今回は、タイムカードを勝手に押される問題行為への対応策を、労働問題に強い弁護士が解説します。
まだ働いているのに、タイムカードを勝手に押されることがあります。
このとき、勝手に押されるのに気づいたケースはもちろん、後からタイムカードを確認し、はじめて勝手に押されていたと知る最悪の例もあります。

まだ片付け中だったのに、タイムカードを勝手に押された

店の閉店時間にあわせ、タイムカードを切られてしまった
計算したかのようにタイムカードをぴったりに切られる、こんなケースが相次いでいます。
飲食店や小売店で働くアルバイトやパートによくある問題です。
タイムカードは本来、会社が労働時間を把握するという義務を果たすためのものなので、終わりの時間に端数が出るほうが自然でしょう。
タイムカードさえ切ってしまえば「労働時間は把握していた。残業代は払わない」というブラック企業の主張を押し通すための証拠作りになってしまいます。
勝手にタイムカードを押す行為にNoを言いましょう。
- タイムカードに正しい労働時間を反映させるために、労働者自身が押すのが原則
- タイムカードを勝手に押されたら、それ以上無償の奉仕はしない
- どうしても仕事が必要なら、タイムカードを勝手に押された後も働いた証拠をとる
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タイムカードは、いつ、誰が押すのが正しいのか

まず、タイムカードが勝手に押されるのが間違っていて、違法だということを知るためには、そもそも「タイムカードはいつ、誰が押すのが正しいのか」を知る必要があります。
タイムカードは、労働時間の把握のために押すもので、労働時間を正確に反映する必要があります。
そのため、タイムカードを押すのは「実際に労働を開始し、終了するタイミング」であり、そのことを正確に示すためには「労働者自身」が押すのが基本です。
これを理解すれば「タイムカードを勝手に押される」ケースが違法だとわかります。
- 先に仕事を開始させて、始業時刻になったら勝手にタイムカードを押される
- まだ仕事が終わっていないのに、勝手にタイムカードを切られる
- 閉店時間になったら勝手にタイムカードが押されている
- 始業時刻・終業時刻がタイムカードに書かれるよう、自動設定されている
- 30分刻みでしかタイムカードを押せないようになっている
- 決められた休憩時間になると、休憩できていなくてもタイムカードを勝手に押される
以上はいずれも、働いている時間なのに、タイムカード上には労働時間として反映されていない時間があります。
これらの時間を足し合わせ、「1日8時間、1週40時間」(法定労働時間)を超えているとき、労働基準法で、残業代(割増賃金)の支払いが義務となっています。

会社がタイムカードを準備する理由は、会社が、労働時間を把握する義務を負っているからです。
このとき、必ずしもタイムカードでなければならないわけではありませんが、目視の方法によるチェックは不正確になったり、常に監視しておけないときもあったりするため、タイムカードを用意するのが一般的になっています。
勝手に押されるケースだけでなく、打刻させるのも違法。
詳しくは、次に解説します。

タイムカードを勝手に押されるときの対応

タイムカードを勝手に押されることに気づいたら、労働者側がどう対応したらよいかを解説します。
タイムカードを勝手に押されたら、それ以上仕事しない
タイムカードに記載された労働時間分しか、残業代、給料をもらえないのが基本。
タイムカードに書かれた始業・終業の間以外は、労働していないことになってしまいます。
タイムカードを勝手に押してくる意図は…
「残業代は払わないが、働け」ということでしょう。
タイムカードが切られた時点で仕事をやめてしまえば、「残業代を払わなければ働かない」という意思を明確に示せます。
逆に言えば、タイムカードを勝手に押してくるような上司、会社のもとではそれ以上の奉仕はボランティア。
働く必要すらないといえるでしょう。
したがって、タイムカードを切られたら、仕事をやめて、それ以上は仕事しないのが有効な手です。
タイムカードを勝手に押された後も仕事していた証拠を残す
タイムカードを切られた後は仕事しないのが理想です。
しかし実際は、来客があったり接客があったりと、すぐ仕事をストップするのは難しいケースも多いもの。
こんなとき、タイムカードを勝手に押された後も仕事をしていた証拠を残しておいてください。
タイムカードを切られた後いつまで働いていたかがまったくわからないと、残業時間の証明ができなくなってしまい、労働審判や裁判で、労働者に不利な結論となるおそれがあります。
「タイムカードを勝手に押される」問題に対抗するには、労働時間を把握し、証拠に残す必要があるのです。
残業代請求における証拠集めでは、次の解説を参考にしてください。

