります。1日の半分以上が仕事となり、残り11時間からプライベートと睡眠の時間を捻出することとなります。
例えば、「9時〜18時(1時間休憩)」という定めの場合、5時間残業となると毎日23時まで働くこととなり、深夜残業(22時〜翌5時の残業)が必ず1時間生じます。
また、時間外労働が月100時間も必要となるほどの忙しさだと、休日出勤も避けられないでしょうから、さらに休息は減ってしまいます。
以上の具体例の通り、月100時間の残業だと「起きている間ほぼ仕事」と言っても過言でなく、繁忙期は睡眠を取れない日が続く人もいます。
労働安全衛生総合研究所の統計によると、月100時間の残業がある会社は未だに存在し、特に、飲食業・運送業・サービス業などで多い傾向があります。

なお、統計はあくまで実態が把握できた会社に限ります。勤怠管理の不適切な企業では、過酷な労働実態すら把握できないことも多いと考えられます。
残業が常時100時間を超える会社は、ただ「業務量が多くて忙しい」というだけでなく、以下のような構造的な問題を抱える可能性があります。
- 慢性的な人手不足に陥っている。
- 繁閑の差に合った労働時間制を採用できていない。
- 業務効率の向上や設備投資などの努力を怠っている。
- 業務の属人化を解消できず、特定の社員や部署に負担が集中している。
- 顧客への交渉力がなく、無理なノルマや短納期となっている。
- 離職率が高い。
これらの問題は労働者だけでは解決できないため、経営や労務管理の課題を解決し、労働者の健康と安全を守ることは会社の負う安全配慮義務の一部となります。
「長時間労働の相談窓口」の解説

残業100時間を超えるのは違法となる

次に、残業が月100時間を超えるのが、原則として違法となることを解説します。
労働基準法は、残業をさせるには36協定を締結する必要があるとし、その上限規制を設けています。長時間労働が規制されるのは、労働者の健康やメンタルに悪影響だからです。
原則は月45時間・年360時間が上限
月100時間を超える残業は、労働基準法36条違反となります。
残業の前提となる36協定に定める残業の上限は、原則「月45時間・年360時間」ですが(労働基準法36条)、月100時間はこれを大幅に超えます。例外は、次章の特別条項を定めない限り許されず、「月100時間」などと記載した36協定は、労働基準監督署でも受理されません。
なお、月45時間以上こっそり働かせたいからといって、36協定を締結せずに法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超えて残業させるのは労働基準法32条違反であり、これまた違法です。
「残業時間の上限」の解説

特別条項付き36協定でも月100時間を超えると違法
例外的に、特別条項付き36協定があれば、原則を超える残業が可能です。
ただし、特別条項にも厳しい条件があり、通常予見できない業務量の大幅な増加など、臨時的な事情がある場合にしか許されません。具体的には、次の上限を守る必要があります。
- 年720時間以内
- 1ヶ月の平均が月100時間未満(休日労働を含む)
- 2〜6ヶ月の平均が月80時間以内(休日労働を含む)
※ なお、特別条項が適用できるのは、年6回(年6ヶ月)が限度です。
したがって、特別条項があっても1ヶ月の労働は「100時間未満」としなければならず、「100時間を超える残業がある」という状態は違法となります。これと同様の基準は、いわゆる「過労死ライン」と言われ、この基準を超えて働かせた結果として心身に不調が生じたり死亡したりした場合に、業務に起因する労災(業務災害)であると認定されやすくなります。

なお、残業が100時間を超える月が続くという危険な状態を放置すれば、会社の安全配慮義務違反が認められる可能性もあります。
公務員でも残業100時間を超えると違法
公務員は、その職務の公的性質から労働基準法の時間規制は適用されませんが、残業時間が100時間を超えれば違法の可能性が高いです。
国家公務員に適用される人事院規則では、通常の職員の1ヶ月の超過勤務は45時間が限度とされ、「他律的業務(業務量、業務の実施時期その他の業務の遂行に関する事項を自ら決定することが困難な業務をいう。)の比重が高い部署として各省各庁の長が指定するものに勤務する職員」についても100時間が上限とされます(人事院規則一五―一四第16条の2の2第2項)。したがって、公務員のルールも、労働基準法に沿ったものとなっています。
地方公務員については地方公務員法及び各自治体の条例などで規制されますが、いずれも人事院規則と同程度の内容となっています。
「過労死で弁護士を探している方へ」の解説

