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浅野 英之
弁護士
弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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深夜残業とは?定義と深夜手当の計算方法や割増率を詳しく解説

繁忙期には遅くまで残業することもあるでしょうが、夜10時を超え、朝の5時までの労働は「深夜残業」となり、1.5倍の割増率による残業代(深夜残業手当)がもらえます(深夜かつ時間外の場合)。

残業が深夜に及べば労働が長くなるのは当然。睡眠も取りづらく負担は過大です。飲食店SEなどの労働集約型ビジネスほど、働く時間は長くなりがちです。深夜まで働くのを「美徳」とするベンチャーも多いですが、終電もなくタクシー帰り、オフィス泊といった働き方は異常です。

深夜残業が常態化すると生活リズムは崩れ、身体的、精神的な負担が大きくなります。このとき、深夜に働いた対価、つまり、深夜手当の請求は必須です。深夜残業の対価を請求して損を減らすと共に、長すぎる深夜残業に歯止めをかけることができるからです。

今回は、深夜残業の定義、深夜手当の計算方法と割増率について、労働問題に強い弁護士が解説します。正しい知識を着け、泣き寝入りせず、受け取るべき金銭を請求しましょう。

この解説のポイント
  • 深夜残業は、午後10時から翌午前5時までの深夜労働、かつ、1日8時間を超える残業
  • 深夜残業は、通常の賃金の1.5倍(50%割増)の残業代を請求できる
    (深夜労働分の25%割増 + 時間外労働分の25%割増)
  • 深夜残業の辛さから、年少者や女性、育児介護をする人は制限される

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

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深夜残業とは?何時から何時までの残業?

深夜残業とは

まず、深夜残業の基礎知識を解説します。

午後10時から翌午前5時までの労働は深夜労働となる

法律にいう「深夜」は、その時間帯によって明確に定義されており、具体的には、午後10時から翌午前5時の労働が、深夜労働です(労働基準法37条4項)。深夜労働については、通常の賃金を25%割増した深夜手当を支払う必要があります。

深夜残業(深夜労働かつ残業)だと割増率が加算される

深夜残業とは、深夜労働であり、かつ、残業である労働のことです。つまり、深夜残業は、深夜時間帯(午後10時から翌午前5時)の残業です。深夜時間帯でも「1日8時間、1週40時間」を超えて働いた時間は「残業」であり、「深夜労働」と「残業」が重なり合って「深夜残業」になるのです。

前章の通り、深夜労働には通常の賃金を25%割増した深夜手当が払われるところ、「1日8時間、1週40時間」を超える残業にも25%割増した残業代を払う必要があります。その結果、深夜残業(深夜労働かつ残業)だと割増率が加算され、50%割増(25%+25%)した深夜残業手当が払われます。

深夜労働
:深夜時間帯(午後10時から翌午前5時)の労働

残業(時間外労働)
:時間外労働(1日8時間、1週40時間を超える労働)、休日労働

深夜残業

深夜残業もまた残業の一種なので、原則として違法であり、ただし、36協定を締結し、適正な残業代が払われるなら例外的に適法となります。

深夜残業について、次のような違法な処遇を相談されることがあります。

  • 深夜残業したのにその対価が全く払われていない。
  • 深夜残業の割増率の計算が間違っている。
  • 深夜残業について固定の残業代しか払われず、その額が少ない。

このような扱いをする会社は、深夜残業手当の計算方法を誤っている可能性があり、労働者が正確に計算して請求しなければ損してしまいます。少なくとも、深夜残業は相当な負担であり、給料が変わらないなら違法な未払いの生じている可能性が高いです。

年少者や妊婦の深夜労働は制限される

満18才に満たない年少者は、労働基準法61条1項によって深夜労働が禁止されています。したがって、未成年に深夜残業をさせるのは違法です(交替制によって使用する満16才以上の男性など、一定の例外があります)。

女性については平成11年3月までは深夜労働が禁止されていましたが、男女の雇用機会の均等を目指す法改正によって撤廃され、平成11年4月以降は、女性でも深夜労働は可能です。ただし、母性に配慮し、労働基準法66条によって、妊娠中や、出産後1年以内の労働者は、労働者の請求がある場合には深夜労働させることはできません。

