労働問題弁護士ガイドとは?

過労死を防ぐには?個人でもできる過労死しないための対策

違法な長時間労働による過労死についての相談が、急増しています。
過労死は、労働時間が長くなるほど、精神的なストレスがかさみ、労働者が死亡してしまうこと。
いわゆる、「働きすぎ」の問題です。

人手不足で、労働者1人の労働時間が増える傾向にありますが、ストレスを我慢してはなりません。
さらに、働き方改革関連法案で導入された「高度プロフェッショナル制度」(いわゆる「高プロ」)は、「残業代ゼロ法案」とも呼ばれ、過労死を助長するのではと危険視されています。

命は最重要であり、過労死は、絶対に防がなければなりません。
頑張りすぎて死んでしまっては、元も子もありません。

今回は、個人でもできる過労死の対策について、労働問題に強い弁護士が解説します。
労働者は、会社まかせにするのでなく、過労死から身を守る努力が必要です。

この解説のポイント
  • 過労死を防ぐためには、追い込みすぎず、周りの意見を聞くこと
  • 疲れを我慢するのではなく、労働時間の長さという客観的な指標で判断する
  • どうしても過労死しそうで自分で止められないとき、会社を辞める決断をする

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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過労死を防ぐには?

過労死は、仕事によって違法な長時間労働、残業が続き、心身のストレスで死亡してしまうこと。
会社で働く労働者なら、誰しも過労死の危険があり、他人事ではありません。
健康だと思っていても、ある日突然体調を崩し、倒れてしまう方も珍しくありません。

特に、月80時間を超える残業を「過労死ライン」と呼びます。
これは、月80時間を超える残業の結果、不幸なことに死亡したり自殺したりしてしまったとき、業務が原因となった過労死だと認定されやすくなるという意味です。
残業80時間してとても疲れたというなら、それは過労死の直前かもしれません。

長時間労働と、過労死のリスク
長時間労働と、過労死のリスク

過労死につながりやすい症状には、次の3つがあります。

  • 脳疾患
  • 心臓疾患
  • 精神疾患(うつ病・適応障害など)

ブラック企業の違法な働き方は社会問題になり久しいですが、過労死の問題はなくなりません。

過労死のなくならない理由は、残業代を払わず、できるだけ長時間酷使すれば、「その分だけ人件費を節約でき、ブラック企業が特をする」というものです。
こんな会社で働いていて違和感を感じる人はまだまし。
責任感の強い労働者ほど、労働環境の劣悪さ、心身の変調に気づかず、働きすぎてしまいます。

労働法違反の働かせ方に気づいたころには、過労死間近たったというケースも。
労働者が、労働法を適切に理解すれば、過労死を防げます。
過労死を防ぐためには、過労死につながる危険な会社の言動に、敏感にならねばなりません。

過労死を防ぐための対策

では、危険な過労死を防ぐために、労働者側ですべき対策を解説します。

会社に雇われると、業務命令、指導は絶対視されがちです。
働いているなかでこれに逆らい、過労死を防止するのは、労働者にとって相当難しいこです。
しかし、突発的に降りかかる過労死に、無防備であってはなりません。

過労死を防ぐための対策は、常日頃から心がけなければなりません。

疲れの蓄積は、労働時間で客観的に評価する

過労死の原因は、突発的な長時間労働にあることが多いです。
常日頃の疲れの蓄積が、たまっていき、過労死につながるのです。

このとき「疲れ」といっても人によってそれぞれで、体力や我慢強さもまちまちです。
そのため、「疲れたかどうか」という抽象的な基準で判断するのは危険です。
疲れの蓄積は、誰にでも客観的にあてはまる「労働時間の長さ」で評価しなければなりません。

月80時間を超える残業があると、「過労死ライン」とされ、とても危険だと考えられています。
さらには、月100時間を超える残業が続く会社もありますが、違法な長時間労働なのは明らかです。

なお、「過労死ライン」を下回る残業でも、安全配慮義務違反を認めた裁判例もあります。
労働時間が必ずしも長過ぎなくても、ストレスを感じたら、過労死に注意してください。

連続した長時間労働を止め、休日・休暇を活用する

適度な休憩、休養をとるのは、過労死対策の基本です。
昼休憩をとってランチにいったり、トイレ休憩したり、翌日の仕事のため早めに帰って睡眠をとったりといったことは、常識的な働き方をする上では当然の権利です。
こんな休憩すら満足にとれないようでは、過労死の一歩手前まで来ています。

睡眠や食事が足りないと、疲れがたまり、頑張りすぎると徐々に麻痺していきます。
疲れを自覚しないまま長時間労働すると、突然、脳卒中や心臓麻痺で倒れ、過労死してしまうことも。

