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浅野 英之
弁護士
弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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36協定に違反するとどうなる?罰則や対処法について解説

36協定は、残業させることのできる時間の上限を定める労使協定です。

2019年4月施行の法改正で36協定の限度時間が設定されました。
これにより、使用者が労働者を残業させる場合は36協定に書かれた上限を超えられないというのに加え、更に、その36協定に定める時間数についても、法律による規制がなされることになりました。

それでも、以上のルールに違反し、36協定を守らない企業もあります。
36協定を定めないのは論外で、最も悪質なブラック企業です。
しかし、協定が存在してもなお、無視して違法残業を強いる企業も残念ながら多いもの。

相談者

明らかに36協定違反の長時間の残業をしている

相談者

36協定違反だと思うが協定を見せてもらえない

36協定違反のケースは労働基準法違反で、会社や経営者は違法行為の責任を負います。
36協定違反は刑事責任を問われる犯罪行為で、罰則を科され、企業名を公表される可能性があります。
労働者としては違反の証拠を集め、労働基準監督署に通報する対処法が有効
です。
社員による告発から違法行為が判明するケースも多くあります。
違法残業を我慢し続け、心身を疲弊させる必要は全くありません。

今回は、36協定違反があるとどうなるか、事例や罰則、対処法を労働問題に強い弁護士が解説します。

目次(クリックで移動)

解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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そもそも36協定とは

36協定は、労働基準法36条の定める労使協定です。
その条項にちなみ、36協定(サブロク協定)と呼びます。

労使協定は、使用者と労働者(過半数代表または過半数組合)が締結する、労働環境などに関する書面ですが、なかでも36協定は、労働者の健康と安全の確保のため、働かせる時間の上限を定めます。
労働者からすれば「どれだけ残業させられるか」を定めた重要な書面です。

本来「1日8時間、1週40時間」の法定労働時間を超えては働かせられないのを原則としながら、労働基準法は、36協定を交わして労働基準監督署に届け出れば、その上限までは残業させることができるというルールを定めています。

つまり、36協定は「残業を合法的に行うための書面」なのです。

終わりのない残業ほど気力を削ぐものはなく、労働者の被る不利益を限定する必要があります。
36協定で上限を決めて長時間労働を回避することは、労働者の心身を守るのにとても重要です。

なお、2019年施行の法改正により、36協定に定める残業時間数に法律上の上限(36協定の限度時間)が設けられ、1日、1ヶ月、1年といった単位ごとに法的なルールができました。

36協定の限度時間について、次に詳しく解説します。

36協定に違反するとどうなる?

次に、36協定に違反するとどうなるかを解説します。

36協定は、残業の合法化に留まらず、好き勝手残業させられないための制限として機能します。
ワークライフバランスを守る重要な意味を持つため、違反には制裁があります。

せっかく結んだ36協定に違反があれば、社員の生活に支障が出ます。
長時間労働が横行すれば、メンタルヘルスの不調や、最悪は過労死にもつながります。

違法な長時間労働となる

36協定のルールは労働基準法が定ています。
そのため、36協定への違反は、労働基準法違反の違法行為です。

そもそも残業は原則違法で、36協定の上限を超えない範囲で例外的に合法化されるに過ぎません。
その36協定に違反しているということは、原則どおり違法となります。

違法な長時間労働は、労働者の心身の健康を害するため、会社が守るべき安全配慮義務の違反となり、これによって受けた損害の賠償を請求できます。
また、36協定違反の労働実態による病気や怪我、過労死などは、労災に該当します。

労災の慰謝料の相場は、次に解説しています。

36協定違反によって代表者や会社に刑罰が科せられる

36協定違反は、民事的に違法なだけでなく、刑事的にも違法です。
すなわち、この違法は、労働基準法32条または35条の違反となり「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」という刑事罰が科されます(労働基準法119条1号)。

つまり、36協定違反は、殺人罪や窃盗罪などと同じく「犯罪」であり、それだけ重大なトラブルだと肝に銘じる必要があります。

罰則の対象は「使用者」とされますが、これは「 事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者」(労働基準法第10条)と定義され、代表者、社長などは当然、その他にも実質的な経営権を有する人も対象に含みます。
(部長、所長、店長などの役職者も、労務管理の責任を有し、36協定違反を防げる立場ならば、罰則の対象となる可能性があります)

また、両罰規定(労働基準法121条)があり、法人自体にも罰金刑が科せられる可能性があります。

企業名公表の措置がある

36協定違反があると、企業名を公表される可能性もあります。
違法行為をした会社として広く知られれば、ブラック企業のレッテルを貼られ、消費者や取引先の信頼を失ったり、採用活動に影響して優秀な人材が入社しなくなったりといったデメリットがあります。

36協定違反の企業名公表は、各都道府県の労働局の公表した内容を厚生労働省がまとめてインターネット上に公開するため、誰でも簡単にアクセスできます。
一覧表は毎月更新され、公表日から概ね1年間掲載されます。
(例:労働基準関係法令違反に係る公表事案(令和4年12月1日~令和5年11月30日公表分)

罰則より企業名公表が、36協定違反を回避するプレッシャーになる面もあります。
厳格な制裁である刑事罰は検察の助けを要しますが、企業名公表は行政罰であり厚生労働省限りの判断で課すことができるからです。

こうした事情から、懲役や罰金と同じく企業名公表もまた、36協定違反をなくすのに重要な意味を持っており、労働者側として、労働基準監督署に告発するなど、制裁を下すよう強く求める必要があります。

(参考:労基署が動かないときの対処法

労働問題に強い弁護士の選び方は、次の解説をご覧ください。

36協定に違反する事例にはどんなケースがある?

