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自己都合?会社都合?退職理由の違いと「特定受給資格者」「特定理由退職者」

失業保険は、失業中の生活を心配することなく就職活動に専念するためのもの。
できるだけ早く再就職に成功するためにも、失業保険は生活を支える「命綱」となります。

失業保険は、退職の理由によって、支払方法、支払条件、受給金額が異なります。
ここで重要なのが、退職する労働者からよく法律相談のある「退職理由は自己都合か?会社都合か?」という問題です。

「自己都合」「会社都合」という言葉のイメージに振り回させては、誤るおそれがあります。
退職理由にしたがい、あなたがどれだけの受給額を、いつから払ってもらえるのか、しっかり理解する必要があります。

会社が不当に労働者の失業保険を減らそうとしてくることも、残念ながらあります。
これに立ち向かうためにも、失業保険の正しい知識が必要です。

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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失業保険の支給要件、支給額の基本

まず、失業保険を支給してもらうための、支給要件、支給額の基本的な法律知識を解説します。

失業保険の支給要件

失業保険の支給要件の基本は、次の通りです。

  • 積極的に職探しをしていること
  • いつでも就職できる意思があること
  • 就職可能な能力・環境にあること

失業保険の一般的な相場

失業保険の一般的な支給額は、次の通りに決定されます。

  1. 離職日の直前6か月間に市は現れた賃金の合計を180で割る(=賃金日額)
  2. 賃金日額の50~80%相当の金額を計算する(=基本手当日額)
  3. 支給日数を90日~360日の限度で決定する(=所定給付日数)

退職理由によって異なる基本手当日額、支給日数

失業保険をもらうとき、重要なのが、離職理由。
離職理由によって、この計算における基本手当日額、所定給付日数が異なるからです。
上記の説明のうち、基本手当日額、所定給付日数に幅があるのはそのためです。

退職理由によって失業手当の条件が異なるのは、労働者の退職理由によって、「失業期間中に、その労働者をどれくらい保護すべきなのか」という価値判断が異なるためです。

退職理由が、労働者側の都合によるものか、会社側の都合によるものかで、条件が大きく異なってくることから、まずは「自己都合か?会社都合か?」という点が大きくピックアップされます。

その他、所定給付日数を決めるポイント

失業保険の所定給付日数は、退職理由だけでなく、次の要素によっても変化します。

  • 雇用保険の被保険者であった期間
  • 離職日の年齢

会社都合と自己都合の違いとは?

退職理由が「会社都合」退職であるか「自己都合」退職であるかによって、失業手当の受給の点でもっとも大きく異なるのは、「給付制限期間が設けられているかどうか?」という点です。

自己都合で退職したときは、失業保険の受給には原則として2か月の給付制限期間があります。

なお、給付制限期間は、2020年10月1日より「3ヶ月」から「2ヶ月」に短縮。
2020年9月30日以前の自己都合退職と、過去5年以内に2回以上の自己都合退職がある場合のみ、「3ヶ月」の給付制限期間となります。

したがって、自己都合退職の場合は、「待期期間(7日間)と給付制限期間(2ヶ月)」の経過した後でなければ、受給資格の認定、失業保険の受給に進めません。
これに対して、会社都合退職だと、給付制限期間はなく、「待期期間(7日間)」が経過すれば、受給資格の認定を受け、失業手当の受給を受け取ることができます。

自己都合と会社都合の違い
自己都合と会社都合の違い

自己都合、会社都合いずれの場合も、受給期間は原則として1年とされています。
そのため、給付制限期間が存在する分、自己都合退職の方が、失業手当の受給が遅れるだけでなく、受給額が減少する場合もあるのです。

会社都合と自己都合については、次の解説もご覧ください。

会社都合となる退職理由のまとめ

失業保険がすぐに受給できる「会社都合」と判断される退職理由のことを、法律用語で「特定受給資格者」「特定理由離職者」と呼びます。

つまり、労働者を保護して失業手当をすぐに支払ってあげるべき特定の理由で退職した者については、いわゆる「会社都合」の条件によって失業手当を支払いましょう、ということです。

特定受給資格者、特定理由離職者には、例えば次のようなものがあります。

  • 会社の倒産を理由に退職した人
  • 会社による事業所の廃止の判断によって退職した人
  • その他、会社における大量雇用変動によって離職した人
  • 会社都合で解雇された人
  • 労働条件の著しい変更を理由に退職した人
  • 賃金未払いが続いたことを理由に離職した人
  • 体力不足、障害、疾病などにより離職した人
  • 父母の扶養など正当な理由のある退職をした人

特定受給資格者とは?