残業100時間を超えて違法な場合の罰則
残業が月100時間を超えて違法な場合、労働基準法には罰則が定められています。具体的には、労働基準法に違反する長時間労働については、「6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金」という刑事罰の対象となります(労働基準法119条)。
長時間労働の規制が進む昨今、過酷な労働環境を放置するいわゆるブラック企業に対して、労働基準監督署の助言指導や是正勧告といった厳しい対応がなされる可能性があります。
なお、会社の指示に従って月100時間の残業をしてしまった労働者本人に特にペナルティはありませんが、「残業100時間は危険!労働者が取るべき対策は?」をもとに速やかに対処しましょう。
「36協定に違反した場合の罰則」の解説

残業100時間を超えても例外的に違法にならない場合

例外的に、残業が100時間を超えても、必ずしも違法とは言い切れないケースもあります。
ただし、以下のケースはあくまで例外であり、会社が反論の理由にしてきたとしても、要件を満たすかについては慎重に見極める必要があります。また、明らかな違法性がなくても、労働者の心身の健康を損なえば、やはり安全配慮義務違反となる可能性もあります。
管理監督者の場合
管理監督者(労働基準法41条2号)には労働時間規制が適用されない結果、月100時間を超える残業があったというだけでは違法にならず、残業代も支払われません。
ただし、会社が管理職として扱っても、経営者と一体的な立場にあり、重要な職務と権限を有し、働き方に裁量があること、ふさわしい待遇を得ていることといった要件を満たさない場合、「名ばかり管理職」となります。この場合には、実態として管理監督者ではないため、労働時間規制が適用される結果、月100時間の残業は違法となります。

フリーランスや業務委託の場合
業務委託の個人事業主(いわゆるフリーランス)は、労働基準法9条の「労働者」(使用され、賃金を支払われる者)に該当せず、労働基準法は適用されません。そのため、そもそも労働時間を把握する必要がなく、規制も適用されません。
ただし、名目は業務委託でも、実際には指揮命令を受けている場合には、その実質は「労働者」であると評価されて労働基準法が適用されます。
裁量労働制の場合
裁量労働制の場合、実労働時間にかかわらず一定の時間働いたものとみなされます。
その結果、月100時間の残業があったとしても必ずしも違法とはなりません。ただし、裁量労働制を適切に導入するには労使協定の締結と届出を要し、かつ、実態として裁量のある働き方をしていなければならず、これらの要件に違反する制度は無効となります。
「裁量労働制の残業代」の解説

固定残業代・みなし残業の場合
固定残業代(みなし残業)がある場合、一定の残業代については事前に支払い済みとして扱われます。その結果、残業が長くなったとしても、その一定の額までは残業代は不要です。
ただし、残業代の支払いが一切不要になるわけではなく、追加が生じたら差額の支払いが必要です。通常の賃金と残業代に相当する部分が明確に区別されていない制度は無効であり、かつ、残業代を支払ったからといって月100時間の残業が正当化されるわけでもありません。
「固定残業代」の解説

残業100時間は危険!労働者が取るべき対策は?

