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自己都合の退職でも、失業保険をすぐもらう方法4つ

自己都合の退職でも、失業保険をすぐもらう方法を、労働問題に強い弁護士が解説します。

退職を決意したとき気になるのが「自己都合か、会社都合か」という問題。
会社とトラブルになってやめざるをえなかったり、労働問題によって働くことが難しくなってしまったとき、「少しでも早く失業保険をもらいたい」という気持ちは、痛いほどよくわかります。

相談者

会社から無理やり「自己都合退職」にされそう

相談者

やめたいわけではない…会社都合がふさわしいのでは?

こんな相談が多いのは、失業保険の条件が退職理由により大きく違うため。
自己都合の退職だと、給付制限があり、失業保険をもらえるのは「2ヶ月と7日」のあとになってしまいます。
もちろん、もらえる金額や期間も、自己都合よりも会社都合のほうが多いです。

一方で、自己都合の退職でも、失業保険をすぐもらえるケースもあります。
失業保険は、仕事を失い、収入をなくした労働者がたよるべき、生活費のための重要な手当。
少しでも多くもらうためにも、事前準備は欠かせません。

この解説のポイント
  • 離職理由には、会社都合と自己都合がある
  • 会社都合のほうが、退職後すぐに、できるだけ多くの失業保険をもらえる点で有利
  • 会社に自己都合だといわれても、すぐに失業保険をもらえる4つの方法を理解する

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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そもそも失業保険とは?

失業保険とは

失業保険とは、職を失った労働者が、生活費にあてるための収入がなくなってしまうことを見越して、労働者保護のために準備された行政の制度のこと。
正式名称は「雇用保険の基本手当」と呼びますが、一般には「失業保険」というほか、「失業手当」、「失業給付」などのワードも、同じ意味でつかわれます。

たとえ失業中でも、十分に働ける健康な労働者は、転職活動、再就職のための活動をします。
しかし、この期間中、無収入のままでは生活できず、満足いく転職活動はできません。
生活費のために、やむなく働きたくない会社に入社せざるをえないのは大きな損失であり、このような事態を避けるためにも失業保険があります。

なお、失業保険を受けるには、雇用保険法という法律にしたがい、ハローワークで「失業状態である」という認定を受ける必要があります。

離職理由の2つの種類と、その違い

労働者が、会社を退職するとき、離職理由には、2つの種類があります。
それが、よくいわれる「自己都合退職」と「会社都合退職」。
いずれも、失業保険における分類として利用されている用語です。

自己都合退職か、会社都合退職かは、会社から渡される離職票を見ることでわかります。

退職するときに、離職理由が自己都合なのか、それとも会社都合なのかにより、失業保険をもらえる時期・タイミングと、もらえる金額・期間が異なります。

退職するときの離職理由が「自己都合退職」となるのか、「会社都合退職」となるのかの分類を知ることで、できるだけ早く、そして、できるだけ多くの失業保険をもらうことができます。

自己都合と会社都合の違い

自己都合と会社都合の違い」は、別のページでも詳しく解説しています。

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自己都合退職のときの失業保険

自己都合のときの失業保険
自己都合のときの失業保険

退職のとき、離職理由が「自己都合退職」に分類されるときは、退職したからといってもすぐには失業保険がもらえるわけではありません。

自己都合の理由で退職したときには、原則として「2ヶ月」の給付制限があるからです。
つまり、給付制限の「2ヶ月」の期間が経過しなければ、失業保険をもらうことができませんから、失業保険をもらえるのは「退職してから4ヶ月目」になってはじめてということになります。

なお、自己都合でも会社都合でも同じように「7日間」の待機期間があります。

以上のことから、自己都合で退職した労働者は、「2ヶ月」の給付制限期間と「7日」の待機期間のいずれもが経過した後でなければ失業保険をもらえません。
もらえる失業保険の金額も、勤続年数などに応じて「90日〜150日」と、会社都合のケースに比べて低額。

自己都合退職とは、通常、「労働者側の事情」という意味。
そのため、労働者が、退職時期をコントロールできますから、退職してすぐに失業保険をもらえなくても、労働者の生活に支障がないと考えられているからです。

※給付制限期間は、2020年10月1日より、「3ヶ月」から「2ヶ月」に短縮された。
なお、2020年9月31日以前の自己都合退職と、過去5年以内に2回以上自己都合退職があったときは、給付制限期間が「3ヶ月」となる。

