ブラック企業では多くの違法な労働問題が起こります。終電まで残業しても、翌早朝から出社、パワハラも日常茶飯事でしょう。会社によっては帰宅してもなお仕事に追われます。長時間労働や過剰なノルマ、コンプライアンス違反が続けば、対抗する気力も奪われます。
我慢して声をあげないだけで、実はブラック企業で働く労働者はたくさんいます。社員を使い捨てるブラック企業は、労働者に損しかなく、入社すべきではありません。利益追求は会社のためでしかなく、法律で保護された労働者の権利は侵害されます。働く人の個性や性格が考慮されることはありません。
一方で、ブラック企業は、働く人のやりがいを巧みに利用する術に長けています。また、違法な労働実態を巧妙に隠し、表からはなかなか判別できません。ブラック企業に人生を台無しにされないために、特徴と見分け方を知り、対処すべきです。
今回は、ブラック企業の特徴や見分け方、対策を、労働問題に強い弁護士が解説します。
- ブラック企業に就労し続けると心身が疲弊するので、逃げてリスクを回避すべき
- ブラック企業によくある特徴と知識を理解すれば外からでも見抜ける
- できるだけ早くブラック企業を見分けるには、採用、入社の過程で特徴を逃さない
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ブラック企業とは?厚生労働省の定義をわかりやすく解説
ブラック企業とは、コンプライアンス(法令遵守)の意識の低い会社の総称です。
労働法は、労働者を保護し、様々な権利を認めています。そのため、これらの法律が守られないブラック企業だと、労働者は虐げられてしまいます。給料未払い、残業代未払い、長時間労働や不当解雇、ハラスメントなど……。ブラック企業では、違法な労働問題が多く起こります。
その最たる例は、労働者が酷使されて死に至る、過労死の事案です。過労死を起こせば社会問題となり、ニュース報道で取り上げられるブラック企業もあります。
ブラック企業に、法律上の定義はありません。そのため、ブラック企業についての行政の説明などが参考になります。
厚生労働省では、「確かめよう労働条件 - 労働条件に関する総合情報サイト(厚生労働省)」においてブラック企業を次のように定義しています。
「ブラック企業」ってどんな会社なの?
厚生労働省においては、「ブラック企業」について定義していませんが、一般的な特徴として、① 労働者に対し極端な長時間労働やノルマを課す、② 賃金不払残業やパワーハラスメントが横行するなど企業全体のコンプライアンス意識が低い、③ このような状況下で労働者に対し過度の選別を行う、などと言われています。
確かめよう労働条件 - 労働条件に関する総合情報サイト(厚生労働省)
毎年話題になったブラック企業に賞を送る、ブラック企業大賞も話題になりました。三菱電機や電通など、過去に労働問題を起こした名だたる企業がノミネートされています。このブラック企業大賞では、次のような会社をブラック企業と定義しています。
ブラック企業とは・・・・①労働法やその他の法令に抵触し、またはその可能性があるグレーゾーンな条件での労働を、意図的・恣意的に従業員に強いている企業、②パワーハラスメントなどの暴力的強制を常套手段として従業員に強いる体質を持つ企業や法人(学校法人、社会福祉法人、官公庁や公営企業、医療機関なども含む)。
ブラック企業大賞とは
労働者は、「雇われて給料をもらう」という点で、会社より弱い立場に置かれます。だからこそ、法律で特別に保護されているのです。ブラック企業は有利な立場を悪用し、労働者を選別し、酷使し、用済みになったら使い捨てます。
その結果、働き続けると、過労死や度を超えたハラスメントなど、深刻な労働問題が発生します。ブラック企業が多い業界は特定が難しく、介護、建設、運送会社など幅広い業界で問題となります。
「労働問題に強い弁護士の選び方」の解説
ブラック企業の特徴11選
ブラック企業を見分けるには、共通する特徴をつかむのがポイントです。
ブラック企業は、業界や業種を問わず、ありとあらゆるところに存在します。誤って入社しないためにも、ブラック企業の特徴を理解してください。
特徴がすべて該当するなら、間違いなくブラック企業と認定できますが、いくつかあてはまるだけでもブラック企業の可能性があります。労働法違反は複合的な問題なので、該当する点が多いほど、違法性の度合いは強いといえます。
自社がブラック企業の傾向がないかどうか、順番にチェックしてみてください。