なお、女性に深夜残業させる場合、男性にも増して配慮を要します。例えば、次の通りです。

  • 防犯のため、複数名の勤務とする
  • セクハラ防止のため密室に二人きりにさせない
  • 女性専用の休憩室、仮眠室を用意する
  • トイレを男女別にする

配慮の足りない会社は、労働者の職場環境に配慮し、安全を守るべき義務に反するといえ、残業代以外に、慰謝料請求も検討すべきです(安全配慮義務違反・職場環境配慮義務違反)。

育児や介護を理由に深夜残業を拒否できる

育児や介護を、仕事と両立するのは大変な苦労です。まして、残業が深夜に及ぶケースでは、仕事を辞めざるを得ないことも。このような事態に備え、育児介護休業法は、育児・介護を理由とした深夜残業の拒否を認めています。

具体的には、小学校就学前の子を養育している場合、要介護状態にある家族を介護している場合には、会社に請求し、深夜残業を拒否することができます(育児介護休業法19条、20条)。ただし、雇用期間が1年未満であったり、同居の家族が育児・介護できる場合であったりすると、この条項の対象外のため注意が必要です。

育児介護休業法 第八章(深夜業の制限)

育児介護休業法19条

1. 事業主は、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者であって次の各号のいずれにも該当しないものが当該子を養育するために請求した場合においては、午後十時から午前五時までの間(以下この条及び第二十条の二において「深夜」という。)において労働させてはならない。ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は、この限りでない
一 当該事業主に引き続き雇用された期間が一年に満たない労働者
二 当該請求に係る深夜において、常態として当該子を保育することができる当該子の同居の家族その他の厚生労働省令で定める者がいる場合における当該労働者
三 前二号に掲げるもののほか、当該請求をできないこととすることについて合理的な理由があると認められる労働者として厚生労働省令で定めるもの

2. 前項の規定による請求は、厚生労働省令で定めるところにより、その期間中は深夜において労働させてはならないこととなる一の期間(一月以上六月以内の期間に限る。第四項において「制限期間」という。)について、その初日(以下この条において「制限開始予定日」という。)及び末日(同項において「制限終了予定日」という。)とする日を明らかにして、制限開始予定日の一月前までにしなければならない。

3. 第一項の規定による請求がされた後制限開始予定日とされた日の前日までに、子の死亡その他の労働者が当該請求に係る子の養育をしないこととなった事由として厚生労働省令で定める事由が生じたときは、当該請求は、されなかったものとみなす。この場合において、労働者は、その事業主に対して、当該事由が生じた旨を遅滞なく通知しなければならない。

4. 次の各号に掲げるいずれかの事情が生じた場合には、制限期間は、当該事情が生じた日(第三号に掲げる事情が生じた場合にあっては、その前日)に終了する。
一 制限終了予定日とされた日の前日までに、子の死亡その他の労働者が第一項の規定による請求に係る子を養育しないこととなった事由として厚生労働省令で定める事由が生じたこと。
二 制限終了予定日とされた日の前日までに、第一項の規定による請求に係る子が小学校就学の始期に達したこと。
三 制限終了予定日とされた日までに、第一項の規定による請求をした労働者について、労働基準法第六十五条第一項若しくは第二項の規定により休業する期間、育児休業期間、出生時育児休業期間又は介護休業期間が始まったこと。

5. 第三項後段の規定は、前項第一号の厚生労働省令で定める事由が生じた場合について準用する。

育児介護休業法20条

1 前条第一項から第三項まで及び第四項(第二号を除く。)の規定は、要介護状態にある対象家族を介護する労働者について準用する。この場合において、同条第一項中「当該子を養育する」とあるのは「当該対象家族を介護する」と、同項第二号中「子」とあるのは「対象家族」と、「保育」とあるのは「介護」と、同条第三項及び第四項第一号中「子」とあるのは「対象家族」と、「養育」とあるのは「介護」と読み替えるものとする。

2. 前条第三項後段の規定は、前項において準用する同条第四項第一号の厚生労働省令で定める事由が生じた場合について準用する。

育児介護休業法20条の2

事業主は、労働者が第十九条第一項(前条第一項において準用する場合を含む。以下この条において同じ。)の規定による請求をし、又は第十九条第一項の規定により当該事業主が当該請求をした労働者について深夜において労働させてはならない場合に当該労働者が深夜において労働しなかったことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

育児介護休業法(e-Gov法令検索)

深夜残業の割増賃金(深夜残業手当)の計算方法

残業代の計算方法

深夜残業をしたら、深夜残業手当をもらうことができます。

深夜残業は、深夜労働かつ残業のため、一般の残業よりも高い割増率が適用されます。給料明細を見ているだけでは、正当な支払いかどうかがわからず、深夜残業手当をもらい損ねてしまうケースもあります。会社の故意の場合は当然、不注意でも、本来受け取れる深夜残業代を正確に計算して、必ず請求すべきです。

