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雇用保険に未加入だったときの3つの対応と会社の責任

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運営元:弁護士法人浅野総合法律事務所

「従業員を雇用保険に加入させていなかった」というブラック企業の話が、よくニュースで報道されています。

一定の労働時間などの要件を満たせば、会社は社員に、必ず雇用保険を加入させなければなりません。会社が、雇用保険に加入させていなかった場合には、失業保険をもらうことができなくなるおそれがあります。さらには、職業訓練や休業支援、求職支援など、雇用保険を原資としたさまざまなサービスも受けることができなくなります。

会社には、労働者を雇用保険に加入させる義務があります。しかし、会社が保険加入手続きをしていなかったに未加入状態となってしまい、労働者が失業保険による救済を受けることができない、という法律相談をお聞きすることが少なくありません。

そこで今回は、「雇用保険に加入していなかった」ことが判明したとき、どのように対処したらよいのか、また、会社にどのような責任追及をすべきなのか、といった点について、労働問題に強い弁護士が解説します。

「雇用保険・失業保険」の法律知識まとめ

雇用保険・失業保険とは?

雇用保険とは、国民健康保険などとならんで政府が運用する「強制保険制度」の1つです。「強制」ですから、会社は社員を加入させる「義務」があります。

雇用保険資格をもつすべての労働者は、雇用保険に加入することが義務づけられており、毎月の雇用保険料を支払うことで、雇用保険法にしたがった一定の給付サービスを受けることができます。

雇用保険に加入することで受けられるサービスのうち、もっとも重要なものが失業保険です。

失業保険は、労働者が会社から解雇されたり、会社を退職せざるをえなかったりして「失業状態」となったとき、その間の生活費の一部の保証を受けることができる制度です。

非正規雇用でも加入できる

雇用保険法では、労働者が雇用保険に加入することができる条件について、次の2つを定めています。

雇用保険の加入要件

  • 1週間の労働時間が20時間を超えること
  • 同一の使用者に31日以上継続して雇用される見込みがあること

労働者は、このいずれか一方の条件さえ満たしていれば雇用保険に加入する資格を得られます。雇用保険に加入することで、各種給付サービスを受ける権利が発生します。

雇用保険に加入したり、失業保険をもらったりすることができるのは、正社員に限られた権利ではありません。この条件を満たしていさえすれば、正規雇用か非正規雇用かは関係なく、パートタイマーやアルバイト社員であっても、雇用保険に加入することができます。

チェック
パートやアルバイトでも雇用保険に加入できるケース【弁護士解説】

雇用保険への加入の手続きは、会社が行いますが、この際、雇用保険加入者には4つの種類があります。パート、アルバイトなど、正社員ではない労働者も、一定の条件を満たせば、雇用保険に加入できます。

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雇用保険に加入すると受けられる給付サービスとは?

雇用保険に加入している労働者は、状況に応じて、職業訓練や雇用継続のための費用を、給付という形で受けとることができます。育児休業や介護休業にともなう給付もあります。

なかでも、もっとも重要なものが失業保険です。失業保険は、会社を解雇されたり、退職せざるえなくなったりして職を失ってしまったときに受給することができます。

「失業保険」は「失業手当」「失業給付」ともいいます。その給付金額や給付日数は、労働者の賃金や保険加入年数などをもとに個別に決定されます。

雇用保険加入は会社の義務

雇用保険法は、会社に対して、雇用している労働者を雇用保険に加入させることを義務づけています。そのため、労働者は、会社に雇用されていれば雇用保険に加入させてもらうことができます。

毎月の雇用保険料は、労働者と会社がそれぞれ一定の割合で負担することになっており、その金額は、労働者の賃金をもとに計算され、通常は労働者負担分については賃金から控除されます。

2020年度(令和2年度)の雇用保険料率は、次のとおりです。

雇用保険に加入しているか確認する方法

「雇用保険に加入することができる」とはいえ、労働者側としては、会社がきちんと加入手続きを済ませてくれないと加入することができません。

会社が加入手続きをさぼっていたり、放置していたりすると、労働者は、失業保険をはじめとする雇用保険サービスを受けることができません。これがいわゆる「雇用保険の未加入問題」です。

「退職して失業保険でしばらく生活するしかない」といった緊急時に、「雇用保険に未加入だった」という最悪のケースを避けるためには、労働者自身で、雇用保険に加入できているかを事前にチェックしておいてください。

