人手不足や繁忙期など、休みでも出勤せざるを得ないことがあります。
しかし、休日出勤したのに事故に遭ったり、ケガをしたりすれば「踏んだり蹴ったり」です。休日など勤務時間外にしたケガも、労災として認定されるのでしょうか。
相談者勝手な休出なのだから労災ではないと言われた
相談者会社の監督がない事故は自己責任だと言われた
むしろ、イレギュラーな休日出勤ほど、労災に発展するリスクが増しています。休日出勤が続けば疲労が蓄積し、注意散漫になりがちで、思わぬミスや事故につながります。他の社員が出社しておらず、単独作業だと、さらに危険が増大します。
休日出勤中にケガをしたら、会社に補償を求めるべきです。休日出勤中でも、業務による負傷、疾病、障害、死亡は労災として認定される余地があります。
今回は、休日出勤で負ったケガと労災の関係について、労働問題に強い弁護士が解説します。
- 休日出勤中のケガでも、条件を満たす限り労災認定される可能性がある
- 明示又は黙示の休日出勤命令があり、使用者の支配下にあるなら労災となる
- 休日出勤中のケガで労災認定されたら、あわせて適正な損害賠償を請求する
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休日出勤のケガも労災になる

まず、休日出勤のケガも労災になることについて、法的な理由を説明します。
労災の基本
労災は、業務中や通勤中に発生する病気やケガのことであり、要件を満たす場合には、労災保険による補償を受けることができます。
- 業務災害
労働者が就業中に、その業務を原因として負った傷病、疾病または死亡 - 通勤災害
労働者が通勤中に被った傷害など

労災であると認定されると、治療費や休業中の給料の一部などが労災保険給付により補償されます。また、業務中の事故について会社の管理監督が十分でないときは、安全配慮義務違反の責任を追及し、慰謝料その他の損害賠償を請求することができます。
「労災認定基準」の解説

休日出勤と労災の関係
休日には就労義務がないため、本来であれば労災事故の生じる場面ではありません。
それでもなお、休日出勤中は「業務中」であると評価することができ、その最中に事故やケガが起きると、労災に該当するかが問題となります。次の理由で、休日出勤中に事故が起こるリスクは高く、労災認定されないと労働者の保護が不十分になるおそれがあります。
- 多忙のための休日出勤では疲労が蓄積している。
- 平日にないイレギュラーな作業が発生しやすい。
- 他の社員が出社せず、単独作業となるため監視の目がない。
- 「早く終わらせて休みたい」と焦ってしまう。
結論として、「休日出勤である」というだけの理由で労災が否定されることはありません。つまり、休日出勤中であっても、要件を満たせば労災認定を受けることができます。この際の基準は、通常の出勤中と同じであり、「休日出勤における労災の条件は?」の通り、労災の要件である「業務遂行性」と「業務起因性」の2つを満たす必要があります。
「休日返上で仕事を命じられたら?」の解説

管理職の休日出勤と労災
管理監督者(労働基準法41条2号)は、労働時間に関する規定が適用されない結果、休日に出勤しても休日手当(残業代)を受け取ることができません。これを悪用して、管理職扱いする社員のみに休日出勤を命じて負担をかける悪質なケースもあります。
しかし、たとえ管理監督者に該当しても、休日出勤中にケガをしたり、長すぎる休日労働によって精神疾患を発症したりすれば、労災認定を受けることができます。
なお、会社が管理職扱いしていても、「管理監督者」の要件を満たさない場合、いわゆる「名ばかり管理職」であり、残業代を支払わないことは違法です。

「管理職と管理監督者の違い」の解説

休日出勤における労災の条件は?

では、「休日出勤のケガも労災になる」として、労災認定されるための条件を解説します。
以下の要件を満たして労災認定されれば、労災保険給付による補償を受けたり、療養による休業中の解雇が制限されたりといった保護を受けることができます。
休日出勤のケガに「業務遂行性」があるか
まず、労災認定を受けるには、業務遂行性の要件が必要です。
業務遂行性とは、労働契約に基づいて使用者の支配・管理下にある状態のことです。指示に従って傷害や疾病が生じたなら、その責任は会社にあると考えられ、労災認定されるべきだからです。休日出勤中のケガに業務遂行性があるかは、使用者の指示や命令に従って休日出勤をしたかどうかで左右されます。明示的な命令に従って休日出勤をしたなら、最中のケガは労災といえます。
見た目は自発的な休日出勤でも、期限やノルマがあったり、会社から強いプレッシャーがあったり、実質的に強要されたものである場合、業務遂行性が認められる余地があります。
「休日出勤の強制と断る方法」の解説

休日出勤のケガに「業務起因性」があるか
次に、労災認定されるには、業務起因性も必要となります。
業務起因性とは、その傷病が、業務を直接の原因として生じているという意味です。業務に内在する危険が実現したことで生じたケガは、業務起因性を認めるのが原則です。一方で、災害や自然現象、私的行為や規律違反など、業務外の要因で生じたケガについては業務起因性が否定されます。業務遂行性がない場合にも、原則として業務起因性も否定されます。
以上のことは、通常の出勤中でも休日出勤中でも同じであり、休日出勤中に業務に内在する危険によって生じた傷病は、労災認定される可能性があります。
「労災について弁護士に相談すべき理由」の解説

