休日にも労働させられたら、もっと休みがほしいこともあるでしょう。
このとき、働いた休日と勤務日を入れ替えて、休みをもらう方法があります。
それが、振替休日と、代休です。
振替休日と代休とは、休日に出社した分だけ休みをもらえる点は共通します。
しかし、振替休日と代休は違いが多くあり、法的性質はまったく異なります。
特に、残業代請求の点で、両者のいずれかにより計算の方法が変わってきます。
振替休日も代休も、会社の休日(所定休日)、法律上の休日(法定休日)でない日に休みます。
しかし、残業代請求での取り扱いが、2つの制度で異なるのです。
いずれも、労働者側においては、まずはどう扱われるか、就業規則を確認しましょう。
今回は、振替休日と代休の違いについて、労働問題に強い弁護士が解説します。
区別を理解しないと、休日手当の点で損してしまうので注意してください。
- 振替休日と代休の違いを理解し、休日手当で損しない
- 振替休日と代休の違いは、休みを決めるタイミングの前後にある
- 代休のほうが、振替休日より、休日手当分だけ残業代が多くもらえる
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振替休日と代休の違いとは
![振替休日と代休の違い](https://roudou-bengoshi.com/wp-content/uploads/2024/04/furikaekyuujitsu-daikyuu.jpg)
振替休日と代休とでは、それぞれ法的な扱いが異なります。
いずれも、会社が休日と定める日以外の日に休む制度。
ただ、その制度を利用したとき、給料や残業をどう計算するか、処理のルールが異なります。
しっかりと理解しないと、本来請求できるはずの休日手当をもらえず、損してしまいます。
振替休日とは
振替休日は、あらかじめ休日であった日を労働日とし、代わりに、他の労働日を休日とします。
これにより、休日は労働日になり、振り返られた日が休日になります。
この処理を、元々休日だった日が来て、休みをとるよりも前に行います。
振替休日は、休日の振替ともいいます。
元々休日だった日は、労働日となるので、その日に働いても休日労働ではありません。
したがって、休日だった日の労働は、ひるがえって、休日手当が不要となります。
代休とは
代休とは、休日労働をした後で、その代わりに、労働日に休みをとることです。
その名のとおり「代わりに休みをとる」という意味で、「代替休日」とも呼びます。
振替休日とは違って、一旦は、休日の日に労働が発生することとなります。
そのため、労働日と休日の入れ替えは、休みをとった後に起こります。
一度は休日に働いた事実が残るため、その休日労働には休日手当、つまり、残業代がもらえます。
休日手当の請求方法は、次の解説も参考にしてください。
![](https://roudou-bengoshi.com/wp-content/uploads/2016/08/josei-tsurai-4-300x169.jpg)
振替休日と代休は、どう違うのか
![](https://roudou-bengoshi.com/wp-content/uploads/2017/08/josei-green.jpg)
振替休日と代休の、法律上の定義の違いがあることを理解いただけたでしょう。
ただ、実際には、労働の現場で、その違いを理解し、区別して扱うのが大切です。
そのため、どのような点に違いが表れるのか、具体例で解説します。
休みを決めるタイミングの違い
振替休日と代休の違いの1つ目は、休みを決めるタイミングの違いです。
つまり、どのタイミングで休みの日を決めたのかにより、2つの制度が区別されるのです。
具体的には、次のとおりに区別できます。
- 「代休」として処理
→休日出勤をした「後で」、その代わりに休む日にちを決め、休日をとる - 「振替休日」として処理
→休日出勤をする「前に」、あらかじめ振り替えて休む日にちを決め、休日をとる
ちなみに、そもそもの休みが、所定休日でも、法定休日でも、これらのいずれの処理も可能。
どちらの休みでも、休みをつぶされた分の代替はあったほうがよいでしょう。
休日労働が生じるかどうかの違い
振替休日と代休の、決定的な違いは、残業代の計算方法です。
この2つのいずれかにより「休日労働が発生するかどうか」が異なるからです。
振替休日だと、あらかじめ休日を入れ替えています。
なので、元は休日された日に働いていますが休日労働とはならず、休日手当も生じません。
これに対し、代休では、まずは休日とされた日に労働し、その後に代休をとります。
なので、休日労働が発生し、休日手当を請求することができます。
振替休日も代休も、労使間で争いにならないよう、就業規則にルール化されるのが通常。
まずは、勤務先の就業規則を確認してください。
代休は必ず休日労働をともなうので、残業させるための36協定も締結されているはずです。
振替休日をとった場合の給料の計算
![](https://roudou-bengoshi.com/wp-content/uploads/2017/02/keisan.jpg)
振替休日の場合には、休みに労働する前に、その休みが、労働日と入れ替わるわけです。
すると、代休に比べると、残業代の分だけ、請求できる給料は少なくなります。
振替休日をとったときの給料、残業代の処理は、次の順で進めます。
- あらかじめ休日を、労働日に振り替える
- 休日だった日(振り替え後の労働日)に労働する
→したがって、休日労働とはならない - 労働日だった日が振替休日となり、労働義務が免除される
このように、振替休日なら、休日手当は生じないのが基本です。
ただし、振替休日にされた場合にも、残業代請求が可能なケースがあります。
