懲戒解雇という非常に重い処分をされてしまった場合には、その解雇理由が事実ではなくとも、「問題社員」というレッテルを貼られてしまいます。
懲戒解雇は、横領や不祥事など、度を越した問題行為に対してだけ下される、最大に重い制裁(ペナルティ)だからです。
少々勤務態度が悪かったり、能力が足りなかったりといった程度では、懲戒解雇にはなりません。もし軽い解雇理由で懲戒解雇にされてしまったら、すぐに争いましょう。
そのため、懲戒解雇によって退職をしたことが、転職先にバレてしまえば、再就職は絶望的と言わざるを得ません。
退職金が減額となったり、不支給となったりするなど、金銭的にも大きなダメージを食らった上、再就職ができないのでは「踏んだり蹴ったり」です。
今回は、懲戒解雇されたら、転職先にバレる?再就職できない?という、労働者の不安について、労働問題に強い弁護士が解説します。
1. 懲戒解雇が転職先にバレる?
冒頭で解説したとおり、懲戒解雇は非常に重い処分であり、実際に懲戒解雇に値するような問題行為を行ってしまったのであれば、転職先にバレれば、再就職は困難です。
逆に、懲戒解雇をされた解雇理由が事実でなければ、その汚名を晴らすために、すぐに労働問題に強い弁護士に相談しましょう。
では、早速、懲戒解雇が転職先にバレるかどうかについて、発覚する可能性のあるルートごとに、検討していきます。
1.1. 履歴書からバレる?
懲戒解雇は、非常に厳しい処分ですから、再就職を希望する労働者の側から、履歴書にあえて積極的に「懲戒解雇」と書くことは考えられません。
履歴書から「懲戒解雇」とされたことがバレないようにするためには、次のことに注意しましょう。
- 「賞罰」の記入欄のない履歴書の書式を使う。
- 退職の理由は特に書かない。
しかし、会社によっては、採用応募の際に、エントリーシートや所定の履歴書など、「賞罰」の欄がある書類への記入を求める会社もあります。
この場合、嘘の事実を書いたり、記入欄があるのに空欄にして出したりすれば、次の章で解説します「経歴詐称」の問題となります。
1.2. 離職票からバレる?
懲戒解雇という処分が下されると、離職票では「重責解雇」と記されます。
そのため、懲戒解雇となった場合、そのまま正直に離職票が作成された場合には、離職票を見れば、懲戒解雇をされた人であるかどうかが、一目瞭然、わかってしまいます。
とはいえ、離職票は、失業保険の給付(失業手当)を受け取るときに必要なものなので、就職活動、採用面接などで提出を求められるケースはあまりないでしょう。
1.3. 採用面接でバレる?
これに対して、採用面接では、懲戒解雇をされてしまったことが、再就職先にバレてしまう可能性があります。
就職を希望する労働者の側から、あえて懲戒解雇となってしまったことを話すことは絶対ないでしょうが、会社が退職理由を聞いてきた場合に問題となります。
結論として、採用面接で根掘り葉掘り「退職理由」について聞かれた場合、嘘をつけば、次の章で解説します「経歴詐称」の問題となります。
2. 言わないと経歴詐称?
採用面接のタイミングであれ、履歴書を提出するタイミングであれ、転職先の会社から直接、「退職理由はなんですか?」「懲戒解雇をされたことがありますか?」と聞かれる場合があります。
「懲戒解雇をされた。」という事実について、積極的に話さないことはもちろんのことですが、直接的に質問されたら、回答せざるを得ません。
このとき、嘘の理由を伝えるのも1つの手ではありますが、入社後に発覚してしまった場合、再度の懲戒解雇となる解雇理由となるおそれがあります。
もっとも、一番最悪なのは、不安や焦りが表情に出てしまい、面接官から、「やましいことがあるのでは。」「懲戒解雇されたのでは。」と疑われてしまうことです。
正直に言った場合、どのように判断される可能性があるかは、同じ「懲戒解雇」であっても、その解雇理由によっても異なります。
3. 前職の会社への照会(問い合わせ)
よく、弁護士への法律相談の中で、「前の会社に問い合わせ(照会)をするのが普通でしょうか。」というご質問をされる方がいます。
しかし、前職への照会(問い合わせ)については、法律で決まったルールがないため、やるかやらないかは、結局、「その会社次第です。」といわざるをえません。
あくまでも一般論でしかないですが、次のような点を参考にして、「転職先の会社が、前職への問い合わせをしそうかどうか。」、また、そのことで懲戒解雇の事実がバレそうかどうか、について考えてみてください。
- 転職先の会社が、金融系、警備系など、労働者の身元に慎重な会社であればあるほど、前職への問い合わせ(照会)をする可能性が高まる。
- 前職の会社が、個人情報、コンプライアンスに厳しい会社であればあるほど、問い合わせ(照会)に対して「懲戒解雇」をばらさない。
結論としては、前職照会をするかどうかは、その会社次第であり、問い合わせをしようとする会社に対して禁止をすることはできません。
また、採用面接でおとされてしまったとしても、それが面接時の不手際によるものなのか、前職への問い合わせ(照会)によって懲戒解雇が発覚してしまったからなのかは、労働者にはわかりません。
そのため、あまり気にせず、まずは採用面接でしっかりアピールをすることから考えるべきです。
4. まとめ
「懲戒解雇をされてしまった。」という事実は、残念ながら、労働者にとって、非常に絶望的なことであるといわざるをえません。
- 解雇理由が事実ではない。
- 解雇理由は事実だが、懲戒解雇とするほど重大な問題行為は行っていない。
など、反論して争うことができるポイントがあるのであれば、懲戒解雇を積極的に争っていくべきであるといえます。
今回は、懲戒解雇をされた労働者が、再就職できないのか、転職先に「懲戒解雇された。」事実が発覚してしまうのかについて、弁護士が解説しました。