解雇 雇用保険

不当解雇を争うなら失業保険は「仮給付」で受給すべき!

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運営元:弁護士法人浅野総合法律事務所

不当解雇を受けてしまい「弁護士に依頼して会社と争いたい」と考えたとしても、直近の生活が気になる労働者の方も多いことでしょう。

「不当解雇を争いたいのはやまやまだけれど、家族の生活費が心配だ」という方は、失業保険の「仮給付」を受給してください。

なぜ「仮給付」なのかというと、「不当解雇を争う」という方針と失業保険を受け取る行為が矛盾してしまうからです。「不当解雇を争う」ということは、「解雇は無効だ」と主張し労働者でありつづけることを主張するからです。「失業保険を受け取ってしまうと、解雇を認めたことになるのではないか」という不安を解消できます。

あくまでも「仮に」受け取るのであり、「不当解雇を争う」という方針を維持することができます。

今回は、不当解雇を争いたい労働者に向けて、失業保険の仮給付を受け取る方法について、労働問題に強い弁護士が解説していきます。

「雇用保険・失業保険」の法律知識まとめ

失業保険の仮給付と、通常の失業保険の違い

失業保険は、残念ながら会社を退職せざるを得ず、職を失ってしまった労働者の生活を保証するための制度です。雇用保険によって成り立っており、「失業手当」「失業給付」と呼ぶこともあります。

つまり、通常の失業保険は、退職したことを前提としています。

なお、失業保険をもらうためには、原則として直近12か月(会社都合の場合には6か月)の雇用保険加入期間が必要となります。

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失業保険は12か月の加入が必要!最低加入期間未満でも受給する方法

雇用保険から失業手当を受け取るためには、一定の条件があります。最低加入期間を満たす必要があります。退職を検討され、退職後の生活に不安を抱えている方は、労働問題に強い弁護士へご相談ください。

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通常の失業保険に対して、「失業保険の仮給付」とは、あくまでも「仮に」失業保険を受け取ることのできる制度です。

なぜ失業保険を「仮に」受け取る必要があるのかというと、今回解説するとおり「会社を退職せざるを得なかった」理由が「不当解雇」だといって争うことを考えているからなのです。

不当解雇を争うのであれば、本来、これと矛盾する行為は一切とるべきではなく、退職を選定とした失業保険も受け取らないほうがよいのですが、生活の補償がなければ安心して会社と戦うこともできなkなってしまいます。

したがって、「仮給付」とは、「失業」かどうか争いがある場合、例えば不当解雇、退職強要などのケースで、「仮」に失業保険を受領することができるものをいいます。

失業保険の仮給付をもらうために必要な手続き

次に、不当解雇を争いたい労働者が、失業保険の仮給付を受け取るために必要となる手続きについて、弁護士が解説します。

通常の失業保険の場合には、会社の協力が必要となりますが、失業保険の仮給付では、不当解雇を争っていることから、会社が協力してくれないおそれがあります。

労働トラブルを争う期間中の生活保障として失業保険の仮給付をもとめるときには、すでに労働問題について依頼している弁護士がいるときは、仮給付の手続きについても弁護士にアドバイスしてもらうことがお勧めです。

基本的には通常の失業保険と同じ

「失業保険の仮給付」も、通常の失業保険の一部です。そのため、基本的な要件は、通常の失業保険を受け取るときと同じです。

「失業保険の仮給付」の制度について法律に明確な規定があるわけではなく、失業保険の受給要件にしたがって判断されます。

したがって仮給付の場合であっても通常の場合と同様、受給要件を満たさなければもらうことができず、かつ、「7日間」の待期期間と、自己都合の場合には「3か月」の給付制限期間を経過しなければ、失業保険の仮給付をもらうことができません。

失業保険を受け取るための要件については、次の解説もごらんください。

その他、失業保険を受け取るための要件は、次の2つの解説にくわしくまとめています。

チェック
自己都合?会社都合?退職理由の違いと「特定受給資格者」「特定理由退職者」

「退職理由は自己都合か?会社都合か?」といわれる問題です。「自己都合」「会社都合」という言葉のイメージに振り回させることなく、あなたの退職理由に従って、あなたがどれだけの受給金額を、いつから支払ってもらえるのか、しっかり理解する必要があります。失業給付は失業中の生活を支える「命綱」です。

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失業保険を受給するための「失業状態」とは?

