毎日深夜の帰宅、口を開けば仕事の愚痴ばかり…。辛そうな家族は、ブラック企業の犠牲になっている危険があります。過労死は、社会問題となるほど身近に潜んでおり、他人事ではありません。
夫が過労や激務に殺されそうなとき、家族なら予兆に早く気付き、助けてあげたいところ。仕事を頑張る夫は誇らしいですが、働き過ぎはよくありません。そのために過労死の前兆や、その症状についてのチェックポイントを理解しておく必要があります。
旦那が働きすぎで心配。過労死しないか
旦那が、ブラック企業に入ってしまった
過労死で家族を亡くした遺族から、労災や安全配慮義務違反などの責任追及の相談は多く寄せられます。できるなら亡くなる前に対処したいのは当然ですが、真面目で誠実な夫ほど「もう少し働けば大丈夫だ」など、ブラック企業をかばうことすらあります。夫の意思に沿わないとしても、過労死の前兆が見えているなら有無を言わせず休ませないといけません。
今回は、家族が過労死してしまう危険のある方に向けて、過労死の前兆とその対処法について、労働問題に強い弁護士が解説します。
- 過労死の前兆をチェックするには、ブラック企業の特徴、許されない残業時間を知る
- 過労死の前兆となる症状が出たら、素人判断せず、すぐに医師の診断を受ける
- 家族が過労死しそうなとき、味方になる一方、本人の意思に反しても止める
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過労死の前兆を知るチェックリスト
初めに、過労死の前兆を、4点にまとめました。家族が働きすぎなときはぜひ参考にしてください。
夫が働きすぎて心配なら、手遅れになり過労死してしまう前に気付きましょう。仕事のストレスが過大で、過労死間近となった深刻なケースも、変化はささいな場合もあります。ましてや激務の真っ只中に置かれた本人には気付けない予兆ばかりであり、周囲や家族の目が大切です。
「旦那の会社はおかしいのではないか」「夫の帰りが遅く辛そうだ」という場合、妻もまたイライラして夫婦喧嘩に発展してしまう家庭もあります。いざ過労死してしまってから後悔しないよう、ブラック企業ではないか、まずは無料相談で確認するのも有益です。
「労働問題を弁護士に無料相談する方法」の解説
過労死を起こすブラック企業の特徴
まず、「夫の働く会社が『ブラック企業』ではないか」という側面からのチェックポイントを紹介します。会社側の事情による過労死の前兆は、次の点を確認します。
- 連日の深夜残業が発生しているか
- 毎日の帰宅時間が遅すぎないか
- 朝帰りしてシャワーを浴びてすぐ出勤など、休息時間が少なくないか
- 毎週の休日労働で土日も休めない状況ではないか
- 会社に寝泊まりする状態が何日も続いていないか
たまに数日帰宅が遅いくらいなら、繁忙期の可能性や、もしかしたら浮気や遊びを疑うかもしれません。しかし、連日連夜、深夜残業が重なるようだと、過労死の前兆と見て注意した方がよいです。土日の休日すらろくにとれないのでは、まとめて体を休めることもできません。
残業代の計算において、深夜労働(午後10時〜午前5時の労働)には通常の賃金の1.25倍、休日労働(週1日もしくは月4日の法定休日の労働)には1.35倍の残業代(割増賃金)が払われます。頑張る労働者に対価を与えると共に、「長時間労働させると残業代を払わなければならない」ことによって違法な激務による働かせすぎを禁止する意味もあります。
家族の労働時間が長すぎるとき、収入面についても確認し、正当な対価として残業代を得られているかどうかも確認しておきましょう。
過労死の前兆となる長時間の残業
過労死の前兆のなかで特に大きいのが、長時間の残業です。
36協定の上限(限度時間)である「月45時間、年360時間」が1つの目安です。更に、月60時間の残業は危険信号であり、月80時間の残業は「過労死ライン」と呼ばれます。これは、つまり、月80時間の残業があって不幸にも労働者が亡くなったときは、業務が原因の「過労死」だという認定を受けるという意味です。
なんとか自宅に帰ってこれても、家で仕事をしなければならないケースも。できるだけ残業代を払いたくないブラック企業から持ち帰り残業を強要される例です。
持ち帰り残業が続くと、プライベートとの境目が曖昧になり、常に仕事をしなければなりません。リモートワークが普及した現在、労働時間の把握はますます困難になりました。このことも、過労死しそうな労働者を追い詰める一因となっています。
「持ち帰り残業の違法性」「長時間労働の問題点」の解説
過労死しがちな労働者の特徴
毎晩夫の帰りが遅くて、浮気を疑っているようなうちは、まだ大丈夫でしょう。過労死する労働者には、真面目で誠実、責任感の強いタイプが多いです。
- 重要な仕事を任されたら、そのことしか頭になくなってしまう
