就職活動、転職活動で問題となるのが、圧迫面接。
多かれ少なかれ、採用面接ではプレッシャーを感じることが多いでしょう。
明らかな暴言、罵声などは減りましたが、不当な扱いは少なくありません。
「ストレス耐性を見極める」という口実のもと、圧迫面接はなくならないからです。
まったくストレスなく、緊張感のない採用面接などありません。
しかし、限度を超えた圧迫面接は違法です。
あまりにひどい圧迫面接をされたら、会社に責任追及すべきケースもあります。
(少なくとも、そんな会社はハラスメントの温床であり、入社は止めましょう)
今回は、圧迫面接の違法性と、責任追及の方法について、労働問題に強い弁護士が解説します。
- 圧迫面接は、民事・刑事の両面から、違法となる可能性がある
- 軽度の圧迫面接の責任を、訴訟で追及するのは採算が合わないおそれあり
- 圧迫面接に合わない対策、圧迫面接時における証拠収集などの防止策が大切
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圧迫面接とは
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圧迫面接とは、採用面接で、求職者に不当な圧力を加えること。
社長や面接担当者の、圧迫するような発言や行動により行われます。
採用面接は、ストレス耐性を見る場でもあります。
緊張感に耐えられない求職者は、採用され、入社しても活躍できないでしょう。
その意味で、圧迫面接そのものは、企業側にとって一定の合理性があります。
なので、求職者が圧迫感を抱いたといっても、ただちに違法な圧迫面接だとは限りません。
よくある圧迫面接の具体例は、次のケースです。
- 意図的に、答えづらい質問を投げかける
- 質問に答えられなかったことを過度に責める
- 人格否定的な発言をする
- 限度を超えて「なぜ」と理由を求める
- 強い語気で求職者を攻め立てる
- 求職者の考えに、威圧的に反論する
これらの言動を、採用面接で受けたら、圧迫面接を疑いましょう。
面接ですから、議論が起こるのはよくあること。
価値観や考え方が、その会社に合った人材を選ぶのが面接をする目的です。
しかし、「それならうちの会社には要らない」「他社に行けばいいのではないか」「今日来た意味ある?」「きちんと募集要項を読んだ?」など、言い方が不適切になると、違法な圧迫面接の可能性が高いです。
採用段階の問題も、弁護士に相談できます。
労働問題に強い弁護士の選び方は、次に解説しています。
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圧迫面接が違法となるケースがある
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圧迫面接されると、「違法ではないか?」と感じる方は多いです。
圧迫面接の結果、不採用になればなおさらです。
面接が違法だったとわかれば、不採用でも残念には思わないでしょう。
違法な面接を放置するような会社に入社せずに済んだのは、喜ばしいこと。
しかし、圧迫面接のせいでうつ病にかかる人もいます。
現実に不利益が生じると、圧迫面接に法的な問題がないかどうか、気になるでしょう。
次に、圧迫面接が違法となるケースを解説します。
不法行為に当たる
圧迫面接が、不法行為(民法709条)に当たるならば、違法です。
不法行為とは、故意または過失による権利侵害のこと。
これによって損害が生じたら、慰謝料をはじめ、損害賠償を請求できます。
圧迫面接をした採用担当者の言動が、不法行為に当たる場合がその典型例。
面接中に罵倒などされれば、人格権という重大な権利の侵害です。
これによって健康状態が侵害されれば、不法行為だといえます。
圧迫面接の言動が不法行為にあたるかは、採用選考のために必要かどうかがポイントです。
能力や適性を見るなど、選考に不要ならば、違法な圧迫だといってよいでしょう。
会社に使用者責任が生じる
圧迫面接が不法行為にあたるなら、その責任は、面接を担当した個人だけではありません。
採用担当者は、仕事として採用面接に対応しています。
その結果として、圧迫面接が起こったなら、それを防がなかった会社の責任でもあります。
このとき、会社は、不法行為者を雇用する者として、使用者責任(民法715条)を負います。
男女雇用機会均等法に違反する
圧迫面接のなかでも、男女差別は、さらに大きな違法がある可能性もあります。
それが、男女雇用機会均等法に違反するケースです。
採用面接のなかで、ハラスメントがあれば違法なのは当然。
圧迫面接の場面でされるセクハラやパワハラは逃れることができません。
その分だけ、違法性が特に強いといえます。
性的な事情を回答させられたり、罵詈雑言をあびせたりといったハラスメントは、女性を被害者とするものはもちろんのこと、男性に対する発言や言動でも、違法な圧迫面接となります。
