雇用保険

「自己都合退職」といわれても失業保険をすぐにもらう4つの方法

お問い合わせ

運営元:弁護士法人浅野総合法律事務所

会社を退職することを決意した労働者が気になるのが、「自己都合なのか、会社都合なのか」という点です。特に、会社とトラブルになったり、労働問題により会社に居続けられなくなったりといった場合には、「自己都合ではなく、会社都合なのではないか」という疑問、不安をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

というのも、自己都合退職の場合、失業保険には3か月の給付制限があるからです。つまり、自己都合か会社都合かによって、失業保険(失業手当)のもらえる金額、もらえる時期が変わります。

失業保険(失業手当)は、労働者が仕事を失い、収入を失ったときに頼るべき、生活費のための重要な手当です。

そこで今回は、自己都合退職でもすぐに失業保険をもらえるケースについて、労働問題に強い弁護士が解説します。

「雇用保険・失業保険」の法律知識まとめ

退職理由の種類と、その違いは?

労働者が、会社を退職するときの「退職の種類」には2種類あります。つまり、失業保険における分類として有名な「自己都合退職」と「会社都合退職」です。

自己都合退職か会社都合退職かは、会社からもらえる離職票を見ればわかります。

退職理由が自己都合か、会社都合かによって、雇用保険の基本手当(いわゆる失業保険・失業手当)をもらえる金額と、もらえる時期がことなります。

そもそも失業保険とは?

退職理由が「自己都合退職」となるのか、「会社都合退職」となるのかの分類を知り、できる限り早く失業保険をもらうためにも、「そもそも失業保険とはどのようなものか」という、失業保険の基礎知識について理解しておいてください。

失業保険とは、失業中の労働者が、生活費にあてる収入がなくなってしまうために、労働者保護のために準備されている行政による制度のことです。一般的に、「失業保険」「失業手当」「失業給付」などと呼ぶことがあります。

たとえ失業中でも、十分に働くことのできる健康な労働者は、再就職活動、転職活動をするのが通常です。しかし、この期間中、無収入のままでは生活ができず、満足な再就職活動、転職活動ができません。

失業保険を受けるためには、「雇用保険法」という法律にしたがってハローワークで「失業状態である」という認定を受ける必要があります。

自己都合退職の場合

退職理由が「自己都合退職」に分類される場合には、退職したからといってすぐに失業保険をもらえるわけではありません。

自己都合の理由による退職をするときには、原則として「3か月間」の給付制限があるからです。つまり「3か月」の給付制限期間が経過しなければ、失業保険がもらえず、失業保険がもらえるのは退職から4か月目になってはじめてということになります。これに加えて、会社都合の退職のときと同じく、「7日間」の待期期間があります。

したがって、自己都合で退職した労働者は、「7日間」の待期期間と「3か月」の給付制限期間の両方が経過しなければ、失業保険をもらえません。もらえる失業保険額も、勤続年数などに応じて「90日~150日」と、会社都合の場合より低額です。

自己都合退職となる退職理由は、一般的に「労働者側の事情」です。そのため、労働者側で退職時期をコントロールすることができるため、退職してすぐに失業保険をもらえなくても、労働者の生活に支障がないと考えられているからです。

会社都合退職の場合

退職理由が「会社都合退職」に分類される場合には、退職したらすぐに失業保険をもらうことができます。具体的には「7日間」の待期期間があければすぐに失業保険を受給できます。もらえる失業保険額も、勤続年数などに応じて「90日~330日」と、自己都合の場合より高額です。

「会社都合退職」となる退職理由は、会社からの一方的な解雇、会社の倒産、事業部の廃止など、社側の事情による退職です。そのため、労働者側で退職の時期をコントロールすることができません。

労働者の意に反して突然退職せざるを得なくなった場合には、労働者の生活に与えるダメージがとても大きいです。労働者保護のためにも、すぐに失業保険を得られるようにしなければならないと考えられています。

自己都合退職でも、すぐに失業保険をもらう方法

さきほど解説したとおり「自己都合退職」だと、失業保険をもらえるのは退職後に「7日間」の待期期間と「3か月」の給付制限期間が経過した後となります。

これは失業してしまった労働者にとってはかなりつらいことで、生活ができなくなってしまうことからやむを得ず、失業保険をもらえるようになる前にアルバイトを始めたり、自分のやりたくない仕事についたりせざるを得ない人も少なくありません。