- 仕事の気晴らし、気分転換が苦手
- 「会社も大変だから、自分が頑張らないと」と会社をかばう
全労働者が、過労死する前に愚痴を言ってくれるなら気付くのも容易でしょう。しかし、過労死する労働者ほど、ブラック企業でも精一杯尽くします。
「働きすぎて辛いなら、仕事をやめればいいのに」という考えは、過労死しがちな労働者には通じません。過労死に追い込まれる労働者は、責任感から、任された仕事を放ってはおけないもの。「会社のために自分が犠牲になって頑張らなければ」と無理するあまり、ストレスをため込みます。
過労死の前兆となる症状
最後に、夫が働きすぎで心配なとき、その症状や体調に変化がないか、よく観察してください。
過労死が直前に迫るとき、健康状態に変化があるのを見逃さないようにしましょう。過労死してしまいそうな長時間の残業があると、次の症状があらわれることがあります。小さな兆候も、積み重なれば倒れる前触れかもしれず、非常に危険な状態だといわざるをえません。
- うつ病、適応障害の症状が出ている
- 疲れでふらふらしている
- 断続的な胸の痛み
- 睡眠不足で、目が充血している
- 家に帰ってきたときの倒れ込み方が異常だ
- 寝ても疲れがとれない
- 寝付きが悪く、寝てもすぐ起きてしまう
- めまいや立ちくらみがする
- 頭痛がひどい
- 突然、動悸が激しくなることがある
- 食欲がなく、無理して食べても吐いてしまう
家族の方が、過労死の兆候となるような症状を見逃さず、慎重に対処するようにしてください。若いからといって無理は禁物であり、実際、30代でも過労が原因で突然死してしまう人もいます。
なお、病気かと思うとき、個人の判断は危険で、必ず医師の診断を受けましょう。弁護士も、長時間労働や残業代請求などの法律相談では、過労死の前兆となる症状がないか注意しますが、日常的に観察できる家族でなければ、小さな変化は見逃しかねません。
「長時間労働の相談窓口」の解説
過労死を防ぐため家族ができる対処法
では、過労死の前兆を見つけたときにすべき対処法を解説します。過労死という最悪の事態を防ぐため、家族に働きすぎの方がいるとき、ぜひ理解しておいてください。
本当は、「働きすぎ」の状態を改善するのがなにより大切です。しかし、業務が多忙な時期だったり、会社がブラックだったりすれば、言うほど簡単ではありません。会社に期待するのではなく、労働者側の努力によってできる対処をして、過労死を避けるのが得策です。
医師の診断を受ける
まず、家族に、過労死の前兆となる症状があらわれてしまったとき、すぐに医師の診断を受けさせましょう。素人判断は危険ですから、医学的な専門知識によって判断してもらわなければなりません。
自分では深刻さに気づけておらず、「医者にいくほどではない」と言っているうちにひどくなる例もあります。必ず家族の方が、注意して見ておかなければなりません。過労死に追い込まれる責任感の強い労働者は、仕事が多忙だと医師の診断を受けないとか、休んでまで病院に行ってくれないことがありますが、命を失っては元も子もありません。
業務が原因となった病気は、いわゆる労災(業務災害)であり、療養による休業中とその後30日間は解雇制限が適用されます。したがって、仕事を休んだことを責められることはないので心配せず医療機関に足を運びましょう。どうしてもまだ会社に知られたくないなら、有給休暇を取得しても構いません。有給休暇は理由を告げる必要はなく、今後も働き続けたい方にとって波風立てずに済みます。
「有給休暇を取得する方法」の解説
未払い残業代を請求する
ブラック企業が長時間労働を強要する理由は、働かせるほど利益が増えるからです。その背景には、残業代を払わず「タダ働き」させる、サービス残業の強要があります。
残業代を払わずサービス残業をさせれば、労働者を酷使するほど会社の利益になります。このとき過労死が起こっても、ブラック企業にとっては使い捨てのコマといっても過言ではありません。
そこで、残業時間に値する正当な残業代を請求することが、長時間労働の歯止めとなります。会社としても、働かせれば働かせるだけ残業代がかかり、人件費がかさむなら、早く帰してくれるかもしれません。
「サービス残業の違法性」「サービス残業の相談先」の解説
長時間労働の責任を追及する
過労死をしてしまう大きな原因が、長時間労働にあるのは間違いありません。過労死しそうな長時間労働は、たとえ適正な残業代が払われていても、許されません。
過労死を起こしやすいブラック企業では、コンプライアンスが脆弱なもの。パワハラ、セクハラなど労働環境にもストレス原因のある例が多く、いずれも過労死のリスクを加速させます。これらはいずれも会社が労働者に対して負う安全配慮義務に違反しているのが明らかですから、慰謝料請求することで責任追及できます。
「安全配慮義務違反の損害賠償請求」の解説