長時間労働が常態化している
ブラック企業の特徴の1つ目は、長時間労働が常態化していること。
繁忙期に労働時間が長くなるのは、ブラック企業でなくても仕方ないこと。しかし、それが常態化しているならブラック企業です。長く働くことが「奨励」され「美徳」とされる会社では、抗うのは難しいでしょう。
- 周囲に合わせて働いていたら、気付いたら終電を逃していた
- 定時退社したら、上司に怒られた
- 休憩をとらずに働くのが当たり前とされている
労働基準法では、残業の上限は、月45時間が原則とされます。特別条項付きの36協定を結べば延長できますが、あくまで例外に過ぎません。まして、月80時間以上の残業は過労死ラインと呼ばれ、明らかにブラック企業です。
「長時間労働の問題と対策」の解説
過重労働がある
ブラック企業の特徴の2つ目は、過重労働があることです。
働くことの負担は、労働時間のみにあるのではありません。時間はさほど長くなくても、達成不能なノルマがあるなどストレスが大きい例もあります。
ノルマそのものは違法ではないものの、度を越すとハラスメントの一種。達成できないと能力が低いと評価され、給料を下げるのもブラック企業でしょう。自分がブラック企業の犠牲になるだけではありません。ノルマ達成のために友人や家族に契約を頼まざるを得ないなど、周囲も巻き添えになります。
「違法なノルマの対策」の解説
休みがとれない
ブラック企業の特徴の3つ目は、休みがとれないこと。
多少忙しくても、メリハリがあればまだよいですが、ブラック企業は休養も許しません。本来、一定の時間働かせれば休憩を取らせる義務があります。しかし、ブラック企業では労働から完全に解放されず、休憩中でも業務対応に追われます。さらに「1週1日もしくは4週4日」以上とらせるべき休日も、満足に与えられません。
形式的には休日でも、ミーティングや接待、業務連絡があり、プライベートはありません。このようなブラック企業では、いわば休日返上の強要が当たり前となっているからです。酷いケースでは、休日手当が出ないのは当然、代休さえも申請できません。
「休日出勤を断る方法」の解説
有給休暇がない
ブラック企業の特徴の4つ目は、有給休暇が取れないこと。
有給休暇は、貢献に対するねぎらいを意味し、法的な権利です。理由を伝えずとも取れる有給休暇ですが、ブラック企業は必ずといってよいほど理由を聞きます。そして、よほどの事情がない限り、有給休暇を付与してはくれません。
業務に支障があるなら例外的に、会社は時季変更権を行使できます。ただ、繁忙期などにしか許されず、かつ、変更した時季には有給休暇を取らせる必要があります。
「有給休暇を取得する方法」の解説
給料が低すぎる
ブラック企業の特徴の5つ目が、給料が低すぎることです。
いくら払えば給料が十分かは、業種や業界、職種によります。しかし、最低賃金を下回る給料は違法であり、ブラック企業なのは明らかです(最低賃金未満の給料を定めても無効となり、最低賃金分は請求できます)。
社員をコマとしか考えないブラック企業にとって、どれだけ安い給料で働かせられるかが重要。労働者の頑張りは、給料には全く反映されないような仕組みが出来上がっています。ブラック企業では、いつまで働いても安月給のまま、昇給はされません。
「基本給が低くて違法なケース」の解説
残業代がもらえない
ブラック企業の特徴の6つ目は、残業代がもらえないことです。
決められた時間を超えて働けば、残業代を払わなければなりません。残業代の未払いは違法なはずですが、ブラック企業は当然のようにサービス残業させます。タイムカードを切って残業させたり、残業代を申請させなかったりと隠蔽にも余念がありません。
やりがいやを全面に出し、自主的に残業させようとする社風は、ブラック企業にありがち。また、労働者から残業代請求を受けても、次のように反論してきます。
いずれの言い訳も違法の可能性が高いことは、上記のリンク先でそれぞれ解説する通りです。ブラック企業で身を粉にして働いても、正当な対価はなく、疲れやストレスがたまるばかりです。違法な残業命令については拒否し、速やかに退職して逃げるのが適切です。
「残業代の計算方法」の解説
法律上の根拠が不明確な処遇
ブラック企業の特徴の7つ目が、労働者の処遇に法律上の根拠がないことです。
例えば、次のような処遇は違法の可能性が高いです。会社の慣例であって従わなければならないとき、違和感にすぐ気づくべきです。
- 1日の所定労働時間が、法定労働時間(8時間)を超えている