そのために、深夜残業手当の計算方法の解説をよく理解してください。深夜の残業代も、一般の残業代の計算方法と同じであり、次の計算式によって算出します。

  • 残業代 = 基礎単価(基礎賃金/月平均所定労働時間) × 割増率 × 残業時間

以下では、深夜残業手当に特有の、計算式の注意点について、各項目ごとに解説します。

残業代の計算方法」の解説

残業代の基礎単価を計算する

まず、残業代の基礎単価を計算する点は、一般的な残業代と同じです。つまり、月給制の場合、基本給と手当て(除外賃金を除く)を、月平均所定労働時間で割ったものが、基礎単価となります。わかりやすくいえば基礎単価は、時間に対する対価であり、時給に似たものと考えてよいでしょう。

割増率の計算:深夜割増と時間外割増や休日割増を加算する

残業代の割増率

上記の計算式のうち、深夜残業では割増率の計算が重要なポイントです。深夜割増だけでなく、その他の割増率を加算して、高い率を適用する必要がある場合も多いからです。

深夜労働かつ時間外の場合

深夜労働であり、かつ、時間外労働の場合の割増率は1.5倍(50%割増)です。深夜労働による深夜割増(25%)と、時間外割増(25%)を加算するためです。この場合を特に「深夜残業」と呼びます。

深夜労働だが所定労働時間内の場合

これに対して、所定労働時間が深夜帯の場合には、深夜だが時間内の労働(つまり、残業ではない)ということになります。このとき、適用される割増率は深夜割増(25%)のみとなります。

深夜労働かつ法定休日の休日出勤の場合

法定休日における深夜労働の場合には、休日割増(35%)と深夜割増(25%)が加算され、その割増率は1.6倍(60%割増)となります。休日出勤による割増があっても、その日に深夜労働をすれば、更に割増率が加算されていくわけです。

固定残業代のある場合の深夜の残業代の計算

固定残業代やみなし残業手当が払われている場合、深夜残業でもらえる残業代がその分だけ減る可能性があります。ただし、固定残業代が有効となるには①通常の賃金と残業代部分とが明確に区分され、②固定残業代に相当する時間を超えた残業がある場合には差額を払う必要があるとするのが裁判例です。

固定残業代を払う会社の多くは、時間外割増賃金は払っていても深夜残業手当は払っておらず、少なくとも深夜の割増分25%は別途算出して支給すべきケースが少なくありません。

労働者としては、次の2点について就業規則で必ず確認してください。

  • 固定残業代が「深夜残業のために払われる」と明示されているか
  • 深夜残業手当を計算し、固定残業代を超えていないか

固定残業代があっても深夜残業のために払われているわけではなかったり、「深夜手当」などの名称で少額の支給があっても、正確に深夜残業手当を計算するとその額を超えてしまっていたりする場合、いわゆる固定残業代が払われてもなお、深夜残業の対価を追加で払う必要があります。

固定残業代の計算方法」「みなし残業」の解説

管理職でも深夜の残業代は支払われるが計算方法に注意する

深夜残業をした場合には、たとえ管理職でも残業代を請求できます。この点について「管理職は深夜に働いても残業代が払われない」という誤解があるため、詳しく解説します。

まず、「管理職だから」という理由で残業代が払われないのは違法です。正確には、労働基準法41条2号にいう「監督若しくは管理の地位にある者」(いわゆる管理監督者)に該当して初めて、残業代の支払義務を逃れることができるに過ぎません。そうでないのに会社が管理職扱いして残業代を払わないのは「名ばかり管理職」と呼ばれる労働トラブルであり、違法です。

更に、たとえ管理監督者に該当する場合であっても深夜労働についての25%割増分は支給されます。つまり、深夜残業とは「深夜労働」かつ「時間外」であり、管理監督者だと時間外分の25%の割増賃金は支給されないものの、深夜労働分の25%(深夜手当)は変わらず支給されます。

したがって「管理職だから深夜の残業代は支給しない」と言われたら、次の手順で、違法性がないかチェックしてください。

  • 働基準法41条2号の管理監督者に該当するか
    →該当しなければ名ばかり管理職であり、残業代を払わないのは違法
  • 管理監督者に該当するなら時間外分は不要だが、深夜労働分は払われているか
    →時間外分(25%)は不要だが深夜労働分(25%)は管理監督者でも必要
名ばかり管理職とは

