副業(ダブルワーク)をはじめ、多様な働き方が推奨されています。
今後は、本業を定時退社した後で、副業で働く労働者も増えることでしょう。
テレワークなど、副業しやすい環境づくりも進んでいます。
副業するとき、気になる問題が、「副業の残業代」です。
1つの会社の給料だけで生活する人は、定時以降の残業には、残業代がもらえます。
しかし、2つ以上の仕事をしている労働者も、長時間労働は抑制されねばなりません。
副業で生計を立てる人も、残業代をもらい損ねないよう、注意を要します。
副業や、ダブルワークだと、他社の労働時間を通算して、残業代を計算すべき場合があります。
このとき、残業代の計算方法や、請求先を知っておく必要があります。
今回は、副業(ダブルワーク)の残業代について、労働問題に強い弁護士が解説します。
【残業代とは】
【労働時間とは】
【残業の証拠】
【残業代の相談窓口】
【残業代請求の方法】
副業も「労働時間」に含まれる
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副業は、趣味、ボランティアのようなイメージでしているかもしれません。
副業は、本業より優先されないケースだからです。
(これに対し、2つの会社に平等に尽くすのをダブルワークと呼ぶことがあります。)
しかし、働いているなら、副業でもダブルワークでも「労働時間」に含みます。
労働時間とは、労働法の分野では「使用者の指揮命令下に置かれた時間」を指します。
労働者が、副業といえど、誰かの指示を受けて働いているなら、それは「労働時間」です。
このことは、本業の使用者とは、別の使用者だったとしても同じこと。
したがって、副業の時間も「労働時間」となるのですから、残業に含まれることとなります。
つまり、決められた時間を超えて長く働けば、副業でも残業となり、残業代が発生するのです。
なお、会社によっては副業が禁止、許可制のことがあります。
しかし、憲法で「職業選択の自由」が定められます。
これからわかるとおり、副業は本来、労働者の自由に任されています。
会社は、企業秩序を乱すような一定の副業を禁止できますが、あくまで例外です。
労働時間の考え方は、次に詳しく解説しています。
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副業の残業代は、本業と通算する
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本業と副業の2つ以上の会社で働くとき、残業代については特殊な配慮を要します。
副業の残業代では、労働時間が本業と通算されます。
このことは、労働基準法38条1項に、次のように定められます。
労働基準法38条1項
労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。
労働基準法(e-Gov法令検索)
「事業所を異にする」の典型例は、1つの会社で、複数の事業所を移動しながら働くケース。
しかしそれだけでなく、本業と副業、別の会社で働く場合もこれに含まれるのです。
「1日8時間、1週40時間」の法定労働時間を超えて働くと、1.25倍の割増賃金を請求できます。
例えば、本業で9時間働けば、本業に1時間の残業が生じます。
一方、本業で8時間働き、副業であと2時間働くときにも、通算すると10時間の労働。
つまり、2時間分は、法定労働時間を超えており、残業代が生じるのです。
副業の残業代の計算方法
残業代の発生する時間には、一般に、次の3種類があります。
これらはいずれも、1社で働く場合だけでなく、副業の場合も同じことです。
なので副業でも、休日や深夜に働けば、それぞれ休日手当、深夜手当などの残業代が払われます。
そして、2社以上で働く労働者は、その労働時間を通算することができると説明しました。
したがって、働くすべての会社の労働時間を足し合わせ、残業時間を把握する必要があります。
その他の残業代の計算方法は、一般の計算式と変わりありません。
つまり、基礎単価に、労働時間ごとに定まった割増率をかけ、残業時間をかければ残業代を計算できます。
![残業代の計算方法](https://roudou-bengoshi.com/wp-content/uploads/2024/03/zangyoudaikeisanhouhou.jpg)
「残業代の計算方法」の解説
![](https://roudou-bengoshi.com/wp-content/uploads/2016/08/tokeijikan-300x169.jpg)
副業の残業代の請求先
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副業やダブルワークで残業代を請求するとき、その請求先が問題となります。
つまり、本業と副業、どちらの会社に残業代を払う義務があるのか、という点です。
