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雇用保険

雇用保険に未加入だったときの3つの対応と会社の責任

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最近、従業員を雇用保険に加入させていなかった、というブラック企業の話がよくニュースになります。

雇用保険は、本来、労働者であれば誰もが加入している保険です。労働者は、毎月の雇用保険料を支払うことで、失業手当(失業給付)はもちろん、職業訓練や休業支援、求職支援など様々なサービスを受けることができます。

しかし、会社が労働者を雇用保険に加入させていなかった場合(未加入の場合)、これらのサービスを受けることができなくなります。

会社には労働者を雇用保険に加入させる義務がありますが、会社が保険加入手続を怠っていたため未加入となり、労働者が雇用保険による救済を受けられない、という法律相談をお聞きすることも、残念ながら少なくありません。

今回は、雇用保険制度の基本的な知識と、雇用保険の未加入が発覚したときの対処法について、労働問題に強い弁護士が解説します。

1. 雇用保険とは?

雇用保険とは、国民健康保険などと並んで、政府が運用している強制保険制度の1つです。「強制」ですから、会社の怠慢、故意による未加入は違法です。

雇用保険資格を持つすべての労働者は、雇用保険に加入することが義務づけられており、毎月の雇用保険料を支払うことで、雇用保険法したがった一定の給付サービスを受けることができます。

1.1. 非正規雇用でも加入できる

雇用保険法では、労働者が雇用保険に加入することができる条件について、次の2つを定めています。

 雇用保険の加入要件 
  • 1週間の労働時間が20時間を超えること
  • 同一の使用者に31日以上継続して雇用される見込みがあること

このいずれか一方の条件を満たしていれば雇用保険有資格者となり、雇用保険に加入することで、各種給付サービスを受ける権利が発生します。

また、この条件を満たしていれば、正規雇用か非正規雇用かは関係なく、パートタイマーやアルバイトでも雇用保険有資格者になることができます。

1.2. 雇用保険に基づく給付サービスとは?

雇用保険に加入している労働者は、状況に応じて職業訓練や雇用継続のための費用を給付の形で受け取ることができます。育児休業や介護休業に伴う給付もこれに含みます。

また、会社を解雇されるか退職することによって無職となった場合には、求職中の間、失業保険を受給することができます。

「失業保険(失業手当)」の給付金額や給付日数は、労働者の賃金や保険加入年数などを基に個別に決定されます。

1.3. 雇用保険加入は会社の義務

雇用保険法は、会社に対して、雇用している労働者を雇用保険に加入させることを義務づけています。そのため、労働者は、通常、雇用されていれば雇用保険に加入することができます。

毎月の雇用保険料は、労働者と会社がそれぞれ一定の割合で負担することになっており、その金額は、労働者の賃金をもとに計算されます。

平成29年現在は、以下の表に記載された割合に従って雇用保険料が毎月の給与から控除されることになります。

(引用:厚生労働省ホームページ

2. 雇用保険に加入しているか確認する方法

雇用保険に加入することができるとはいえ、会社が加入手続を済ませていないと、労働者は雇用保険法に基づく給付サービスを受けることができません。これがいわゆる「未加入問題」です。

いざという時に雇用保険に未加入だった、という最悪のケースを避けるためには、労働者自身で、雇用保険に加入できているかをチェックしておくのがよいでしょう。

2.1. 給与明細を確認する

最も簡単な方法としては、給与明細を見ることで確認が可能です。

給与明細の控除欄に「雇用保険料」が記載され、実際に控除されていれば、雇用保険に加入できており、未加入ではないといえます。

もっとも、賃金から保険料を天引きしておきながら、実際には保険料を納付せず(もしくは未加入状態で)、社内で不正流用している、という悪質なブラック企業もいないとは限りません。

2.2. ハローワークに確認する

雇用保険料を賃金から天引きしているにもかかわらず、雇用保険に加入手続きをしていないといったブラック企業の被害にあわないためにも、公的期間に対して、雇用保険の加入状況を確認しておきましょう。

こうした事態を確実に避けるためには、各地域のハローワークに身分証を持参し、保険の加入状況を確認することをおすすめします。

3. 雇用保険の未加入問題が起きる理由

会社は法律によって、労働者を雇用保険に加入させることを義務づけられており、「失業手当(失業給付)」の重要性から、この保険加入の義務を怠った会社には、雇用保険法に基づいて罰則が科されます。