- 振り替えが、同一週でなく、「1週40時間」を超えて労働した
→通常の給料の1.25倍の残業代を請求できる - 振り替えられた労働日に、「1日8時間」を超えて労働した
→通常の給料の1.25倍の残業代を請求できる - 振り返られた労働日に、深夜労働した
→通常の給料の1.25倍(時間外かつ深夜なら1.5倍)の残業代を請求できる
同一週での振り替えでない場合(週を超えて振り替えた場合)の処理は、複雑になります。
労働基準法の法定労働時間は「1日8時間、1週40時間」と、週単位で定めているからです。
したがって、次の週以降にしか振替休日がとれないと、週6日以上の勤務となり、残業代が生じます。
残業代の正しい計算方法は、次に解説しています。
![](https://roudou-bengoshi.com/wp-content/uploads/2016/08/tokeijikan-300x169.jpg)
代休をとった場合の給料の計算
![](https://roudou-bengoshi.com/wp-content/uploads/2022/03/businessman-jikan.jpg)
休日出勤した後で、代替の休日を指定する代休。
この場合には、休日労働が発生し、休日手当をもらえます。
代休をとった場合の給料、残業代の処理は、次の手順で考えます。
- 本来の休日(法定休日ないし所定休日)に、休日労働する
→法定休日なら通常の給料の1.35倍、所定休日なら1.25倍の休日手当がもらえる - 休日出勤を行った代わりに、代休として指定された日の労働義務が免除される
- 代休に休んだ分の給料が控除される
代休を与えられる場合は、一旦は休日出勤するので、休日手当がもらえます。
その休日の労働が、深夜労働(午後10時~午前5時)なら深夜手当も請求できます。
労働時間が、1日8時間を超えるなら、さらに1.25倍の残業代も生じます。
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振替休日、代休を取得する際の注意点
![](https://roudou-bengoshi.com/wp-content/uploads/2018/04/tokei-coffee.jpg)
振替休日も代休も、いずれも通常の休みの処理ではないため、慎重な対処を要します。
いずれであっても、多忙だからこそ起こること。
健康への配慮が足りないようだと、振替休日でも代休でも、被害が生じてしまいます。
取得させる義務があるわけではない
振替休日も代休も、あくまで会社から労働者への配慮です。
つまり、会社が、取得させる義務があるとまではいえません。
振替休日や代休を設定しないならば、その分だけ休日労働が生じ、休日手当をもらえます。
とはいえ、休日労働があまりに積み重なる労働者には、配慮が必要。
健康被害が生じるほど長時間の休日労働があるなら、振替休日や代休をとらせるのが適切です。
代わりに休ませる義務はなものの、安全に配慮すべき義務の一貫といえます。
事後に振り替えると、代休扱いとなる
会社が、振替休日だと扱っていても、法的には代休扱いとなる場合があります。
会社側の立場からすれば、振替休日のほうが休日手当がなくて済み、安上がりです。
しかし、その分、振替休日のほうが早く準備し、労働者に伝える必要があります。
つまり、放置して、休みに働かせ、後から振替休日とするようなことは許されません。
きちんと準備しないかぎり、振替として扱うのは不当です。
なので、休みに働かせた後で、事後に振り替えれば、それは代休扱いとなります。
年間休日が少ないと疑問なとき、次の解説をご覧ください。
振替休日も代休も、早めに消化すべき
多忙な会社では、休日労働が続き、平日も忙しく、振替休日、代休がたまってしまうことも。
ブラック企業だと、できるだけ代わりの休みをとらせないこともあります。
しかし、休みがまったくとれないまま働き続けるのは不当です。
決まった休日はおろか振替休日も代休もなければ、違法な長時間労働となってしまいます。
残業代だけでなく、うつ病や過労死など、労災問題も起こりかねません。
お金の問題だけでなく、下手すれば、生命、身体が危険なわけです。
振替休日であれ代休であれ、制度があるならば、早めに消化するよう心がけてください。
過労死について弁護士に相談する方法は、次に解説します。
![](https://roudou-bengoshi.com/wp-content/uploads/2017/09/tokei-300x169.jpg)
まとめ
![弁護士法人浅野総合法律事務所](https://roudou-bengoshi.com/wp-content/uploads/2022/03/asanosougou-zentai.jpg)
今回は、振替休日と代休の違いについて解説しました。
とても似通った制度であり、計算が複雑になることもあるので、注意してください。
繁忙期だと、どうしても残業や休日出勤を余儀なくされます。
しかし、労働時間が長すぎると、労働者への負担は相当なもの。
休日出勤の代わりに、振替休日や代休などを駆使し、できるだけ休むべきです。
やむをえず、振替休日、代休を利用するとき、それでもなお残業代はもらっておくべきです。
休日が振り返られたときの残業代計算に迷うときは、ぜひ弁護士に相談ください。
- 振替休日と代休の違いを理解し、休日手当で損しない
- 振替休日と代休の違いは、休みを決めるタイミングの前後にある
- 代休のほうが、振替休日より、休日手当分だけ残業代が多くもらえる
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