現代社会において多くの人が長時間労働に直面しています。特に日本では、「過労死」という言葉が生まれるほど、労働時間の長さが社会問題となっています。仕事が山積みで、勤務時間が長い人は少なくないですが、無理して激務に耐えるのも限度があります。
長時間労働には様々なリスクがあります。健康に悪影響なのは当然ですが、深刻な法律トラブルの原因となることも。一定の時間を超える長時間労働や、長く働かせたのに残業代を未払いとすることは違法です。会社は社員を健康に働かせる義務があり、長時間労働を放置してはいけませんが、会社が対処しないなら労働者も身を守る必要があります。
今回は、長時間労働の問題点とその原因、取り組むべき対策を解説します。働きやすい労働環境を作るには、企業だけでなく、個人や社会が協力して、長時間労働の問題を撲滅する必要があります。
- 長時間労働は違法だが、従来の雇用慣行や企業風土を理由に慢性化しがちである
- 長時間労働を放置し、無くそうとしない会社は、安全配慮義務違反である
- 長時間労働の被害に遭ったら、残業代を請求すると共に、会社の責任を追及する
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長時間労働の問題とは
まずは、長時間労働の問題について基本的な知識を解説します。長時間労働は深刻な問題であり、決して放置してはなりません。
長時間労働の定義と基準
長時間労働とは、通常の労働時間を大幅に超えて長く働くことを指し、労働者の健康や生活に多大な影響を与える深刻な問題です。
労働者として雇用されるなら、一定の残業は覚悟せざるを得ませんが、長すぎる労働時間は違法の可能性があります。多くの企業では長時間労働が常態化し、繁忙期やプロジェクトの締め切り間近といった場面では労働時間が大幅に伸び、社員を疲弊させています。このとき「どのような長時間労働が問題なのか」を知らないと法違反に気付くことができません。
労働基準法は、「1日8時間、1週40時間」を法定労働時間として定め、これを超える労働を「時間外労働」と呼びます。時間外労働は原則として違法であり、例外的に36協定を結んだ場合に限って適法となります。36協定の上限(限度時間)があり、「月45時間、年360時間」が原則とされます。臨時的に「特別条項」を付ければこれを超えることも可能ですが、次の条件を満たす必要があります。
- 年720時間以内
- 1ヶ月の平均が月100時間未満(休日労働を含む)
- 2〜6ヶ月の平均が月80時間以内(休日労働を含む)
※特別条項が適用できるのは、年に6ヶ月が限度となる
以上の制限を超えて長い時間働かせるのが、違法な長時間労働です。
「36協定なしの残業の違法性」の解説
長時間労働の実態と現状
人手不足の状況下では、企業は限られた人員で業務を遂行する必要があります。これによって発生する長時間労働には次の態様があります。
- 残業が増加する
労働力が不足し、既存の従業員を長い時間働かせるために残業が増加します。 - 休暇の取得が困難になる
人手不足のため、従業員が休暇を取得しにくくなります。法律で認められた有給休暇、育休や産休といった正当な権利すら行使できないのは明らかに違法です。 - 柔軟な働き方が制限される
人手不足のためにシフトや勤務時間の調整が難しくなってしまいます。
長時間労働の問題は、特定の業界において特に顕著です。人手不足が要因となる長時間労働は、中小企業やサービス業、飲食、介護といった避けられやすい職種でよく起こります。また、ITや広告業界などプロジェクトに締め切りがある業種、医療業界のように緊急対応が必要となる業種では、やむを得ず労働時間が長くなってしまうことがあります。
長時間労働は、社員の健康や生活の質に深刻な影響を与えるだけでなく、企業の生産性や健全な社会にとっても害悪です。長時間労働の問題を解決するには、企業や社会の努力はもちろんですが、労働者が異議を述べ、会社と戦うことが必要となります。自身の労働環境が劣悪なのではないかと不安なら、まずは弁護士の無料相談をご活用ください。