会社を退職する
過労死してしまうほど労働者を追い込む会社に、これ以上貢献する必要はありません。速やかに会社を退職するのが、過労死を回避する対処法として有効です。家族を酷使されてしまった妻、子の立場からすれば、よく理解いただけるでしょう。
しかし、実際に働きすぎにされている夫のほうが「会社に迷惑をかけてしまう」など、むしろブラック企業を用語するような考えに染まってしまっていることもあります。ワンマン社長の思想のもとで働いていると、いわば洗脳に近い状態のこともあります。
「会社の辞め方」の解説
夫の働きすぎが心配なとき、対応の注意点
最後に、夫の働きすぎが心配なとき、家族の対応における注意点を解説します。夫が過労死してしまいそうな危機的な事態に対処するため、ぜひ理解してください。
家族が心から味方になる
今回の解説は、「家族が、過労死の前兆に気づいてあげてほしい」というもの。まずは家族が味方にならなければ、働きすぎの方を救うことはできません。働きすぎの夫をねぎらい、少しでも過労死を避けるため、心配な気持ちを伝えてください。
- 「帰りが遅くて心配だ」と伝える
- 「家族のために仕事を頑張ってくれてありがとう」と感謝を伝える
- 「たまには自分の身をいたわってほしい」と休息を勧める
しかし、夫の激務を心配するあまり、ねぎらいの言葉をかけすぎると逆効果なことも。かえって妻の一言が夫を追い詰めてしまう例も珍しくありません。過労死しそうな方ほど責任感が強く、会社を悪くいうと逆に反発を招きがちです。
- 「こんなに働かせるなんてブラックだ」といって反発される
- 「会社なんかやめてしまえば」といって責任感のない家族だと思われる
- 「あなたがだめなら私が働く」といって男のプライドを失わせる
このようなとき、妻のした対処が逆に、過労死を加速させるリスクがあります。夫のためを思ってした発言が、本当に気持ちをわかって味方になってあげられていないこともしばしばです。妻子の幸せを思って一生懸命働いている人も多いものです。
企業の特徴や、現在の症状などを踏まえ、「心の問題」でもあるため慎重な対処を要します。ご家族の納得が得られたら、労動者個人でもできる過労死対策から着手してください。
「過労死を防ぐための対策」の解説
本人の意思に反しても過労死は止めなければならない
一方で、本人がどれほど仕事することを望んだとしても、過労死が直前に迫っていると感じるときには、家族は、本人の意思に反しても止めなければなりません。このとき、「強く言ったら嫌われるのではないか」などと気にせず、厳しく接してください。
危機的事態において、まずは医師の診断を受けること、そして、命の危険を回避したら、次に、労働問題について弁護士に相談すること。この2つについて、家族は、本人が望まなくても引っ張っていかなければならないケースがあります。
どうしても家族からの言葉に耳を貸さないときには、客観的な立場である弁護士からのアドバイスが功を奏することもあります。家族を同伴して、劣悪な労働環境についての法律相談をされる方も珍しくないので、ご安心ください。
「労働問題に強い弁護士の選び方」「過労死について弁護士に相談する方法」の解説
過労自殺にも注意する
過剰労働によるトラブルは、過労死だけではありません。働きすぎた結果、ストレスによって自殺してしまう、過労自殺もまた、重大な問題です。
そのため、過労死に繋がりそうな症状だけでなく、過労による自殺の前兆にも注意しなければなりません。追い込まれた労働者は、ふとしたきっかけで死を選んでしまうおそれがあるからです。心不全や脳卒中といった過労死によくある症状だけでなく、うつ病や適応障害など、長時間労働に端を発する精神疾患にも注意してください。
「うつ病で休職したいときの対応」の解説
まとめ
夫が過労死してしまいそうな家庭では、家族による対処がとても大切。家族がブラック企業に酷使されている方は、過労死、過労自殺の前兆を知り、予防に役立ててください。
どうしても働きすぎ、自分を追い詰めてしまう夫を救うには、妻の協力が不可欠です。過労死、過労自殺に追い込まれる責任感の強い労働者に、「すぐに医者へ行く」、「退職する」など正しい解決策を選んでもらうために、弁護士だけでなく、家族の力も必要です。
夫が働きすぎで激務で、過労死、過労自殺してしまうのが心配な方は、ぜひ一度弁護士に相談ください。夫が激務で同行できないとき、まずはご家族の相談だけでも大丈夫です。
- 過労死の前兆をチェックするには、ブラック企業の特徴、許されない残業時間を知る
- 過労死の前兆となる症状が出たら、素人判断せず、すぐに医師の診断を受ける
- 家族が過労死しそうなとき、味方になる一方、本人の意思に反しても止める
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