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お盆休み(夏季休暇)を有給休暇とする会社は違法?計画年休についても解説

お盆シーズンを「夏季休暇」と定める会社は多くあります。
お盆は、カレンダーによって曜日が異なりますが、年によっては長期連休となります。

夏季休暇について「決められた日数だけ自由にとってよい」というルールの会社も増えました。
一方で、長期連休が予定されると「やはりお盆休みは一斉にとらせたほうが、業務への支障が少ない」と考える会社も珍しくありません。

そのなかには、夏季休暇に有給休暇をあてて消化し、休暇を減らしてしまう会社もあります。
せっかく「夏休み」なのに、有給休暇も同時になくなってしまっては、労働者は損した気分でしょう。
正当な権利を侵害されてしまっている可能性もあります。

今回は、お盆休み(夏季休暇)に有給休暇をあてる会社のやり方が違法なのか、ブラック企業なのかどうかについて、労働問題に強い弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • 有給休暇を勝手に使うのが違法なのは、お盆休み(夏季休暇)にもあてはまる
  • 労働者にとってメリットがあるときは、合意の上、有給休暇にしてもよい
  • 計画年休で、お盆休み(夏季休暇)を有給休暇にするには、厳しい要件がある

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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有給休暇を勝手に使わせるのは違法!

有給休暇とは、一定の期間会社で働き続けた労働者に、給料をもらいながら休むことのできる「権利」を与える、労働基準法の制度です。
一般に「有給」、「年休」と呼ぶこともあります。

有給休暇は、法律上、労働者に与えられた権利。
つまり、権利を行使して休むかどうかは、労働者が決めてよいことです。
したがって、会社は、有給休暇を使うのを強制することはできないのが原則です。

今回のテーマでいえば、お盆休み(夏季休暇)だからといって、会社側が、労働者に対して有給休暇を使わせることを強制し、消化してしまうのは違法です。

なお、有給休暇の日数は、勤続年数に比例します。
自分にあとどれだけの有給休暇が許されるのか、この機会に確認しましょう。

継続勤務年数労働日
6ヶ月経過10日
1年6ヶ月経過11日
2年6ヶ月経過12日
3年6ヶ月経過14日
4年6ヶ月経過16日
5年6ヶ月経過18日
6年6ヶ月以上20日

有給休暇を強制取得させられていたのに気づいたら、次の解説もご覧ください。

お盆に有給休暇を使ってもよいケース

とはいえ、お盆休み、夏季休暇ですから、「できればまとまった休みをとりたい」と考えるのが労働者側としても本音なこともあります。

さきほど申し上げたとおり、有給休暇をとるのは、労働者の権利だと、労働基準法に明記されています。
法律上の権利ですから、会社や他の社員にも気兼ねなく、労働者は有給休暇を取得できます。

このとき、お盆休み(夏季休暇)と有給休暇、休日の関係について、基本的な考え方をしっかり理解し、有給休暇を損することのないよう注意しましょう。

休日は会社が決める

会社の休日は、会社が指定します。
一般には「土日祝日」と「盆・正月」が休みの会社は多いものの、決して法律上の義務ではありません。

飲食店やデパート、サービス業など、業種によってはむしろ「土日祝日」や「盆・正月」は繁忙期。
休日がいつなのかは、法律上決まったルールがなく、決められた範囲内で、会社が定めてよいのです。

あなたの会社が、いつを「休日」と定めるのかは、就業規則をみれば確認できます。

休日を「いつにするか」は会社が決められますが、法律による制限はあります。
労働基準法は「1週1日もしくは4週4日」の休日(法定休日)を与えるのを義務としています。
この法定休日に働いたときは、通常の賃金の1.35倍以上の休日割増賃金(残業代)をもらえます。

また、休日割増賃金(残業代)が払われれば必ず働かなければならないわけでもなく、違法な長時間労働をさせてはならない責任が会社にはあります。

夏季休暇を無給にできる

ここまで解説したとおり、夏季休暇は、労働基準法において会社に義務付けられた休暇ではありません。
そのため、夏季休暇をなしにすることもまた、会社の自由ではあります。

さらに、夏季休暇を取れるとしても、無給とすることも可能です。
有給の夏季休暇(お盆休み)が、労働者に必ず保証されているわけではありません。

しかし、飲食店、デパート、旅行業など、お盆が忙しい業種はさておき、夏季休暇がまったくないとか、夏季休暇の給料がまったく払われないのは、法律上問題ないとしても一般常識には反するといわざるをえません。