休日出勤のケガが労災になるケース、ならないケース

次に、休日出勤中のケガが労災になるケース、ならないケースを、具体例で解説します。
「休日出勤における労災の条件は?」で解説した2つの条件を満たす限り、休日出勤中でも労災認定されます。手続きについても通常と同様、まずは会社の協力を求めましょう。
ただし、「休日出勤中は労働者の自己責任である」という誤った考えから、労災申請に協力しない会社の場合、労働者自身で手続きを進めるしかありません。この際、どのようなケースで労災申請すべきか、法律知識を身に付けておくべきです。
休日出勤命令を受けた場合、労災になる
休日出勤を前もって指示され、ケガをしたケースは、労災になる典型例です。業務命令で休日の出社を命じられれば従うしかなく、その休日出勤は業務そのものとなるからです。労働契約上、休日に労働義務はないのが原則ですが、正当な業務命令があれば使用者の支配下に置かれます。
あらかじめ命じられていなくとも、当日に急遽呼び出されるのも業務命令の一環となり、その最中のケガも労災として認定されます。
なお、業務命令による休日出勤であれば、その対価として通常の1.35倍(35%割増)の残業代(休日手当)を受け取ることが可能です。
「休日手当」の解説

無断の休日出勤の場合、労災にならない
無断の休日出勤中だと、ケガをしても業務災害にならないのが原則です。なぜなら、会社の命令を受けておらず、使用者の支配・管理下にあるとは言えないからです。完全に自主的に出社した場合、労働基準法上の「労働時間」にもならず、残業代を受け取ることもできません。
ただし、黙認されたり、事実上強制されたりする場合との区別が難しいため、慎重に見極めるべきです。会社から「無断なら自己責任」と言われるまま鵜呑みにしてはいけません。
「労災を会社が認めない時の対応」の解説

休日出勤がやむを得ない場合、労災になる
無断や無許可であっても、出社せざるを得ないことには何かしらの理由があるでしょう。
その理由が、次のような会社からのプレッシャーや圧力であれば、その最中のケガは労災認定を受けられる可能性があります。この場合、休日手当も発生します。
- 他の社員も休日出勤している。
- 繁忙期は休日も休まないのが社員間で暗黙の了解になっている。
- 社長や上司も一緒に休日出社し、黙認している。
- 休日出勤しなければ終わらない厳しい期限やノルマがある。
- 休日出勤しないと評価を下げられる。
人手不足だと、違法なサービス残業が当然視されている職場もあります。このとき「休日出勤だから労災は適用されないだろう」とあきらめないでください。黙示に命令されていたり、黙認されていたりするなら、労災認定される可能性は十分にあります。
「サービス残業の違法性」の解説

無断の休日出勤による事故は解雇のリスクあり

無断の休日出勤でケガをした際のデメリットは「労災認定されない」だけにとどまりません。
休みなのに無断で出社することは、会社から問題行為と評価されることがあります。会社が明示的に指示していなくても、放置したり黙認していたりすれば休日手当を支払う必要があります。また、休日の出社を放置して労災事故が起きれば、ブラック企業のイメージが広がりかねません。
こうしたリスクを避けるため、休日出勤を許可制とすることを就業規則に定める会社もあります。このとき、無許可の休日出勤は注意指導や懲戒処分の対象となるおそれがあります。その最中に大きな事故を起こせば、最悪の場合、懲戒解雇される危険もあります。
なお、休日出勤中のケガが労災(業務災害)として認定されれば、その療養のための休業中とその後30日は解雇が制限されます(労働基準法19条)。
「解雇の意味と法的ルール」「不当解雇に強い弁護士への相談方法」の解説


休日出勤における適正な損害賠償について

休日出勤中のケガが労災認定される場合、あわせて損害賠償請求をしましょう。
労災として認定される「業務災害」である場合、会社が労働者に対して負うべき安全配慮義務にも違反している可能性が高いといえるからです。
このとき、労働者は会社に対し、次のような請求が可能です。
- 治療費
- 休業損害
- 入通院の期間に応じた精神的苦痛に対する慰謝料
- 後遺障害が残存した場合にはその程度に応じた慰謝料
使用者(会社)は、労働者が健康で安全な環境で働けるよう配慮しなければなりません。そして、この安全配慮義務は、休日の出社が明示的であったり、黙認されていたりする場合、たとえ休日出勤中であっても免除されることはありません。
したがって、労災認定の要件となる「業務遂行性」「業務起因性」を満たすケガの場合、たとえ休日であっても、安全配慮義務違反となる可能性が高いと考えられます。


【まとめ】休日出勤中のケガと労災

今回は、休日出勤中のケガが労災認定を受けられるかどうかを解説しました。
休日は大切なリフレッシュの機会ですが、業務が多忙だと出勤せざるを得ないこともあります。その挙げ句、ケガをしてしまっては元も子もありません。熟練者でもふとした油断でミスや事故を起こしてしまうことがあり、休日出勤でも気を抜けません。
休日出勤でケガを負ったら、労災の申請をしてください。休日出勤中のケガでも、「業務遂行性」と「業務起因性」という要件を満たせば、労災として認定されます。ただし、無断の休日出勤だと、労災認定されないリスクがあるため、「仕事が終わらない」「評価されたい」といった気持ちがあっても勝手に出勤はせず、会社に報告するようにしましょう。
休日出勤中にケガをした場合、特に会社から「休日なので労災申請には協力しない」と言われたときは、ぜひ一度弁護士に相談してください。
- 休日出勤中のケガでも、条件を満たす限り労災認定される可能性がある
- 明示又は黙示の休日出勤命令があり、使用者の支配下にあるなら労災となる
- 休日出勤中のケガで労災認定されたら、あわせて適正な損害賠償を請求する
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