解雇は、突然に労働者に襲いかかり、将来への不安や絶望を感じさせます。
解雇を通知するため、会社が交付してくるのが「解雇通知書」。
納得できない理由で解雇されるケースでも、自暴自棄になってはいけません。
自ら退職してしまう前に、解雇通知書を必ず請求してください。
解雇通知書を受け取ったら、解雇を争う準備をしましょう。
よくある解雇通知書なら、労働者が確認すべき大切な事項が書いてあります。
解雇通知書の記載を確認すると、「不当解雇」であり無効だと発覚する場合もあります。
会社は労働者を、無制限に解雇できるわけではなく、解雇には正当な理由が必要。
要件を満たさない解雇は、違法な「不当解雇」です。
今回は、予期せず解雇通知を渡されたときの対応、確認すべきポイントを、労働問題に強い弁護士が解説します。
- 解雇通知書は、解雇を伝えるための書面であり、解雇日ないし直前に渡される
- 解雇通知書を受領したらすぐ、記載内容をよく確認する
- 解雇通知書をもらえないのは労働者に不利なので、書面にするよう強く求める
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解雇通知書とは
解雇通知書とは、会社が労働者に、解雇である旨を通知するための書面です。
解雇するときに労働者へ、交付されるケースが多いです。
解雇通知書の交付は、直接手渡しされる場合だけでなく、郵送されるケース、メールやチャット、LINEなど他の連絡と同様の手段で伝えられるケースもありますが、いずれも、有効な通告となります。
「解雇通知書がないと解雇できない」わけではありませんが、証拠としてとても大切なもの。
そのため、解雇という重大な処分をするなら、書面が交付されるのが通例です。
解雇理由証明書との違い
解雇通知書は「解雇を通知する」という役割。
一方、解雇理由証明書は「解雇の理由を伝える」という別の役割があります。
(もちろん、解雇通知書にも理由をきちんと書くほうが丁寧で望ましいです。)
解雇理由証明書は、解雇予告されたら労働基準法22条によって要求できます。
しかし、解雇通知書は「まさに解雇されるとき」に通告のため発されるもの。
いずれも大切な書類ですが、解雇通知書に理由の記載が十分ないなら、解雇理由証明書も請求しましょう。
解雇予告通知書との違い
解雇予告通知書とは、解雇を予告する旨の書面です。
解雇予告ルール(30日前予告もしくは解雇予告手当を要する)のため、予告したと証拠に残すための書類。
つまり、解雇通知書とは、出されるタイミングが異なります。
解雇通知書は、解雇することの通告なので、解雇時点で出されます。
一方で、解雇予告通知書は、解雇よりも前(できれば30日前)に出さなければ意味がありません。
ただし、記載内容は、共通することが多いです。
「不当解雇の証拠」の解説
解雇通知書はいつまでにもらえる?
解雇通知書は、大切な書類であり、必ずもらうべき。
そうすると、労働者としては「解雇通知書が、いつもらえるのか」という点が気になるでしょう。
解雇通知書は、解雇そのものの通知なので、解雇する時点で出すのが通例です。
そのため、手渡しならば、解雇日に渡されるのが基本となります。
ただし、郵送やメールなどで、事前にもらえるケースもあります。
また、解雇予告を兼ねていると、解雇日より前に発されることもあります。
遅くとも、解雇日までにもらえなければ、解雇通知書の意義はありません。
ただ、いつまで経っても解雇通知書がもらえないこともあります。
このときは、そもそも会社が解雇通知書を出す気がないこともありますので、ないことを前提に対応し、不当解雇だと争う準備をしなければなりません。
いつまでも解雇通知書を待っていて、手遅れになってはいけません。
解雇通知書がもらえなくても、解雇の気配を感じたら、ただちに証拠集めをはじめましょう。
退職前に集めておくべき証拠に関することは、次に解説します。
解雇通知書を受け取った直後にすべきこと
解雇通知書には、解雇に関するとても大切なことが記載されています。
そのため、受け取ったらすぐに確認すべき項目が多くあります。
解雇通知書は、決まった形式はありません。
法律にも、書式やテンプレートはないものの、記載される内容はおおむね決まっています。
