会社から、不幸にも「不当解雇」されてしまい、会社と争っていくときには、証拠が重要となります。
というのも、不当解雇をあらそうときには、労働審判や裁判など、裁判所での手続きを利用することとなるからです。
裁判所の手続きでは、労働審判であっても裁判であっても、裁判官は、「証拠」を最も重要視します。証拠がなければ、たとえ「不当解雇」であろうとも、最悪の場合、救済が得られない場合もあります。
今回は、不当解雇をあらそっていくケースで、証拠の中でも特に重要であるとされる「解雇理由証明書」について、労働問題に強い弁護士が解説します。
- なぜ「解雇理由証明書」が重要な意味をもつのか?
- 「解雇理由証明書」をどのようにして入手したらよいのか?
という点を、きちんと理解しておいてください。
1. なぜ「解雇理由証明書」が重要なの?
不当解雇をされてしまい、会社と争うときは、「解雇理由証明書」が重要となりますので、真っ先に入手するようにしてください。
まず、不当解雇を争うときに、なぜ「解雇理由証明書」が重要となるのかについて、解説していきます。
1.1. 解雇理由証明書とは?
解雇理由証明書とは、会社が考える解雇理由が書かれており、使用者(会社)から労働者(社員)に対して渡される文書をいいます。
解雇理由証明書は、会社が労働者(従業員)を解雇したときには、会社が労働者に対して交付しなければいけないと、労働基準法に定められています。
労働基準法での、解雇理由証明書についてのルールは、次のとおりです。
労働基準法22条2項労働者が、第20条第1項の解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。
ただし、解雇の予告がされた日以後に労働者が当該解雇以外の事由により退職した場合においては、使用者は、当該退職の日以後、これを交付することを要しない。
つまり、労働者は、会社から「解雇をする。」といわれたら、解雇日になる前であっても、解雇理由証明書をもらうことができます。
そして、この解雇理由証明書によって、解雇理由を知ることができるわけです。
1.2. 解雇理由証明書でなにが証明できる?
解雇理由証明書が、非常に重要な書類である理由は、不当解雇を争うにあたって、重要な事実を証明する証拠となるからです。
解雇理由証明書は、不当解雇のトラブルで重要な、次の2つの事実を証明することができます。
- 労働者が会社から「解雇をされた」という事実
- 解雇をされた理由
次の章で、詳しく解説していきます。
この解説を読んで頂ければ、解雇理由証明書が、不当解雇のトラブルにおいて、いかに重要な証拠であるかが、よく理解いただけるのではないでしょうか。
1.3. 「解雇」であることを証明する
解雇理由証明書が証明する、1つ目の重要な事実は、労働者が会社から「解雇をされた。」という事実です。
ブラック企業であると、不当解雇をめぐるトラブルの中で、「解雇ではなく合意退職であった。」「労働者も解雇に同意していた。」と反論してくるケースがあります。
解雇理由証明書をもらうことによって、「解雇をされた」ということを証明でき、これによって、「退職に同意していた。」といった、事実に反する反論を防ぐことができます。
1.4. 解雇理由を証明する
次に、解雇理由証明書が証明する、2つ目の重要な事実は、労働者が解雇をされた理由、すなわち、「解雇理由」です。
「解雇権濫用法理」というルールによって、日本では、解雇は制限されています。
そのルールの中で、解雇の理由が不相当である場合には、その解雇は、「不当解雇」として違法無効となります。
そのため、まずは、その不当解雇が、どのような解雇理由によって行われたのかを証明しなければなりません。そして、その役目を担うのが、「解雇理由証明書」なのです。
2. 解雇理由証明書の入手方法は?
ここまでお読みいただければ、解雇理由証明書が、不当解雇を争うトラブルにおいて、非常に重要であり、真っ先に入手すべきであることは、十分ご理解いただけたのではないでしょうか。
解雇理由証明書は、労働基準法という労働者保護のための法律によって、会社に義務付けられたものです。
したがって、会社は、解雇理由証明書の提出を拒むことはできません。
労働者が理解しておくべき解雇理由証明書の入手方法は、解雇の予告を受けたら、すぐに、会社に対して、解雇理由証明書を請求するだけで十分です。
解雇をするときに、解雇に相当の理由があることを証明しなければならないのは、会社の責任です。
そして、「解雇理由」を証明する重要な書類が解雇理由証明書なのですから、会社は、求められたら解雇理由証明書を出さなければいけないのは、当然のことなのです。
3. 会社が「解雇理由証明書」の提出を拒否したら・・・
とはいえ、会社の中には、ブラック企業など、労働基準法を理解していない会社も少なくありません。
労働法の知識のないブラック企業の中には、解雇理由証明書を要求しても、提出を拒否してくる会社もあるのではないでしょうか。
会社から、解雇理由証明書の入手を拒否されてしまったとしても、あわてることはありません。
まずは、解雇理由証明書を拒否するという違法行為を行ったことの証拠が残るように、内容証明郵便など、書面で解雇理由証明書を要求してください。
その上で、不当解雇について争うことをお考えの労働者の方は、労働問題に強い弁護士へ、お気軽にご相談ください。