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浅野 英之
弁護士
弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

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未払い残業代の遅延損害金とは?利率と計算方法について解説

残業代の不払いが長引くと、未払い分をただ受け取るのみでは納得できないでしょう。

弁護士に依頼したり、裁判手続きになったりと費用や手間がかかる場合は、遅延した分の制裁を企業に負わせるために、遅延損害金を請求できます。

残業代の遅延損害金は、本来の支払期日の翌日から発生します(2020年4月1日以降に支払期日が到来した賃金は、在職中は3%の遅延損害金、退職後は14.6%の遅延利息となります)。遅延損害金は、未払いの期間が長いほど増額されるため、不当に支払いを拒み続ける使用者に対する制裁として機能します。遅延損害金を正確に計算して警告することは、実際に損害金を受け取れなくても、未払いを防ぐための有効な策となります。

今回は、残業代の遅延損害金の基本と、その利率や計算方法について、労働問題に強い弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • 残業代の遅延損害金は、不当に支払いを遅らせる企業への有効な対策となる
  • 遅延損害金の利率は、在職中は3%(2020年4月1日以降)、退職後は14.6%
  • 遅延損害金は各給料日の翌日、退職後の遅延利息は退職日の翌日が起算日

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

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残業代の遅延損害金とは

はじめに、残業代の遅延損害金の基本について解説します。

遅延損害金とは、支払い期限までに金銭を支払わなかった場合に、遅延によって生じる損害を補填するための金銭です。法的な義務のある金銭の履行が遅れた分、債務者は追加の支払いを要するため、遅延損害金は制裁(ペナルティ)として機能します。法的には、債務不履行(履行遅滞)による賠償の一環と位置付けられ、元本に一定の利率を乗じて算出されます。

厳密には、在職中の未払いに対して発生するものを「遅延損害金」、退職後の未払いに対して賃確法に基づき発生するものを「遅延利息」と区別して呼ぶことがあります。

残業代は、労働基準法上の法的権利であり、未払いは違法です。

遅延損害金は、労働審判や訴訟などの裁判手続きで請求し、残業代が認められたのに合わせて支払いを命じられるのが通常ですが、裁判に至らない交渉段階でも支払う義務があります。労働者は、本来であれば給料日に受け取るはずだった残業代が遅れたことによる損失を補填するため、必ず遅延損害金を請求しましょう。

残業代請求に強い弁護士に無料相談する方法」の解説

残業代の遅延損害金の利率

次に、遅延損害金の利率について解説します。

残業代の遅延損害金の計算方法と具体例」の通り、遅延損害金は、支払い期限から遅れた「期間」に一定の「利率」をかけて算出します。残業代の遅延損害金の利率は、在職中は3%・5%・6%のいずれか、退職後は14.6%となります。

在職中の利率は年3%・5%・6%のいずれか

在職中の労働者が請求する場合、遅延損害金の利率は以下の通りです。

  • 2020年3月31日以前に支払期日が到来した賃金
    使用者が営利企業(商人)であれば商事法定利率の年6%、それ以外(公益法人など)は年5%が適用されていました。
  • 2020年4月1日以降に支払期日が到来した賃金
    民法改正により商事法定利率が廃止されたため、その後は民事法定利率である年3%が適用されます。

金銭債務の遅滞による損害は、法定利率によって定めます(民法419条)。ただし、2020年4月1日施行の民法改正との関係で、支払期日がその前後いずれかで、適用される利率が異なります。

在職中の遅延損害金の起算日は、各月の賃金支払日の翌日から起算され、月ごとに計算して合計します。労働基準法24条によって賃金は毎月一定期日に支払う必要があり、残業代も「賃金」に含まれるため、毎月の給料日ごとに支払う必要があります。

在職中に残業代請求するときの対処法」の解説

退職後の利率は年14.6%

退職後の遅延損害金(遅延利息)の利率は、年14.6%となります。

退職後は、賃金の支払い確保等に関する法律(賃確法)6条1項に基づき、在職中よりも高い利率となります。退職者の生活基盤を保護し、賃金の早期支払いを促すことが目的とされています。退職後の遅延損害金の起算日は、退職日の翌日となります。その時点における未払い残業代に対し、退職後の高率の遅延損害金が生じ、在職中の遅延損害金とともに請求できます。

退職後に支払期日が到来する賃金については支払日の翌日から起算されること、退職金(退職手当)は14.6%ではなく民法の法定利率が適用されることに注意が必要です。

なお、支払いの遅延が「やむを得ない事由」による場合、その期間中は年14.6%の利率は適用されず、通常の法定利率となります(賃確法6条2項)。具体的には、天災地変による遅延のほか、未払賃金の存否について合理的な理由により裁判所などで争っている場合が含まれます。

