労働問題弁護士ガイドとは?

給料の未払いが生じたら、きちんと払ってもらうため知っておくべきこと

まともな会社に勤めていると、給料の未払いなど想像つかないかもしれません。
そして「給料を払わないなら、働かない」という方が多いのではないでしょうか。
しかし、ブラック企業だと、想定外のことがよく起こります。

働けど、労働した分すら給料が払われないのでは、労働者保護に欠けてしまいます。

相談者

少額な計算ミスなので、言い出しづらい

相談者

約束と少し違う。しっかり払ってほしい

今後も会社にいつづけるなら、「給料を払ってくれ」と面と向かってはなかなか言いづらいでしょう。
しかし、未払いのまま放置すれば、「少しくらい給料が未払いでもいいのか」と軽くみられてしまいます。

会社が倒産したり、給料の時効が来たりすると、払ってもらえなくなってしまいます。
未払いとなった給料を請求するのは、働いた時間の正当な対価です。
後ろめたい気持ちを抱く必要は、まったくありません。

未払いとなっている給料があるなら、速やかに請求しなければなりません。
今回は、未払い給料を払ってもらいたい労働者が知るべき法律知識について、労働問題に強い弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • 給料の未払いが疑われるとき、まずは理由を確認し、証拠を集める
  • 給料の未払いを解消するには、内容証明を送った後、裁判手続きを検討する
  • 給料の未払いを弁護士に依頼するとき、弁護士費用を見積もり、採算があうか調べる

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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給料の未払いは、泣き寝入りしてはいけない

給料の未払いは、雇用契約における約束を破る、悪質な行為。
泣き寝入りしてはいけません。

給料の未払いは、ただの約束違反ではなく、立派な犯罪です。
つまり、刑事罰がつくほどの、悪質性の高い行為なのです。
具体的には、給料の未払いは、労働基準法24条違反であり、「30万円以下の罰金」という刑罰が定められています(労働基準法120条1号)。

給料の未払いが犯罪なら、給料を払わない社長は「犯罪者」。
このことをよく理解し、おそれることなく、会社に未払いの給料を請求してください。

給料は、労働者の生活の糧となる、とても大切なお金です。
そのため、給料すら未払いにしてしまうということは、非常に悪質な行為であり、労働者保護が必須です。
残業代や賞与、退職金など、その他のお金についても払われなければならないのは当然ですが、なにをおいても給料が最重要であり、最も手厚く保護されています。

給料の未払いは、刑罰があるため、労働基準監督署の管轄です。
労働基準監督署に告発すれば、逮捕、送検され、ひいては起訴されることとなります。

ただし、労働基準監督署は、弁護士とは異なり、未払いの給料を回収してはくれません。

給料の未払いで、社長を逮捕してもらうには、どんな罪かを知る必要があります。

給料が未払いとなっている証拠を集めるのが大切

「給料が足りないのでは?」と思うとき、まずは給料が未払いなのを明らかにする必要があります。
給料が足りないからといって、無策で救済されるわけではありません。

ブラック企業だと、給料を未払いにしながら、強硬に反論してくる例もあります。
労働審判や裁判などの手続きで請求せねばならないなら、まず証拠を準備しなければなりません。

給料の未払いのあるケースで、労働者が準備したい証拠は、次の3つです。

裁判手続きでは、証拠のない事実は、なかったものとして扱われます。
証拠がなければ、労働者にとって不利な判断が下ってしまうのです。

雇用契約の内容についての証拠

払うべき給料の金額は、雇用契約で定められています。
つまり、会社と労働者の約束によって決まるのです。

そのため、雇用契約の内容について証拠を準備して、「いくら払うと約束したか」を証明します。
未払いとなった給料を正確に請求するには、金額・締日・支払日の3点を証明する必要があります。

雇用契約の内容についての証拠では、次の3つが重要です。

  • 労働条件通知書
  • 雇用契約書
  • 就業規則

給料は、労働者にとって、最重要の労働条件です。
そのため、入社時に、その金額や支払い方法について、書面で明示するのが会社の義務です。
証拠がなく、給料の額がわからないなら、会社の義務違反があります。