そこで次に、雇用保険に加入しているかどうか、労働者が確認する方法について解説します。

給与明細を確認する

「雇用保険に加入しているかどうか」を確認するもっとも簡単な方法は、「給与明細を確認する」ことです。

雇用保険に加入していると、雇用保険料のうち労働者が負担すべき部分については、給与から控除していることが一般的だからです。給与明細の「控除」の欄に「雇用保険料」と記載されており、一定額のお金が給与から控除されていれば、雇用保険に加入していることが確認できます。

ただし、賃金から雇用保険料を控除しておきながら、実際には雇用保険料を納付していなかったり、そもそも雇用保険に未加入であったりといった悪質なブラック企業もあります。このようなブラック企業では、労働者から徴収した雇用保険料は、会社の経営にあてられたり、社長のポケットに入ってしまったりするわけです。

ハローワークに確認する

そのため、もっとも確実に「雇用保険に加入しているかどうか」を確認する方法は、「ハローワークに確認する」方法です。

雇用保険料を賃金から天引きしたにもかかわらず、雇用保険の加入手続きをしていないといったブラック企業の被害にあわないためにも、公的機関であるハローワークに雇用保険の加入状況を確認しておけば間違いありません。

「雇用保険の未加入問題」によって失業保険をもらえないような状態を確実に避けるため、ハローワークへの確認がお勧めです。身分証などを持参して、管轄のハローワークに問い合わせてみましょう。

雇用保険の未加入問題が起きる理由

会社は、労働者を雇用保険に加入させることを法律上義務づけられています。そして、失業保険が労働者の生活を守るとても重要なものであることから、加入義務をおこたった会社に対しては、雇用保険法にもとづく罰則が科されます。

それにもかかわらず、なぜ「雇用保険の未加入問題」がおきてしまうのでしょうか。

以下では、「雇用保険の未加入問題」がおこってしまう理由と、おこりやすいケースについて、弁護士が解説します。

雇用保険の未加入がおこりやすいケース

「雇用保険の未加入問題」がおこりやすいケースとしては、以下のものが挙げられます。

  • 入社後に試用期間を経過したが、うっかり加入手続を忘れられていた。
  • 入社当初は雇用保険資格がない労働条件だったが、途中で労働条件が変わり、雇用保険有資格者になったにもかかわらず、加入手続を忘れられていた。
  • 会社が社労士事務所に手続きを依頼したつもりでいたが、実際には依頼漏れがあった。
  • 会社自体が設立して間もない新興企業で、雇用保険の登録をしていなかったために労働者を雇用保険に加入できていなかった。
  • 経営状況が悪化して雇用保険料が払えないため、意図的に加入させていなかった。

「雇用保険の未加入問題」がおこる理由にはさまざまなものがありますが、その理由はいずれも会社側の理由であって、労働者側がすべてを知ることができません。

したがって、少なくとも上記のようなおこりやすいケースを理解し、同様の状態にある労働者は、「もしかしたら雇用保険に加入してもらえていないのではないか?」と疑って、確認をしてみることがお勧めです。

会社の雇用保険料の負担が大きい

「雇用保険の未加入問題」がおきている多くの会社では、労働者が気づき、会社に伝えることで、加入手続きを進めてもらうことができます。しかし、会社が意図的に労働者を雇用保険に加入させていないとき、そのような自主的な修正は期待できません。

意図的に雇用保険に加入させていない会社がある理由は、会社が払わなければならない雇用保険料の負担が大きいことにあります。さらに、会社が支払わなければならない保険料は、雇用保険料に加え、労災保険料、社会保険料などがあり、合計するとかなり高額になります。

そのため、雇用保険料を支払うことが会社にとって大きな負担となるため、「雇用保険の未加入問題」を引き起こすブラック企業が出てくるわけです。

しかし、雇用保険は「法律上の義務」であり、加入しないことは違法です。雇用保険料が支払えないのであれば、そもそも社員を雇うべきではありません。

参考

会社が支払う雇用保険料は、0.6%(高くても0.8%)に過ぎず、一見大きい負担には思えないかも知れません。

しかし、実際の賃金に当てはめてみると、月給30万円の労働者の保険料は月々1800円(年間2万1600円)かかることになります。この負担が、雇用している労働者の人数分かかることを考えると、その負担はかなりの高額になります。

不正が発覚しにくい

雇用保険料の負担は会社にとって重たいものではありますが、一方で、加入手続や保険料の支払いを怠った会社に対しては、雇用保険法にしたがった厳しい罰則があり、会社側にもリスクがあります。

