残業代や給料を払ってもらえないとき、「罪なのではないか」という疑問がわきます。
社長を逮捕してもらえれば、未払いに大きなリスクがあると示せます。
未払いに苦しむ労働者としても、願ったりかなったりでしょう。

給料の未払いは犯罪ではないでしょうか

残業代を払わない社長に制裁を下したい
残業代、給料を請求するのは、労働者として当然のこと。
早く払ってほしいと思うのも当たり前の希望です。
しかしブラック企業では、違法な長時間労働が横行し、払われるべき給料すらもらえません。
こんなとき、犯罪にあたり、逮捕してもらえるかどうかは、その悪質性によります。
労働基準法は、悪質な違反に対しては刑罰が定められています。
そのため、逮捕、起訴、そして刑罰を含めた厳しいペナルティを与えることができるのです。
今回は、残業代、給料の未払いがあるとき、社長を逮捕してもらうことができるか、何罪にあたるのかといった点を、労働問題に強い弁護士が解説します。
- 給料の未払い、最低賃金法違反、残業代の未払いといったケースは、刑罰が科される
- 罪となり、逮捕してもらうには、労働基準監督署に告訴する方法が有効
- 労働法違反の悪質性がよく理解されなければ、社長を逮捕してもらうことはできない
\ 「今すぐ」相談予約はコチラ/
【残業代とは】
【労働時間とは】
【残業の証拠】
【残業代の相談窓口】
【残業代請求の方法】
給料の未払いが罪となる場合とは

まずは、給料の未払いが罪となるケースにどんなものがあるか、解説します。
給料の未払いは、特に労働者に深刻なダメージとなります。
そのため、数ある労働問題のなかでも、刑罰という厳しい制裁が下されます。
犯罪にあたるのは、毎月の給料がもらえないケースはもちろん、残業代の未払いでも同じことです。
刑罰による制裁があることで、逮捕、送検、起訴といった厳しい扱いをしてもらえます。
毎月の給料が払われないケース
最も悪質なのが、毎月の給料が払われないケース。
毎月の給料が払われないと、労働者の最低限度の生活保障すら危ぶまれます。
「健康で文化的な最低限度の保障」は、憲法で守られる最重要の人権。
そのため、こんな例は犯罪行為となり、刑罰が科されます。
労働契約の本質は、「労務提供」と、その対価としての「給料」です。
給料が払われないというのは、雇用契約の、最も基本的な要素を欠くことを意味します。
厳しい制裁を科してでも、なんとしても給料は払ってもらわなければなりません。
労働基準法24条では、給料は、毎月一定期日に払わなければならないと定められます。
経営状況が苦しくても、「今月は払わない、来月まで待ってほしい」といったことは、取引先への売掛などなら交渉できるかもしれませんが、給料の場合には不可能なのです。
未払い給料の請求について、次の解説をご覧ください。
最低賃金未満の給料しか払われないケース
毎月の給料は一応払われていても、最低賃金未満だと、やはり違法です。
最低賃金法は、賃金の最低限度を定めることで労働者の生活を守ります。
そのため、労働基準法、労働安全衛生法と並び、刑罰のついたとても大切な法律であり、最低賃金法違反には「6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金」という制裁があります。
最低賃金法で定められる最低賃金には、
- 都道府県ごとに定められる「地域別最低賃金」
- 業種ごとに定められる「特定最低賃金」
があり、いずれよりも高い給料を払わなければならないこととされています。
最低賃金法に違反するほどの低い給料では、正当な対価を得ているとはいえません。
安い給料でこき使われている方は、ブラック企業に対する刑事制裁を検討してください。
基本給が低いときの対処法は、次の解説をご覧ください。
残業代が払われないケース
残業代は、毎月の給料よりも軽視されるおそれがあります。
残業代は「おまけ」で、「基本給を払えば十分だ」というのはブラック企業の考え方。
残業代もまた、労働の大切な対価であり、労働者の生活のとても重要な糧となる権利です。
そのため、残業代が払われないのも違法であり、刑罰が科されます。
残業代未払いは、労働基準法119条により「6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金」となります。
残業代にはさまざまな法規制があり、残業代を払わないケースはもちろんですが、そもそも適切な36協定を作成していないケースもまた、それだけで違法です。
また、残業代には、長時間労働を抑制するという効果もあります。
そのため、残業代を払わない会社では労働時間が長くなりやすく、うつ病や適応障害、ひいては過労死など、心身に大きなダメージを与えるおそれがあります。
残業代が払われているか知るため、正しい計算方法も理解してください。