残業が100時間もある過酷な労働環境は危険であり、今すぐ対策を講じないと手遅れになるおそれがあります。最優先は仕事より健康であり、弁護士の助けを速やかに求めてください。
会社に残業の削減を求める
まず、会社に残業を削減するよう求め、現状を把握させましょう。
残業が月100時間を超える場合、労働者が申し出たときは医師による面接指導の実施が労働安全衛生法で義務付けられているので、産業医や指定医の診察を求めることができます。
月100時間の残業は社員にとって過酷なだけでなく、会社にもリスクがあります。高額の残業代を請求され、健康を害した従業員から労災申請や安全配慮義務違反の慰謝料請求といった責任追及を受けたり、刑事罰を科され、報道されて企業価値が低下したりといったリスクもあります。
これらのリスクを会社に正しく理解させれば、業務の効率化や配置の適性化といった対策を講じ、残業を削減する努力に着手してもらうことができます。
仕事よりも健康を優先する
健康面に問題があっては、仕事の活躍も望めません。自分の健康が優先であり、仕事の犠牲になってはいけません。法律上権利である有給休暇を申請したり、必要に応じて休職制度を活用したりといった休息を取るための方法を検討してください。
心身に現れる危険な予兆を見逃さない
月100時間を超える残業が続くと、心身が限界を迎え、様々なSOSサインを発します。
例えば、極度の疲労感、不眠などの睡眠障害、食欲不振、動悸、めまい、頭痛といった身体症状が典型例です。また、精神面でも、集中力が低下し、些細なことでイライラしたり、理由なく涙が出たり無気力になったり、感情のコントロールを適切に行えない状態となることもあります。
これらはうつ病や適応障害といった精神疾患の前兆である可能性が高く、変化を敏感に察知して、すぐに医師に相談することが重要です。
労災の申請をする
業務に起因したケガや病気は、労災として認定され、労災保険から補償を受けられます。残業が月100時間を超える状況では、その後に病気になった場合、厚生労働省の定める「脳・心臓疾患の労災認定基準」、「精神疾患の労災認定基準」からしても、労災認定される可能性は非常に高いです。
「労災の慰謝料の相場」の解説

退職を検討する
過剰な残業が常態化している職場に耐えられなくなったら、退職を検討しましょう。
責任感の強い人ほど我慢しがちですが、ここまでの対策を講じても改善が見られない職場からは、速やかに離れるのが賢明です。離職が増えると、残された社員がさらに忙しくなる悪循環がありますが、「辞めるか、残るか」は個人の自由です。社員の定着率が低下すれば、会社も危機感を抱いて労働環境を改善しようと試みることもあります。
なお、残業が一定時間を超えたことを理由に退職した場合、失業保険については特定受給資格者として会社都合の扱いを受けられ、給付制限なしに受給することができます。
「会社の辞め方」の解説

残業時間の証拠を確実に残す
会社に対応を求めるにも、社外に相談するにも、証拠が不可欠となります。
未払い残業代を請求したり、労災申請を行ったりする場合、証拠がなければ正確な事実が認定されないおそれがあります。タイムカードや勤怠管理システムの記録が基本ですが、月100時間もの違法な残業のある会社では、記録が隠さたり改ざんされたりすることもあります。
そのため、業務で使用したメールの送信履歴、パソコンのログイン・ログオフ記録、交通系ICカードの乗車履歴など、労働者自身でも集められる証拠を入手しておくことが有効です。
「残業代請求で必要な証拠」の解説

弁護士と労働基準監督署に相談する
残業が100時間を超えるような状況では、速やかに弁護士と労働基準監督署に相談しましょう。「残業100時間を超えるのは違法となる」の通り、労働基準法違反となるため、労働基準監督署に申告すれば、助言指導や是正勧告を行ってもらえる可能性があります。
弁護士に依頼すれば、弁護士名義の警告書で会社の違法状態を指摘したり、安全配慮義務違反の責任を追及したり、未払いの残業代を請求したりといった対応を代理で行ってもらえます。
「労働問題に強い弁護士の選び方」の解説