なお、役員の場合には、雇用されている「労働者」(労働基準法9条)ではないため、深夜遅くに残業したとしても深夜残業にはなりません。ただし、役員とは名ばかりでその実態は労働者である、いわゆる名ばかり役員の場合には、深夜残業についての残業代を請求できます。

管理職と管理監督者の違い」「名ばかり管理職」の解説

未払いの深夜残業代を請求する方法

次に、深夜の残業代を請求する方法を解説します。深夜残業に対し、正当な対価が支払われない事態を防ぐべく、厳しく残業代請求しましょう。

在職中であっても、なるべく早期に残業代の請求をしましょう。会社が残業代請求を理由に不利益に扱うのは違法です。深夜残業を我慢して続け、うつ病などに罹患する危険もあります。

深夜残業をできるだけ減らす

まず、深夜も残業代を請求できるとはいえ、深夜残業は可能な限り減らすべきです。

残業代目当てに不要な残業をする問題ある労働者もいます。上司が監督していないのをいいことに、夜遅くまで不必要に残るのは不適切です。会社に証拠を掴まれれば、残業代がもらえないだけでなく、コストのかかる無能社員として解雇される危険もあります。

深夜まで残業しないと明らかに終わらないほどの仕事量を与える問題ある会社でもない限り、業務効率化を徹底し、スピーディに仕事をすれば、深夜残業は減らせる場合が多いでしょう。

  • 夜遅くでなく朝早く出社して生産性を上げる
  • 1日の始めにスケジュールを立てる
  • 「○時までに終わらせる」と仕事に期限を設ける
  • 優先順位を付け、翌日で良い仕事は後回しにする

労働者の仕事に向かう姿勢次第で、深夜残業はある程度は減らせます。ただし、これら努力が報われるのは、残業して頑張る労働者に精一杯配慮してくれる会社に限られます。深夜残業が減らせず辛いと感じたら、退職、転職を目指し、残業代請求の準備をしておいた方がよいでしょう。

残業代請求に強い弁護士への無料相談」の解説

深夜残業の証拠を集める

深夜の残業代を請求するには、深夜残業をした事実を証明する必要があります。一般に、残業の証拠となる資料には、タイムカードや業務日報などがあります。深夜残業は隠されやすいですが、証拠が少なくてもあきらめてはいけません。

深夜の残業代を請求するとき、特に証拠として活用できるのは次のものです。

  • タイムカード
  • 業務日報
  • 深夜残業後に帰宅した際のタクシーの領収書
  • 深夜遅くまでパソコン作業していたPCのログ履歴
  • 深夜遅くに送ったメールの送受信記録、チャットの履歴など
  • 深夜にオフィスで撮影した時計の写真

深夜の残業代が未払いな会社では、労働時間の管理もずさんになりがちです。遵法意識の低い会社に任せていては、不正確な金額となってしまいます。また、業務量が多く、自宅で深夜まで作業をした場合、さらに証拠は残りづらいもの。深夜に働かされる都度、証拠を確保する努力が必要です。

残業の証拠」の解説

交渉から労働審判、訴訟の方法を段階的に進める

残業代請求の流れ

深夜の残業代を会社に請求するとき、まずは交渉での解決を目指します。弁護士から内容証明の請求書を送り、話し合いを行います。いきなり法的手続きに進まずとも、任意に払ってもらえる可能性おまるからです。

もし、請求の時点で証拠が少なくても、請求書には深夜残業の概算を記載し、反論を待ちます。交渉が決裂した場合には、労働審判、訴訟といった手段を検討します。労働審判はおよそ3ヶ月程度の期間を要しますが、訴訟より迅速に解決できます。残業代未払いの請求を検討されている方は、労働問題に精通した弁護士に、ぜひご相談ください。

労働審判で残業代を請求する流れ」の解説

深夜残業に関する注意点

次に、深夜残業に特有の法的問題について、注意すべきポイントを解説します。

深夜残業時のタクシー代の扱い

深夜残業で終電を逃しても、タクシー代は出ないのが原則。会社近辺で寝泊まりせざるを得ないときのホテル代も同じく自腹が基本です。深夜残業しても、あくまで労働の対価として残業代がもらえるに過ぎません(そもそも労働基準法には、通勤交通費の支払い義務すらありません)。