失業手当は、再就職までの生活のため必須の収入ですが、「就職をしたいのに就職ができない」という人のための生活費を補うために給付であって、そもそも就職をする気がない人や、労働できない人には失業手当は給付されません。「失業状態」にあることが、失業手当を受給するための必須の要件となります。

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受給のための要件を満たす場合には、失業保険の仮給付を受け取るために、労働者自身の住民票がある市区町村のハローワークで、必要書類を提出して手続きをします。

失業保険の申請の際に必要となる提出書類は、次のとおりです。詳しくは、ハローワークに問い合わせてから出向くことがお勧めです。

  • 離職票
  • 個人番号を確認できる書類(マイナンバーカード、通知カード、個人番号の書かれた住民票など)
  • 公的な身分証明書(運転免許証など)
  • 印鑑
  • 顔写真

「解雇を争っていること」を証明する必要がある

失業保険の仮給付を申請するときに、通常の失業保険の申請に加えて追加で必要となるのが、「解雇を争っていること」を証明する資料です。

失業保険の仮給付は、会社による不当な解雇を争っている場合に、「仮に」失業保険の給付を受けるための制度ですから、不当解雇を争っていることが必要となるためです。

逆にいえば、不当解雇を争って会社への復職を求めている状況でなければ、失業保険の仮給付を受けることはできません。

ハローワークに提出する「不当解雇を争っていること」を証明する資料としては、次のようなものが考えられます。

  • 地位確認請求訴訟の訴状、受理証明書
  • 地位確認請求労働審判の、労働審判申立書、受理証明書
  • 労働委員会におけるあっせんの申立書、受理証明書
  • 代理人弁護士名義の内容証明郵便による通知書、配達証明

不当解雇をはじめとする労働問題について、すでに弁護士に依頼している場合には、仮給付申請に必要となる書類は弁護士に用意してもらうことができます。

不当解雇を争うつもりだけれど、まだ実際に行動を起こしていない場合には、失業保険の仮給付を早く得るためにも、弁護士への相談は早めがお勧めです。

離職票が入手できないときの対応策

不当解雇を争うのであれば、これと矛盾する行為はできる限りしないほうがよいと解説しました。労働者側から離職票を強く求める行為もまた、不当解雇を争う方針とは矛盾する行為です。

会社が早期に離職票を送付してこれば、これを利用することができますが、離職票がなかなか送られてこないとき、あえて強く要求するかは悩ましいところです

そのため、ブラック企業の怠慢な手続きによって「失業保険の仮給付を申請したいのに、手元に離職票がない」というケースが生じることがあります。離職票の発行には、「離職してから10日以内」という期間制限がありますが、この義務に違反する会社も多くあります。

この点、失業保険の仮給付は、労働者保護のための制度であるため、会社による離職票の発行が遅れている場合でも、先行して手続きを進めることができます。

仮給付した失業保険を返還しなければならないケース

失業保険の仮給付は、あくまでも「仮」の給付ですから、会社との争いの結果によっては返還しなければならないケースもあります。

不当解雇を労働審判や訴訟などで争い「解雇無効」という結論を勝ち取った場合には、「失業状態」ではなくなるため、仮給付を受けた失業手当を返還する義務が生じます。

ただし、不当解雇をめぐるトラブルは複雑であり、争いの結論にもさまざまな形があります。

交渉・話し合いで解決するケース、労働審判や訴訟などの法的手続きになるケースがあり、その内容によっても、仮給付を受けた失業手当を返す必要があるかどうかを検討しなければなりません。

