有給休暇は、長く勤務し、貢献した社員への恩恵。
給料をもらいながら休むという労働者の権利です。
しかし、在職中に休暇を消化できず、退職するのに有給休暇があまっている方も多いでしょう。
有給休暇の取得は、労働者の権利で、理由なく拒否はできません。
しかし、有給消化を拒否され、退職時のトラブルの種となることがあります。

退職日までに有給休暇を消化しきれない

有給休暇なのに、引き継ぎを強制された
なかには、在職中から、有給休暇がとりづらい会社もあります。
「退職するなら有給休暇を使わせない」などヤメハラがからむ悪質なケースも。
退職直前なら、有給休暇の残っている期間は、休んでも給料をもらえます。
損しないため、有給消化を強く求め、拒否されたら買い取りを請求するのが有効な手です。
今回は、退職前の有給消化と、拒否されたときの買い取りの請求について、労働問題に強い弁護士が解説します。
- 退職前に、有給休暇の残日数を確認し、計画的に消化する
- 退職前の有給消化を拒否されたら、証拠を残し、弁護士に警告してもらう
- どうしても有給休暇を使い切れないなら、引き継ぎを条件に、買い取り交渉する
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【有給休暇のとり方】
【退職時】
【有給休暇の違法な扱い】
【休暇の知識】
退職前でも有給消化は可能

有給休暇は、一定期間会社に貢献した社員に与えられる、給料をもらいながら休める権利です。
忙しい、タイミングがあわない、仕事が回らない…、さまざまな理由で有給休暇をとれない例があります。
しかし、その分の休暇は貯まり、退職時には相当な日数休めるようになる例も少なくありません。
このとき、退職前に、まとめて有給休暇をとることができます。
「退職前に有給休暇をとるのは非常識だ」という考えは、ブラック企業の発想です。
法律上は、退職前だろうが在職中だろうが、有給休暇をとれるのは、労働者の権利です。
きちんと取得しなければ「損した」気分になるでしょうから、基礎知識をまずは理解してください。
退職前にとれる有給休暇の日数
有給休暇は、次の要件を満たす労働者に与えられます(労働基準法39条)。
- 入社から6ヶ月が経過していること
- 6ヶ月の全労働日の8割以上出勤していること
入社から6ヶ月経過し、条件を満たすと10日の休暇が得られます。
そして、その後1年経過ごとに、得られる日数は次のように増えていきます。
継続勤務年数 | 労働日 |
---|---|
6ヶ月経過 | 10日 |
1年6ヶ月経過 | 11日 |
2年6ヶ月経過 | 12日 |
3年6ヶ月経過 | 14日 |
4年6ヶ月経過 | 16日 |
5年6ヶ月経過 | 18日 |
6年6ヶ月以上 | 20日 |
有給休暇の時効は2年のため、使わなければ2年は蓄積していきます。
そのため、退職時に、どれだけの有給消化ができるかを知るためには、2年前までさかのぼって、使っていない有給休暇の日数を計算する必要があります。
有給休暇の取り方は、次の解説をご覧ください。
退職前の有給消化だと、時季変更は困難
有給休暇は、労働者の権利ですから、会社は拒否できません。
つまり、逆にいえば、労働者が休暇を取得するのに、会社の許可はいりません。
ただし、会社には「時季変更権」が認められています。
これは、業務に支障が生じる有給消化について、休暇日を変更できる権利です。
時季変更権は、休暇日を変更できるだけで、取得の拒否ができるわけではありません。
そして、退職前の有給消化だと、時季変更権すら行使できないケースも珍しくありません。
つまり、退職日までに期間が残されておらず、変更して休暇をとらせる日がそもそも存在しないとき、時季変更権は行使できません。
退職前の有給消化を拒否された時の対応

