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残業代の計算方法は?いくらの残業代を請求できるか、簡単に知る方法

残業代を請求するとき、損しないためには、正確な計算方法を知る必要があります。

労働者の法律知識が十分でないと、会社の計算方法が合っているか、判断できなくなってしまいます。
会社の反論によって、残業代が不当に減らされていることも少なくありません。

相談者

残業代は払われるが、少し足りない気がする

相談者

長時間働いている割に、残業代が減っている

残業代を正確に計算できれば、わざと少なく計算して支払いを逃れようとする会社に反論できます。
残業代の計算方法は複雑で、会社の計算方法は、労働者に著しく不利なものであるおそれもあります。

ざっくりとした計算であきらめてしまうのはもったいないこと。
法律上、正しい計算方法は、会社が示すやり方とは違うこともあります。
本解説を参考に、順に計算すれば、大体の残業代金額がわかり、会社の支払いが正しいか判断できます。

今回は、残業代の計算方法について、その基本を、労働問題に強い弁護士が解説します。

目次(クリックで移動)

解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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残業代の計算式とは

まず、残業代の計算方法の基本について解説します。
残業代は、次の計算式で算出されます。

  • 残業代 = 単価/月平均所定労働時間 × 割増率 × 残業時間

この計算式に、それぞれ必要な情報をあてはめれば、正しい残業代を計算できます。
そこで、残業代の計算式にあてはめるべき

の4つの要素を知り、正確に計算しなければなりません。

なお、実際に残業代を請求するときは、それぞれの要素について証拠が必要です。
交渉で残業代が払われないなら、労働審判、裁判の場では、証拠なしには認定されないためです。

残業代請求に要する証拠について、次の解説をご覧ください。

残業代の「単価」の計算方法

まず、残業代を計算する際に検討すべき、「単価」の計算方法について解説します。

残業代の「単価」とは、時間に対して払われる給料

残業代の「単価」は、給料全体のうち、時間に対して払われる給料のことを指します。
基礎単価とも呼びます。

残業代は、働いた時間に応じて得られる対価。
そのため、いくらの残業代をもらえるか計算する際には、「時間に対して払われる給料」のみ考慮すべきで、それ以外の基準にしたがって払われるものは考慮すべきではありません。

「時間に対して払われる給料」は、残業すればそれだけ多く払われるのに対し、労働時間ではなくその他の根拠に基づき払われるお金は、どれほど長く働いても、労働時間に比例せず、多く払われるべきではないのです。
例えば、福利厚生的な意味合いのお金は、労働時間の長さによらず一定額の支給とすべきです。

このとき、時間に対して払われる給料が「単価」となり、それ以外のものが「除外賃金」です。
したがって、残業代の単価を知るには、次に解説する除外賃金を理解する必要があります。

  • 単価 = 給料 − 除外賃金

除外賃金とは

除外賃金とは、給料のうち、時間に応じて払われているわけではないお金のこと。

給料は、基本給と手当に分けて支給されるのが通例です。
このうち、基本給は、所定労働時間だけ働く対価です。
つまり、「時間に応じて払われる給料」であり、働く時間が長くなればなるほど比例して増えていくべき性質です。

一方、手当のなかには、労働時間にかかわらず、一定であるべき性質のものもあります。
こんな手当は、残業代の単価から除外すべきであり、「除外賃金」と呼ばれる
のです。

労働基準法及び同法施行規則には、除外賃金について次の定めがあります。

労働基準法37条5項

割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。

労働基準法(e-Gov法令検索)

労働基準法施行規則21条

労働基準法第37条第5項の規定によって、家族手当及び通勤手当のほか、次に掲げる賃金は、同条第1項 及び第4項 の割増賃金の基礎となる賃金には算入しない。

・別居手当
・子女教育手当
・住居手当
・臨時に支払われた賃金
・1ヶ月を越える期間ごとに支払われる賃金

家庭の事情に応じて払われる給料、毎月払われない給料などは、残業代の単価から除外すべきとなります。

例えば、除外賃金にあてはまる手当は、次のものです。

  • 家族手当
  • 通勤手当
  • 別居手当
  • 子ども手当
  • 住宅手当
  • 賞与(ボーナス)
  • 退職金
  • 3ヶ月に1度払われる歩合給(インセンティブ)

なお、その手当の名称だけで判断されるわけではありません。
「時間に対して払われる性質かどうか」という点から実質的な判断を要します。

例えば、名称が「住宅手当」だと形式的には除外賃金です。
しかし、住宅手当が除外賃金になるのは、「住居を有しているか、家賃がいくらか」といった労働時間とは無関係の理由によって支給の有無や金額が異なるためです。

そのため、「住宅手当」という名称でも、全社員一律に支給される手当だったとき、時間に対して払われているのと同じとみられ、残業代の単価の計算上、除外賃金にはあたらないとされます。

「月平均所定労働時間」の計算方法

前章で解説した残業代の「単価」を、「月平均所定労働時間」で割り、いわゆる時給を算出します。
つまり、あなたが現在の給料で1時間働いたときに得られる給料がわかります。