残業代の計算方法」の解説

残業代の遅延損害金の計算方法と具体例

請求すべき残業代の遅延損害金の計算方法

次に、残業代の遅延損害金の計算方法について、順に解説します。

在職中の請求の場合は「在職中の遅延損害金」のみですが、退職後の請求の場合は「在職中の遅延損害金」「退職後の遅延損害金(遅延利息)」を合算する必要があります。

STEP

在職中の遅延損害金を各月ごとに計算する

在職中の遅延損害金について、各月の賃金支払日の翌日から起算して、年3%(2020年4月1日以降に支払期日が到来した場合)をかけて計算します。この際、遅延損害金は各月ごとに発生し、それを足し合わせた合計額を請求します。利率は「年利」なので日割り計算となります(年利3% × 遅延日数/365日(閏年は366日))

なお、計算が複雑になることを避けるため、便宜的に、最後の給与日から起算した遅延損害金のみ請求するケースもあります。

STEP

退職後の遅延損害金を計算する

退職後の遅延損害金(遅延利息)について、退職日の翌日から起算して、年14.6%をかけて計算します。退職後の遅延損害金(遅延利息)の利率も「年利」なので日割りで計算します(年利14.6% × 遅延日数/365日(閏年は366日))

未払い残業代の元本、在職中の遅延損害金、退職後の遅延損害金(遅延利息)を全て合計したものが、最終的に会社に請求すべき金額となります。

STEP

付加金の支払いを求める

付加金は、労働基準法114条に基づき、裁判所が労働者の請求に応じて、未払いの割増賃金等と同額の範囲内で支払を命じることができる金銭です。裁判所が命じた場合に生じるもので、必ず得られるとは限りません(「遅延損害金と付加金の違い」参照)。

なお、付加金についても遅延損害金が発生しますが、残業代の元本とは扱いが異なり、判決確定日の翌日から起算し、民事法定利率(現在は3%)の利率となります。退職後も、付加金に対しては賃確法の14.6%は適用されません。

残業代請求の解決期間」の解説

具体例とシミュレーション

残業代の遅延損害金について、具体例でシミュレーションしてみましょう。簡単な例で解説しますが、自分の場合にあてはめて計算する参考にしてください。

事案
  • 未払い残業代(1月分12万円、2月分20万円、3月分15万円)
  • 退職日:4月末日
  • 給料日:25日締め、月末払い
  • 遅延損害金の利率:在職中3%、退職後14.6%

→ 争った結果、5月末日に残業代の支払いを受けられた場合の遅延損害金

上記の事案で、前章に解説したステップに従ったシミュレーションは次の通りです。

まず、各月ごとに、在職中の残業代の遅延損害金を計算します。

  • 1月分残業代の在職中の遅延損害金
    12万円 × 3% ×(28日+31日+30日)/365日 = 878円
  • 2月分残業代の在職中の遅延損害金
    20万円 × 3% ×(31日+30日)/365日 = 1003円
  • 3月分残業代の在職中の遅延損害金
    15万円 × 3% × 30日/365日 = 370円

退職後の遅延損害金についても、別途計算します。

  • 47万円 × 14.6% × 31日/365日 = 5,828円

以上のことから、最終的な請求額は、47万8,079円となります。

残業代請求の裁判例」の解説

残業代の遅延損害金を請求する方法

遅延損害金は、賃金を適時に受け取れなかった損失の補填なので、労働者の権利を守るために必ず請求すべきです。遅延損害金は、残業代とまとめて請求するため、同じ流れで進めます。

交渉段階の場合

内容証明で送付する「残業代の請求書」には、未払い残業代の元本とともに、支払日の予定と遅延損害金を記載してください。

「私は会社に対し、未払い残業代として金500万円を請求します。仮に、20XX年XX月XX日に支払う場合、遅延損害金としてXX万円を追加で支払うよう求めます」

ただし、交渉で早期解決を目指す場合、遅延損害金はあくまで早く支払ってもらうためのプレッシャーと位置づけ、必ず満額支払わせることに固執すべきではありません。次のように記載し、「法的措置に移行した場合は遅延損害金についても譲歩しない」と警告するのが効果的です。