会社側にリスクがあるにもかかわらず、「雇用保険の未加入問題」がなくならない理由は、不正が発覚しにくい点にあります。

すべての会社がきちんと労働者を雇用保険に加入させ、保険料を支払っているかを国が完璧に把握することは不可能です。そのため、不正が発覚しにくく、事実上、罰則を受ける可能性が低いことが「雇用保険の未加入問題」をおこりやすくしています。

ココがポイント

そもそも不正が発覚しにくい「雇用保険の未加入問題」において、その発覚のケースの多くは、労働者からの内部通報によって明らかになっています。

雇用保険にすら加入してくれないようなブラック企業に勤める労働者にとって、内部通報をすることは自身の立場を危うくするおそれがあり、勇気のいる行為です。

そのため、内部通報者を保護するため、国は公益通報者保護制度を設けています。

雇用保険未加入だとどうなるの?

ここまでお読み頂ければ、会社が労働者を雇用保険に加入させない、いわゆる「雇用保険の未加入問題」は違法であることをご理解いただけたのではないでしょうか。しかし、「雇用保険の未加入問題」がおこってしまう理由はいずれも会社側の都合であり、労働者がこれによって大きな不利益をこうむることは不当です。

そこで次に、雇用保険に未加入だと、労働者にとってどのような不利益、デメリットがあるかを、弁護士が解説します。

失業保険が受給できない

雇用保険に未加入の場合、失業保険の受給条件を満たすことができません。

したがって、解雇や自主退職で失業しても、失業保険の給付を受けることができず、無収入で求職活動をしなければならなくなります。

就業訓練などの支援を受けられない

雇用保険法では、失業保険以外にも、就業訓練や雇用維持のために、訓練手当や育児・介護休業給付など、さまざまな給付サービスが設けられています。

これらの給付サービスも、雇用保険に未加入ですと保険料を支払っていないわけですから、受けることができません。

雇用保険の未加入が発覚したときの対処法

ここまで解説してきた雇用保険制度についての基礎知識は、いずれも、「雇用保険の未加入問題」がおこってしまわないようにする事前対策でした。

雇用保険に加入していないという状況は、労働者にとって大きな不利益になります。事前対策はとても重要ですが、あわせて、雇用保険に未加入であるとが発覚したあとで、労働者がどのような対応をしたらよいのかについても理解しておいてください。

以下では、雇用保険への未加入が発覚したときの対処法について、弁護士が順に解説していきます。

会社に加入を要求する

はじめにすべきことは、会社に雇用保険の加入手続をするよう強く要求することです。

「意図的に加入させていない」というブラック企業でない限り、単に加入手続きを失念していただけの可能性もあります。要求した結果、在職中に雇用保険への加入手続きをしてくれれば、失業保険の受給には十分間に合うことも期待できます。

雇用保険の未加入を指摘しても、加入手続きをしてくれないときには、内部通報制度や損害賠償請求を利用せざるをえないことを伝え、加入手続きを進めるよう会社と交渉をしてください。

雇用保険料を後納する

労働者の要求に応じて会社が雇用保険の加入手続きをしてくれたとしても、それ以前の雇用期間については未加入の状態だったことになります。

失業保険の給付を受けるためには、雇用保険の加入期間が「直近2年間で12ヶ月以上」あることが要件とされているため、退職直前で未加入状態であったことが発覚すると、たとえ加入手続きをやりなおしてくれたとしても、失業保険をもらうことができなくなってしまいます。

この点、雇用保険には「保険料の後納」の制度があります。

手続きにしたがって雇用保険料を後納すれば、その分の期間をさかのぼって雇用保険に加入していたこととなりますから、失業保険を受給できる可能性が高まります。

ただし、雇用保険料の後納は、過去2年間までしかさかのぼることができないため、早めの加入を会社に要求するようにしてください。

失業保険の受給日数を計算する

過去に雇用保険の未加入状態があったときは、いざ会社をやめたときの「失業保険を受給できる日数」に大きく影響してしまいます。

その理由は、雇用保険法22条で、次のとおり失業保険の「最大受給日数」について雇用保険の加入期間ごとに上限が設けられているからです。

  • 加入期間が20年以上:150日 
  • 加入期間が10年以上20年未満:120日
  • 加入期間が10年未満:90日

つまり、退職直前や失業後だと、たとえ保険料の後納制度を利用することができたとしても、雇用期間どおりの失業保険をもらえなくなってしまいます。例えば、雇用期間が10年以上だったとしても、後納は2年間しかできないため保険加入期間は最大2年で計算され、失業保険の受給日数は最大90日までに制限されてしまいます。

入社当初からきちんと雇用保険に加入していた場合に比べると、失業保険の受給日数に最低でも30日分が生まれ、その不利益は計り知れません。

このような不利益を受けないためには、なるべく早く雇用保険の加入状況を確認して、対処する必要があります。

雇用保険の未加入について会社に損害賠償請求できる?