とはいえ、会社の管理不足で、どうしても上記の証拠が用意できないこともあります。
このとき、次の証拠もあわせて、給料額が明らかにできないか検討してください。

  • 求人票
  • 内定書
  • 給料明細

雇用契約書と就業規則の内容が違うとき、次の解説をご覧ください。

労働をしたことの証拠

雇用契約では、労働者が労務提供し、会社はその対価として給料を払います。
つまり、「いくらの給料を約束していたか」とあわせて、労働者が約束どおりに働いていたことの証拠を用意しておかなければなりません。

労働していなかったなら、給料を払う必要はなくなります。
このことを、法律用語で「ノーワークノーペイの原則」といいます。

労働者が、決められた労働をしていた証拠には、次のものがあります。

  • タイムカード
  • 出勤簿
  • 業務日誌
  • 日報、週報
  • 業務報告のメールやチャット
  • 業務用PCのログ履歴

労働していたことをあらわす最も重要な証拠が、タイムカード。
タイムカードで、始業と終業の打刻がされていれば、その間は労働していた証拠となります。

むしろ、会社には、労働時間を把握する義務があります。
そのため、「タイムカードどおりに働いてはいなかった」と反論するならば、どれほどの時間だけ労働していたのか、会社が証明する必要があります。

手元にないとき、タイムカードを開示請求する方法も有効です。

給料が未払いとなっている証拠

最後に、給料が未払いになっていることを証明する証拠です。

法的には、給料のトラブルでは「給料を払ったこと」を会社が証明すべきであり、「給料を払っていないこと」を労働者が証明する責任はありません。
念のため、労働者側でも、正しい給料が払われていない証拠を集めておきます。

給与が未払いとなっていることの証拠には、次のものがあります。

  • 給料明細
  • 源泉徴収票
  • 給料口座の取引履歴

給料の一部だけが未払いのときは、いくら払われていないのかも確認しておく必要があります。

給料の未払いが生じたら、請求する方法

次に、給料の未払いが生じているとき、請求するための具体的な方法について、順に説明します。

未払いの給料の請求は、会社がどれほど強硬に抵抗するにより、ステップに分けて進めていきます。

給料の計算間違いでないか確認する

まず、給料が少ないと感じるとき、すぐに会社の悪意を疑わないようにしてください。
もしかしたら、次のようなミスが原因なら、確認すればすぐに払ってもらえるでしょう。

  • 給料の計算が間違っていた
  • 人事や経理にミスがあった
  • 給料を払ったつもりでいたが、忘れていた
  • 振込手続きがうまくできていなかった

事務処理にミスがなかったか、担当者にすぐ確認するようにしましょう。

給料の計算ミスが疑わしいとき、残業代の計算方法も参考になります。

給料が未払いとなった理由を聞く

次に、給料が未払いとなった理由について、会社に聞くようにします。

未払いが発覚した直後は、まだ会社の意図が明らかではありません。
社長に直接請求して、会社の態度を探らなければなりません。
まだ「給料の払い忘れだった」、「忙しくて間に合わなかった」などの可能性も残されています。

行き違いがあったり、誤解があったりして、よく話し合えば払ってもらえるなら、法的手続きを利用すると大事にしてしまう危険があります。

給料が未払いとなっている理由が、給料が減らされたこと、つまり「減給」だったときは、その理由についても確認しておいてください。

同意のない減給は、認められないのが基本。
減給されたときの正しい対応は、次の解説をご覧ください。

内容証明で給料を請求する

給料の未払いが、会社の責任だったとき、いよいよ会社と戦う覚悟をしなければなりません。
このとき、口頭で請求だけでなく、会社に本気度を示すため、書面でするようにしてください。

給料を請求する書面のタイトルは、「賃金支払請求書」などとし、未払い給料を請求する意思を明らかにします。
文例は、例えば次のようなもの。

賃金支払請求書

20XX年XX月XX日

○○株式会社
代表取締役 XXXX殿

貴社の○○部に所属するXXXXと申します。
私の本年X月分給料(本年X月X日払い分)について、まだ支払いがなされておりません。
生活に必要となる大切なお金なので、速やかにお支払いいただけますよう、強く要求します。

なお、本書面到達から○日経っても、給料が未払いのままであるときは、法的手続きによって請求します。

以上

このとき、将来に裁判手続きで証拠とするために、内容証明を活用するのがお勧め。
内容証明なら、送付日、送付した内容を郵便局が証拠化してくれます。
加えて、強いプレッシャーをかけることができ、払ってもらえる可能性を上げることができます。