採用における違法な差別の対応は、次に解説します。
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強すぎる圧迫面接は、刑事罰が科される
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圧迫面接の違法性は、民事上の責任ばかりではありません。
圧迫が強すぎると、刑事責任が発生することもあります。
つまり、採用面接における担当者の不適切な言動が、犯罪行為となることもあるのです。
名誉毀損罪
圧迫面接で成立しうる犯罪の1つ目が、名誉毀損罪。
公然と事実を摘示して名誉を毀損した場合に成立する犯罪です。
名誉毀損罪は、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金に処されます(刑法230条)。
圧迫面接で、名誉を毀損されるケースは、次の例です。
- 集団面接で、履歴書を読み上げられた
- 会社のみに伝えていた秘密を、面接時にバラされた
- 前科・前歴を面接時に詳しく聞かれた
これらの行為により、社会的な評価が低下したら、名誉毀損罪に当たるおそれがあります。
侮辱罪
2つ目に、圧迫面接では、侮辱罪に当たる行為もあります。
侮辱罪は、事実を摘示せずに、公然と人を侮辱すると成立する犯罪。
「事実を摘示しているかどうか」が名誉毀損罪との違いです。
法定刑は、1年以下の懲役もしくは禁錮または30万円以下の罰金または拘留もしくは科料です(刑法231条)。
圧迫面接のなかで「バカ」「アホ」「給料泥棒」など、人格否定をすれば、侮辱罪にあたります。
脅迫罪
3つ目が、脅迫罪の例です。
人の生命、身体、自由、名誉、または財産に害を加えると告知して脅迫すると成立。
2年以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます(刑法222条)。
圧迫面接で、会社担当者から脅されたら、脅迫罪の可能性があります。
例えば、「態度が悪いから、個人情報を晒すぞ」といったケースなど。
採用の場面では、選ばれる側の労働者は、どうしても弱い立場です。
圧迫面接における威圧的な態度が、度を越すと、脅迫に当たりやすくなります。
圧迫面接をされたときの対処法
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採用面接で圧迫面接にあってしまったとき、どう対処したらよいでしょうか。
ひどい圧迫面接には法的責任を追及する一方、軽度だと、我慢してしまう方もいます。
まず、ブラック企業の入社は止めるべきです。
しかし、現実は、どうしても入社したい、採用面接を受けざるをえない方もいるでしょう。
このとき、圧迫面接への適切な対処法を理解してください。
応募する企業を調査する
まず、応募する企業をよく調査しておきましょう。
これは、就職活動にあたり、業界調査、企業調査としても有益です。
圧迫面接をよくする会社は、ネット上の評判でわかるケースも多いものです。
圧迫面接を録音する
面接を録音することは、圧迫面接への有効な対処法となります。
録音すれば、圧迫面接の一部始終を、証拠に残しておけるからです。
あとで弁護士に聞いてもらえば、違法かどうかも判断してもらえます。
なお、無断で録音しても、内容を公開しないならば問題はありません。
また、違法な圧迫面接が行われたなら、承諾なくした録音も、証拠として活用できます。
パワハラを録音する方法は、次に解説しています。
応募した企業に改善を求める
圧迫面接が、採用担当者の一存で行われていたときは、応募した企業に改善を求めましょう。
コンプライアンスを重視する会社なら、採用担当者に注意し、改善してくれます。
ケースによっては、その担当者が不適任だったということになるかもしれません。
ただ、最終面接における社長の圧迫面接などだと、企業全体の体質だと考えざるをえません。
パワハラのもみ消しに対抗するため、内部通報について次に解説します。
弁護士に相談する
圧迫面接の被害がひどいときには、弁護士に相談するのも有効です。
例えば、採用担当者からのセクハラがストーカーに発展するケースなど、労働者が一人で対応して解決するのは、至難の業だといえるでしょう。
ハローワーク経由の就活などなら、行政機関への相談もお勧めです。
ただ、あくまで指導があるだけで、不利益を回復してくれることはありません。
弁護士なら、圧迫面接をなくすため、会社に警告書を送付してくれます。
圧迫面接を社会からなくすのも、大きな意味があるでしょう。
圧迫面接は、パワハラの一種でもあります。
パワハラの相談窓口についての解説も参考にしてください。
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圧迫面接を受けたら訴訟できる?