そこで最後に、労働トラブルの結論ごとに、仮給付の返還義務について弁護士が解説します。

不当解雇の無効を確認し、復職する場合

不当解雇をめぐる争いは、専門用語で「地位確認請求」といいます。つまり、「解雇は無効であり、今もまだ労働者である地位を確認してほしい」と主張して争うという意味です。

この争いの結果、解雇が無効であったことが確認されると、労働者は会社に戻る(復職する)こととなります。この場合には「失業状態」は解消されます。

そのため、解雇無効を勝ち取り、会社に復職することとなった場合には、仮給付を受けた失業手当を返還する必要があります。

一方で、解雇が無効となると、争っていた期間中も労働者であり続けたことになりますから、その期間中の賃金を会社に請求できます。

不当解雇された日に会社を退職したことにする場合

不当解雇の争いの中で、和解によって金銭解決をする場合があります。「不当解雇は撤回して合意退職にするけれども、その代わりに一定額の解決金を受け取る。」といったケースが典型的です。

不当解雇を争うとしても、会社はもちろんのこと労働者としても一度解雇されたような会社には戻りたくないのが本音であるケースも多いからです。

不当解雇を撤回してもらい、合意退職とともに金銭解決をする場合には、「合意退職日がいつか」が重要になります。

不当解雇をされた日に合意退職をしたこととするのであれば、失業保険の仮給付を受けていた期間は「失業状態」にあったことが確定します。そのため、「仮給付」の返還は不要となります。

たとえば・・・

3月20日に解雇され、労働審判で争った結果、5月30日に和解が成立したというケースで考えてみましょう。

この場合に、3月20日の解雇を撤回し、解雇と同日である3月20日付で退職をしたという内容で和解をすれば、3月20日から失業状態であったことに変わりはありませんから、「仮給付」で受け取っていた失業手当の返還は不要となります。

和解をした日に会社を退職したことにする場合

これに対して、不当解雇を撤回させて合意退職とし、金銭解決をするケースであっても、合意退職の日を「和解日」とすると、仮給付を受けた失業保険を返さなければならないこととなります。

不当解雇が撤回されたことによって、合意退職する日までは、労働者であり続けたこととなり、「失業状態」ではなかったことが確定するからです。

したがって、不当解雇トラブルを和解で解決する場合には、失業保険の仮給付との関係で、和解条項を慎重に検討することが必要です。

会社側としてはどちらの結論でも大差なく、「失業保険の仮給付をしているかもしれない」という労働者側の事情まで考えてくれないこともありますから、注意が必要です。

たとえば・・・

8月30日に解雇され、労働審判で争った結果、10月10日に和解が成立したというケースで考えてみましょう。

この場合に、8月30日の解雇を撤回し、10月10日の和解成立日に退職をしたという内容で和解をすれば、8月30日から10月10日の間は労働者であったこととなり、失業状態はなかったことになります。

そのため、このような和解内容で退職をすると、「仮給付」で受け取っていた失業手当を返還する必要があります。

「労働問題」は、弁護士にお任せください!

今回は、不当解雇をされてしまい会社と争いたいが、生活費が心配だという、労働者側の悩ましい問題の解決策となる「失業保険の仮給付」について弁護士が解説しました。

不当解雇の撤回をもとめて争うのであれば、できる限り「解雇の無効」と矛盾するような行為をとるべきではありません。労働者が自認してしまっているのであれば、解雇を争う余地もなくなってしまいます。

失業保険の仮給付を受けることで、当面の生活費の心配をなくし、労働審判や訴訟などの法的手続きによって労働問題を徹底的に争い、権利を実現することができます。

「雇用保険・失業保険」の法律知識まとめ

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弁護士法人浅野総合法律事務所(東京都中央区銀座)は、代表弁護士浅野英之(日本弁護士連合会・第一東京弁護士会所属)をはじめ弁護士5名が在籍する弁護士法人。 不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、近年ニュースでも多く報道される労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。 「労働問題弁護士ガイド」は、弁護士法人浅野総合法律事務所が運営し、弁護士が全解説を作成する公式ホームページです。

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