社長の感情が理由で、「給料を払いたくない」と思われていたとき、あなたが本気度を示して強く請求すれば、「今後、裁判になって大事になってはいけない」と感じ、給料を払ってもらえる可能性があります。

残業代請求の通知書は、次の例も参考にしてください。

裁判手続きで給料を請求する

交渉では、会社が未払いの給料を払ってくれないとき、裁判手続きを利用して請求するしかありません。

給料の未払いケースで利用できる裁判手続きには、次の6つがあります。

各手続きについては、次章で解説します。
会社の支払い拒否の理由、態度の強硬さなど、事情に応じた手続きを選ばなければなりません。

一長一短ありますが、労働者保護のために簡易、迅速かつ柔軟な解決を目指す、「労働審判」が最も有効なケースが多いです。

強制執行で財産を差押える

最後に、裁判で勝訴すれば、給料の未払いは解消できるかというと、そうとも限りません。

裁判手続きで支払いを命じられてもなお、会社が給料の未払いを続けるときは、強制執行をして財産を差押え、未払い給料を回収するようにしてください。

給料の未払いがあったら利用すべき裁判手続き

会社がどうしても給料の未払いをなくしてくれないとき、強制的に払わせるには裁判手続きが必要です。

給料の未払いが少額なときほど、泣き寝入りになりがちです。
利用できる裁判手続きは複数あり、なかには少額の給料未払いについて自分で活用できる制度もあります。

労働審判

労働審判は、労働者のために作られた制度であり、給料未払いの場面でも、最もよく利用されます。

労働審判では、原則として3回までの期日で、労使の話し合いによって調停成立を目指します。
そして、調停が成立しないときには、裁判所から審判を下してもらえます。
このとき、労働審判でも、証拠が重視されますが、通常訴訟に比べると、柔軟な判断をしてもらえる傾向にあります。

証拠が十分あるケースでは、労働審判は、速やかに未払い給料を払ってもらえる有効な方法です。

労働審判と訴訟の違いについて、次に解説しています。

通常訴訟

話し合いや労働審判では払ってもらえない給料は、通常訴訟で請求します。

勝訴し、判決を得られれば、強制執行して会社の財産を差し押さえることができます。
労使の主張に大きな差があるケースでは、通常訴訟でなければ解決できないこともあります。

通常訴訟による給料の請求は、とても強制力のある手段ですが、デメリットもあります。
それは、通常訴訟には多くの時間と費用がかかる点です。
そして、通常訴訟を進めるには、法律知識が必須であり、弁護士に依頼するのが通常であるため、さらに弁護士費用についても検討しなければなりません。

仮差押え

訴訟や労働審判で勝っても、お金のまったくない会社からは回収できません。
最悪のケースでは、会社が倒産してしまえば、未払い給料はもらえなくなります。

給料を払ってもらうため、会社の資産をあらかじめ押さえておくのが、仮差押えの方法です。
仮差押えは、緊急のケースで、「仮」に権利を実現するための制度。
証拠をもって、未払い給料を裁判所に疎明できれば、会社の不動産や預金口座などを保全できます。

「仮」の手続きなため、緊急性が高く、保全の必要性があるケースでしか認められません。

支払督促

支払督促は、簡易裁判所に申し立てすることで、支払いをうながしてもらう制度。
未払いの給料の請求では、会社の所在地を管轄する簡易裁判所で利用できます。

簡易な手続きで督促してもらえるため、裁判所に行かずに解決できます。
通常訴訟よりも、かかる費用が安く済むメリットもあります。

一方、会社が異議を申し立てると、通常の訴訟に移行します。
その場合には、訴訟で給料を請求する方法と同じ手間と費用がかかります。

証拠がしっかりとそろっており、訴訟になっても未払い給料を払ってもらえる可能性が高いケースで、感情的な理由でどうしても払ってもらえないといった事例で、支払督促が有効です。

少額訴訟

少額訴訟は、60万円以下の金銭請求について、簡易裁判所でする訴訟のことです。
少額訴訟は、1回の審理で判決が下されます。
60万円以下という制限がありますが、給料の未払いをスピーディに解決できます。