有給休暇の拒否、特に、退職前の有給消化の拒否は、違法のおそれの強い行為です。
会社の違法、不当な扱いに対抗するため、退職前の有給消化を拒否されたときの正しい対応を理解してください。
退職日を調整してもらう
退職前の有給消化を拒否されそうな気配を感じたら、早めにスケジュール調整をしましょう。
退職日を早めに決め、有給消化したいと伝え、会社の負担を最小限にすれば認めてもらいやすくなります。
このとき、他の社員の都合や会社の繁忙期、引き継ぎにかかる期間も検討してください。
どうしても退職日までに有給消化できないとき、まだ転職先が決まっていないなら、退職日そのものを後ろ倒しにすることで調整する手も有効です。
退職届の基礎知識は、次の解説をご覧ください。
有給休暇を不当に拒否された証拠を残す
まず、有給休暇を不当に拒否された証拠を残しておきましょう。
万が一退職までにとれないとき、「そもそも申請がなかった」という反論を受けないためです。
具体的には、次の手順で進めるのがよいでしょう。
- 書面やメールなどで証拠に残るよう有給休暇を申請する
- 会社が拒否したとき、その理由を書面で出すよう求める
在職中だと、病気や家族の都合など、なにかしらの理由付けをしている方も多いでしょう。
しかし、有給休暇はそもそも、理由を問わず休めます。
当然ながら、退職前の有給消化でも、特に理由がなくても休めますし、理由を言う必要もありません。
退職前の有給消化を拒否する会社では、退職そのものも拒まれるケースもあります。
在職強要を受けるのが、その典型例です。
労働者には、やめる権利がありますから、強すぎる引き止めは違法です。
やめたくてもやめられない方は、次の解説もご覧ください。
弁護士に警告してもらう
ここまでの努力をしてもなお退職前の有給消化を許してもらえないとき、弁護士に相談してください。
弁護士から、労働基準法違反であると警告を発してもらい、プレッシャーをかけることができます。
このとき、気まずいでしょうから、業務引き継ぎについても弁護士を通じてすることもできます。
専門家から、違法だと伝えてもらえば、これ以上の不当な扱いを避けられます。
退職時に起こりやすい労働トラブルの防止にもつながります。
有給休暇の不当な拒否への対応は、次の解説もご覧ください。

退職日までに有給消化ができない時の対応

休暇を拒否されたり、やらねばならない仕事があったり、どうしても有給消化が難しいことも。
真面目な方ほど、無責任に放り出せないことでしょう。
有給休暇の取得を強く求めてもなお、どうしても退職日までに有給消化をしきれないとき、どのように対応するのがよいかについて解説します。
欠勤し、給料を請求する
有給休暇が未消化で残っているなら、取得に会社の承諾はいりません。
また、時季変更権を行使しようにも、退職直前の有給消化だと、権利行使が難しいです。
このとき、労働者には、給料をもらって休む権利があります。
そのため、会社が有給休暇の取得を認めなくても、会社にいく必要はありません。
退職日まで、休むことを伝え、会社にいかないという対応が適切です。
ただし、会社としては欠勤扱いとして、給料を控除し、払ってこない危険があります。
これに対しては、欠勤ではなく有給休暇だと反論し、未払いの給料を請求するのが適切です。
未払いの給料を請求する方法は、次の解説をご覧ください。
有給休暇の買い取りを求める
どうしても有給休暇を消化できないとき、買い取りを求めるのも有効です。
有給休暇が残ったまま退職するのは、損した気分になることでしょう。
法律上は、労働者には、有給休暇を買い取ってもらう権利まではありません。
強制的に買い取らせるよう、請求ができるわけではありません。
労使が合意したときにのみ、有給休暇をお金にかえることができます。
とはいえ、円満な退職のため、会社が有給休暇の買い取りに応じてくれるケースは多いです。
会社としても、労働トラブルの拡大は避けたく、また、業務の引き継ぎをきちんと終えてもらうために、少しくらいお金を払ったとしても、有給休暇をとらずに仕事してくれることにメリットがあるためです。
有給休暇を買い取ってもらえるよう、業務引き継ぎが交渉のカードになります。
退職時の業務引き継ぎについて、次の解説もご覧ください。

まとめ

退職するのに有給休暇をたくさん余らせると、損してしまいます。
有給休暇が残っているのは、あなたがこれまでたくさん貢献したことを意味します。
在職中は忙しくて、休みをとる暇もなかったことでしょう。
会社が認めなくても、有給休暇は労働者の権利です。
堂々と、胸をはって取得していただいてかまいません。
退職時の有給消化について不当な扱いをされたとき、ぜひ一度弁護士にご相談ください。
- 退職前に、有給休暇の残日数を確認し、計画的に消化する
- 退職前の有給消化を拒否されたら、証拠を残し、弁護士に警告してもらう
- どうしても有給休暇を使い切れないなら、引き継ぎを条件に、買い取り交渉する
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