試用期間中に、解雇されてしまうケースがあります。
試用期間は軽視されやすいですが、単なる「お試し」ではありません。
少なくともまだ、試用期間が残るなら、すぐクビにするのは不当解雇の可能性あり。
試用期間での解雇では、特に「能力不足」が理由とされることが多いです。
しかし、試用期間に正しい対応をしなければ、能力は図れません。
まして試用期間の途中で解雇するのは、能力を十分見ていないといわざるをえません。
新卒社員は特に、試用期間で解雇されるとダメージが甚大。
大切な新卒資格を失い、次は中途採用として転職せざるをえません。
このような悪質な試用期間中の解雇には、相当高額の解決金を認めた裁判例もあります。
今回は、試用期間における解雇について、労働問題に強い弁護士が解説します。
- 試用期間は能力・適性の見極め期間であり、能力不足などを理由に解雇されやすい
- 試用期間中、試用期間後の解雇、いずれも、正当な理由がないと違法な不当解雇
- 注意指導なしに、成果が出ないのを理由に、試用期間で解雇するのは許されない
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試用期間における解雇とは

試用期間とは、入社後の一定期間、能力や適性を試すための期間です。
試用期間といえど、労働契約を結んでいるのは当然。
なので、労働者として、手厚く保護されるべきです。
しかし、評価の結果、不適格とされると、解雇されてしまうケースがあります。
試用期間の前後では、さまざまなタイミングで解雇されることがあります。
しかし、いずれの解雇にも、正当な理由を要します。
解雇権濫用法理に従い、客観的に合理的な理由、社会通念上の相当性がなければ、違法な「不当解雇」として無効になります(労働契約法16条)。

試用期間を「お試し」と甘く見るブラック企業では、解雇が横行します。
試用期間における解雇のケースにどんなものがあるか、まず解説します。
試用期間中の解雇
まず、試用期間中に解雇されるケースです。
つまり、試用期間の内に、会社が一方的に、労働契約を解約する場合。
この場合、当然ながら、解雇には正当な理由を要します。
試用期間は、見極めの期間として、適切な月数を会社が設定しているはず。
そうである以上、その期間だけはきちんと評価せねばなりません。
試用期間中に解雇できるのは「すでに能力・適性がないと明らかな場合」に限ります。
残りの期間、注意指導をしても、改善しないだろうと見込まれるケースなどです。
この場合、試用期間だけ雇い続けなくても、すでに解雇すべきことが明らかだからです。
試用期間満了時の解雇(本採用拒否)
試用期間満了時に、解雇するケースもあります。
この処分を、法律用語で「本採用拒否」といいます。
解雇と、本採用拒否は、区別して考えなければなりません。
試用期間満了時であれば、一応、決められた期間はきちんと見極めたこととなります。
したがって、試用期間中の解雇よりは、有効になりやすいと考えられます。
つまり、試用期間における解雇と本採用拒否の違いは、有効と認められるハードルの高さ。
とはいえ、労働者保護のため、理由なく解雇することはできないのは当然です。
試用期間後の解雇
最後に、試用期間が終わった後、本採用されてからクビになるケースもあります。
しかし、試用期間後の解雇は、かなり厳しく判断されます。
というのも、試用期間を通過したということは、能力、適性があったということだから。
少なくとも、試用期間で辞めさせるほどひどくなかったのでしょう。
したがって、そのときにわかっていた事情を理由としては、解雇は許されません。
不当解雇はすぐ弁護士に相談すべきです。
不当解雇に強い弁護士への相談は、次に解説します。

試用期間における解雇理由は「能力不足」が多い

試用期間における解雇で、最もよく理由にあがるのが、能力不足。
つまり、会社が必要とする能力が、労働者に足りていないという理由です。
確かに、試用期間は、能力が足りるかを判断する期間です。
なので、能力不足を理由にすれば、試用期間で解雇できるかのように見えます。
しかし、能力不足による解雇ほど、不当解雇をまねきやすいです。
それは、あくまで会社の指導や教育が、前提となっているから。
試用期間に解雇してしまう会社ほど、期間中の教育は不十分な傾向にあります。
特に、新卒採用や、未経験者だと、能力不足はむしろ当然で、解雇理由にはなりません。
新卒採用や、未経験者は、労働契約上も、十分な能力があることは前提とされていません。
試用期間における解雇が違法となるケース