- 残業代を払わない理由が示されない
- 急な人事異動が繰り返される
- 評価が不当に低く、その理由や改善策を説明してもらえない
他社の友人などに聞き、例のない処遇をされたら注意を要します。すぐに、会社に、法律上の根拠を問いただすようにしましょう。明らかにおかしいやり方に対し、法的な根拠が示されないなら、ブラック企業の可能性が高いです。
環境が劣悪でハラスメントが存在する
ブラック企業の特徴の8つ目が、労働環境が劣悪なことです。
会社全体として法令を守らないと、オフィスもギスギスしてきます。上下関係が厳しく、ハラスメントの毎日を送る社員も少なくありません。ブラック企業の多くは、セクハラやパワハラが常態化しています。
ハラスメントを防止するための会社としての取り組みはなく、上司や同僚も見て見ぬふり。相談しても精神論で片付けられ、責任は被害者に押し付けられがちです。ブラック企業に残り続ける社員は、その価値観に染まっており、悪気のないハラスメントも少なくありません。
経営者のワンマンプレー
ブラック企業の特徴の9つ目は、経営者がワンマンプレーなことです。
ブラック企業の経営者はトップダウンで命令しがちで、部下の忠告を聞きません。その結果、社員とのコミュニケーションはとらず、労働法は守られません。
カリスマな経営者ほど、注意しないとブラック企業になってしまいます。優秀な経営者でも、社員にも同じレベルの仕事を求めればブラック企業の原因になります。創業社長だと、睡眠も休憩も返上して事業を立ち上げた方もいるでしょう。自分が頑張ったのだから、従業員も出来て当たり前と考えがちです。
トップが労働環境の過酷さを認識しないと、業績が良くても、企業はブラックになっていきます。
「ワンマン社長についていけないときの対策」の解説
離職率が高く、社員の入れ替わりが多い
ブラック企業の特徴の10つ目は、社員の入れ替わりが激しいというもの。長年耐えられる人は少なく、定着率が低いのがブラック企業の特色です。
気付けば同期は全員辞め、自分が古株だったということも。「若手でも、3年続けばベテラン扱い」というひどいブラック企業もあります。スタートアップでもないのに入社数年の社員ばかりの会社は、危険信号でしょう。ブラック企業で違法な扱いを受ければ、退職したくなるのが当然で、離職率は高まります。勤続年数は、ホワイトな会社よりも当然短くなります。
また、ブラック企業は多くのイエスマンで固めるため、不要な人材を排除しようとします。
「辞めさせる前提で大量採用し、反抗的な社員を解雇する」というやり方がブラック企業の常道です。ブラック企業の押し付ける難題をクリアできず、能力不足とされ退職を迫られるケースもあります。
簡単には辞められない
ブラック企業の特徴の11つ目は、辞めるのも難しいことです。
ブラック企業で体よく扱われると、簡単に辞めることもできません。会社側にとっても、従順な社員が、安い給料で長時間労働してくれるに越したことはありません。逃げようとしても、必ず慰留され、説得されるでしょう。
最初は情に訴えかけ、「ここにいれば必ず成長できる」と促されるでしょう。そのうち「辞めても同じだ」「仕事があるだけ有難い」などの厳しい引き止めに変わります。「代わりを見つけろ」「辞めるなら損害賠償を請求する」と脅される例もあります。
「会社の辞め方」の解説
ブラック企業の見分け方
次に、ブラック企業の見分け方について解説します。悪質なブラック企業ほど、実態をカモフラージュするのが上手いものです。
ブラック企業は、犠牲者を集めるため、マイナスイメージを消すあらゆる努力を講じます。しかし、火のないところに煙は立たず、違法な実態があるなら、必ず手がかりがあります。ブラック企業に入社してしまうリスクを避けるには、早めに見分けるしかありません。早く縁を切ることで、時間や労力を無駄にせず、搾取されないようにしましょう。
求人票での見分け方
まず、求人票や募集要項をよくチェックすれば、ブラック企業を見極められます。
明らかに違法な労働条件や、低すぎる待遇が記載されていれば、ブラック企業なのは当然です。特に、残業代がどのように払われるかに注意してください。安月給で酷使すべく、残業代を払わないための手を使うブラック企業が多いためです。
また、給料額が、募集条件や業務内容に見合っているかも確認してください。「未経験OK」「スキル不問」といった条件なのに相場より高給なら、疑った方が良いでしょう。
