「休日」と「休暇」という言葉は、いずれも「労働をしない休みの日である。」という意味では、共通した意味で使われています。
しかし、労働者が会社に対して残業代請求をするときには、「休日」と「休暇」とを区別して理解しておかなければ、せっかく得られるはずの残業代を、請求し忘れてしまうかもしれません。
というのも、「休日」と「休暇」とは、労働法の法律、裁判例においては違うものとされており、賃金計算の際にも、異なった計算方法で算出しなければならず、残業代の金額に差が出ることがあるからです。
今回は、「休日」と「休暇」を区別し、労働問題を考えるときにどのような差が生まれるかについて、労働問題に強い弁護士が解説します。
1. 「休日」と「休暇」の違い
「休日」と「休暇」は、「労働者が労働をしない日」という意味では同じですが、労働法上の扱いは、次のように大きく異なります。まずは、「休日」と「休暇」の定義の違いを理解してください。
- 休日
:労働義務がもともとない日 - 休暇
:本来は労働義務がある日だが、労働義務が免除されている日
その他、「休日」と「休暇」の取り扱いの違いについて、順に弁護士が解説していきます。
1.1. 法律上の義務かどうか
法律上、義務的に労働者に与えられているかどうか、という点でも、「休日」と「休暇」は区別されています。
「休日」は、労働者の心身の健康を守るために、労働基準法(労基法)において、「1週間に1日」もしくは「4週間に4日」を与えることが義務付けられています。
労働基準法35条(休日)
- 使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。
- 前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。
これに対して「休暇」は、会社に対して労働者が申請することによって取得することができるものです。
「年次有給休暇(年休)」「産前産後休暇」「育児休暇」「介護休暇」など、法律で義務付けられているものもありますが、法律で義務付けられておらず、契約によってはじめて与えられる「休暇」もあります。
1.2. 契約上与えられる「休日」、「休暇」
休日は、すでに解説したとおり「1週に1日、もしくは、4週に4日」が労基法の義務とされていますが、一般には「週休2日制」として、次の曜日を「休日」と定めている会社が多いです。
- 土曜、日曜
- 国民の祝日に関する法律に定める日
- その他、会社が指定する日(夏季休暇、年末年始休暇など)
このうち、法律で義務とされている休日を「法定休日」といい、それ以外の休日を「所定休日」といいます。
これに対して、「休暇」には、次のように法律上明確に規定のあるものから、会社が労働者に対して、就業規則などで定めることによって恩恵的に与えているものまで様々な種類があります。また、「休暇」を与える目的も様々です。
- 年次有給休暇
- 産前産後休暇
- 生理休暇
- 育児休暇
- 介護休暇
- 子の看護休暇
- 会社所定の有給休暇
- 慶弔休暇
- 病気休暇
- リフレッシュ休暇など
2. 出勤した場合の残業代が発生する?
では、今回のテーマである、「休日」、「休暇」について、それぞれ出勤した場合に、残業代の計算がどのように違ってくるかを解説します。
残業代の正しい計算方法を理解しておくことによって、残業代請求をするときは、法律で定められた残業代を満額請求するようにしましょう。
2.1. 休日の残業代のルール
「休日」に労働をした場合には、残業代を請求することができるケースが多くありますが、残業代は労基法にしたがって適切な計算方法で算出しなければなりません。
この休日の残業代(休日手当)を計算するときには、「所定休日」の労働と、「法定休日」の労働とで、計算方法が異なるのが一般的です。
まず、「法定休日」、すなわち、「1週1日」の休日に労働をした場合には、通常の賃金の「35%増し」の残業代を支払う必要があります。つまり、1週に1日も休みがない場合には、この休日残業となります。
これに対し、「所定休日」、すなわち、1週間のうちの2日目の休日については、「35%増し」の残業代を支払う必要はなく、「1週40時間」を超える労働となった場合に、通常の賃金の「25%増し」の残業代を支払う必要があるのみです。
休日に労働をさせても、休日手当(残業代)を請求できないことのあるケースとして、「代休」、「振替休日」といった制度がありますが、こちらも制度をきちんと理解し、適切な残業代を請求するようにしましょう。
2.2. 休暇中の賃金のルール
「休暇」について、労働基準法(労基法)で義務付けられている「有給休暇(年休)」については、労働者が申請をすれば取得できるのが原則であり、その他の「休暇」についても、就業規則や雇用契約書でルールが決められています。
しかし、労働者に「休暇」を取得する権利が与えられている場合であっても、有給で休むことが保証されているのは、「有給休暇(年休)」だけです。
これ以外の休暇は、「有給」とするか「無給」とするかは、会社ごとにルールが異なりますので、就業規則や雇用契約書で、働いている会社の休暇制度を確認しましょう。
3. まとめ
今回は、残業代請求をする労働者が理解しておくべき、「休日」と「休暇」の区別と、残業代や賃金を計算するときのルールについて、弁護士が解説しました。
休日に労働したときの残業代計算の方法や、休暇を取得した場合の賃金の計算方法を理解することで、労基法に基づいて計算した残業代を満額請求するようにしましょう。
残業代請求を検討している労働者の方は、労働問題に強い弁護士まで、お早目に法律相談ください。