「未払い残業代を、本書面の到達から10日以内に支払うよう求めます。

期限内に支払いも回答もない場合は法的措置に移行します。その場合、法律に従って計算した遅延損害金、遅延利息、付加金をあわせて請求することを申し添えます」

労働審判・訴訟の場合

交渉では解決しない場合、労働審判や訴訟といった裁判手続きに進みます。

労働審判中の調停や、訴訟中の和解が成立することがありますが、これらは互いの譲歩が必要なので、労働者側では遅延損害金を含めない合意とすることが多いです。ただし、訴訟で争った場合の判決を予想し、不利な和解にならないように注意してください。訴訟であれば残業代を満額得られる可能性が高いと考えられるケースでは、譲歩する必要はありません。

残業代請求の勝率」の解説

遅延損害金と付加金の違い

残業代の未払いが悪質な場合、遅延損害金に加え、付加金を得ることもできます。

付加金とは、一定の金銭未払いについて、裁判所がそれと同額を限度として支払いを命じることができる金銭です(その結果、支払額は最高で2倍となります)。付加金は、解雇予告手当、休業手当、年次有給休暇中の賃金のほか、割増賃金(残業代)にも発生します(労働基準法114条)。

付加金は、遅延損害金とは性質が異なり、裁判所が訴訟の判決で支払いを命じることで初めて発生する点が特徴です。そのため、必ず支払われるわけではありません。また、付加金の金額も、裁判所がその悪質さの度合いに応じて決定します。

残業代の付加金」の解説

残業代の遅延損害金を請求する際の注意点

最後に、残業代の遅延損害金を請求する際の注意点を解説します。

残業代請求には時効がある

未払い残業代を請求する権利には、法律で定められた消滅時効が存在します。

現在の労働基準法では、支払日から3年が経過すると、時効により残業代は請求できなくなります。元本が時効消滅すれば、付随する遅延損害金も請求できません。時効の完成が迫る場合、内容証明を利用して会社に請求の意思を伝えることで、時効の進行を一時的に止めることが可能です。

未払いの事実に気づいた場合は決して放置せず、早急に正確な計算を行い、会社へ請求の手続きを始める必要があります。

残業代請求の時効」の解説

遅延損害金は戦略的に請求する

遅延損害金は単なる補填ではなく、交渉を有利に進めるための武器となります。

不当な反論で引き延ばそうとしても、遅延損害金を請求すれば、時間が経過するほど支払額が増えるため、会社にリスクを感じさせやすくなります。合理的に判断できる会社なら、裁判所が認めないような反論に時間を使うことはやめ、誠実に対応することが期待できます。

また、実際の和解交渉では、遅延損害金を上乗せすることで請求額を増やし、譲歩の余地が作れるメリットがあります。和解を成立させるには労働者側でも譲歩が必要なところ、「交渉段階でまとまるなら遅延損害金の請求は放棄する」という提案が可能です。

残業代の和解金の相場」の解説

複雑な計算や会社との交渉は弁護士に任せる

会社が誠実な対応をしない場合、残業代請求には手間と時間がかかります。

遅延損害金は、未払い残業代が発生した給料日の翌日から起算して、日割りで金額が日々変動します。そのため、長期にわたる未払い分を正確に計算するのは労力がかかります。また、労働者本人が請求して取り合ってもらえなくても、弁護士に依頼することで「裁判手続きを行う意志が固い」という姿勢を示し、誠実な対応を促すことができます。

弁護士に依頼すれば、煩雑な計算や裁判手続きを代行してもらえるだけでなく、会社に強いプレッシャーをかけ、交渉段階でも適正な金額を引き出しやすくなります。

労働問題に強い弁護士の選び方」の解説

【まとめ】残業代の遅延損害金

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、未払い残業代の遅延損害金について解説しました。

遅延損害金は、本来支払うべき金銭が遅滞した場合のペナルティを意味するもので、悪質な残業代未払いを防ぐのに非常に有効です。労働審判や訴訟になった際には遅延損害金を請求すると警告することで、交渉による任意の支払いを促すことができます。

残業代の元本とともに請求すべき金銭には、遅延損害金、遅延利息、付加金がありますが、いずれも早期の解決を目指すための重要な交渉材料となります。必ずしも全て得られなくても、残業代の請求書や労働審判の申立書、訴状に記載しておくだけで、プレッシャーを与えられます。

残業代の未払いが続き、会社の対応が不誠実なら、ぜひ弁護士に相談してください。

この解説のポイント
  • 残業代の遅延損害金は、不当に支払いを遅らせる企業への有効な対策となる
  • 遅延損害金の利率は、在職中は3%(2020年4月1日以降)、退職後は14.6%
  • 遅延損害金は各月の給料日の翌日、退職後の遅延利息は退職日の翌日が起算日

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