それにもかかわらず、なぜ雇用保険に未加入、という問題が起きるのでしょうか。

以下では、保険未加入の問題が起こりやすいケースと、未加入状態が続く理由について、弁護士が解説します。

3.1. 未加入が起きやすいケース

労働者の雇用保険未加入問題が起きやすいケースとしては、以下のものが挙げられます。

 例 
  • 入社後に試用期間を経過したが、うっかり加入手続を忘れられていた。
  • 入社当初は雇用保険資格がない労働条件だったが、途中で労働条件が変わり、雇用保険有資格者になったにもかかわらず、加入手続を忘れられていた。
  • 会社が社労士事務所に手続を依頼したつもりでいたが、実際には依頼漏れがあった。
  • 会社自体が設立して間もない新興企業で、雇用保険の登録をしていなかったために労働者を雇用保険に加入できていなかった。
  • 意図的に加入させていなかった。

したがって、労働者の方は、以上のような状態にあって雇用保険料が天引きされていない場合には、「もしかしたら雇用保険に加入してもらえてないかも?」「未加入では?」と疑問を持ち、確認してみた方がよいでしょう。

3.2. 会社の保険料負担が大きい

上記のほとんどのケースでは、労働者が雇用保険の未加入に気づき、会社に伝えることで加入手続をしてもらうことができます。しかし、それでもなお、会社が意図的に労働者を雇用保険に加入させないことも少なくありません。

その理由は、会社が払わなければならない雇用保険料の負担が大きいことにあります。

会社が支払う保険料は雇用保険だけではなく、他にも労災保険や社会保険の保険料を負担することになります。

したがって、雇用保険料を支払うことは、会社にとってかなり大きな負担になるため、労働者の保険加入手続をあえて行わないブラック企業を生み出してしまうのです。

 参考 

会社が支払う雇用保険料は、0.6%(高くても0.8%)に過ぎず、一見大きい負担には思えないかも知れません。

しかし、実際の賃金に当てはめてみると、月給30万円の労働者の保険料は月々1800円(年間2万1600円)かかることになります。この負担が、雇用している労働者の人数分かかることを考えると、その負担はかなりの高額になります。

3.3. 不正が発覚しにくい

雇用保険料の負担は会社にとって重いですが、加入手続や保険料の支払いを怠った会社は、雇用保険法82条以下の規定に従って罰則を科されますから、「未加入」とすることは会社にもリスクがあります。

にもかかわらず、雇用保険の未加入問題が無くならない原因は、不正が発覚しにくい点にあります。

個々の会社がきちんと労働者を雇用保険に加入させ、保険料を支払っているかを役所が完璧に把握することは不可能です。保険未加入のケースのほとんどは、労働者からの内部通報によって明らかになります。

そもそも不正が発覚しにくく、会社が罰則を科される可能性が低いことも、雇用保険の未加入問題を助長しています。

 重要 

ブラック企業に勤める労働者にとって、内部通報をすることは、自身の立場を危うくするおそれがあり、勇気のいる行為です。

内部通報者を保護するため、国は公益通報者保護制度を設けていますが、多くの労働者は制度の存在を知らず、内部通報に踏み切ることができません。

4. 雇用保険未加入だとどうなるの?

ここまでお読み頂ければ、会社が労働者を雇用保険に加入させない、いわゆる「未加入問題」は違法であることをご理解いただけたのではないでしょうか。

そこで次に、雇用保険に未加入だと、労働者にとってどのような不利益、デメリットがあるかを、弁護士がまとめました。

4.1. 失業保険が支給されない

雇用保険に未加入の場合、失業保険の受給条件を満たすことができません。

したがって、解雇や自主退職で失業しても、失業保険の給付を受けることができず、無収入で求職活動をしなければならなくなります。

4.2. 就業訓練等の支援を受けられない

雇用保険法では、失業保険以外にも、就業訓練や雇用維持のために、訓練手当や育児・介護休業給付など、様々な給付サービスが設けられています。

これらの給付サービスも、雇用保険に未加入で、保険料を支払っていなければ受けることができません。

5. 未加入が発覚したときの対処法

ここまで、雇用保険制度に関する基本的な知識を解説してきました。

雇用保険に加入していないという状況は、労働者にとって大きな不利益になりますから、事前対策が重要ですが、雇用保険未加入が事後に発覚した場合、労働者としてはどのように対応すれば良いのでしょうか。

以下では、雇用保険への未加入が発覚したときの対処法について、弁護士が順番に解説していきます。

5.1. 会社に加入を要求する

まず、はじめにすべきことは、会社に雇用保険の加入手続をするよう要求することです。意図的に加入させていない、というブラック企業でない限りは、加入手続をしてくれるはずです。