なお、入れ替わりの激しいブラック企業ほど、人材補充のために求人情報の更新も多くなりがちです。ハローワークでの求人に応募する際などには特に注意してください。
「雇用契約書をもらえない時の対応」「求人内容と違う労働条件は違法」の解説
ホームページでの見分け方
次に、企業のホームページでも、ブラック企業かどうかを見極めるチャンスがあります。
ホームページには、理念やビジョンが書かれていることがあります。具体性がなく、曖昧で抽象的な理想は、内部事情が不透明であることを示しています。過剰な表現を使って、良く見せようとする会社ほど、ブラック企業ではないか注意してください。社員数や年次の構成、平均年齢、男女比などがいびつな会社も、ブラック企業の危険があります。
採用面接での見分け方
ブラック企業かどうかは採用面接でも見分けることができます。特に、面接官に質問の機会があるときがチャンスです。
離職率や平均残業時間など、数字で表せる情報を濁すのは、ブラック企業の可能性が高いです。
採用面接で、社長が精神論を多用するような会社も、ブラック企業の疑いあり。また、簡単な面接ですぐ内定が出すのは、ブラックすぎて人材が不足した会社かもしれません。
少なくとも、信頼の構築や、適性把握を怠り、使い捨ての労働力としか考えていないのでしょう。「やりがい」「アットホーム」「明るい職場」「稼げる」といったブラック企業によくあるフレーズにも注意してください。
「圧迫面接の違法性」の解説
働きながら見抜く方法は?
入社前にブラック企業だと知るのが最善ですが、中にいても速やかに気づくべきです。違和感を感じたら、速やかに対処しなければいけません。実際に入社したからこそ見える部分には、ブラック企業に気づくヒントが隠されています。
- 上司に覇気がない
- オフィスが不潔で、ゴミや物が散らかっている
- 社員が皆、睡眠不足で、目が充血している
- 上司が常に大声で怒鳴っている
- 社長が仕事に無関係な贅沢をしている
- 常に電話が鳴り止まず、殺伐としている
雰囲気は、言葉にはしづらいため、最後は自分のフィーリングで選ぶしかありません。むしろ、上記のような雰囲気が好きなら、ブラック企業向きの性格なのかもしれません。ただ、あなたにとって職場はここしかないわけではありません。違和感を感じる会社に居続けるのは、労働者にとって不幸なことです。
ブラック企業には多くの労働問題があります。労働問題の種類と解決方法を知ることが、早く逃げるための近道です。
「労働問題の解決方法」の解説
労働者がすべきブラック企業への対策
次に、ブラック企業に対して、労働者がすべき対策を解説します。
ブラック企業で働いても、労働者には何一つメリットがありません。あまりの作業量に忙殺されて、精神的に追い詰められるでしょう。ブラック企業の違法を放置して、状況がエスカレートすれば、深刻な不利益を被ります。
我慢してはいけない
ブラック企業なのになぜ辞めない人が多いのか。それは、労働者の将来への不安がネックとなっているからです。長期雇用の慣行は崩壊したともいわれていますが、未だ安定志向の根強い日本では、将来の不安からブラックな環境でも我慢してしまう人も少なくありません。転職活動もうまくいくとは限りませんし、無職期間が長引けば生活困窮の危険もあります。
しかし、無理に我慢すると、精神と体力が削られていきます。「仕事を辞めたら生きていけない」という思い込み、固定観念は捨ててください。ブラック企業であればむしろすぐ辞めるべきで、我慢してはいけません。当然ながら、辞めるときには、有給消化し、失業保険をもらうなど、損しない工夫が大切です。
「失業保険をもらう条件と手続き」の解説
ブラック企業の相談窓口へ行く
ブラック企業に虐げられたとき、相談窓口があれば不安を和らげることができます。ブラック企業で起こる労働問題の相談窓口は、主に次の3つです。
- 労働基準監督署
賃金の未払いや労災など、重大な労働基準法違反は、労働基準監督署への通報をしましょう。是正勧告をし、悪質な場合には逮捕、送検し、刑事事件化してくれます。 - 労働組合
企業内に労働組合がなくても、ユニオン(合同労組)への相談が可能。労働組合は、会社に団体交渉を申し入れ、労働環境を改善してくれます。 - 弁護士
弁護士は、労働問題を総合的に扱い、労働者に代わって会社と交渉します。会社が話し合いに応じようとしないとき、労働審判、訴訟を活用できます。
ブラック企業を裁判で訴える
ブラック企業を裁判に訴えることで、会社の法的責任の追及が可能です。違法な行為をしても、責任を問われない限り、いつまでたってもブラック企業はなくなりません。