ただ、深夜残業が常態化し、このような自腹のタクシー代が嵩んでは生活を圧迫してしまいます。違法な残業に付き合うことなく、深夜残業を命令されたら、経費に加算することが可能か、事前に確認しておきましょう。

仕事で終電に間に合わない時の対応」の解説

深夜残業における休憩の考え方

休憩時間は、労働者にとって、疲労を回復し、業務を効率化するのに必要不可欠です。そのため、労働基準法34条は休憩のルールを定め、違反する会社には、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます(労働基準法119条)。深夜残業は長時間かつ深夜帯の労働で、特に労働者の負担が大きいため、休憩が適切に与えられる必要があります。

労働基準法34条は、労働時間が6時間を超える場合には45分、8時間を超える場合には1時間の休憩を、労働の途中に与えなければならないと定めます。しかし、深夜残業が長い場合、これでは不十分なことがあります。このとき、単に1時間の休憩をとらせるのみでなく、安全配慮義務の観点から、深夜残業をする労働者の心身に無理のないよう配慮をしなければ、違法となる可能性が高いです。

使用者の指揮命令下に置かれた時間が、法律上の「労働時間」となります。

労働時間の定義

労働時間の定義」の解説

深夜残業における仮眠時間の考え方

深夜残業となると、宿泊を伴う場合があります。

当直や宿直のある医療現場でも、深夜残業がよく生じます。宿直や当直などといった深夜の労働は、仮眠を前提とする場合が少なくありません。このとき、仮眠が満足に取れればよいですが、実際は眠ることができず仕事をせざるを得ないとき、その仮眠時間は労働時間であり、深夜残業となります。

仮眠時間として設けられても、自由に過ごすことができず、緊急対応など、業務をせざるを得ないなら、それは残業時間と評価されます。

仮眠時間が労働時間にあたるか」の解説

深夜残業についてのよくある質問

最後に、深夜残業についてのよくある質問に回答しておきます。

深夜残業は法定時間外残業になる?

残業のうち、「1日8時間、1週40時間」の法定労働時間を超える残業を「法定外残業(法定時間外残業)」、これを超えないが所定労働時間(会社が定める労働時間を超える場合)を「所定時間外労働(法定時間内残業)」を呼びます。例えば、1日7時間30分労働の会社では、7時間30分から8時間までが法定内残業、8時間を超える分が法定外残業となります。

深夜残業は、法定内残業、法定外残業のいずれでも発生する可能性があります。深夜残業は、残業をする時間帯による定義であり、法定労働時間の内外を問わず、午後10時から翌午前5時までの労働は、深夜労働となるからです。

フレックスタイム制でも深夜残業は発生する?

フレックスタイム制でも深夜に労働した場合には深夜手当を払う必要があり、通常の賃金の25%割り増した深夜割増賃金を払う必要があります。

一方で、フレックスタイム制だと1日の労働時間が8時間を超えても、清算期間内において労働時間が調整されれば残業にはなりません。そのため、深夜帯に働いた労働が、深夜残業(深夜労働+時間外労働)とはならない可能性があります。

派遣でも深夜残業は発生する?

派遣社員でも、深夜に残業をした場合には深夜残業となり、残業代請求が可能です。深夜残業は、雇用形態を問わず発生するため、正社員に限りません。

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、深夜残業について、法律の基礎知識を解説しました。

働き方改革により、残業を厳しくチェックする会社は増えました。しかし、企業風土が変わらず、ブラックな働き方をさせる会社もあり、深夜残業せざるを得ない労働者は今なお多いもの。業界や業種によって事情があり、締切り間近など、一時的な深夜残業は仕方ない面もあります。しかし、深夜残業が常態化すれば、心身の悪影響は大きいです。違法な深夜残業で損しないよう、深夜労働した分の残業代は必ず請求しましょう。

労働基準法は、深夜残業について1.5倍の特別の割増率を設けます(深夜かつ時間外の場合)。それだけ深夜の労働が大変で、長時間になるのを防ぐ必要があるからです。会社との関係を気遣う前に、自分の身を守らねばなりません。

深夜残業の残業代請求を検討されている方は、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

この解説のポイント
  • 深夜残業は、午後10時から翌午前5時までの深夜労働、かつ、1日8時間を超える残業
  • 深夜残業は、通常の賃金の1.5倍(50%割増)の残業代を請求できる
    (深夜労働分の25%割増 + 時間外労働分の25%割増)
  • 深夜残業の辛さから、年少者や女性、育児介護をする人は制限される

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