次に、36協定違反の具体例を、整理して解説します。

労働法に詳しくない会社は、違反に気づかないまま36協定を遵守していない例もあります。
労働者側で36協定違反に気づくにも、違反の具体例を知っておくべきです。

残業代に未払いがある

そもそも、36協定の有無と残業代の支払いとは、無関係です。
つまり、36協定を締結したからといって残業代を払わなくてよいわけはありません。
36協定があっても、法定労働時間を超えて働いたり、法定休日に労働したりすれば、労働者には残業代を請求する権利があります。

したがって、残業代に未払いがある場合、会社に全て請求すべきです。
残業代の時効は3年なので、損しないよう速やかに請求してください。

残業代の正しい計算方法は、次の解説をご覧ください。

36協定の届出をしていない

36協定は、締結するだけでなく、労働基準監督署に届け出る義務があります。
したがって、36協定を届け出ないうちに残業をさせれば、労働基準法違反であり、違法です。
会社に備え付けるだけでは足りず、届出までされているか必ず確認しましょう。

36協定の締結に問題がある場合も、有効な協定とはなりません。
具体的な流れとしては、

  • 過半数代表もしくは過半数労働組合が当事者となり
  • 使用者との間で36協定を締結し
  • 管轄の労働基準監督署へ届け出る

という流れを経てはじめて、その36協定は効力を有します。
(36協定に定めた日時にかかわらず効力は受理日より生じます)

36協定の上限を超えた残業がある

36協定に定めた上限を超えて残業させられたなら、当然に36協定違反となります。
36協定の書式のうち「延長することができる時間数」欄に記載された時間数が上限です。

上限は1日、1ヶ月、1年の各期間ごとに決めます。
そのため、たとえ1日でも上限を超えて働かせれば、36協定違反になります。
また、時間外労働の上限は原則として「⽉45時間、年360時間」なので、これを超えた時間数を定める36協定は、それ自体に違反があると考えてよいです。
(なお、法律の上限より少ない時間数を定めた場合、36協定に定めた時間数が優先します)

例外的にこれを超過できる「特別条項」は次章で説明します。

特別条項の要件を満たしていない

前章の原則に対し、いわゆる「特別条項付き36協定」を結べば、例外的に、特別条項の要件を満たす場合に限り、36協定の限度時間を超えて働かせることができます。

労働者の不利益が大きいため、あくまで例外であり、厳しい要件を遵守せねばなりません。
具体的には、特別条項は「臨時的な特別の事情」がないと適用できません。
「臨時的な特別の事情」と認められる例、認められない例は、例えば次の通りです。

【認められるケース】

  • 突発的に起こったトラブルへの対応
  • 大規模なクレームへの対応
  • セールなど季節性の業務量増
  • その他、通常予見できない業務量の大幅な増加

【認められないケース】

  • 退職者が出たため人員が不足している
  • 恒常的に業務が多忙である

こうした事情もなく、安易に特別条項を適用して残業させるのは36協定違反です。
また、特別条項を適用できる場合も無制限にならぬよう、延長時間と延長回数については、更に法律上の上限が定められています。

  • 年720時間以内
  • 1ヶ月の平均が月100時間未満(休日労働を含む)
  • 2〜6ヶ月の平均が月80時間以内(休日労働を含む)

※特別条項が適用できるのは、年に6ヶ月が限度となる

引用元:時間外労働の上限規制(厚生労働省)

これらの特別条項適用時の上限についても、守られない場合には36協定違反の違法があります。

残業代請求に強い弁護士への無料相談は、次に解説します。

36協定に違反があったときに対処法

次に、36協定違反を発見したときの、労働者側の対処法を解説します。
36協定に違反して残業を強いる会社に対し、我慢するのは良い対応とはいえません。

多くのケースで、36協定違反の事実が発覚するのは、労働者が声を上げたからです。
違反の証拠を集め、労働基準監督署に助けを求めなければ積極的な改善は望めません。

独力では難しい場合、弁護士への相談を視野に入れて進めてください。

会社に36協定違反を解消するよう求める

まず、会社に対し36協定違反を指摘し、解消するよう強く求めましょう。
労働法に疎く、悪意のない違反ケースなら、対策がとられることを期待できます。

企業側で実施すべき36協定違反の対策は、例えば次の通りです。

  • 適法な36協定を結び、労働基準監督署に届け出る
  • タイムカード、勤怠管理システムを導入し、労働時間を正確に把握する
  • 残業の許可制、固定残業代などの制度が適法に運用されているか検討する
  • テレワーク、リモートワークのルールを整備する
  • 以上の点について、決定事項を労働者に周知する