長時間労働で、うつ病、適応障害などのメンタルヘルスにり患したり、過労死といった最悪の結果となる前に、有給休暇を取得したり、リフレッシュ休暇を要求したりといった別の手段を検討してください。

夏季休暇で有給休暇を消化するケース

以上のとおり、今回のテーマの「夏季休暇(お盆休み)に有給休暇(年休)を消化させられる」という会社は、違法なブラック企業の可能性が高く、有給消化を強制されることはないと理解してください。

しかし、一定の場合は、有給休暇の消化が、会社にとっても労働者にとってもメリットとなるため、夏季休暇(お盆休み)に有給休暇を消化するのが許されることがあります。
次に解説する2つの場合、いずれも会社が「一方的に」労働者の有給休暇(年休)を減らすのではないので、労働基準法でも違法にはなりません。

労働者にメリットがあるケース

労働者にとっても、夏季休暇(お盆休み)のために有給休暇を利用した方がよいケースもあります。

例えば、次のような気持ちの方は、積極的に有給休暇をとり、からだを休めるのがおすすめです。

  • 会社が指定する夏季休暇(お盆休み)に続いて、連休をとって旅行に行きたい
  • 観光地が混んでいるお盆シーズンを避けて、別の週に夏季休暇をとりたい
  • お盆が繁忙期でありかき入れ時の業種で、別の週に夏季休暇をとりたい

こんなときには、労働者にとっても、有給休暇を消化して夏季休暇を取得したり、もしくは、延長したりするのがメリットとなります。

計画年休のケース

労働基準法で認められた有給休暇のルールに「有給休暇の計画的付与」の制度があります。
「計画年休」、「計画有給」と呼ぶこともあります。
計画年休の制度は、労働者が取得できる有給休暇のうちの一定日数を、会社の指定する日にとらせることができる制度です。

計画年休の制度を会社が採用しているときは、お盆休み(夏季休暇)のなかでも許される範囲内であれば、会社が労働者に、有給休暇を取得させることができます。

しかし、労働者の権利のはずの有給休暇(年休)を、強制的に使わせるのですから、厳しい要件があります。
要件に違反しているのに強行された計画年休は、やはり違法となり、許されません。

計画年休の要件
  1. 有給休暇の一部のみ
    有給休暇のうち、計画年休にできるのは一部に限られる
    計画的付与が可能なのは「5日を超える分」のみとされている
    つまり、計画年休がとられても、5日は、労働者が自由に利用できる
  2. 書面で定める
    計画年休について、就業規則、もしくは、雇用契約書に定める必要がある
  3. 労使協定
    計画年休について、労使協定を締結する必要がある

勤務する会社が、計画年休を採用しているかどうかは、就業規則を見れば確認できます。
計画年休について定められていたとしても、適法な制度かどうか、労使協定もあわせて確認してください。
問題ある計画年休だと、違法になりますから、したがう必要はありません。

もともと休みの日に有給休暇を使うことはできないですが、既に解説したとおり、「お盆」は法律上休みであることが保証されているわけではありません。

適法な「有給休暇の計画的付与(計画年休)」の制度によって、夏季休暇(お盆休み)が有給休暇(年休)となっている場合、夏季休暇(お盆休み)の日にちをずらすことは、労使ともにできません。

お盆にとる有給休暇は会社から変更される?

有給休暇は、労働基準法で労働者に与えられた権利ですが、会社にもまた、「時季変更権」という権利が認められており、一定の場合には、有給休暇の取得日を、会社が変更することができます。

有給休暇の「時季変更権」は、「会社の事業の正常な運営を妨げる場合」という要件が認められるときに、会社に認められるものです。
有給休暇は労働者の重要な権利なので、会社に「時季変更権」が認められるケースはある程度限られます。

前章でも解説のとおり、夏季休暇(お盆休み)やその前後に有給休暇を取得することには、労働者にとっても大きなメリットがありますから、会社が時季変更権を行使できるのは限定的なケースだと考えられます。

「夏休みで勝手に消化しておいた」という会社は、他の日の有給休暇取得を認めないことも。
有給休暇の取得が拒まれ、円滑にとれないとき、次の解説もご覧ください。

まとめ

今回は、「お盆休み(夏季休暇)なのに、有給休暇(年休)の一部をあてると言われた」という労働者の相談に、弁護士が回答しました。

有給休暇を「とらされた」、「取得を強制された」というケースは、労働基準法違反。
違法なブラック企業といってよいでしょう。

一方で、有給休暇を取った方がよい場合や、計画年休などの場合には、違法とはいえません。
有給休暇と夏季休暇(お盆休み)の関係をしっかり理解し、有給休暇の日数が不当に減らないよう注意してください。

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