労働者として働いていると、どうしても休日を返上せざるをえないことがあります。
社長や上司から強く指示されると、拒否できない方も多いでしょう。
土日を利用した研修に、強制的に参加させられる
週明けまでにすべき課題が、たくさん与えられる
休日は、労働者が心身を休めるため、大切なもの。
研修や課題で、休日返上せざるをえないと、休養をとれなくなってしまいます。
ワークライフバランスが崩れ、心身の健康にも悪影響です。
その上、休日を返上した分の残業代すら払われないケースが多いです。
週末の土日に、仕事せざるをえないなら、少なくとも休日手当は請求できて当然です。
今回は、会社の研修や課題で、休日返上となった労働者の対応について、労働問題に強い弁護士が解説します。
土日をつぶらせてしまったとき、正しい対応策を理解しましょう。
- 休日返上の業務命令が、違法ないし不当なら、従う必要はない
- 休日返上分の残業代が払われなかったり、長時間労働となったりするときは拒否できる
- 休日返上での課題、研修がやむをえないなら、休日手当を請求することができる
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休日返上で仕事を命じられたら、応じる必要はある?
会社から、休日返上で仕事するよう命じられたら、どう対応するのが適切でしょうか。
休日返上で、仕事を命令されるケースには、次の例があります。
- 明らかに業務時間内に終わらない課題を、週末に与えられた
- 大量の業務の締め切りが、週明け早々に迫っている
- 土日にしか受講できない研修がある
- 休日返上で仕事を終わらせないと「能力不足」といわれる
- 他の社員も、休日返上で働くのが通例となっている
責任感の強い労働者ほど、仕事を放置して休みをとれないでしょう。
休日をとっても仕事が気になり、結局は休日返上で働かざるをえなくなることも。
ブラック企業だと、休日返上しない社員は「職務怠慢」と評価され、責められてしまいます。
休日返上して仕事をするよう命じられたら、従う必要があるでしょうか。
休日に働くよう命じることを「休日労働命令」といいます。
休日労働命令は、残業命令の一種で、業務命令の性質を持ちます。
そのため、適切にされるならば、命令に従わなければなりません。
しかし、休日の残業代が払われないなら、その命令は適切でなく、従う必要はありません。
違法な命令に従って休日返上したところで、残業代は払われず、報われません。
また、たとえ残業代がもらえても、毎週末休日を返上して働くなど、労働が長時間すぎるときには、その点でも違法となりますから、健康に配慮しない会社の命令には、従う必要はありません。
違法な残業命令の拒否について、次に解説します。
休日返上で仕事の課題をするよう指示された時の対応
休日返上するよう、会社から命令されても、従う必要のないこともあると解説しました。
そこで次に、休日返上で仕事の課題をするよう指示を受けたら、どう対処すべきか説明します。
あえて「土日返上で」と命令されなくても、明らかに業務時間では終わらない課題なら同じこと。
結局は、休日を返上せざるをえないときも、労働者として正しく対処してください。
業務命令が正当か確認する
労働者は、労働契約により、業務命令には従わなければなりません。
しかし、会社の業務命令といえど、正当なものでなければ、従う必要はありません。
休日返上で仕事の課題をするよう指示する業務命令が、正当かどうか、次の順でご検討ください。
- 休日返上の業務命令について、「契約上の根拠」があるか
- 業務命令に、「業務上の必要性」があるか
- 必要性に対して、相当な範囲内の命令かどうか
休日返上をする必要のない状況なら、その命令は不当です。
締め切りがそれほど切迫していなかったり、週明けでも間に合う業務だったりするケースです。
また、業務上の必要性があれど、明らかに長時間労働となる命令も不相当といえるでしょう。
休日返上せず、週明けに対応する
休日返上についての業務命令が不当ならば、拒否するようにしましょう。
このとき、休日返上をしないということは、週末の土日には働かないということ。
会社から命じられた業務については、週明けに対応すれば足ります。
この場合、業務命令が違法なら、それに従わなかったからと不利益な処分はできません。
休日返上させる必要もないのに、休日に仕事をしなかったからという理由で「能力不足」と評価して給料を下げたり、「職務怠慢」と評価してクビにしたりするのは、違法の可能性が高いケースです。
休日労働の残業代を請求する
どうしても休日返上で仕事の課題をせざるをえないなら、残業代を請求しましょう。
会社からの業務命令で、休日に課題を片付けるよう指示されるケース。