それでも加入手続をしてくれないときは、内部通報制度や、後述の損害賠償請求を利用して、雇用保険の加入手続を進めるように、会社と交渉することになります。

5.2. 保険料の後納が可能

労働者の要求に応じて、会社が雇用保険の加入手続をしてくれたとしても、それ以前の雇用期間については、雇用保険未加入の状態だったことになります。

失業保険の給付を受けるためには、雇用保険の加入期間が「直近2年間で12ヶ月以上」であることが条件であり、退職直前や失業後に未加入が発覚すると、原則、失業保険の給付を受けることができません。

しかし、雇用保険法には、保険料の後納制度が設けられており、手続にしたがって保険料を後納すれば、その分の期間をさかのぼって保険が適用され、失業保険を受給できる可能性があります。

5.3. 後納は過去二年分に限られる

ただし、雇用保険法では、保険料の後納は過去2年分までに制限されており、仮に雇用期間が2年以上あったとしても、それ以上さかのぼって保険の適用を受けることはできません。

5.4. 失業保険の受給日数が制限される

雇用保険について、過去に未加入状態であった期間がある場合には、いざ会社を辞めたときの失業保険を受給できる日数にも大きく影響します。

雇用保険法22条は、失業保険の最大受給日数を、雇用保険の加入期間ごとに分けて制限しています。

 保険加入期間ごとの失業保険の最大受給日数 
  • 加入期間が20年以上:150日 
  • 加入期間が10年以上20年未満:120日
  • 加入期間が10年未満:90日

つまり、退職直前や失業後に保険料の後納制度を利用すると、たとえ雇用期間が10年以上だったとしても、保険加入期間は最大2年で計算されるため、失業保険の受給日数は最大90日に制限されてしまうのです。

入社当初からきちんと雇用保険に加入していた場合に比べると、失業保険の受給日数に最低でも30日分が生まれ、その不利益は計り知れません。

このような不利益を受けないためには、なるべく早く雇用保険の加入状況を確認して、対処する必要があります。

6. 会社に請求できないのか?

雇用保険への未加入が発覚したとしても、早期に弁護士に相談して、適切に対処すれば、大きな不利益を受けなくて済むケースもあります。

しかし、会社が労働者を雇用保険に未加入の状態を、巧妙に隠していたために、失業保険を受給できず、苦しめられている労働者の方も残念ながら少なくありません。そうした最悪のケースでは会社に責任をとってもらうしかありません。

そこで、最後に、労働者を雇用保険に加入させていなかった会社の責任を追及する方法を、弁護士が解説します。

6.1. 雇用保険未加入は会社の義務違反

繰り返しになりますが、労働者を雇用保険に加入させることは会社の義務であり、未加入状態を放置することは罰則の対象になる重大な義務違反です。

会社が、「うちの会社では雇用保険の要件を満たさない。」「この業界では雇用保険に加入しないのが普通。」などと反論してきたとしても、未加入状態には常に疑問を持つようにしましょう。

6.2. 債務不履行に基づく損害賠償請求

ある介護施設の看護師が雇用保険に未加入であったために救済を受けられず、介護施設に対して損害賠償を請求した事件では、以下のように施設の契約義務違反がある、と判断され、看護師の損害賠償請求が認められました。

大阪地方裁判所平成27年1月29日判決

「使用者は、労働契約の付随義務として、信義則上、雇用保険の被保険者資格の取得を届け出て労働者が失業給付等を受給することができるように配慮すべきである。そして、届け出を行なわなかった場合は、その行為につき債務不履行を構成するものというべきであり、雇用保険に加入していれば得られたはずの給付金と同額の損害が発生しているといえる」

この裁判例に従えば、雇用保険に未加入であったために受給できなくなった失業保険の給付金額の支払いを会社に請求できる可能性があります。

6.3. 満額請求できるとは限らない

ただし、失業保険の給付額や給付日数は、労働者の賃金や労働状況、生活状況に照らして個別的に決定されるものであり、必ず上記の最大日数分、受給できるわけではありません。

したがって、未加入を放置した会社に対して、失業保険の給付金額の支払いを請求したとしても、望んだ日数分の賠償請求が満額認められるとは限りません。

7. まとめ

今回は、雇用保険制度の基本知識と、雇用保険の未加入問題に対する労働者の対策について、弁護士が解説しました。

雇用保険の未加入問題は、意外と身近にある問題であり、確認をしないまま損をしてしまう労働者も少なくありません。対応が遅くなることで損をするのは労働者側となってしまいます。

会社が雇用保険への加入手続をしてくれずお困りの方は、労働問題に強い弁護士にお早めに法律相談ください。

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