残業代が正しく支払われているかを確認する
残業が月100時間を超える状況だと、残業代も相当高額になると予想されます。
これほどの長い残業があるのに思いのほか月の手取り額が増えない場合、残業代が未払いとなっている可能性があります。残業代請求を怠れば、悪質な企業による長時間労働を助長してしまいかねません。本来払われるべき残業代を正しく計算し、速やかに請求してください。
なお、時間外労働の割増率は、通常の賃金の1.25倍(25%割増)となりますが、月60時間を超える残業がある場合は1.5倍(50%割増)となります。
以下では、分かりやすいよう、月100時間残業した場合の具体的な計算例を紹介します。
【労働条件】
- 月給:30万円(基本給のみ・固定残業代なし)
- 1ヶ月の所定労働時間:160時間
- 残業時間:月100時間
【残業代の計算方法】
- 残業代の基礎単価を求める
基礎となる1時間あたりの賃金は、1,875円(=30万円÷160時間)となります。 - 割増率を確認する
労働基準法は残業時間に応じた割増率を定めており、月60時間以内の時間外労働は25%割増、月60時間超の時間外労働は50%割増となります。また、深夜労働の場合は25%割増(時間外かつ深夜なら重複適用されて50%割増)です。 - 実際の残業代を計算する
60時間以内の部分は14万0,625円(1,875円×1.25×60時間)、60時間超の部分は11万2,500円(1,875円×1.5×40時間)、合計25万3,125円となります。
このように、支払われるべきであった残業代を足すことで、月100時間もの残業があると、月給30万円のところが本来は約55万円となります。
「残業代の計算方法」の解説

残業100時間を違法であると判断した裁判例
最後に、残業100時間という状態について、違法であると判断した裁判例を解説します。
残業が月100時間を超えると、労働者の生活は相当つらいものとなります。長過ぎる労働は業務効率を低下させ、ミスが増えるなど、かえって逆効果です。睡眠も十分に取ることができず、疲労が蓄積し、労災や過労死のリスクも増してしまいます。さらに、全社的に多忙な状態だと、優秀な人材から離職していき、残った人にはしわ寄せが来て、業務量はますます増えていきます。
残業が月100時間を超えたことでうつ病を発症した事案です。
施工管理等の業務に従事する労働者が、発症前6ヶ月間で月129時間〜164時間の残業を行っていた点を指摘し、裁判所は業務とうつ病の因果関係を認め、会社に約1,373万円の損害賠償の支払いを命じました。
飲食店の社員が、長時間の残業によって就寝中に心室細動を発症し、低酸素脳症となり、完全麻痺に至った事案です。残業時間は、発症1ヶ月前に約176時間、2ヶ月前は約200時間もあり、長時間労働をきっかけに意識不明となった点について、裁判所は業務との因果関係を認めました。
暖房設備工事等の会社の現場作業員が自殺した事案で、死亡前の3ヶ月間、継続して1ヶ月あたり100時間以上の残業がありました。裁判所は、長すぎる労働による強い心理的負荷が生じ、うつ病を発症して自殺に至ったと判断し、100時間を超える残業と自殺との因果関係を認めました。
レストランの料理長が不整脈を発症して死亡した事案で、死亡前の6ヶ月間に、1ヶ月あたり128時間を超える時間外労働がありました。裁判所は、店舗における残業が死亡の原因と推認するのが相当であると判断しました。
以上の通り、月100時間を超える長すぎる労働が、労働者に健康被害を与え、最悪の場合は過労死、過労自殺を引き起こしてしまうケースは少なくありません。労使の契約は「契約自由の原則」に従うのが基本ですが、弱い立場に置かれた労働者を保護し、企業による利益偏重の「働かせすぎ」を抑止するために、法律による規制は欠かせません。
【まとめ】残業100時間の違法性

今回は、残業100時間の実態と対処法について解説しました。
月の残業が100時間を超える状況は、想像以上に過酷です。平日は仕事中心の生活となり、十分な休息を確保するのは難しいでしょう。残業が月100時間を超えるのが常態となれば、36協定の上限(限度時間)に抵触し、労働基準法違反となっている可能性が高いです。
「みんなやっている」「今は繁忙期だから仕方ない」といった空気があっても、違法な長時間労働は正当化されず、放置すれば労働者の被害は深刻化していきます。体調に異変を感じたら、無理をせず医療機関を受診し、医師の判断を仰ぎましょう。休職や退職を検討するといった自分の身を守る選択とともに、未払い残業代を請求するのが適切です。
残業100時間が当たり前になっているなら、働き方を見直すサインです。労働問題に精通した弁護士のサポートを早めに受けることがおすすめです。
- 月の残業が100時間を超える状態は労働基準法違反となり、違法であるのが原則
- 管理監督者や役員、裁量労働制の社員など、違法でない場合もあるが例外的
- 月100時間を超える残業のつらさを理解し、健康を損なう前に救済を求める
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