給料制度には、月給、日給、時給など、さまざまな定め方があります。
残業代の計算は、それぞれの定め方に応じた時給を割り出すのが基本となります。

所定労働時間とは、会社が働くことを定めている時間。
つまり、始業時刻から終業時刻までの間の時間(休憩時間を除く)のことです。
「月平均」で算出するのは、労働日や休日の定め方によって残業代が変わらないようにするためです。
そのため、正確に計算するためには、会社の1年の労働日を知る必要があります。

会社から、労働日のカレンダーが得られれば、それに基づいて計算します。
労働日を知ることができないときは、労働基準法にしたがって計算します。
このとき、月平均所定労働時間は一般的に次のように算出できます。

  • うるう年でない場合:173.8時間
    月平均所定労働時間 = (365日/7日) ×40時間 ÷ 12ヶ月
  • うるう年の場合:174.2時間
    月平均所定労働時間 = (366日/7日) ×40時間 ÷ 12ヶ月

労働基準法は、労働者保護のための強行法規とされています。
そのため、労働基準法にしたがったルールよりも労働者に不利な定めは違法であり、無効です。

残業代請求では、労働者よりも会社のほうが、持っている情報が多いもの。
そのため、正確な計算は、会社のほうですべきです。
したがって、労働者としては、まずは労働基準法にしたがった概算をして、これに対して、「正確な情報によればその請求額よりも残業代が少なくなるはずだ」というのであれば、その旨を会社側が反論するという流れになります。

適切に残業代請求のために、まずは弁護士への無料相談がおすすめです。

残業代の「割増率」の考え方について

「単価/月平均所定労働時間」により、時給を割り出した後は、これに対して、残業の種類に応じた「割増率」をかけ、残業時間をかけることで、残業代を算出できます。

割増率は、残業の種類に応じて、通常の賃金よりも多く支払うべき割合のことです。
残業は、例外的なものなので、通常の賃金よりも一定割合だけ割増された額を払う必要があるからです。
割増率は、労働基準法において、次のとおり定められています。

残業の種類割増率
時間外労働25%
時間外労働(60時間超)50%
休日労働35%
深夜労働25%
時間外+深夜50%
休日+深夜60%

通常の賃金より割増しなければならないのは、残業代には残業抑制の意味合いもあるからです。
より多くの経済的負担を会社に負わせることは、できるだけ残業をなくす効果があるのです。
そのため、労働基準法に定められた率を下回る割増率を定めることはできません。
(なお、上表は下限であり、労働基準法を越える割増率を定めることは可能です。)

60時間を越える残業についての50%の割増率は、中小企業への適用は猶予されていましたが、現在では、企業規模を問わず適用されています。

1ヶ月80時間を越える残業は、「過労死ライン」と呼ばれます。
その意味は、これ以上の労働を継続して死亡したとき、業務に起因すると評価されるということ。

つまり、残業代が払われていても、あまりに長い労働は違法なのです。
過労死ラインについて、次の解説もご覧ください。

「残業時間」の考え方について

残業代を正しく計算するには、どんな時間が「残業時間」にあたるか知る必要があります。

ここまでの解説により算出された残業1時間あたりの単価に、残業時間をかけることで残業代を算出しますが、このとき、残業時間が多いほうが、残業代が増額できるのは当然。
会社では残業時間と扱われていない時間も、法的には残業時間にあたることがあります。

残業時間を立証する責任は、労働者側にあります。
そのため、どの時間が残業時間なのかは、労働者が判断せねばならず、会社の言うなりではいけません。

残業時間にあたる時間には、次のものがあります。

  • 1日8時間を越える労働時間
    労働基準法に定められた「1日8時間」という法定労働時間を越える時間。
    終業時刻後の残業だけでなく、始業時刻前の早出残業も含む。
  • 1週40時間を越える労働時間
    労働基準法に定められた「1週40時間」という法定労働時間を越える時間。
    すでに計算した1日8時間を越える時間と重なる部分は、差し引く必要あり。
  • 所定労働時間を越える労働時間
    法定労働時間よりも短い時間を会社が定めていると、所定時間以降も残業となる。
    このときの割増率は、会社の定めたルールにしたがう。
  • 深夜労働
    深夜労働とは、午後10時〜午前5時までの労働のこと。
  • 休日労働
    「1週1日または4週4日」の法定休日の労働のこと。
    法定休日は1週1日で足りるため、週休2日制なら1日は法定休日でなく所定休日。
    割増率について法定休日労働は35%、所定休日労働は25%と区別される。

典型的な残業時間に加え、休憩時間でも実際は休憩がとれなければ残業代請求できる場合があります。

同じく、仮眠時間着替え時間社内行事にかかる時間、自宅での持ち帰り残業などもまた、「使用者の指揮命令下にある」と評価できるときには、労働時間となり、残業代支払いの対象となります。

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、残業代の計算式と、その考え方の基本を解説しました。
正しく計算すれば、会社に残業代請求できる金額を増やすことができます。

残業代は、労働基準法にいう「賃金」であり、1ヶ月ごとに払う必要があります。
そして、残業代の時効は3年です。
3年以上働く方なら、1ヶ月経過ごとに、本来もらえるはずの残業代が時効で消滅します。
速やかに残業代を計算し、請求に着手することもまた、もらえる残業代を増やすポイントです。

より正確に残業代を計算し、少しでも増額したいなら、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

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