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最後に、あまりにひどい圧迫面接における、被害回復の対処について解説します。
被害回復の方法としては、慰謝料請求などの訴訟があります。
「違法性があるなら、訴訟で戦いたい」という気持ちの方もいるでしょう。
人によっては、「圧迫面接の仕返しをしたい」と報復感情を持つ方もいます。
ただし、訴訟するかどうかは、慎重な判断が必要です。
訴訟で勝つには証拠集めが必要
圧迫面接で、法的責任が発生するにせよ、証拠がなければ訴訟は勝てません。
訴訟で自分の主張を認めてもらうには証拠による立証が必要です。
とはいえ、圧迫面接の場合、証拠が集まらないケースもあります。
就職活動を頑張っているなか、採用面接を録音している人はまれでしょう。
大体の例では、実際の面接の場面ではじめて、圧迫面接だとわかります。
個人面談では、証言もとれません。
会社のオフィスで行われますから、防犯カメラがあるなどということもないでしょう。
集団面接でも、他の求職者が協力的に証言してくれることもありません。
ハラスメントを証明するのに必要な証拠は、次に解説します。
訴訟には費用倒れのリスクがある
証拠をしっかりと集めて、訴訟をするときにも、一度踏みとどまり検討してください。
かかる費用を見積もらないと、慰謝料としてもらえる金額と見合わないおそれがあります。
訴訟費用に加え、弁護士費用をあわせると、決して安い金額ではありません。
さらに、パワハラの慰謝料は、思いのほか低い金額となる危険もあります。
弁護士費用について、次の解説を参考にしてください。
![](https://roudou-bengoshi.com/wp-content/uploads/2022/03/bengoshi-300x169.jpg)
SNSや口コミで個人名や会社名を晒さない
法的手段をとるのでなく、社会的制裁を加えたいと相談される方も多くいます。
しかし、SNSやネットの口コミなどで仕返しをするのは避けたほうがよいです。
会社から、名誉毀損だといって逆に訴えられるリスクがあるからです。
インターネットは決して匿名ではありません。
発信者情報開示請求という手段で、書き込みした人を特定することが可能な場合も多いです。
思いつきで晒し行為をすれば、自分が痛い目を見てしまいます。
ネットやSNSで会社の名誉毀損をした際の責任も参考にしてください。
![](https://roudou-bengoshi.com/wp-content/uploads/2017/05/pc-sumaho-300x169.jpg)
まとめ
![弁護士法人浅野総合法律事務所](https://roudou-bengoshi.com/wp-content/uploads/2022/03/asanosougou-zentai.jpg)
今回は、圧迫面接が違法となる可能性がある点について、対策とともに解説しました。
会社にとって、求職者の能力を図る目的があるのはやまやまです。
それでもなお、採用面接は、公正に行われる必要がばあります。
圧迫面接で威圧されてつらいなら、不法行為として慰謝料請求できる可能性があります。
なお、違法とはいえ、被害が大きくないと、訴訟で責任追及は難しいケースもあります。
まずは、証拠をとり、会社に改善を求めるようにしましょう。
また、圧迫面接にあってしまわないよう、その場での対処が重要です。
- 圧迫面接は、民事・刑事の両面から、違法となる可能性がある
- 軽度の圧迫面接の責任を、訴訟で追及するのは採算が合わないおそれあり
- 圧迫面接に合わない対策、圧迫面接時における証拠収集などの防止策が大切
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