「労働問題を弁護士に無料相談する方法」の解説
長時間労働の問題が起こる原因
次に、長時間労働の問題が起こる原因について解説します。
長時間労働が違法だと分かっていても、無くせないことには理由があります。長時間労働は、複数の要因が影響し合って生じる複雑な問題です。そして、原因と理由が複数あるからこそ、その対策にはそれぞれの観点からのアプローチが必要となります。
企業の経営面における原因
第一に、企業の経営面における原因、つまり、経済的な理由です。
企業は、市場競争を勝ち抜くために生産性を高める必要があります。しかし、優秀な人材の採用もまた競争であり、限界があります。特定の経験や資格を有する労働者は不足しがちで、特殊な業界ほど、限られた人材に多くの業務が集中します。その結果、限られた社員で経営するには、従業員に長時間労働を求めるという解決策に逃げてしまうことがあります。
また、経営の苦しい企業ほど、長時間労働でありながら低賃金であったり、残業代が未払いとなったりと、労働の対価が不足する事態に陥りがちです。
「労働条件の不利益変更」の解説
少子高齢化による人手不足
第二に、少子高齢化による人手不足という社会的な理由によるものです。
少子高齢化によって労働力人口が減少すると、採用難が加速し、人手不足となります。採用競争に負けた中小企業、サービス業や飲食、介護などの敬遠されがちな職種では、人手の確保が難しくなります。その結果、一人あたりの業務量が増加し、社員に過度な負担がかかり、長時間働くことを余儀なくされてしまいます。このことは、業務効率が低下したり、サービスの質が下がったりして生産性が悪化する、といったように悪循環を進めてしまいます。
「求人内容と違う労働条件の違法性」の解説
長時間労働を強いる風土
第三に、企業風土や文化が理由となっている長時間労働もあります。
日本では、「仕事が人生の中心であるべき」「長時間労働は美徳だ」という価値観が根強く、長い時間働くことが評価されてきました。このような古い体質の残る企業ほど、長時間労働が蔓延し、無くなることはありません。
このような企業風土や文化、慣行は、企業からの押し付けのみで生じるものではありません。むしろ、職場の同調圧力によって加速されている面があります。上司や同僚が長時間労働をしていると、付き合い残業をしたり、空気を読んで帰宅時刻を遅らせたりといった形で、社員の自発的な行為によって長時間労働の問題が拡大しているのです。
「サービス残業の黙認の違法性」の解説
企業の法令遵守の不足
第四に、企業の法令遵守が不足していることは長時間労働の大きな要因となります。
労働基準法は、労働者保護のために労働時間のルールを定め、厳しい制限を課しています。しかし、ブラック企業はこのような企業の責務を果たしません。法令遵守が不十分である場合、労働基準法の定める「1日8時間、1週40時間」の法定労働時間は無視され、36協定の上限(限度時間)も守られません。労働時間を適切に記録せず、残業代を支払わない場合には、企業にとって長時間労働をさせても対価が増加しないため、強要しやすくなってしまいます。
当然ながら労働者にとってはマイナスしかなく、モチベーションは低下し、健康被害が生じるおそれもあります。このような会社では離職率が低下し、更に人手不足が加速していきます。
「会社を訴えるリスク」の解説
社内の労務管理の不備
第五に、社内の労務管理の不備もまた、長時間労働を引き起こします。
使用者は、従業員の労働時間を適切に把握し、休憩や休息を与えるなど、管理する責任があります。しかし、労務管理に不備があると、労働時間が適切に管理されず、必要以上に長時間働くことが常態化してしまいます。このとき、そもそも長時間労働の存在そのものに気付くことすらできず、見過ごされがちです。本来なら、効果的に人員配置をしたり、業務分担をしたりといった対策で、一部の従業員に業務が集中しないようにすることができたケースもあります。
「仕事を押し付けられた時の対処法」の解説
労働者の我慢と受容