試用期間中、試用期間後の解雇は、制限されています。
次に、試用期間における解雇が、違法となるケースにどんな例があるか、解説します。
正社員の解雇よりはハードルが低いものの、理由なくクビにはできません。
合理的な理由があり、社会通念上も相当でなければ、不当解雇となってしまいます。
教育・指導なく解雇する場合
1つ目は、教育、指導なく、試用期間で解雇するケース。
能力不足でも、注意、指導したり教育したりしなければ、解雇はできません。
このことは、入社当初の試用期間中ほど、まさにそうです。
その会社に特有の能力など、注意指導なしに身に着かないものもあります。
これらは、入社してはじめてわかるので、試用期間における解雇理由には不適切です。
試用期間で、注意指導したり教育したりして、能力を向上させる責任が会社にあります。
また、現在の能力だけでなく、将来のポテンシャルも評価すべきです。
したがって、教育、指導が不十分なまま、試用期間で解雇するのは違法です。
契約内容にない能力の不足で解雇する場合
2つ目に、労働契約の内容でない能力の不足を理由とするケース。
同じく能力不足でも、その能力がそもそも労働契約で前提とされなければなりません。
約束された能力がなければ、試用期間中でも、解雇はできます。
しかし、その能力が前提とされないなら、備えていなくて当然。
この点でもやはり、新卒なら、長い目で育てるべきです。
また、大卒の新入社員に、社会人マナーを求めるのも過大だといえるでしょう。
これらの能力がないのを理由に、試用期間で解雇とするのは違法です。
成果がないのを理由に解雇する場合
3つ目に、試用期間で成果が出ないことを理由に解雇するケース。
短期的な成果を求めすぎる場合です。
試用期間はあくまで、潜在的な適性を見る期間。
一般に3〜6ヶ月と短期間なので、必ずしも成果が出るとは限りません。
能力が十分だったとしても、時期やタイミング、運の要素も絡むからです。
他にも、新しい環境への慣れ、会社ごとのやり方の違いや、人間関係なども影響します。
成果が出ないからといって、能力が低いとも限りません。
試用期間中に、望む成果が出ないとしても、すぐ解雇するのは違法の可能性が高いです。
これは、たとえ即戦力の採用の場合でもあてはまります。
試用期間を延長せずに解雇する場合
試用期間で、注意指導せず、改善の機会も与えない解雇は不当だと説明しました。
4つ目に、適切な試用期間の延長をせず、解雇に踏み切るのも違法なケースがあります。
能力の見極めが難しい場合や、能力はあるが成果が出ない場合など、試用期間の延長もありえます。
延長により、見極めの期間を延ばし、正確に評価できます。
延長すべきケースで延長せず、すぐに解雇するのは違法です。
解雇を大前提として、惜しい状態でも試用期間の延長をしないなら、不当解雇の可能性があります。
労働者側でも、積極的に試用期間の延長を申し出て、解雇を避けるようにしてください。
試用期間中も、残業代は請求できます。
詳しくは次の解説をご覧ください。

試用期間で不当解雇された時の対処法

次に、試用期間で解雇されたときの対処法について解説します。
その解雇が、理由なき不当解雇だと感じるなら、ただちに争うようにしてください。
試用期間のルールを確認する
試用期間のルールは、就業規則に定められています。
試用期間が何ヶ月か、試用期間中または試用期間後、いつ解雇できるかなど、確認が必要です。
試用期間を一定期間に定める以上、よほどの問題がない限り、期間満了までは勤務できます。
注意指導が不十分で、改善の機会も与えられなかったなら、解雇は違法の可能性あり。
このとき、試用期間における解雇を争い、無効だと主張しましょう。
労働審判や訴訟で勝ち、解雇が無効となった場合にあと何ヶ月試用期間があるかも、事前にご確認ください。
解雇理由を確認する
試用期間中に解雇された場合は特に、解雇理由を確認しましょう。
試用期間内、残りの期間で改善できる理由なら、不当解雇と考えられるからです。
少なくとも、これまで試用期間中、同じ注意指導をされたかもご確認ください。
解雇理由証明書を要求することによって、解雇理由は確認できます。
会社は、解雇予告の以降、解雇理由を書面で説明する義務があります(労働基準法22条1項)。
解雇理由証明書の請求について、次に解説します。
不当解雇なら争う
就業規則に、試用期間中も解雇できる定めがあれど、いつでもクビにできるわけはありません。
解雇するには、この先、正社員として勤務させるのが不適切な理由が必要です。
まったく理由も示されず、突然解雇されたなら、不当解雇は明らか。
労働審判や訴訟で争い、解雇の撤回を求めましょう。
試用期間は、正社員として勤務する適性が備わっているか、見極める期間。
ただでさえ短く、この短期間の成果のみで判断できないこともあります。
まして、期間途中で解雇してしまうのではなおさらです。
今後、能力が向上するか、注意して改善されるかもチェックせずクビにするのは、不当解雇です。
試用期間における解雇は弁護士に相談できます。
労働問題に強い弁護士の選び方は、次に解説します。

試用期間で解雇された時の注意点

最後に、試用期間で解雇された労働者が、注意すべきポイントを解説します。
試用期間における解雇は会社都合
試用期間における解雇もまた、通常の解雇と同じく、会社都合となります。
会社都合の退職であれば、失業保険について有利な扱いを受けられます。
試用期間といえど、失業保険はもらえますから、あきらめないでください。
必ず、離職票も要求するようにしてください。
失業保険をもらう条件と、手続きの流れは、次に解説します。
試用期間14日以内の解雇なら、解雇予告は不要
労働基準法21条4号で「試の使用期間中の者」には、解雇予告は不要とされます。
そのため、30日前の予告が不要なのはもちろん、解雇予告手当もいりません。
ただし、14日を超えて引き続き使用される場合は、解雇予告に関するルールが適用されます。
この場合には、30日前に予告するか、不足する日数分の解雇予告手当を要します。

解雇予告手当ての請求は、次の解説をご覧ください。

まとめ

今回は、試用期間における解雇について解説しました。
試用期間でも、すでに労働契約を締結した社員に違いはありません。
「お試し」「いつでも解雇できる」という考えは誤解です。
したがって、理由の乏しい解雇は、たとえ試用期間でも違法。
違法な「不当解雇」は、無効となります。
試用期間中の解雇が、不当解雇だという判断を勝ち取れば、会社に復帰できます。
こうなると、会社も、解雇はもちろん、本採用拒否もしづらくなるでしょう。
なお、トラブルとなった会社に勤務したくない場合、解決金による金銭解決も目指せます。
試用期間で解雇されたら、ぜひ一度弁護士に相談ください。
- 試用期間は能力・適性の見極め期間であり、能力不足などを理由に解雇されやすい
- 試用期間中、試用期間後の解雇、いずれも、正当な理由がないと違法な不当解雇
- 注意指導なしに、成果が出ないのを理由に、試用期間で解雇するのは許されない
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