悪質な会社でこれに従わないと、業務命令違反として懲戒処分や、最悪は解雇など厳しい処分を受けます。
週末の土日をつぶさざるをえないと、プライベートが減ってしまいます。
少なくとも、その分の残業代くらいは請求したいところです。
休日といえど、返上させられ、資料を読んだり課題をしたりしたなら「労働時間」。
つまり、その時間には、休日手当が発生します。
残業代は「1日8時間、1週40時間」の法定労働時間を超える時間に対して払われます。
いわゆる週休2日制の場合には、そのうち1日は法定休日。
そのため、土日の片方がつぶれれば、通常の給料の1.25倍、土日の両方がつぶれれば、通常の給料の1.35倍の割増賃金(残業代)を、その返上させられた休日の労働時間に対して請求できます。
休日手当の請求について、次に解説します。
休日返上で研修に参加するよう命じられた時の対応
ここまでの解説は、「仕事の課題を命じられ、事実上、休日返上せざるをえない」というケース。
しかし、もっと悪質なのは、休日返上せざるをえない研修のある会社です。
週末の土日に研修を受けさせられ、さらに課題や宿題を課されるといった場合です。
このように休日返上の研修への参加を命じられたときの対応についても、解説します。
強制参加の研修なら労働時間になる
休日に行われる研修は、自由参加だったり任意だったりすれば、労働時間にはなりません。
その分、労働者としては、その研修に参加しなくてもよいといえます。
「休日なのだから、拒否することも、労働者の自由」というわけです。
しかし、休日返上の研修に、強制参加させられるなら、労働時間になります。
例えば、次の場合、休日を返上した分は、残業代請求をしたほうがよいでしょう。
- 明示的に、休日返上の研修に、参加が強制されている
- 「自由参加」とはいいながら、参加しないとペナルティがある
- 休日返上の研修に参加しないと、仕事がもらえない
- 休日返上の研修にみな参加しており、不参加だと仲間はずれにされる
このようなとき、実作業をしている時間でなくても、労働時間になります。
研修でも「使用者の指揮命令下に置かれている時間」にあてはまるなら労働時間といえるからです。
さらに、業務時間には研修や課題をしないよう指示されたり、それだと業務時間内には終わらないのが明らかな分量の研修や課題を指示されたり、提出締め切りが週明けで、休日返上でないと間に合わない場合などもまた、残業代をもらえる可能性が高いです。
労働時間の定義について、次に解説しています。
代休の交渉をする
どうしても業務に必要な研修が、休日に予定されているケースもあります。
休日返上にて研修に対応する必要があるなら、代休の交渉をする手も有効です。
代休とは、その名のとおり休日返上の「代わりに休むこと」をいいます。
代休がもらえれば、その分、本来は業務日だった日を休日にできます。
その結果、休みをとった分の給料と相殺して、休日返上分の残業代の元をとることができます。
振替休日と代休の違いについて、次に解説します。
休日返上の研修について残業代を請求する
会社からの指示、命令にしたがって休日を返上したなら、残業代請求できます。
これは、休日に強制参加させられた研修の時間でも同じことです。
できるだけスムーズに残業代を払ってもらうには、労働者が泣く泣くした休日返上が、会社の命令であると明らかにしておかなければなりません。
休日の研修では特に、会社の命令で強制参加させられたと証拠に残しておくのが大切です。
休日返上の研修について、書面を交付されていれば、必ず保存しておいてください。
メールやチャットなどで休日の研修参加を命じられたら、「休日返上すべきか」「強制参加かどうか」を質問し、その回答を保存しておくのがお勧めです。
未払い残業代請求の内容証明について、次に解説しています。
まとめ
今回は、休日返上で仕事を命じられたとき、労働者側の対応を解説しました。
週末の土日や祝日、研修に参加させられ、課題をせざるをえないこともあるでしょう。
泣く泣く働かざるをえず、休日返上となったら、まずは休日の残業代を請求しましょう。
残業代をもらえないと、休日返上のうえ、残業代未払いの違法も積み重なってしまいます。
明示的に休日返上するよう指示された場合だけではありません。
週末に作業せざるをえない状況に追い込まれるといったケースもまた、残業代請求できます。
また、休日返上の研修や課題を強制され、健康を害したこともまた、会社に責任追及できます。
- 休日返上の業務命令が、違法ないし不当なら、従う必要はない
- 休日返上分の残業代が払われなかったり、長時間労働となったりするときは拒否できる
- 休日返上での課題、研修がやむをえないなら、休日手当を請求することができる
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