そこで次に、「自己都合退職」と会社にいわれても、すぐに失業保険をもらう方法について弁護士が解説します。

賃金の未払い・減額があったことを主張する

失業保険についてのハローワークの基準によれば、賃金の未払いや減額があった場合、会社が「自己都合退職」として扱おうとしても、後ほど解説する「特定受給資格者」にあたり、すぐに失業保険をもらうことができる可能性があります。

具体的には、賃金額のうち1/3を超える額が2か月以上支払われなかった場合や、退職直前の6か月の間に3か月以上あった場合には、すぐに失業保険をもらうことができます。

また、賃金が85%未満に減額されてしまったときも同様に、「特定受給資格者」としてすぐに失業保険をもらうことができます。

チェック
給料の減額を理由とする退職は「会社都合」の失業保険がもらえる!

給料(賃金)が大幅に減額されたことを理由として退職した場合、「会社都合」で失業手当を受給するための要件を解説します。ブラック企業から退職を検討する方は、労働問題に強い弁護士へご相談ください。

続きを見る

長時間労働を証明する

法律違反の長時間労働を放置しているブラック企業に長居する必要はありません。長時間労働があったことを証明すれば、会社が「自己都合退職」として扱おうとしても、すぐに失業保険をもらうことができる可能性があります。

具体的には、次のような時間外労働(残業)がおこなわれていた場合が対象となります。

  • 退職直前6か月のうち、3か月連続して月45時間以上の残業があったとき
  • 退職直前2か月~6か月の平均残業時間が月80時間を超えるとき
  • 1か月の残業時間が100時間を超えるとき

これらの長時間労働は、法律で認められている36協定の限度基準を超える残業となるため、「残業を原因として辞めた」ということができ、失業保険をすぐにもらうことができます。

残業時間が長時間であったことを証明する証拠として、タイムカード、日報、業務日誌、入退室履歴、セキュリティカードの記録、PCのログなどを、退職前に保存しておくことがお勧めです。

チェック
長時間の残業を理由に退職したら「会社都合」の失業保険がもらえる!

「会社都合」の退職と判断される残業は、通常の想定を超える長時間残業が続く場合です。残業を理由とした退職が「会社都合」退職と評価されて失業手当を増額できる要件を解説します。

続きを見る

ハラスメントがあったことを証明する

あなたが会社を「辞めさせられた」「辞めざるを得なかった」と感じているとき、それは会社や社長、上司などからの嫌がらせ(ハラスメント)があったことが原因となっているのではないでしょうか。

特に、社長からのセクハラ・パワハラを受けた場合、会社にこれ以上いづらいことは明らかです。

嫌がらせや冷遇、職場いじめなどは、「パワハラ」にあたる違法行為であり、これらの行為があって退職をしたときは、会社が「自己都合退職」といったとしても失業保険をすぐにもらうことができる可能性があります。

ただし、ハラスメント行為は隠れておこなわれることが多いため、念のため、退職前にハラスメント行為の録音・録画、ハラスメント内容が記載されたメールやLINEなどの証拠を収集しておいてください。

退職に正当な理由があることを主張する

退職をするのに正当な理由がある場合には、たとえ自己都合退職だったとしても、すぐに失業保険をもらうことができます。このような場合にはハローワークでは、「特定理由離職者」という取扱いとなります。

「特定理由離職者」となる正当な退職理由には、両親の死亡や病気、扶養のため、妊娠・出産・育児のためなど、家庭の事情を理由とする退職も含まれます。

失業保険がすくにもらえる正当な退職理由は、かなり幅広く認められていますので、以下の解説をごらんいただき、あてはまるものがないかどうか検討してください。

特定受給資格者・特定理由離職者とは?