そこで、解雇通知書を受け取った直後に知りたいポイントを解説します。
就業規則の根拠条文を確認する
解雇通知書を受け取った労働者は、解雇手続きが正しくされたか確認しなければなりません。
少なくとも社内のルールである就業規則に沿った内容か、解雇通知書で確認します。
(なお、就業規則といえど、法律違反ならば、無効です。)
解雇通知書には「就業規則○条に該当し、解雇」というように、適用条文が書かれるのが通例。
このとき、解雇の根拠となった就業規則の条文を確認しておきましょう。
就業規則を見られないときにも、会社に閲覧・交付を請求してください。
常時10人以上の労働者のいる事業場では、就業規則の届出義務があります。
作成した就業規則は、労働者に周知せねばなりません。
就業規則を見たことがないなら、それだけで労働基準法違反の可能性が高いです。
「解雇を無効にしたい場合」の解説
具体的な解雇理由を確認する
不当解雇を争うときには、解雇理由が論点になります。
解雇理由は、就業規則の条文だけでなく、あてはまる具体的な事実を伝える必要があります。
労働者が、争う機会をきちんと得られるためです。
解雇権濫用法理により、解雇は、客観的に合理的な理由があり、かつ、社会通念上相当でなければ、違法な「不当解雇」として無効になります(労働契約法16条)。
その前提としても、実際に解雇された理由を知らねばなりません。
したがって、解雇通知書を受け取ったら、書かれている解雇理由が具体的か確認してください。
具体的な事実の記載が欠けているなら、すぐに追記を要求しましょう。
そして、解雇理由がわかったら、その理由が合理的で、相当なものか、確認してください。
解雇の責任が労使いずれか確認する
解雇の責任についても、解雇通知書に書かれるケースが多いです。
解雇の責任とは、つまり、「自己都合退職」か「会社都合退職」かという点。
この点は、失業保険を有利にもらえるかに影響し、法律用語で「離職理由」といいます。
基本的に、普通解雇、整理解雇などの解雇であれば、「会社都合退職」となるのが原則です。
ただ、懲戒解雇では、労働者に非があるとされて「自己都合退職」とされるケースがあります。
自己都合と会社都合の違いは、次に解説しています。
解雇日を確認する
解雇通知書には、解雇日が記載されています。
つまり、いつ解雇になるかは、解雇通知書を確認すれば、知ることができます。
例えば「本年○月○日付で解雇する」といった記載です。
解雇日を確認することには、次の重要な意味があります。
- 退職日までに有給休暇の残日数を消化できる
- 転職先の出社日を決められる
- 解雇予告手当をもらえるか知れる
解雇通知書を受け取ってから解雇日まで期間があれば、その間出社を要するかも確認してください。
解雇予告手当を確認
解雇は、30日前に予告するか、不足する日数の平均賃金に相当する解雇予告手当を要します。
そのため、解雇通知書で解雇日を把握し、手当に不足がないかを確認しておきましょう。
また、解雇予告手当だけでなく、未払いの金銭があれば、損しないよう請求しましょう。
解雇通知書に、給料や残業代、退職金の支払いの記載があるなら、未払いがないか、必ず確認してください。
解雇予告と、解雇予告手当について、次に解説します。
解雇通知書がもらえない時の対応
本解説では、「解雇通知書が交付されたら、労働者がどう対応すべきか」を解説しました。
解雇通知書を渡してもらえれば、適切な内容なら、すぐ確認し役立てられます。
しかし、残念ながら、解雇通知書を交付してもらえないケースもあります。
典型的なのが、解雇の通知を口頭でするケース。
ブラック企業のワンマン社長が「クビだ」「もう来なくてよい」と怒鳴る例などまさにそう。
この例からもわかるとおり、解雇通知は、口頭でされるケースほど、問題が多いです。
このとき、必ず、解雇通知書を書面で出すよう、会社に強く求めてください。
労働者が求めるのに、解雇通知書を拒否するのは不当といってよいでしょう。
解雇は、口頭でもできますが、解雇通知書がないと不利に働くおそれがあるからです。
解雇通知書がないと、「解雇された」と証明することができません。
退職せざるをえないのは「解雇」だと考えているならなおさらです。