給料未払いのケースでは、未払い額が少額なこともあるでしょう。
少額訴訟なら、手間と費用をできるだけ抑えて請求することができるのです。

ただし、少額訴訟を利用するには、要件とルールを守らなければなりません。
また、会社が、少額訴訟で決着することに納得しないときは、通常訴訟に移行されてしまいます。

少額訴訟の進め方について、次に解説しています。

民事調停

民事調停は、訴訟のように、判決で白黒はっきりつける解決手段とは少し異なります。
あくまでも、裁判所における話し合いの方法だとイメージしてください。

民事調停によって、労働者側も譲歩の余地を示せば、給料の未払いの問題を円満に解決できます。
まずは話し合いを重視する方法なので、会社から不利益な扱いを受けづらく、かかる費用も少なくて済みます。

ただ、民事調停は、強制的に給料を回収することができません。
会社が支払いを拒否したり、そもそも出席してこなかったりすると、不成立で終了します。
そのため、給料の未払い額が多額だったり、労使の主張に大きな対立があったりするケースでは、民事調停による解決は困難なこともあります。

給料の未払いを依頼するための弁護士費用

給料の未払い金額が少ないとき、かかる手間と費用が気になるでしょう。
このとき、手間がかかる、面倒だ、という懸念点は、弁護士に依頼すれば解決できます。
弁護士が、あなたの代わりに、なかなか言い出しづらい給料請求をしてくれるからです。

心配なのは、弁護士費用がかかるという点ではないでしょうか。
弁護士に依頼するとき、弁護士費用を加味して、「給料の未払いを回収することで、金銭面で得できるかどうか」の検討が必要です。

給料の未払いが少額だと、自分で請求を勧めたほうがコスパがよいこともあります。
よくある弁護士費用については、次のとおりです。

スクロールできます
経済的利益の額着手金報酬金
300万円以下8% 16%
300万円を超え、3000万円以下5%+9万円10%+18万円
3000万円を超え、3億円以下3%+69万円6%+128万円
3億円を越える場合2%+369万円4%+738万円

これは、旧日弁連報酬基準を参考にした報酬体系です。

弁護士費用は自由化されていますが、未払い給料の請求のように経済的利益の獲得を目指すケースでは、こちらの基準が今でも参考にされることが多いです。

給料の未払いを依頼するなら、労働問題に強い弁護士を選ぶのがお勧めです。

給料の未払いでは、時効に注意する

給料の未払いがあっても、いつまでも請求できるわけではありません。
給料の請求権には時効があるため、時効期間が経過すれば、請求できなくなってしまいます。

給料の消滅時効は、3年です(退職金の消滅時効は、5年)。
つまり、払われていない給料も、3年間請求せず放置すれば、その後に請求はできなくなるのです。

時効になりそうなとき、まずは給料を請求する意思を伝えれば、「催告」となり、その時点から6ヶ月間は時効の完成が猶予されます(民法150条1項)。
また、給料の未払いについて判決を得られれば、判決時から10年に時効が延長されます。

3年は、長そうに見えてすぐに経過します。
少額の未払いで、すぐには言い出しづらかったり、「退職したら請求しよう」と思っているうちに時間が経ってしまったりすると、給料の未払いが時効となるおそれがあります。

未払い給料の時効が近づいているとき、速やかに弁護士に相談ください。

なお、給料の時効は、2020年3月31日までは2年でした。
2020年4月1日より、民法改正にともない5年に延長され、ただし、当面の間は3年とされます。

そのため、2020年3月31日以前に払われるべき給料は、時効が2年です。

残業代請求の時効について、次に解説しています。

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、給料に未払いがあったとき、請求する方法について解説しました。

給料の未払いが少額だったり、会社で働き続けなければならなかったりといった理由があることも。
泣き寝入りしてしまう前に、未払いの給料を請求するための方法を知っておいてください。

裁判による強制的な回収はもちろんですが、円満に、給料の未払いを解消する手もあるかもしれません。

この解説のポイント
  • 給料の未払いが疑われるとき、まずは理由を確認し、証拠を集める
  • 給料の未払いを解消するには、内容証明を送った後、裁判手続きを検討する
  • 給料の未払いを弁護士に依頼するとき、弁護士費用を見積もり、採算があうか調べる

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