労働問題弁護士ガイドとは?

タイムカードを改ざんされたら違法!労働基準監督署に告発する方法を解説

今回は、違法なタイムカードの改ざんと、労働者側の対抗手段を、労働問題に強い弁護士が解説します。

残業代請求をするとき、最重要の証拠がタイムカード。
タイムカードの改ざんが起こると、正しい残業代が計算できず損してしまいます。

タイムカードや給与明細の記載が、実際の残業時間より短かいとき、改ざんを疑うべきかも。
残業代を少しでも減らそうとするブラック企業では、タイムカードが実態と違うなど日常茶飯事です。

相談者

長時間労働したのに残業代がまったく増えない

相談者

給与明細の残業代の計算が、適正でないのでは

こんなとき、タイムカードの改ざんを疑いましょう。
タイムカードを違法に修正して、残業時間をこっそり減らされているかもしれません。
タイムカードの改ざんは、残業のもみ消しであり、違法なのは当然です。

せっかく夜遅くまで残業して貢献しても、もみ消されれば頑張りが無にされ、報われません。
労働者側でタイムカードの改ざんに対抗するには、こちらでも証拠収集を徹底し、泣き寝入りせずに残業代請求する手が有効です。

この解説のポイント
  • タイムカードの改ざんは違法であり、民事、刑事のいずれの責任もある
  • タイムカードの改ざんは罪になり、私文書偽造罪のほか、残業代未払いにも刑罰あり
  • 不正に残業時間を減らされたとき、残業代請求とともに、労働基準監督署に告発する

\ 「今すぐ」相談予約はコチラ/

目次(クリックで移動)

解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

\相談ご予約受付中です/

タイムカードの改ざんは違法

タイムカードは、残業代請求のシーンで、残業時間を証明する証拠に使われます。
タイムカードは、会社側が、労働時間の把握のために導入するのですから、そこに打刻された時間だけ働いていたことは、労使間で合意されているといってよく、とても証拠価値の高いものです。

タイムカードの重要性から、タイムカードさえ改ざんすれば、労働者側に有利な証拠はいっきに弱まります。
よくあるタイムカードの改ざんの方法に、次の例があります。

いずれのケースも、タイムカード改ざんは、残業代未払いをまねく点で、違法なのがあきらかです。
タイムカードの改ざんは、つまり、労働時間の改ざんにつながり、最終的に残業時間の改ざん、そして、残業代の違法な未払いへとつながるからです。

タイムカード改ざんの問題点
タイムカード改ざんの問題点

会社がタイムカードを改ざんする例

1つ目のケースが、会社がタイムカードを改ざんしてくる例です。
例えば「店長に、勝手にタイムカードを終業時刻で押されていた」、「タイムカードがないが、出勤簿は上司が適当につけ、正しい残業時間ではない」といったケース。
「社長の指示でタイムカードがまとめて改ざんされた」など、改ざんが会社ぐるみでされる例もあります

こんなケースでは、正しい残業時間が反映されず、残業代の未払いが生じます。

手書きでタイムカードを書きかえられた例

タイムカードは本来、打刻によって、労働時間を正確に把握できる点に強みがあります。
しかしタイムカードの打刻を忘れてしまったり、正しい時間に押せなかったりすることたまにはあるもの。

このとき、タイムカードを手書きで修正する会社が多いですが、修正するにあたって、真実とは異なった労働時間を手書きで書き加えることによって、タイムカードを改ざんしてくる会社があります。

労働者側でタイムカードを手書きで修正せざるをえないときも、残業代請求の証拠としては有効。

給料明細が偽造された例

タイムカードで把握された残業時間は給与明細に書かれ、その時間数に応じた残業代を計算するのが通常。
しかし、タイムカードを改ざんして残業を減らそうとする会社では、給料明細も偽造されることがあります。

給料明細が偽造されるのは、給料のごまかし。
本来発生しているはずの給料や残業代を払わないのは、給料未払いであり、違法です。

未払いの給料を払ってもらう方法は、次の解説をご覧ください。

タイムカードを改ざんされたときに対抗する方法

タイムカードを改ざんされ労働時間を減らされてしまったとき、次のステップで対応してください。

今回解説するとおり、タイムカードの改ざんは違法であり、罪にもなります。
「働いた時間と給料が違う」というとき、労働者へのダメージはとても深刻。
労働者側で対抗するときには、民事責任刑事責任の両面から、会社の責任を問いましょう。

タイムカードの開示請求をする

まず、タイムカードの改ざんが疑わしいとき、できるだけ早くタイムカードをチェックしなければなりません。
そのために、タイムカードの開示請求をしましょう。
改ざんに後ろめたい会社は、タイムカードを隠して見せてくれず、最悪はタイムカードが破棄されるおそれも。

労働者側で残業時間を証明しなければならないので、早くタイムカードを入手し、証拠保全が必要です。
改ざんが不安視されるブラック企業では、偽造、改ざんの時間的余裕を与えてはなりません。