会社が、労働者の退職を「自己都合」としたいことには多くの理由があります。「自己都合」とすることで「会社は悪くない」と主張し、労働トラブルを回避する、というのが主要な理由となることが多いです。また、助成金や補助金をもらっている場合、「解雇などをしない」ことが要件となっていることがあります。

労働者側としては、このような会社の事情に左右されることなく、すぐに失業保険をもらえる方法をしっておいてください。

さきほど解説した4つの方法はいずれも、専門用語でいう「特定受給資格者」「特定理由離職者」の要件を満たす退職理由となります。そこで、この2つにあてはまるための詳細な要件や方法などについて、弁護士が解説します。

チェック
自己都合?会社都合?退職理由の違いと「特定受給資格者」「特定理由退職者」

「退職理由は自己都合か?会社都合か?」といわれる問題です。「自己都合」「会社都合」という言葉のイメージに振り回させることなく、あなたの退職理由に従って、あなたがどれだけの受給金額を、いつから支払ってもらえるのか、しっかり理解する必要があります。失業給付は失業中の生活を支える「命綱」です。

続きを見る

特定受給資格者とは?

特定受給資格者とは、倒産や解雇など、会社側の事情によって退職を余儀なくされた人のことをいいます。

特定受給資格者にあたるのは、次の場合です。

Ⅰ 「倒産」等により離職した者
① 倒産(破産、民事再生、会社更生等の各倒産手続の申立て又は手形取引の停止等)に伴い離職した者
② 事業所において大量雇用変動の場合(1 か月に 30 人以上の離職を予定)の届出がされたため離職した
者及び当該事業主に雇用される被保険者の 3 分の 1 を超える者が離職したため離職した者
③ 事業所の廃止(事業活動停止後再開の見込みのない場合を含む。)に伴い離職した者
④ 事業所の移転により、通勤することが困難となったため離職した者

Ⅱ 「解雇」等により離職した者
① 解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇を除く。)により離職した者
② 労働契約の締結に際し明示された労働条件が事実と著しく相違したことにより離職した者
③ 賃金(退職手当を除く。)の額の 3 分の 1 を超える額が支払期日までに支払われなかった月が引き続き
2 か月以上となったこと、又は離職の直前 6 か月の間に 3 月あったこと等により離職した者
④ 賃金が、当該労働者に支払われていた賃金に比べて 85%未満に低下した(又は低下することとなった)
ため離職した者(当該労働者が低下の事実について予見し得なかった場合に限る。)
⑤ 離職の直前 6 か月間のうちに 3 月連続して 45 時間、1 月で 100 時間又は 2~6 月平均で月 80 時間を超
える時間外労働が行われたため、又は事業主が危険若しくは健康障害の生ずるおそれがある旨を行政機関
から指摘されたにもかかわらず、事業所において当該危険若しくは健康障害を防止するために必要な措置
を講じなかったため離職した者
⑥ 事業主が労働者の職種転換等に際して、当該労働者の職業生活の継続のために必要な配慮を行っていな
いため離職した者
⑦ 期間の定めのある労働契約の更新によリ 3 年以上引き続き雇用されるに至った場合において当該労働
契約が更新されないこととなったことにより離職した者
⑧ 期間の定めのある労働契約の締結に際し当該労働契約が更新されることが明示された場合において当
該労働契約が更新されないこととなったことにより離職した者(上記⑦に該当する者を除く。)
⑨ 上司、同僚等からの故意の排斥又は著しい冷遇若しくは嫌がらせを受けたことによって離職した者
⑩ 事業主から直接若しくは間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した者(従来から恒常的に設
けられている「早期退職優遇制度」等に応募して離職した場合は、これに該当しない。)
⑪ 事業所において使用者の責めに帰すべき事由により行われた休業が引き続き 3 か月以上となったこと
により離職した者
⑫ 事業所の業務が法令に違反したため離職した者

特定理由離職者とは?

