休日に働くよう命じられる休日出勤命令。
しかし、休日はゆっくり休みたいのが本音でしょう。
休日出勤を命じられても、拒否して休むことができるでしょうか。
一般に、週休2日制の会社では土日休みが多いですが、仕事が多忙だと出社させられることも。
片方ならまだしも、土日両方出社、さらに残業、連休もつぶれるとなると体が悲鳴をあげます。
せっかくの休みなんだからゆっくり身体を整えたい
毎週土日に仕事を入れられる…ふざけるなと思った
休日出勤を命じられ嫌な思いをしたら、まず就業規則、36協定の根拠があるか、確認が必要です。
命令に根拠がないときや、休日出勤を拒否する正当な理由があるとき、出社を断れます。
このとき、それ以上の強制は、違法であり、パワハラなこともあります。
休日出勤の強要を受けても、休みを確保するには、労働法の知識が必要。
今回は、休日の労働を断りたい方へ、休日出勤の法律知識について労働問題に強い弁護士が解説します。
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休日出勤とは
休日出勤とは、休みとされ、労働義務のない日に、働くよう会社から命じられることです。
例えば、週休2日制で土日祝休みのサラリーマンなら、その土日や祝日に、労働するよう強制されるのが、休日出勤命令です。
休日出勤には、次の2種類があります。
- 法定休日出勤
労働基準法では「1週1日もしくは4週4日」の休日を与えることが義務とされます。
これを「法定休日」といいます。 - 所定休日出勤
労働基準法で義務付けられた以外の休日を、「所定休日」といいます。
例えば、土日休みのとき、1週間に2日目の休みが、所定休日です。
休日出勤を会社が命令するためには、その根拠が労働契約に定められていなければなりません。
具体的には、労働契約の内容となる、雇用契約書または就業規則に、会社が休日に労働を命じる場合があると定めていなければ、休日出勤を命じることはできません。
加えて、残業、休日出勤は労働基準法上は原則違法。
例外的に、労使協定がある場合にのみ、残業命令、休日労働命令をすることができます。
この労使協定を、36協定といいます。
36協定がないときには、休日労働命令そのものが違法になります。
36協定には残業の上限を定める必要があり、その上限は原則「1ヶ月45時間、1年360時間」が限度です。
特別条項があるときは、延長できますが、使用できるのは1年のなかで6ヶ月間に限られます。
休日出勤が違法となる場合
休日命令は、違法となる場合があります。
違法な命令ですから、もちろん労働者としては断れます。
36協定が定められていない場合
前章で解説したとおり、残業、休日労働は、36協定が定められていない限り違法です。
しかし、企業規模が小さくなるほど労務管理が雑で、36協定のない会社は多くあります。
こんなとき、残業は当たり前ではありません。
むしろ、残業は禁止が原則であり、労使協定を届け出て、違法な長時間労働をさせないことを約束して、例外的に許されているのだという点を理解し、36協定なしに命じられる違法な休日労働は、拒否しましょう。
雇用契約書・就業規則に命令の根拠がない場合
休日出勤を命令する権利は、会社に必ずあるものではありません。
業務命令をする権利は会社に与えられていますが、休日はその名のとおり休みが保証されています。
あえて休日に働くよう命令できる根拠がなければ、そもそも適法に命令できません。
「休日は休める」という原則の例外なので、労働契約に明記されていなければなりません。
労働契約の内容を示す代表的な書類が、雇用契約書、就業規則です。
雇用契約書、就業規則を見て、いずれにも記載がなければ、休みに働かせる命令権はありません。
このとき、休日出勤命令は違法で、断ることができます。
なお、労働契約のルールを定める各規定の優劣は、法令、労働協約、就業規則、雇用契約書の順。休日の労働のルールも、この順に確認を要します。
休日出勤中の労災についても参考にしてください。
休日出勤を拒否できる場合
以上で解説した、休日出勤が違法な場合にあたらなければ、労働者は従う必要があるのが原則。
つまり、36協定が締結され、雇用契約書、就業規則に休日出勤を命じる根拠があれば、労働者は休日出勤の命令に従わなければなりません。
しかし、休日出勤が適法に命じられても、断ることができる場合があります。
休日出勤を断ってもよいのは、次のケースです。
業務上の必要性がない場合
休日出勤を命じるには、相応の理由が必要です。
あくまで、休日は休みなのが原則だからです。
いくら雇われているとはいえ、平日だけでなく休日も出勤となれば負担が大きいもの。
休日出勤命令が許されるのは、あくまで業務上の必要性が大きいときに限られます。
したがって、業務上の必要性がないとき、理由なく休日出勤を強要されることはありません。
休日出勤命令が違法なパワハラの場合
何ら思い当たる理由がないのに休日出勤を命じられるとき、違法なパワハラの可能性もあります。
理由がないと考えられる休日出勤を命じられたら、会社に理由を説明してもらいましょう。
理由の説明がされないとき、嫌がらせ目的の、違法、不当な業務命令の可能性があります。
こんな疑いがあるとき、証拠を集めるため、理由の説明は書面でするよう求めておいてください。
法定休日の労働や、連休の労働を命じるとき、さらに高度の必要性が要求されると考えてよいでしょう。
休日労働を断る正当な理由がある場合
最後に、労働者側で、休日労働を断る正当な理由があるときにも、休日労働を拒否できます。