給料の未払いがある時、社長を逮捕してもらう方法

次に、残業代や給料の未払いがあるとき、社長を逮捕してもらう方法について解説します。
刑罰のついた労働法を管轄するのが労働基準監督署の役割。
しかし、被害者である労働者が声をあげなければ、動いてくれず、助けてもくれない可能性があります。
最終的に逮捕し、刑罰を科してもらうためには、正しい流れで助けを求めましょう。
労働基準監督署に相談する
労働基準監督署とは、労働基準法、労働安全衛生法、最低賃金法に代表される、刑罰のついた労働法の違反がないかどうか、企業を監督するための行政機関です。
労働者のために、最低限度の労働条件を守らせるため、会社をチェックします。
労働基準監督署は、法律で、立入検査(臨検)や、改善指導、是正勧告などをする権限が与えられます。
このような監督権限のなかでも最も協力なのが、逮捕、送検する権限です。
逮捕、送検に直結する場合ばかりではないものの、まず労働基準監督署への相談が有効です。
労働基準監督署の調査権限は、法律によって強く保護されます。
立入検査や資料提出を拒否、妨害することも「6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金」という刑罰が科されます。
是正勧告について、次の解説をご覧ください。
告訴する
労働基準監督署に所属する労働基準監督官には、警察と同じ権限があります。
つまり、罪となる労働法違反について逮捕、送検する権限が与えられています(労働基準法102条、最低賃金法33条など)。
犯罪の被害者が、捜査機関に対して処罰を求めることを「告訴」といいます。
そのため、罪となる労働法違反の犠牲となった労働者は、労働基準監督署に告訴できます。
警察、検察にも告訴することができますが、労働法違反なら、専門的な知識と経験のある労働基準監督署にするのがお勧めです。
労働基準監督署へ申告しても、それを理由とした不利益な取扱いは許されません。
安心して告訴をすることができます。
弁護士に告訴を依頼する
労働基準監督署がなかなか動いてくれないときは、弁護士に告訴を依頼するのも有効です。
弁護士名義で告訴してもらえば、プレッシャーとなり、告訴を受理してもらいやすくなります。
残業代や給料の未払いが軽微だと、逮捕や刑罰までは科されないケースもあります。
しかし、払われるべき金額に足りないなら、違法なのに違いはありません。
このとき、「刑事」では動いてもらえなくても、「民事」で責任追及できます。
具体的には、労働審判や裁判など、民事裁判の手続きで、未払いの残業代や給料を請求します。
このとき、弁護士に依頼すれば、労働法の専門知識に基づき、手続きをスピーディに進められます。
労働問題を相談するとき、弁護士の選び方には注意を要します。

罪となり逮捕してもらいやすくするためのポイント

残業代や給料の未払いがあっても、すぐ逮捕して、刑罰を科してもらえるわけではありません。
むしろ、「労働法違反があるのに、労働基準監督署が動いてくれない」という相談も数多いです。
そこで次に、罪となり逮捕してもらいやすくするために知りたいポイントを解説します。
労働法違反が悪質だと主張する
罪となり逮捕されるのは、労働法違反が悪質なケースに限られます。
形式的には、最低賃金を1円でも下回ったり、残業代が少しでも足りなければ違法に間違いないものの、違法性が軽微だと、労働基準監督署が動いてくれないおそれがあるためです。
労働基準監督署が改善指導、是正勧告などをして、違法状態がなくなれば、それ以上の制裁は下されずに終了することも少なくありません。
逮捕、送検などしてもらえるのは、次のような悪質なケースです。
- 注意指導しても、まったく是正されない
- 反省の態度がなく、改善する可能性がまったくない
- 再監督したとき、同じ労働法違反が発見された
- 過去からずっと重大な労働法違反が継続していた
労働者側で、罪となると認めてもらい逮捕まで進めたいなら、悪質性が強いこと、違法が繰り返されていることについて、労働基準監督署へ説得的に伝えなければなりません。
労働基準監督署が動いてくれないときの対処法は、次に解説します。