特定理由離職者は、解雇のように会社側の事情で一方的に雇用契約を終了させられてしまったわけではないものの、労働者を保護すべき理由によって退職した人のことです。

特定理由離職者の要件は、次のとおりです。

【1】労働契約期間が満了し、かつ次の更新がないことにより退職(更新を希望したが更新できなかった場合)(特定受給資格者【2】8または9に該当する場合を除く)
※「契約の更新をする場合がある」とされている場合

【2】以下の正当な理由のある自己都合退職

  • 体力の不足、心身の障害、疾病、けが、視力、聴力、触覚の減退等による離職
  • 妊娠、出産、育児等により離職し、雇用保険の受給期間延長措置を受けた人
  • 父または母の死亡、疾病、けがのため介護するため離職(家庭の事情が急変した場合)
  • 配偶者又は扶養すべき親族と別居生活を続けることが困難となり離職
  • 次の理由により通勤が困難になって離職
  • (a)結婚により住所が変わったため退職
    (b)育児に伴う保育所、その他これに準ずる施設の利用又は親族への保育の依頼
    (c)事業所が通勤困難な場所へ移転したため退職
    (d)自分の意志に反して引越しが必要になり退職
    (e)鉄道やバス等の交通手段の廃止又は運行時間の変更により退職
    (f)会社の指示による転勤や出向に伴う別居の回避のために退職
    (g)夫(または妻)の転勤、出向または再就職に伴う転居のために退職

  • その他、上記「特定受給資格者の範囲」の【2】の11に該当しない企業整備による人員整理等で希望退職者の募集に応じて退職

特定受給資格者・特定理由離職者の優遇

特定受給資格者、特定理由離職者にあたる場合には、その優遇は「給付制限期間がない」というだけではありません。

失業保険をもらうための雇用保険の加入期間は、「自己都合退職」の場合には12か月(1年間)必要となるのが原則です。しかし、特定受給資格者、特定理由離職者の場合には、賃金支払いの基礎となった日が11日以上ある月が「6か月」あれば、失業保険をもらえます。

簡単にいうと「6か月」雇用されつづけていれば、失業保険をもらうことができる、という手厚い保護を意味しています。

特定受給資格者・特定理由退職者となるための手続き

自己都合であっても、特定理由離職者にあたる場合であれば、給付制限期間なく、退職後にすぐに失業保険をもらえることをご理解いただけましたでしょうか。

労働者が、特定理由離職者であるかどうかは、ハローワーク(公共職業安定所)が判断します。

そのため、特定理由離職者と判断してもらい、少しでも早く失業保険を受領するためには、ハローワークに対して、自己都合退職であっても特定理由離職者であると認めてもらわなければなりません。

ハローワークに、特定理由離職者であると認めてもらうためには、厚生労働省の発表している次の資料を参考に、医師の診断書など、必要となる証拠を収集するようにしましょう。

チェック
離職票の発行までの全ての手続と、かかる期間【弁護士解説】

会社に雇われている間に雇用保険料を支払っていれば、万が一解雇をされてしまったり、急に会社を退職せざるをえない事態となったとき、ハローワークで手続きをすることで失業保険を受け取ることができます。 失業保 ...

続きを見る

「労働問題」は、弁護士にお任せください!

今回は、会社から「自己都合退職」といわれてしまったときでも、失業保険(失業手当)をすぐにもらうための方法について、弁護士が解説しました。

「労働者が失業保険をすぐにもらうことができるかどうか」について、会社は軽く考えているかもしれませんが、労働者側にとっては死活問題です。「労働トラブルを隠したい」「リスクを負いたくない」といった会社側の都合に左右されず、主張できる権利をしっかりと主張していきましょう。

会社を退職せざるを得なくなってしまった方、失業保険でおこまりの方は、ぜひ一度、労働問題に強い弁護士に法律相談ください。

「雇用保険・失業保険」の法律知識まとめ

お問い合わせ

運営元:弁護士法人浅野総合法律事務所
  • この記事を書いた人
  • 最新記事
弁護士法人浅野総合法律事務所

弁護士法人浅野総合法律事務所

弁護士法人浅野総合法律事務所(東京都中央区銀座)は、代表弁護士浅野英之(日本弁護士連合会・第一東京弁護士会所属)をはじめ弁護士5名が在籍する弁護士法人。 不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、近年ニュースでも多く報道される労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。 「労働問題弁護士ガイド」は、弁護士法人浅野総合法律事務所が運営し、弁護士が全解説を作成する公式ホームページです。

-雇用保険
-, , , , , ,

お問い合わせ

© 2020 労働問題の法律相談は弁護士法人浅野総合法律事務所【労働問題弁護士ガイド】