このとき、休日労働してもらいたいという会社側の事情(業務上の必要性)と、労働者側の断りたい理由を比較し、検討することとなります。
業務命令も、すべて従わねばならないわけではなく、労使の利害調整が大切です。
例えば、休日労働を断る正当な理由には、次の例があります。
- 冠婚葬祭
冠婚葬祭は、休日に行うことが多く、かつ、日程をズラすのが困難です。
そのため、予定があれば休日労働することができず、断る正当な理由になります。 - 引っ越し
引っ越しも同様に、事前に予定していることが多く、日程はズラせません。
そのため、引っ越し予定であれば休日労働は難しく、断る正当な理由といえます。 - 通院
病院への通院は、休みに体調を整える意味でも重要です。
通院をキャンセルして休日労働させるのは、安全配慮義務の点からも問題あります。 - 育児や介護
育児や介護は、日常的に発生するため、これだけで拒否する正当な理由にはなりません。
ただ、育児、介護の必要性が高く、付き添い通院が必要な場合などには、休日労働を断れるケースもあります。
以上の重大な予定は、平日にはこなせないものが多く、休日にやらざるをえません。
すべての休日を労働で奪われれば、たとえ休日手当がもらえても、日常生活が進められなくなります。
これに対して、旅行やデート、買い物といった私用は、休日労働を断る正当な理由とはいえません。
このとき、少しでもプライベートに配慮してもらえないか、例えば、1日出社するのではなく半日の出社にしてもらえないか、週明けの早朝出社で補えないか、相談してみるのがおすすめです。
違法な残業命令の断り方は、次に解説します。
休日労働したら、休日手当(残業代)がもらえる
今回の解説のとおり、休日出勤命令は、拒否できるケースも少なくありません。
労務管理の適切になされていない会社では、36協定を結んでいない会社もまだまだ多いです。
休日に出社を命じられ、やむをえず従う前に、適切な書類がそろっているか確認しておきましょう。
とはいえ、多忙だったり、緊急だったり、仕事の状況次第では休日働かざるをえないこともあります。
このとき、休日労働したら、残業代を請求できます。
具体的には、休日手当(休日労働割増賃金)といって、休日に働いた時間数については、通常の賃金の1.35倍の残業代をもらえるという労働基準法のルールに従った請求です。
このとき、月6日しか休みがなければ、2日の所定休日労働が発生する可能性が高いです。
(月4日しか休みがないなら4日の所定休日労働、それ以下の休みであれば、法定休日労働が発生します。
いずれも、休日労働手当の支払いがなければ、違法であり、従う必要はありません。)
なお、「1週1日もしくは4週4日」の法定休日の労働は1.35倍の残業代。
これ以外の所定休日の労働は「1週40時間」の法定労働時間を超えたら1.25倍の残業代となります。
例えば、1日8時間労働、週休2日制の労働者は、土曜の出勤は1.25倍、日曜も出勤すれば1.35倍です。
休日手当の請求は、次の解説をご覧ください。
休日出勤を命じられたときの労働者側の注意点
最後に、休日出勤を命じられたとき、労働者側で注意しておくべきポイントを解説します。
休日出勤が多すぎるときの対応
休日出勤手当を払えば残業代の点からは問題なくても、どれだけ休日出勤を命じてもよいわけではありません。
会社は、労働者の健康に配慮して働かせる必要がありますから、「毎週土日とも仕事で、休日がない」といった働き方では、安全配慮義務違反だといえるからです。
多すぎる休日出勤の結果、うつ病になってしまえば、会社の責任であり、労災です。
この点、36協定の限度基準には、休日労働も含めた基準があります。
つまり、36協定の限度は、次のとおり、特別条項があるときには延長できますが、その際の上限は、休日労働の時間も含めたものとされています。
- 「月45時間、年360時間」が基本
- 特別条項をつけたときには、年6ヶ月まで、以下の限度で延長可能
① 年720時間以内
② (時間外労働と休日労働を合わせ)月100時間未満、2〜6ヶ月平均80時間以内
休暇に労働させることはできない
休日に労働を命令することは、就業規則と36協定があり、休日手当を払えば可能。
しかし、休暇に労働させることはできません。
「休日」と「休暇」は、似て非なるものなので、区別して理解してください。
休暇は、労働者の権利として、法律に定められた休む権利です。
例えば、有給休暇、育児休暇、介護休暇などが典型例です。
いずれも、法律上の権利なことを尊重し、その休暇中はどんな理由があれど労働を命じられません。
なお、有給休暇には時季変更権があります。
時季変更権は、業務に支障があるときに有給休暇をとるタイミングをずらす権利。
「その休暇中に労働させる権利」があるわけではなく、単にとる時季を変更させられるにとどまります。
まとめ
今回は、休日出勤を強制されてしまったとき、労働者側の適切な対応について解説しました。
ブラック企業に入社し、平日のサービス残業はもちろん、休日労働も頻繁にさせられて酷使されると、うつ病になるなど大きな精神的苦痛を負ってしまうこともあります。
我慢し、無理しすぎて倒れる前に、休日出勤を拒否する方法を知っておいてください。
就業規則や36協定のない会社、正当な理由があるのに休日出勤を強制してくる会社は違法のおそれあり。
なお、どうしても出社を要したとき、休日手当(休日労働割増賃金)が払われるかも確認してください。
★ 有給休暇の労働問題まとめ
【有給休暇のとり方】
【退職時】
【有給休暇の違法な扱い】
【休暇の基礎知識】