最後に、労働者自身の個人的な理由が、長時間労働の原因となっていることもあります。
労働者としても長時間労働を防ぐためにできることをすべきです。例えば、タイムマネジメントやストレス管理を徹底し、長時間労働をしないよう心がけること。また、仕事に入れ込みすぎず、将来のキャリアを見据えて行動することです。高い目標を持つのは良いことですが、労働時間の長さによって達成すべきではなく、「会社のため」だけでなく「自分のため」に考えなければなりません。
日本では、長期雇用慣行(終身雇用制)が一般化していたため、1つの会社に長く勤め、愛社精神の高い人が多い傾向にありました。その結果、安定して長く働いた人ほど勤務先に反発しづらく、長時間労働の拒絶が難しいという背景があります。
労働者の価値観や無意識が理由となってしまっているとき、専門家の客観的なアドバイスを聞くことが役立ちます。
「労働問題に強い弁護士の選び方」の解説
労働時間が長すぎることの問題点
次に、労働時間が長すぎることの問題点を詳しく解説します。労働時間が長いことの問題点は、労働者に多大な負担をかけるだけでなく、企業や社会全体にも深刻な影響を及ぼすことです。
労働者の健康を損なう
長時間労働の問題点で最も重要なのは、労働者の健康を損なうことです。
労働時間が長すぎることはストレスであり、労働者の身体や精神に悪影響を及ぼします。長時間のデスクワークや肉体労働は疲労を蓄積させます。休憩や休暇が取りづらくなると疲労は慢性化し、脳・心臓疾患といった労災の原因になりやすい重大な症状にも繋がり、過労死のリスクが上昇します。勤務時間が長すぎてプライベートが奪われると、ストレスを増大させてメンタル不調となり、うつ病や適応障害といった精神疾患を引き起こす危険もあります。
労働基準法における労働時間の規制は、このような労働者の被害を防ぎ、保護するために設けられたとても重要なものであり、違法な長時間労働の責任は重大です。
企業にとってもデメリットがある
長時間労働は、短期的には企業の生産性を高めるように見えるかもしれませんが、実際には逆効果であり、長期的に見れば企業にとってもデメリットです。
人手不足だからといって長時間労働を抑止しないと、労働者の疲労とストレスが蓄積して、パフォーマンスは低下。結果的には生産性が落ちてしまいます。健康被害が生じた社員は、働くことができずに労災の療養をすることとなり、無理をさせすぎれば離職してしまうでしょう。その結果、採用と教育のコストがかさむなど、経済的にも悪影響です。
最悪の場合には、労働者から多額の賠償請求を受けることとなります。当然ながら、過労死事件を起こすなどすれば企業の信用は低下し、社会的評価が下がってしまいます。
「人手不足なのに雇わない企業の理由と解決策」の解説
社会の健全性が失われる
働くこととは、人の人生そのものです。人生に占める労働の時間は非常に大きいからです。そのため、就労環境に問題があることは社会的な影響に繋がります。
長時間労働は、労働者のプライベートな時間を奪い去っていきます。家族や友人と過ごす時間が減少すれば、人間関係が希薄になってしまいます。子育てをする時間がなくなったり、夫婦関係が悪化して離婚されてしまったりする相談事例もあります。社会活動や地域コミュニティへの参加も難しくなり、孤立感を強めるとますますブラック企業の餌食となってしまいます。
長時間労働から始まる悪循環は、ひいては社会の害悪であり、絶対に防がなければなりません。
「労働問題の種類と解決策」の解説
長時間労働の対策
次に、長時間労働の対策について解説します。
長時間労働は違法であり、社員個人、企業、社会のいずれにもデメリットしかないと理解してください。そして、長時間労働を是正すべき第一次的な責任は、使用者にあります。
とはいえ、問題のある会社に就職すると、会社任せでは問題が解決されません。業績が悪化し、経営が危ぶまれるほど、社員に無理をさせて乗り切ろうとする会社は多いもの。長時間労働の問題がいつまで経っても改善されない危機的な状況では、労働者もまた、対策を講じる必要があります。