放っておくと、後の争いで「解雇でなく、自主退職だ」といった理不尽な反論を受けかねません。
また、解雇通知書がないと、解雇理由がまったくわからないケースがあります。
解雇理由は、改めて解雇理由証明書を請求することもできます。
しかし、多くのケースでは、その前に解雇通知書でも、理由は明らかにされる必要があります。
解雇通知書が得られないケースは、争いが激化しがちです。
不当解雇されたらすぐ、弁護士に相談ください。
解雇通知書に納得できない時の争い方
解雇通知書をもらったとき、労働者側では、内容にどうしても納得できない例が多いでしょう。
このとき、解雇を争うことを検討してください。
解雇の争い方は、大きく分けて「地位を争う」方法と、「金銭を請求する」方法の2つ。
いずれの方法でも、解雇通知書を受け取ったら、すぐの対処が大切です。
解雇の撤回を求める
まず1つ目は、解雇の撤回を求める方法。
つまり、解雇が無効だと主張して、復職を求めるやり方です。
解雇通知書を受けてもなお、その会社で働き続けたいなら解雇の効力を争う必要があります。
解雇は、弱い立場にある労働者の権利を侵害します。
そのため、解雇に正当な理由がなければ無効であり、ただちに撤回されるべきです。
解雇通知書によって、その理由が知れるなら、それらの理由が不当だと主張しましょう。
もし解雇通知書に、曖昧な理由しか書かれないときは、解雇理由証明書をあわせて要求してください。
解雇を撤回させる方法は、次に解説します。
解雇の金銭解決を求める
次に2つ目は、解雇の金銭解決を求める方法。
解雇通知書には納得いかなくても、復職はしたくない方のやり方です。
不当解雇された会社ではもう働きたくなくても、金銭的に損すべきではありません。
解雇通知書を出した会社もまた、本音は、戻ってきてほしくないと考えるでしょう。
話し合いによって互いに譲歩できれば、解雇の解決金がもらえます。
解雇通知書をはじめ、書面で激しく争えば、感情的な対立が深まり、解決が遠のきます。
弁護士に、解決に向けた交渉を依頼し、法的な意見を伝えて警告してもらうのが大切です。
解雇の金銭解決について、次に解説します。
解雇通知書を受け取ったらすぐ弁護士に相談すべき
解雇されそうな気配をあらかじめ感じている労働者は、すでに弁護士に相談していたでしょう。
それなら、悪い予感があたり解雇通知書を渡されたらすぐ、弁護士に依頼可能です。
しかし、解雇通知書をもらってはじめて、解雇について知る方もいます。
このとき、解雇通知書を受領したタイミングは、解雇について争う最後の機会です。
そのため、すぐに弁護士に相談するのがお勧めの方法です。
会社に残りたい場合は当然、復職せず解決金をもらいたい方も、直後のアドバイスが有効。
解雇通知書の記載は、簡単な内容しかないかもしれません。
ここから会社の意図など大切な事項を読み取り、解雇を争うのは、1人ではとても大変でしょう。
さらに、解雇の無効だけでなく残業代、ハラスメントの慰謝料など、労働問題が拡大する例もあります。
交渉で解決しなければ、労働審判、訴訟へと発展します。
したがって、解雇通知書を受け取った時点から、労働問題は大きく流れを変えます。
遅くとも、これ以降は会社との対立が明確になりますから、弁護士のサポートが必要です。
労働問題に強い弁護士の選び方は、次の解説をご覧ください。
まとめ
今回は、解雇通知書とはどんなものか、受け取ったた労働者の対応について解説しました。
解雇通知書を受けてはじめて、クビになったと自覚する労働者も多いでしょう。
解雇後の生活のことを考えれば、不安にさいなまれる気持ちも理解できます。
しかし、解雇通知書の確認すべき事項を踏まえ、速やかに対応しなければなりません。
「不当解雇」に対しては、正確かつ迅速に、その不当性を訴えるのが大切。
このとき、解雇通知書が、会社側の攻めどころを知る、とても重要な役割を果たします。
解雇の争いについて弁護士に相談する際も、解雇通知書が入手できれば必ず持参すべきです。
- 解雇通知書は、解雇を伝えるための書面であり、解雇日ないし直前に渡される
- 解雇通知書を受領したらすぐ、記載内容をよく確認する
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