ただし、上記のものはあくまで一例で、それ以外にも労働者の健康に配慮し、無理のない労働時間となるよう管理することが、安全配慮義務の内容となります。

長時間労働の相談窓口についても参考にしてください。

36協定違反の証拠を集める

36協定の違反について責任を追及したいとき、まずは証拠を集める必要があります。
労働基準監督署に相談する際、証拠に基づく説明をする方が説得的です。

社内にいれば明らかに分かる違法行為も、外部の人は証拠なしには理解できません。
36協定違反の違法な実態について証明すべく、次の証拠をご準備ください。

  • 36協定の写し
  • 残業のルールを示す資料(雇用契約書、就業規則、賃金規程など)
  • 実労働時間のわかる資料(タイムカード、業務日報、PCのログ労働者作成のメモなど)
  • 違法な残業を命じる内容のメール、チャット、録音など

また、証拠集めは、自分の働き方を理解するきっかけにもなります。
よく見つめ直し、職場に違和感や異常を感じたら、退職や転職も検討すべきです。

残業の証拠については、次に解説します。

労働基準監督署に通報する

労働基準監督署は、労働基準法をはじめ法令の遵守をチェックする行政機関です。
労働基準法違反である36協定違反は、まさに労働基準監督署の扱うトラブルの典型例。
被害を通報すれば、臨検や是正勧告によって対処される可能性は高いです。

立入り調査が決行される場合、証拠の隠滅や偽装を防ぐべく、基本は予告なく進みます。
36協定違反が明らかになれば、是正勧告書を会社に交付し、改善の兆候が見られなければ刑事処分を下される可能性も上がります。

労基署の是正勧告について、次に解説しています。

未払いの残業代を請求する

36協定違反の会社は、労働基準法の他の条項にも違反がある可能性が大いにあります。
36協定は、残業に関するルールの根幹だからです。
なかでも未払い残業代の問題は深刻です。

ただし、労働基準監督署はあくまで違反の是正にとどまります。
是正の結果として一定額の残業代が払われることはありますが、残業代について直接交渉してくれることはなく、労働者自身で会社に請求せねばなりません。

なお、弁護士に任せた方が、専門知識に従って正確に計算し、効率よく回収できます。

残業代の請求書の書き方は、次に解説しています。

弁護士に相談する

36協定違反を通報しても、違法性が軽微だと労働基準監督所は動かないおそれもあります。
残業代請求についても、労働者自身の請求では限界があります。
プレッシャーをかけても、悪質なブラック企業ほど対応してくれないでしょう。

労働者だけでは限界があるとき、ぜひ弁護士に相談ください。
そのような会社にとどまる必要もなく、退職前提で交渉するなら、正当な権利は全て請求すべきです。

労働問題を弁護士に無料相談する方法は、次に解説します。

36協定違反がバレるきっかけとは

36協定違反をわざとする会社ほど、巧妙に隠そうとします。
しかし、労働者がきちんと対応すれば、いずれは違法の事実はバレて明るみに出ます。

36協定違反の事実が隠し通されると働く社員は救われませんから、どのような機会に36協定違反がバレるのか知ることは、労働者側にとっても有意義です。
違法の発覚のきっかけは次のタイミングがあります。

  • 労働者からの通報による発覚
    長時間労働による過重な負担に耐え続ける必要はなく、ただちに労働基準監督署に通報し、36協定違反の事情を明らかにしてもらえるよう対処しましょう。
  • 労働災害が起こることによる発覚
    我慢して働き続けても、いずれは無理が来て健康を崩します。
    うつ病をはじめメンタル疾患も、過重労働を原因とするなら労働災害です。
    労働災害を生じさせ、損害賠償請求することとなれば、36協定違反も共に発覚します。
  • 臨検(立入り調査)、是正勧告による発覚
    社員の通報による「申告監督」の他にも、「定期監督」も実施されており、労働条件の劣悪な企業ほど、36協定違反はバレやすいです。

そして、最終手段として、企業名公表がされれば、社会に広く周知され、信用が低下しますから、この段階に至れば、改善される可能性は高いです。

労災について弁護士に相談すべきケースは、次に解説します。

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、36協定に違反するとどうなるのか、という疑問について解説しました。

36協定の限度時間が、2019年施行の法改正によって労働基準法に定められました。
そのため、36協定への違反は、労働基準法違反に該当します。
労働基準法は労働条件の最低基準を定めるので、違反には厳しい制裁が下されます。
具体的には、刑罰が科され、企業名公表の措置が取られるなどのペナルティがあります。

軽い気持ちで違反した会社も、社会に広く知られ、信用を失う事態となれば焦るでしょう。
36協定違反が常態化した社内では、上司や社長に要求しても対応されない例も多いでしょう。
このとき、違反の証拠を集めて労基署に対応してもらえば、職場環境の改善が期待できます。

もっとも、未払い残業代や、労災で健康を害した場合の慰謝料は、自分で請求せねばなりません。
労働問題で損をしたくないなら、ぜひ弁護士にご相談ください。

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