タイムカードを勝手に押した社員の処分を求める
労働者の実労働時間を把握するのは会社の義務。
その義務を、実際に遂行するのが、管理職を含めた上司の役割です。
にもかかわらず、タイムカードを勝手に押す行為には、責任あるに違いありません。
会社ぐるみでタイムカードを勝手に押していたケースは別として、上司や店長などが自分だけの勝手な判断でタイムカードを押してくるとき、会社に報告し、処分を求めるのがよいでしょう。
このとき、会社が問題に気づいてくれれば、厳しく注意してくれたり、悪質なケースでは懲戒処分や解雇としてくれ、労働者の残業代請求する権利を守ってくれることもあります。
こんな問題ある上司や店長だと、暴言・暴力などパワハラが横行していることも。
パワハラもあわせて会社に相談し、対応してもらえなければ慰謝料をはじめ損害賠償も請求できます。
未払いの残業代を請求する
タイムカードを勝手に押した社員をかばう会社には、残業代請求によって対抗するしかありません。
会社ぐるみの不正だったと明らかになった場合も同様です。
このとき、タイムカードを勝手に切られた時間は、労働していないこととして計算されていますが、実際には働いていたなら、残業代の未払いが発生している可能性が高いです。
タイムカードがなく、会社が労働時間を把握する義務を怠っていたときにも、残業代はなくなりません。
タイムカードがなくても終業時刻後に働いた分について、残業代をもらえます。
事前の準備が間に合わず、残業代の証拠がないとき、労働者の作成したメモも証拠になります。
「タイムカードを勝手に押される」問題に対抗するため、過去の資料を検討してみてください。
会社が、勝手にタイムカードを切るといった不正をしていたとき、労働者の準備した証拠が必ずしも十分でなくても、ある程度の残業代を認めてもらえる可能性があります。
こんな悪質なケースでは、裁判所も労働者保護を考えるからです。
残業代の正しい計算は、次の解説をご覧ください。

バイトでも残業代は発生する

「タイムカードを勝手に押される」という労働問題が起こりがちなのが、飲食店や小売店などのバイトのケース。
バイトだということを理由に残業代請求をあきらめ、泣き寝入りしている方も多いもの。
「バイトでも残業代は発生する」ことをよく理解してください。
バイトの場合、始業・終業が決められ、決まった時間にはあがれることが多いもの。
しかし、実際には決められた時間よりも早く、タイムカードが勝手に押されていたとしたら、本来ならもらえるはずの残業代や給料が、不当に搾取されていることを意味します。
残業代が請求できるかどうかは、雇用形態にはよりません。
そのため、バイトだろうが正社員だろうが、所定労働時間を超えて働けば、残業代請求できます。
バイトでも、タイムカードを勝手に切られたら違法なのは当然。
自分の労働時間の記録をしっかりと確保して、残業代請求で対抗しましょう。
なお、タイムカードを勝手に押される以外の問題行為は、次の解説もご覧ください。

まとめ

今回は、飲食店や小売店など、店舗ビジネスで働く労働者にありがちな、「タイムカードを勝手に押されてしまう」問題について、どのように対応したらよいか解説しました。
店長や上司が、常に監督しているとは限らず、アルバイトしかいない時間帯もあるでしょう。
タイムカードを切ってしまうという勝手を放っておくと、あなたの頑張りが正しく会社に伝わりません。
労働時間の管理や、残業代の支払いに違法のあるとき、放置していてはなりません。
タイムカードを勝手に押されるとき、残業代に未払いがあり、損しているといわざるをえません。
残業代請求を徹底するため、ぜひ一度、弁護士にご相談ください。
- タイムカードに正しい労働時間を反映させるために、労働者自身が押すのが原則
- タイムカードを勝手に押されたら、それ以上無償の奉仕はしない
- どうしても仕事が必要なら、タイムカードを勝手に押された後も働いた証拠をとる
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