企業が講じるべき対策
長時間労働の問題を解決すべき責任は第一次的には企業にあります。企業は労働者を安全で健康に働けるよう配慮する義務(安全配慮義務)を負うからです(労働契約法5条)。長時間労働は労働者の心身に悪影響なので、労働環境を改善し、長時間労働を防ぐ対策を講じることが求められます。会社がすべき取り組みを確認し、労働者としても不十分な企業に要求する参考にしてください。
会社がすべき長時間労働の対策は、例えば次の通りです。
- 労働時間を適正に把握する
会社には労働時間を把握する義務があり(労働安全衛生法66条の8の3)、把握した労働時間を管理することで労働者の健康を保持しなければなりません。長時間労働の是正の観点から、残業代の払われない管理監督者でも時間把握はすべきとされます。 - 労働時間の管理システムを導入する
労働時間を適正に把握するため、タイムカードや勤怠管理システムなどのツールを導入することが重要です。 - 現状に合った労働時間制を導入する
社内の制度が現状に合わないことが長時間労働の原因のとき、裁量労働制やフレックスタイム制などライフスタイルに合わせて働ける制度を導入することが対策となります(なお、いずれの制度も悪用のおそれがあり、適切な運用が前提です)。 - リモートワークを推進する
在宅勤務を導入すれば、通勤時間を削減し、柔軟な働き方を実現できるなど、労働者の負担を軽減できます(なお、在宅勤務の残業代は把握しづらく、未払いが生じやすいため注意を要します)。 - 業務効率化を推進する
業務プロセスや人員配置、業務分担を見直すといった業務効率の改善策は、組織全体として対処しなければ実現できません。 - 休暇の取得を推奨する
計画年休の導入、休暇の取得を奨励するといった方法によって有給休暇の取得率を向上させることが重要です。休憩や休暇を取る社員を敵視しない環境づくりが、企業のできる大きな対策となります。 - 採用強化により人手不足を解消する
人手不足によって長時間労働せざるを得ない状況が続いているならば、採用強化をすることが経営努力として重要です。
労働者にもできる予防策
社内制度の変更などといった大掛かりな施策は打てませんが、労働者個人でも、長時間労働を避けるための次のような予防策をしておくのが効果的です。
- タイムマネジメントを向上させる
効率的に時間を使うスキルを身につけ、優先順位を付けて重要なタスクに集中すれば、労働時間を短縮できます。 - ストレス管理を身に付ける
ストレスを適切に管理する方法を学ぶことが大切です。仕事に入れ込み過ぎず、適度な休憩と休息を取るよう心がけて、自身のメンタルヘルスを維持しなければなりません。 - 健康的な生活習慣を維持する
ワークライフバランスを保つには、働き方だけでなく、私生活の過ごし方も重要です。適度な運動、バランスの取れた食事、十分な睡眠といった当たり前の健康法が、結果的に長時間労働による健康被害の防止にもなります。 - 社内のコミュニケーションを取る
上司や同僚とオープンなコミュニケーションを図ることによって自身の状況や負担を見える化し、業務量の調整などの配慮を求めることが大切です。
なお、いずれも日常的な予防策に過ぎず、実際に長時間労働が深刻化し、被害が著しいときにはこれでは足りません。「長時間労働の被害に遭ったときの労働者側の対処法」は次章で後述します。
「過労死の対策」の解説
政府や社会が取り組む課題
働き方改革の推進に代表されるように、政府や社会全体としても、長時間労働の問題に取り組むため、法律や政策の整備が進んでいます。例えば、36協定の上限(限度時間)に関する法律の強化、リモートワークの推奨といった点は記憶に新しいでしょう。
また、労働者の権利を守るためには、法律や制度が整っているだけでは足りず、現場に落とし込まれていなければなりません。そのために、長時間労働が問題であり、対策が必要であることについて、企業や労働者を啓蒙し、教育する活動も実施されています。
長時間労働の被害に遭ったときの労働者側の対処法