後から労働契約を結んだ会社(副業)
副業の残業代の請求先は、「後から労働契約を結んだ会社に請求する」のが原則です。
後から労働契約を結んだ会社は、他に勤める会社があると知って雇用するからです。
副業だと明らかにして働くなら、副業の会社は、本業の労働時間も把握しなければなりません。
副業人材は、通常より安価だったり、経験豊富だったりといったメリットがあります。
その反面、副業として雇う会社には、残業代が発生するリスクがあるのです。
多くの場合は、副業のほうが、後から雇用する会社になることが多いでしょう。
したがって、まず、副業の会社に対して、残業代請求するようにしてください。
先に残業させた会社(本業)
ただ、そもそも本業の会社が先に「1日8時間」を超えて働かせると、本業が請求先となります。
このとき、「どちらが先に8時間を超えて働かせたか」が基準。
労働契約を締結した順番の前後は、関係しません。
1日のうち、先に本業で働き、その終了後に副業している人が多いでしょう。
なので、この基準からすれば、先に残業させた本業のほうに、残業代を請求することになります。
残業代請求の疑問は、無料相談で解消できます。
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副業の残業代を請求する時の注意点
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最後に、副業の残業代を請求するとき、注意すべきポイントを解説します。
「副業も残業代が発生する」という知識を理解しない会社に、労働者の正しい権利を主張しましょう。
副業していると会社に伝える
まず、副業の残業代を獲得するには、副業していると会社に伝えなければなりません。
現在、本業には内緒で副業しているとき、残業代のためにも会社に通知しましょう。
ただ、後ろめたい副業や、会社で禁止された副業だと、ハードルの高いこともあるでしょう。
そのため、内緒の副業のまま残業代を請求するのは、難しいといわざるをえません。
気遣いのいらない退職時まで請求を留保するなら、残業代の時効(3年)にご注意ください。
ただ、昨今では副業は当たり前のものとなっています。
会社に嘘をついても、住民税の支払いなどの機会に発覚してしまう危険があります。
副業の残業代が発生しない場合がある
例外的に、副業の残業代が発生しない場合があります。
(以下は、副業でも本業でもいえるものの、特に副業でこれらの制度が顕著にあてはまるもの。)
副業の働き方が、裁量が多く、拘束されないなら、そもそも「労働者」でないかもしれません。
副業が、「労働者」ではなく業務委託の個人事業主なら、残業代は発生しません。
副業が個人事業主なら、そもそも労働基準法が適用されないからです。
「本業が会社員、副業でフリーランス」というケースが典型です。
また、副業の仕事が、役員として名前を貸すだけだったり、時間的・場所的な裁量が大きく収入もある程度保障された、いわゆる「管理監督者」に該当するような仕事だったときにも、副業の残業代は生じません。
以上の残業代が発生しないケースにつき、次の解説を参考にしてください。
有給休暇で副業してもよい
有給休暇をとって副業するなら、残業代についての心配はいりません。
むしろ、有給休暇なら、休みをとっている間、本業からも給料をもらうことができます。
いわば「二重取り」になるものが、有給休暇は労働者を保護する権利であり、問題ありません。
本業の会社は、有給休暇中に副業するのを止めることはできないのが原則。
有給休暇は、労働者に自由な利用が保障されているからです。
例外的に、副業を禁止にしようとも、休み中なら業務への支障は小さく、禁止できるケースは例外的といえます。
有給休暇の取得について、次に解説します。
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まとめ
![弁護士法人浅野総合法律事務所](https://roudou-bengoshi.com/wp-content/uploads/2022/03/asanosougou-zentai.jpg)
今回は、昨今増えている副業について、残業代の観点から解説しました。
副業やダブルワークで働く労働者は、正しく残業代をもらえていないことがあります。
その請求先や計算方法を知らなければ、未払い残業代をもらいそこねてしまいます。
副業で働くほどの人は、モチベーションも高く、残業代が未払いでも我慢してしまいがちです。
未払い残業代を請求したい方は、ぜひ一度弁護士に相談ください。
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【労働時間とは】
【残業の証拠】
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【残業代請求の方法】