残業代請求よりも前に、タイムカードの開示請求の段階から弁護士を依頼し、プレッシャーをかけてもらうことでスムーズな開示が期待できます。

タイムカードの開示請求を速やかに進めるため、次の解説をご覧ください。

タイムカード改ざんの証拠を集める

まず、タイムカードの改ざんが疑われるときにも、その証拠を確保しなければなりません。
改ざんが明らかにならなければ、民事、刑事ともに責任追及は困難です。
残業代の未払いが違法だと知っているブラック企業では特に、タイムカードの改ざんは、こっそりと隠れて行われますから、明るみに出すためには証拠が重要です。

真実の労働時間を、労働者自身が記録しておけば、タイムカードがそれよりも明らかに少ないとき、会社側が違法に改ざんしたことを証明することができます。
労働者もまた、会社のタイムカードまかせではなく、自分で証拠を集める努力をせねばならないのです。

タイムカードの改ざんで労働時間を減らされたとき、真実の労働時間を証明するために次の証拠が役立ちます。

  • 出勤簿
  • 業務日報、月報、日誌
  • パソコンのログイン、ログアウトの履歴
  • パソコンのメール送受信履歴
  • LINEやチャットの会話履歴
  • 交通系ICカードの利用履歴
  • GPS(位置情報)の移動履歴
  • 家族に送った帰宅メール、LINE
  • 出勤・退勤時刻について手書きのメモ
  • 日記
  • スケジュール帳、カレンダー

タイムカード改ざんに備えた証拠集めのポイントは、証拠を複数確保することです。
タイムカードはかなり強い証拠価値があり、タイムカードさえ正確ならそれでよいという場合もありますが、それ以外の証拠は、より正確に労働時間を知るためには、いくつか集めておくのがよいでしょう。

複数の証拠があれば、それとタイムカードの矛盾点を突き、改ざんをわかりやすく説明できます。

残業代を概算する

本来、残業時間は、会社が把握しなければなりません。
会社は、労働時間を管理、把握し、適切な残業代を払うのが、法律上の義務だからです。
そして、タイムカードはそのためにあります。

タイムカードを改ざんする会社で、残業代請求の証拠がそろいづらいのはしかたありません。
労働者側で一生懸命努力しても、タイムカードほど良い証拠は確保できないでしょう。

こんなケースでは、残業代の計算は、あくまで概算で構いません。
タイムカードが正確なら、厳密な計算ができるのですが、そのタイムカードが不正なのは会社の改ざんのせい。
改ざんのせいで大雑把な残業代しかわからないなら、概算でも裁判所はある程度労働者を保護してくれます。

むしろ、概算で請求した残業代が間違いだと主張する会社は、その反論の根拠を示すべきです。
ただ、タイムカードが改ざんされたものだと、会社の反論にも役立ちません。

残業代の計算方法について、次の解説で詳しく紹介しています。

未払い残業代を請求する

ある程度の証拠によって残業代が概算できたら、残業代を請求します。

まずは、内容証明で請求書を送って交渉しますが、タイムカードを改ざんしてまで残業代を払いたくない会社は、誠実な交渉をしてくれるとは期待できません。
このとき、労働審判、裁判といった法的手続きによって、裁判所で解決するのがおすすめです。

残業代請求の時効は3年のため、早めに請求しなければなりません。

自分ひとりでは会社との交渉が難航するとき、弁護士に無料相談するのがよいでしょう。

労働基準監督署に告発する

タイムカード改ざんの刑事責任を追及するためには、労働基準監督署に告発する手が有効です。

労働基準監督署は、労働基準法のように刑事罰のついた労働法への違反をなくすため、会社を監督する行政機関であり、刑事責任の追及をするときにはとても有効です。
労働基準監督署は、警察と同等の権限をもち、労働法違反について逮捕・送検する権限があります。

労働基準監督署に通報すると、その後、タイムカード改ざんについて臨検、調査してくれ、違法を見つけたときは注意指導、是正勧告などで会社に警告を発してくれることが期待できます。

なお、労働問題を軽く見られると、労働基準監督署が動いてくれないことがあります。
救済されるべき残業代未払いの件で、労働基準監督署を動かすためにも、次の解説をあわせて参考にしてください。

タイムカードの改ざんは罪になる

タイムカードが改ざんされ、せっかく早朝から深夜まで残業したのに残業代が払われないと、やるせない気持ちでいっぱいになることでしょう。
こんなタイムカードの改ざんは、単に違法なだけでなく、罪にもなります。
つまり、刑事責任が追及できるのです。

タイムカードを改ざんして残業をもみ消したブラック企業には、民事責任だけでなく、刑事責任の追及が有効。
不正な改ざん行為が、刑法上違法となることと、どんな罪なのかを解説します。

タイムカード改ざんの法的責任
タイムカード改ざんの法的責任

私文書偽造罪

残業時間を減らすためにタイムカードを改ざんする行為は、私文書偽造罪(刑法159条)にあたります。

私文書偽造罪は、行政機関の作成する公的文書以外の「私文書」を偽造することで成立する罪です。
私文書偽造罪を犯すと、他人の印章・署名で私文書を偽造したときは「5年以下の懲役」、印章・署名のない私文書の偽造なら「1年以下の懲役または10万円以下の罰金」の刑に処せられます。
(タイムカードは、印章・署名のない私文書のことが多いでしょう)