最後に、長時間労働の被害に遭った労働者の対処法について、具体的に解説します。
対策を講じても、違法な長時間労働がなくならならならば、我慢し続けてはいけません。健康を守り、法的な権利を確保するには、会社と戦う姿勢が必要なケースもあります。
労働時間を記録して長時間労働の証拠を集める
まず、長時間労働の証拠を確保するために、自分の労働時間を詳細に記録します。
長時間労働の責任を追及するとき、残業代請求はもちろん、労災申請や安全配慮義務の損害賠償請求においても証拠が非常に重要です。会社には労働時間を把握する義務があるものの、長時間労働の常態化した会社では適切な記録が保存されていないおそれがあります。このとき、労働者の手元に証拠を確保しておかなければ法的な救済が図れなくなってしまいます。
残業の証拠のなかで最重要なのはタイムカードです。しかし、そもそも存在しなかったり隠匿されたり、勤務実態を正しく示していなかったりするとき、他の労働時間に関する資料もあわせて検討する必要があります。
「残業の証拠」の解説
職場での配慮を求める
長時間労働の問題を円満に終わらせるために、まずは社内での解決を試みましょう。会社全体として忙しいというよりは、自分だけが過重労働になってしまっていると感じるならば、社長や上司と話し合って配慮をしてもらえば解決できるケースもあります。
長時間労働の状況や健康状態を伝え、業務量の調整や、労働時間の短縮を依頼してください。管理職だからといって部下の業務を全て把握しているとは限りません。直属の上司との関係がうまくいっていない場合や、パワハラが存在する場合などは、人事部や社長に相談するようにします。
なお、違法な長時間労働となっているときには、これ以上の働きを求める業務命令もまた違法の可能性が高く、従う必要はありません。
「違法な残業命令の断り方」の解説
休職する
長時間労働による健康被害が深刻なら、自分の身を守る必要があり、速やかに休職するのが有効な対処法です。休職は、一時的に出勤を控え、体調を整える期間を設ける手段となります。
休職することで長時間労働による過労から解放され、ワークライフバランスを見直すのみならず、会社の責任を追及する時間を稼ぐことができます。休職手続きは医師の診断書を提出することで始まりますが、詳しくは勤務先の就業規則などであらかじめ確認しておきましょう。
なお、休職は無給であるのが通例で、かつ、期間満了までに復職できなければ退職となってしまうなど、労働者の保護に欠ける面があります。これは休職が本来、私傷病を原因とするもので、労働者個人に原因があり、業務に起因するものではないケースにおける制度だからです。長時間労働が原因ならば労災(業務災害)であり、次章の強い保護を受けるべきです。
「うつ病休職」の解説
労災を申請する
長時間労働が原因で健康被害を受けた場合には、労災(労働災害)を申請できます。労災申請は、労働者が業務上の理由によって負傷したり、病気になったりした場合に、その治療費や休業補償を受けることのできる制度です。長時間労働によるストレスは業務上の危険だと考えられます。
労災認定を得れば、労災保険の給付によって医療費や休業補償を受け取れるだけでなく、労災の療養による休業中とその後の30日間は解雇制限されるといった手厚い保護を受けられます。
「労災の条件と手続き」の解説
外部の相談先に相談する
企業内での解決が難しい場合には、外部の相談先に助けを求めるべきです。被害が大きくなりすぎないうちに速やかに相談してください。長時間労働の相談先には次のように複数の窓口がありますが、迷うときはまずは弁護士に相談しましょう。
労働組合
所属する労働組合があるときは、長時間労働の問題を相談し、支援してもらいましょう。労働組合は、団体交渉によって長時間労働を抑止するよう会社に強く求めることができます。
「労働組合がない会社での相談先」の解説
労働基準監督署
企業が労働法を遵守しないとき、労働基準監督署に相談し、助言指導や是正勧告といった措置を講じてもらえます。特に、長時間労働の問題は、労働基準法ないし労働安全衛生法といった刑事罰による制裁を有する重要な法律に違反している可能性が高いです。労働基準監督署には、会社に出向いて実態を調査し、資料を提出させる権限があります。