労働基準法では、6時間以上働けば45分、8時間以上働けば1時間の休憩が必要。
この休憩は、労働時間の途中にとらせるのが会社の義務であり、労働者の権利です。

休憩時間のルール
休憩時間のルール

医師の診断を受ける

過労死になる前には、症状があらわれます。
これらの兆しがみえたら、すぐに医師の診断を受けましょう。
医学的な判断について、「大丈夫だろう」と甘くみて病院にいかないのは危険です。

  • 十分な休養、睡眠をとっても疲れがとれない。
  • すぐに疲れてしまう。疲れやすい。
  • 吐き気、めまい、頭痛、立ち眩みがする。
  • 常に頭がぼーっとして仕事に集中できない。

過労死の原因によくなるのが、脳の病気と、心臓の病気。
疲れを通り越すとハイになり、重大な疾患を見逃してしまう方もいます。
高血圧や糖尿病など、基礎疾患のある方は特に注意を要します。

「医者にいく時間がない」、「病院にいくよりまずは仕事を終わらせたい」といった考えはとても危険。
本来なら、会社が異常を察知し、病院にいくよう指示すべきですが、過労死させるほど働かせる会社では、こんな基本的な安全配慮義務すら果たされていません。

労働基準法・労働安全衛生法を理解する

労働法のなかでも、過労死を防ぐために重要なのが、労働基準法、労働安全衛生法の2つです。

いずれも、労働者の健康、安全を守るための基本的な法律。
最低限の労働環境を定める法律なので、強行法規とされ、これに違反する労働条件は、違法であるとともに無効になるのが原則です。
そのため、雇用契約書で、法違反の合意をしても、無効です。

労働基準法で、どれだけ働いたら残業代が支給されるかを知りましょう。
原則は「1日8時間、1週40時間」を超えて働けば、残業代請求できます。
適切な残業代を請求すれば、長時間労働を予防し、過労死をなくす対策になります。

就業規則、36協定がないのに残業を命じる会社は違法です。
違法な残業命令はきちんと拒否することが、過労死の対策に役立ちます。

周囲のアドバイスをよくきく

過労死を防ぐために、その対策として、周囲の声をよく聞くのが大切です。
ブラック企業ほど、根性論、精神論を語りがち。
洗脳されたような状態になると、長時間労働を強制されても、会社に従ってしまいます。

心身のストレスが過多になると、周囲の同僚からの心配にも耳を貸せず、突然過労死してしまいます。
責任感の強く真面目な人ほど、自分の変調には気づきませんが、周囲のほうがあなたの変化に敏感です。

過労死しないために注意しておくこと

残念ながらブラック企業に入社してしまったとき、すぐ退職する覚悟を持ってください。
次のような考えはおすすめできませんから、すぐ捨てたほうがよいでしょう。

  • すぐ退職すると、転職先でも問題社員だと思われるのでは
  • 我慢がないのはよくない
  • これくらいのストレスは仕事するなら我慢するのが当たり前
  • この会社を辞めたら、他に雇ってくれるところがないのではないか

状況を正確に伝えて相談すれば、「ブラック企業だから辞めたほうがいい」とアドバイスをくれるでしょう。
あなたの独りよがりな考えより、周囲の人の一般的な意見のほうが、常識に近いことが多いです。

ブラック企業に入って周りが見えなくなる方ほど、考えは偏りますから要注意です。

なお、今回は、労働者個人でできる過労死対策。
しかし、過労死を防ぐには、家族など周囲の協力も必要です。
気づいてあげたい過労死の前兆について、次の解説でチェックしてください。

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

ブラック企業による違法な長時間労働はなくなりません。
これに起因する脳卒中、心臓疾患といった過労死が社会問題化して久しいですが、社会的な過労死対策は、それほど十分進んだとはいえず、労働者個人での対策は欠かせません。

働き方の改革により、労働法はますます複雑化しています。
会社側で、法律知識をきちんとして、正しい労務管理がされている会社ばかりではありません。
行政や裁判所、ましてや会社にまかせるのではなく、労働者個人でもできる過労死を防ぐための対策を知っておかなければ危険です。

心身の不調を感じ、過労死の危険があるとき、早めに弁護士に相談ください。

この解説のポイント
  • 過労死を防ぐためには、追い込みすぎず、周りの意見を聞くこと
  • 疲れを我慢するのではなく、労働時間の長さという客観的な指標で判断する
  • どうしても過労死しそうで自分で止められないとき、会社を辞める決断をする

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