特定受給資格者とは、倒産や解雇など、会社側の事情によって退職を余儀なくされた人のことをいいます。

特定受給資格者にあたるのは、次の場合です。

Ⅰ 「倒産」等により離職した者
① 倒産(破産、民事再生、会社更生等の各倒産手続の申立て又は手形取引の停止等)に伴い離職した者
② 事業所において大量雇用変動の場合(1 か月に 30 人以上の離職を予定)の届出がされたため離職した者及び当該事業主に雇用される被保険者の 3 分の 1 を超える者が離職したため離職した者
③ 事業所の廃止(事業活動停止後再開の見込みのない場合を含む。)に伴い離職した者
④ 事業所の移転により、通勤することが困難となったため離職した者

Ⅱ 「解雇」等により離職した者
① 解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇を除く。)により離職した者
② 労働契約の締結に際し明示された労働条件が事実と著しく相違したことにより離職した者
③ 賃金(退職手当を除く。)の額の 3 分の 1 を超える額が支払期日までに支払われなかった月が引き続き2 か月以上となったこと、又は離職の直前 6 か月の間に 3 月あったこと等により離職した者
④ 賃金が、当該労働者に支払われていた賃金に比べて 85%未満に低下した(又は低下することとなった)ため離職した者(当該労働者が低下の事実について予見し得なかった場合に限る。)
⑤ 離職の直前 6 か月間のうちに 3 月連続して 45 時間、1 月で 100 時間又は 2~6 月平均で月 80 時間を超える時間外労働が行われたため、又は事業主が危険若しくは健康障害の生ずるおそれがある旨を行政機関から指摘されたにもかかわらず、事業所において当該危険若しくは健康障害を防止するために必要な措置を講じなかったため離職した者
⑥ 事業主が労働者の職種転換等に際して、当該労働者の職業生活の継続のために必要な配慮を行っていないため離職した者
⑦ 期間の定めのある労働契約の更新によリ 3 年以上引き続き雇用されるに至った場合において当該労働契約が更新されないこととなったことにより離職した者
⑧ 期間の定めのある労働契約の締結に際し当該労働契約が更新されることが明示された場合において当該労働契約が更新されないこととなったことにより離職した者(上記⑦に該当する者を除く。)
⑨ 上司、同僚等からの故意の排斥又は著しい冷遇若しくは嫌がらせを受けたことによって離職した者
⑩ 事業主から直接若しくは間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した者(従来から恒常的に設けられている「早期退職優遇制度」等に応募して離職した場合は、これに該当しない。)
⑪ 事業所において使用者の責めに帰すべき事由により行われた休業が引き続き 3 か月以上となったことにより離職した者
⑫ 事業所の業務が法令に違反したため離職した者

特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準(厚生労働省)

特定理由離職者とは?

特定理由離職者は、解雇のように会社側の事情で一方的に雇用契約を終了させられてしまったわけではないものの、労働者を保護すべき理由によって退職した人のことです。

特定理由離職者の要件は、次のとおりです。

【1】労働契約期間が満了し、かつ次の更新がないことにより退職(更新を希望したが更新できなかった場合)(特定受給資格者【2】8または9に該当する場合を除く)
※「契約の更新をする場合がある」とされている場合

【2】以下の正当な理由のある自己都合退職

・体力の不足、心身の障害、疾病、けが、視力、聴力、触覚の減退等による離職
・妊娠、出産、育児等により離職し、雇用保険の受給期間延長措置を受けた人
・父または母の死亡、疾病、けがのため介護するため離職(家庭の事情が急変した場合)
・配偶者又は扶養すべき親族と別居生活を続けることが困難となり離職
・次の理由により通勤が困難になって離職
(a)結婚により住所が変わったため退職
(b)育児に伴う保育所、その他これに準ずる施設の利用又は親族への保育の依頼
(c)事業所が通勤困難な場所へ移転したため退職
(d)自分の意志に反して引越しが必要になり退職
(e)鉄道やバス等の交通手段の廃止又は運行時間の変更により退職
(f)会社の指示による転勤や出向に伴う別居の回避のために退職
(g)夫(または妻)の転勤、出向または再就職に伴う転居のために退職

・その他、上記「特定受給資格者の範囲」の【2】の11に該当しない企業整備による人員整理等で希望退職者の募集に応じて退職

特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準(厚生労働省)

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

退職した労働者が、失業保険を受ける際にもっとも気にするのが、退職理由が「自己都合か?会社都合か?」という点ではないでしょうか。
弁護士への法律相談も、とても多い問題です。

労働者がはたらいた分の正当な評価を受け、転職活動中の収入に困らないよう、ブラック企業の不当な退職時の取り扱いには、戦わなければなりません。

失業保険に関する会社からの取り扱いが適切かどうか、今回の解説をもとに確認してください。
お困りの際は、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

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