「労働基準監督署への通報」の解説
弁護士
労働問題に詳しい弁護士に相談することで、適切なアドバイスを得られます。弁護士は、労働者の権利を守るために労働審判や訴訟といった裁判手続きを活用して支援できます。なお、健康状態について自己判断は危険であり、医療機関の受診も忘れてはなりません。
「長時間労働の相談窓口」の解説
法的措置を検討する
最後に、会社の法違反が明らかなら法的措置を検討します。考えられる手段は次のものです。
残業代請求
1つ目の手段が、残業代請求です。労働基準法37条は、法定労働時間を超える労働、休日の労働、深夜労働について、割増賃金(残業代)を払う義務を定めます。そして、企業がこの支払いを怠った場合には、労働者は未払いの残業代を請求することができます。
長時間労働の問題が放置されるのは、残業代を払わないことによって人件費の削減を狙っているからという面があります。このとき、会社のメリットを失わせれば、長時間労働を削減し、違法状態を是正させることができます。そのために効果的なのが、残業代請求です。
「残業代請求に強い弁護士への無料相談」の解説
安全配慮義務違反の損害賠償請求
2つ目の手段が、安全配慮義務違反を理由とした損害賠償請求です。
企業には、労働者の安全と健康を確保するための安全配慮義務があります(労働契約法5条)。長時間労働が原因で労働者が健康被害を受けた場合、この義務を怠ったとして損害賠償を請求でき、精神的苦痛については慰謝料を請求できます。
具体的には、弁護士に相談の上、内容証明にて請求書を送付し、交渉が決裂する場合には労働審判や訴訟といった裁判を起こします。
「労災の慰謝料の相場」の解説
パワハラの慰謝料請求
3つ目の法的措置が、パワハラの慰謝料請求です。
長時間労働が強要されているケースにはパワハラ的な側面のあることが多いです。自身の意に反して長い時間勤務せざるを得ないケースは、ハラスメントではないかと疑問を持ちましょう。違法なパワハラは不法行為(民法709条)であり、慰謝料をはじめとした損害賠償の請求によって救済を求めることができます。
「パワハラの相談先」の解説
まとめ
今回は「長時間労働」という現代における深刻な労働問題を解説しました。
少子高齢化により労働力人口が減少し、人手不足が進行しています。少ない社員を酷使して業績を上げようとする企業ほど、労働者にしわ寄せが来ます。長時間労働は従業員の健康を損なうだけでなく、社内の人間関係を疲弊させ、生産性を低下させるなど様々な問題に派生します。
政府や社会のレベルでは法改正や働き方改革が進行しています。使用者側は労働時間制の導入や生産性の向上といった対策を講じられますが、社員個人もまた、タイムマネジメントやストレス管理を強化し、何よりも違法な長時間労働に対し異議を述べて会社の責任を追及するのが大切です。
長時間労働を一時でも我慢すれば、常態化して無くせなくなります。企業任せにせず、現状を把握し、個人や社会が協力して対策に取り組まなければなりません。働く側が耐えてしまうと、労務管理の甘い会社ほど積極的に問題を解消しようとはしないでしょう。一人で立ち向かうのが難しいなら、ぜひ弁護士に相談ください。
- 長時間労働は違法だが、従来の雇用慣行や企業風土を理由に慢性化しがちである
- 長時間労働を放置し、無くそうとしない会社は、安全配慮義務違反である
- 長時間労働の被害に遭ったら、残業代を請求すると共に、会社の責任を追及する
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【労災申請と労災認定】
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【さまざまなケースの労災】
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