事前相談を活用する
労働者の心身にかかわるような緊急性の高いケースでは、すぐに告訴が受理される例もあります。
しかし、残業代や給料の未払いは、深刻なものの緊急性はさほど高くありません。
そのため、すぐに告訴するのではなく、まずは労働基準監督署に事前相談しておきましょう。
会社の違法性を継続的に伝え、相談しつづけることで、違法を是正しがたいこと、将来も続くであろうことを、労働基準監督署に理解してもらい、罪として逮捕してもらいやすくなるからです。
わかりやすく時系列で資料を作成し、証拠を整理する
労働基準監督署に、労働問題を理解してもらいやすくするため、時系列でまとめたメモを用意しましょう。
あわせて、残業代、給料の未払いを理解してもらうため、証拠の準備をしてください。
特に重要なのが、タイムカードです。
労働者の手元の証拠が十分でなくても、労働基準監督署が調査してくれれば、会社に資料を開示させられます。
しかし、労働基準監督署が動いてくれる程度には、違法性を説明するための証拠が必要なのです。
残業代請求で必要な証拠は、次の解説をご覧ください。
複数人の同僚と告訴する
自分以外にも、同じ労働問題で苦しむ人がいるなら、一緒に告訴するのがお勧めです。
複数人の同僚と告訴すれば、困っているのがあなただけではないと伝えられます。
残業代、給料が、全社的に払われていないならば、その分だけ、労働問題が悪質だと理解してもらえます。
罪となる残業代・給料の未払いがあった時の注意点

最後に、犯罪となる残業代・給料の未払いがあるとき、労働者側の注意点を解説します。
社長や役員にも刑事責任がある
残業代や給料の未払いでは、刑事責任を負うのは、会社だけではありません。
むしろ、主導して進めている社長や役員にも、その責任があります。
実際、残業代未払いのケースでも、代表者や監督した役員などの逮捕、書類送検がよく報道されます。
会社が負うのは罰金に過ぎず、あまりに悪質な違反だと、金銭的な制裁だけでは足りません。
このとき、社長や役員も逮捕、送検し、懲役刑などの重い制裁を科す必要があります。
労働問題の責任を社長や役員に追及する方法は、次に解説しています。
告訴は、公訴時効の経過までに行う
親告罪(名誉毀損罪など)の告訴は、犯人を知った日から6ヶ月以内にしなければなりません。
一方、労働法違反の罪は、非親告罪であり、告訴の期限はありません。
ただし、告訴は、逮捕し、刑罰を科してもらうためのものなので、刑罰を科すことのできる期限である「公訴時効」が経過するまでにしなければなりません。
公訴時効は、最高刑により決まりますが、残業代・給料の未払いに関する労働基準法違反の罪では、3年が期限です(刑事訴訟法250条2項6号)。
なお、残業代請求の時効については、次に解説します。
まとめ

今回は、残業代、給料の未払いで、社長を逮捕してもらえるかについて解説しました。
どれだけ請求しても払ってもらえないなら、最終手段として刑事事件化まで検討しましょう。
あまりにも悪質な労働基準法違反は、労働基準監督署が管轄します。
労働基準監督署に申告し、逮捕、送検されれば、未払いへの大きなプレッシャーになります。
ただし、逮捕され、罪になるのは、あくまで悪質な違反のケースに限られます。
そのため、ブラック企業といえど、必ず社長を逮捕してもらえるわけではありません。
刑罰を科してもらうため、弁護士に依頼し、告訴をする手が有効です。
このとき、あわせて労働審判や裁判などで、労働者の正当な権利を実現するサポートもしてもらえます。
- 給料の未払い、最低賃金法違反、残業代の未払いといったケースは、刑罰が科される
- 罪となり、逮捕してもらうには、労働基準監督署に告訴する方法が有効
- 労働法違反の悪質性がよく理解されなければ、社長を逮捕してもらうことはできない
\ 「今すぐ」相談予約はコチラ/
【残業代とは】
【労働時間とは】
【残業の証拠】
【残業代の相談窓口】
【残業代請求の方法】