電磁的記録不正作出罪

紙のタイムカードではなく、勤怠記録がクラウド上でデータ管理されるとき、データの偽造は電磁的記録不正作出罪(刑法161条の2)です。

電磁的記録不正作出罪を犯すと、「5年以下の懲役または50万円以下の罰金」の刑に処せられます。

労働基準法違反にも刑事罰あり

タイムカードを改ざんすることで労働時間を真実よりも短くされたとき、こんな悪質な手口によって残業がもみ消され、適正な残業代が払われなかったことを意味します。
このとき、会社は労働基準法違反の責任を負いますが、残業代の未払いでは労働基準法にも刑事罰があります。

残業代の未払いは、労働基準法119条で「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」の刑に処されます。

公訴時効に注意する

以上のとおり、タイムカードの改ざんと、これによる残業のもみ消しは犯罪です。
しかし、刑事責任を追及することができる期間には制限があります。
この制限のことを、法律用語で「公訴時効」といいます。

各犯罪の公訴時効は、刑罰の重さによって、次のとおりです。
公訴時効までに告訴しなければ、罪として逮捕してもらったり捜査を開始してもらったりできません。

スクロールできます
罪名公訴時効最高刑
私文書偽造罪(刑法159条)5年5年以下の懲役
電磁的記録不正作出罪(刑法161条の2)5年5年以下の懲役

残業代の未払いで社長を逮捕してもらうには、次の解説を参考にしてください。

違法なタイムカードの改ざんに対応するときの注意点

最後に、違法なタイムカード改ざんに、労働者側が対応するときの注意点を解説します。

勤怠データの改ざんも罪になる

打刻式のタイムカードでなく、オンライン上のクラウドシステムで労務管理する会社もあります。
このとき、残業時間は、紙のタイムカードではなく勤怠データとして記録、保存されます。

勤怠データだったとしても、改ざんされれば残業代が減るのに変わりありません。
データの改ざんも罪になり、電磁的記録不正作出罪(刑法161条の2)として「5年以下の懲役または50万円以下の罰金」に処せられます。

タイムカードなら修正、書き直しの跡が残りますが、勤怠データだと改ざんが容易になるおそれも。
特に、信頼できる会社の勤怠管理アプリではなく、自社でエクセル管理をしている会社などでは、勤怠データの改ざんは、タイムカードに比べてもはるかに簡単です。

会社が、残業時間をデータで管理し、データを違法に改ざんして残業代を減らしてくるとき、労働者も残業時間を把握するスマホアプリなどで証拠を取得するのがおすすめです。

タイムカードのない会社では、出勤簿・給料明細の改ざんに注意

タイムカードの改ざんはおろか、そもそもタイムカード自体がない会社もあります。
タイムカードは法律上の義務ではないものの、会社は労働時間を把握しなければならず、問題ある会社だとタイムカード以外の方法できちんと労務管理ができているのか、甚だ疑問です。

そして、タイムカードのない会社だと、出勤簿や業務日誌で労働時間を把握したり、給料明細にそのまま残業時間を書き込んだりしているケースが多いですが、このとき、出勤簿や給料明細が改ざんされていないかにも注意が必要です。

給料明細にも、そもそも時間が書いていないときは、残業代の正しい計算方法を理解して、働いた時間と給料があっているか、自分で計算しなければなりません。

タイムカード改ざんで詐欺罪にならないよう注意

ここまでは会社が違法にタイムカードを改ざんしたときの問題点ですが、最後に、労働者がタイムカードを修正することが、違法な改ざん行為にあたる危険について解説します。

労働者がタイムカードを修正するのは珍しくありませんが、正しく修正しなければなりません。
タイムカードを間違って修正し、労働時間を長めに申告すると、残業時間が増え、実際よりも多くの残業代をもらってしまうことを意味します。

嘘のタイムカードで残業代をもらうのは詐欺罪(刑法246条)にあたり、「10年以下の懲役」に処せられます。
また、懲戒処分や解雇のおそれもあります。

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、タイムカードを改ざんし、労働時間を短くされてしまったときの対応について解説しました。

タイムカードの修正、書き直し、不正打刻など、残業代をもみ消すブラック企業の手口は多彩かつ悪質。
対抗手段をしらなければ、残業代をもらえず泣き寝入りしてしまいます。

タイムカードの改ざんは違法ですから、労働基準監督署に告発し、あわせて、弁護士に相談して残業代請求するといった対抗策をとってください。
この際、正しいタイムカードがない分だけ、不正をあばくには証拠が重要です。
タイムカードの改ざんに不安を感じる方は、労働時間の証拠収集について弁護士のアドバイスをお聞きください。

この解説のポイント
  • タイムカードの改ざんは違法であり、民事、刑事のいずれの責任もある
  • タイムカードの改ざんは罪になり、私文書偽造罪のほか、残業代未払いにも刑罰あり
  • 不正に残業時間を減らされたとき、残業代請求とともに、労働基準監督署に告発する

\ 「今すぐ」相談予約はコチラ/

よかったらシェアしてください!
目次(クリックで移動)
閉じる