雇用保険への未加入が発覚したとしても、早期に弁護士に相談して会社と交渉するなどの適切な対処をおこなえば、大きな不利益を受けなくて済むケースもあります。

しかし、悪質な会社が雇用保険の未加入を巧妙に隠していた場合には、在職中に対処することができず、退職してからはじめて気づき、失業保険を受給できずに苦しいおもいをしてしまう労働者も少なくありません。

こうした最悪のケースでは、会社に責任追及をすることを検討してください。そこで、最後に、労働者を雇用保険に加入させていなかった会社の責任を追及する方法を、弁護士が解説します。

雇用保険未加入は会社の義務違反

繰り返しになりますが、労働者を雇用保険に加入させることは「法律上の義務」であり、未加入状態を放置することは罰則の対象になる重大な義務違反です。

会社が、「うちの会社では雇用保険の要件を満たさない」「この業界では雇用保険に加入しないのが普通だ」などと反論してきたとしても、雇用保険法に定められた要件にしたがって判断することとなります。

会社のルールや社風、業界ルールや慣行などが、雇用保険法より優先することはありませんから、会社が雇用保険の未加入状態である理由をしごく当たり前のように伝えてきたとしても、常に疑問をもって検討するようにしてください。

債務不履行にもとづく損害賠償請求

ある介護施設の看護師が雇用保険に未加入であったために救済を受けられず、介護施設に対して損害賠償を請求した事件を紹介します。

この裁判例では、裁判所は次のように述べて、介護施設に契約義務違反の責任があると判断し、失業保険に相当する看護師の損害賠償請求を認めました。

大阪地裁平成27年1月29日判決

「使用者は、労働契約の付随義務として、信義則上、雇用保険の被保険者資格の取得を届け出て労働者が失業給付等を受給することができるように配慮すべきである。そして、届け出を行なわなかった場合は、その行為につき債務不履行を構成するものというべきであり、雇用保険に加入していれば得られたはずの給付金と同額の損害が発生しているといえる」

この裁判例に従えば、雇用保険に未加入であったために受給できなくなった失業保険の給付金額の支払いを会社に請求できる可能性があります。

満額請求できるとは限らない

雇用保険の未加入が発覚したとき、会社への責任追及をおこなうことができると解説しました。

しかし、すべてのケースで会社の責任が認められるえわけではありません。また、失業保険の給付額や給付日数は、労働者の賃金や労働状況、生活状況に照らして個別的に決定されるものですから、かならずしも上記の最大日数分を受給したのと同じ結果を勝ち取ることができるわけではありません。

したがって、未加入を放置した会社に対して失業保険の給付金額の支払いを請求したとしても、望んだ日数分の賠償請求が満額認められるとは限らないことに注意が必要です。

「労働問題」は、弁護士にお任せください!

今回は、雇用保険制度の基礎知識と、雇用保険の未加入問題がおこってしまったときの労働者側の対策について、弁護士が解説しました。

雇用保険の未加入問題は、意外と身近にある問題です。「雇用保険料は毎月の給料から引かれているはず」と思うかもしれませんが、給与明細をよく確認したことがあるえしょうか。また、会社が、給料から控除した雇用保険料を、しっかり納付しているでしょうか。

きちんと確認をしないまま、損をしてしまう労働者も少なくありません。雇用保険の未加入問題で、対応が遅くなることで損をするのは労働者側です。

会社が雇用保険への加入手続をしてくれずお困りの方は、労働問題に強い弁護士にお早めに法律相談ください。

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弁護士法人浅野総合法律事務所(東京都中央区銀座)は、代表弁護士浅野英之(日本弁護士連合会・第一東京弁護士会所属)をはじめ弁護士5名が在籍する弁護士法人。 不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、近年ニュースでも多く報道される労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。 「労働問題弁護士ガイド」は、弁護士法人浅野総合法律事務所が運営し、弁護士が全解説を作成する公式ホームページです。

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