まずは労働問題に強い弁護士に相談してください。自分の問題だけでなく、ブラック企業の改善を望むときにも、解決にはやはり裁判を要します。ブラック企業が自発的に過ちに気付き、改善してくれることは期待できません。労働者保護のために設けられた労働審判なら、通常の訴訟と比べて簡易迅速で柔軟な解決ができます。
「労働者が裁判で勝つ方法」の解説
速やかに退職する
ブラック企業だと見抜いた段階で、速やかに退職すべきです。
せっかく入社した会社だからとこだわらず、ご自分の心身を第一に考えてください。ワークライフバランスを実現するためにも、ブラック企業は向いていません。今は良くても、悪評や人手不足で、ブラック企業はいずれ倒産する可能性が高いです。
ブラック企業出身だと、転職に不利なのでは、と恐れる人もいます。しかし、ブラック企業で培われたメンタルの強さなど、武器になる要素もあります。過酷な環境で戦い抜いたことに自身を持ち、速やかに退職しましょう。
民法上、会社が退職を認めなくても、申し入れから2週間を経過すれば退職できます(民法627条1項)。
「退職届の書き方と出し方」の解説
ホワイト企業に転職する
最後に、ブラック企業から転職するとき、次こそはホワイト企業を選ぶことです。
職歴に空白が生じるのが怖くて、退職を躊躇する人もいます。しかし、まともな会社なら、きちんと退職理由を説明すれば、それだけで不利になることはありません。むしろ、ブラック企業から逃げてきたのに、更にブラック企業に勤めてしまうのは避けるべき。一度だまされたからこそ、慎重にならなければ悪循環に巻き込まれてしまいます。
ブラック企業を訴えた裁判例
最後に、労働者が、ブラック企業を相手取って裁判に訴えた事例を解説します。
東京地裁令和2年6月10日判決(アクサ生命事件)
生命保険会社の社員が、違法な長時間労働を主張し、ブラック企業に慰謝料を請求した事案。本事案では、1年以上の間、1ヶ月に30時間から50時間以上の時間外労働がありました。更に、労働者が会社に、長時間労働の改善を要求しても放置されていました。
裁判所は、労働者に疾患の発症がなくても、心身の不調をきたす可能性があると判断。安全配慮義務違反を認め、慰謝料10万円の支払いを命じています。なお、本事案では、労働基準監督署から、未払い残業代に関する是正勧告も発されていました。
長崎地裁令和元年9月26日判決(狩野ジャパン事件)
食品加工会社の社員が、長時間労働を違法と主張して、ブラック企業に慰謝料を請求した事案。本事案では、以下のような長時間労働の実態がありました。
- 退職前の2年間は、2ヶ月を除き、時間外労働が月100時間を超えていた
(100時間を超えない月も、90時間以上の時間外労働) - 最も多い月で160時間以上の残業があった
裁判所は、長時間労働の状況について、必要とされる注意や改善指導がなかったことを理由に、会社の安全配慮義務違反を認め、労働者の人格的利益の侵害に当たると判断。結論として、慰謝料30万円の支払いを命じました。
「月100時間残業の違法性」の解説
まとめ
今回は、社会に根強くはびこるブラック企業の問題を、法的に解説しました。
ブラック企業の違法性は明らかにもかかわらず、辞める決断のできない人は多いものです。ブラック企業で働き続けると、労働者側が疲弊してしまいます。日常的な長時間労働はもちろん、ハラスメントなどのコンプライアンス違反。更に、たまに休日があっても疲労回復に充てざるを得ず、プライベートの余裕はなくなります。
残業代も払われず、やりがい搾取は当たり前に存在し、給料が少ないことも正当化されます。もちろん、劣悪な労働環境にいつまでも身を置きたい人は少なく、離職率は高まります。場合によっては、疲弊した人から順に、会社から不当に解雇されていきます。違法な状態を放置し続ければ、いずれ八方塞がりになるため、速やかな対処が必要です。
ブラック企業の知識をつけることで、リスク回避をすることができます。裁判で訴えるなど厳しい態度で接するためには、弁護士にぜひご相談ください。
- ブラック企業に就労し続けると心身が疲弊するので、逃げてリスクを回避すべき
- ブラック企業によくある特徴と知識を理解すれば外からでも見抜ける
- できるだけ早くブラック企業を見分けるには、採用、入社の過程で特徴を逃さない
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