会社都合退職のときの失業保険

会社都合退職のときの失業保険
会社都合退職のときの失業保険

これに対して、離職理由が「会社都合退職」に分類されるならば、退職したらすぐに失業保険をもらえます。
(なお、会社都合でも待機期間はあるため、「7日間」の待期期間があけた後すぐに受給できます。)

もらえる失業保険の金額もまた、勤続年数などに応じて「90日~330日」と、自己都合より高額です。

会社都合退職は、会社からの一方的な退職であり、会社側の事情による退職のこと。
一方的な解雇や、会社の倒産、事業部の廃止などが典型例です。
そのため、労働者側で退職のタイミングをコントロールできず、時期によっては不利益が大きすぎてしまうからです。

労働者の意に反して、突然退職せざるをえなくなったケースは、労働者の生活に与えるダメージがとても大きいもの。
労働者保護のために、すぐに失業保険をもらえる必要がある、と考えられているのです。

自己都合退職でも、すぐに失業保険をもらう方法

自己都合退職でも、すぐに失業保険をもらう方法

次に、「自己都合退職」と会社にいわれても、すぐに失業保険をもらう方法を4つご紹介します。
早くもらえるようにするためにも、ぜひ理解しておいてください。

離職理由の2つの種類と、その違い」で解説したとおり、「自己都合退職」だと、失業保険をもらえるのは退職後に「7日」の待機期間と「2ヶ月」の給付制限期間を過ぎたあととなります。

失業して無収入になってしまった労働者にとって、3ヶ月7日もの間収入がないのはかなりつらいこと。
生活ができなくなってしまうために、やむなく失業保険を受給前にアルバイトをはじめたり、やりたくない仕事につかざるをえなくなる人も少なくありません。

それでもなお、会社側は「会社都合」となると「会社のせい」というイメージがあるほか、会社にデメリットもあるため、「自己都合」を押し付けてきます。

賃金の未払い・減額があったと主張する

失業保険について、ハローワークの基準によれば、賃金の未払いや大幅な減額があったケースは、たとえ会社が「自己都合退職」として扱おうとしても、後ほど解説する「特定受給資格者」にあたり、すぐに失業保険をもらうことができます。

具体的には、次の2つの「賃金未払い」のケースでは、すぐに失業保険をもらえます。

  1. 賃金額のうち1/3を超える額が、2か月以上支払われなかった場合
  2. 退職直前の6か月の間に、3か月以上未払いがあった場合

そして、賃金が85%未満に減額されてしまったときも同じく、「特定受給資格者」としてすぐに失業保険をもらえます。

給与の減額を理由に、すぐに失業保険をもらいたいとき、次の解説を参考にしてください。

長時間労働を証明する

法律違反となるような長時間労働を放置するブラック企業には、長居は禁物。
違法な長時間労働があったと証明できれば、会社が「自己都合退職」と扱おうとも、すぐに失業保険をもらえます。

具体的には、次のような残業(時間外労働)がおこなわれていたケースで、すぐに失業保険をもらうことができます。

  • 退職直前6か月のうち、3か月連続して月45時間以上の残業があったとき
  • 退職直前2か月~6か月の平均残業時間が月80時間を超えるとき
  • 1か月の残業時間が100時間を超えるとき

これらの長時間労働があると、36協定の限度基準をも超えることとなりますから、「長すぎる残業が原因で会社を辞めざるをえなかった」と正当に主張できます。
そのため、会社のせいであることが明らかであり、失業保険をすぐにもらえるわけです。

長時間労働は、うつ病や適応障害のようなメンタルへのダメージにもなりうる、とても深刻な労働問題。

残業時間が長時間だったことを証明する証拠として、タイムカード、日報、業務日誌、入退室履歴、セキュリティカードの記録、PCのログなどを、退職前に保存しておくのがおすすめです。

退職時にあわせて残業代請求する方は、残業時間の証拠についての解説を参考にしてください。

ハラスメントがあったと証明する

あなたが、「会社に辞めさせられた」、「辞めざるをえなかった」と感じているとき、社長、上司からの嫌がらせ(ハラスメント)が原因となっているケースもあるのではないでしょうか。
特に、社長からのセクハラ、パワハラを受けてしまうと、いくら違法とはいえ、これ以上会社にいづらいのは明らか。

嫌がらせや冷遇、職場いじめなどは、「パワハラ」にあたる違法行為です。
パワハラがあって退職したときには、会社が「自己都合退職」といったとしても、失業保険をすぐにもらえるケースです

ただし、ハラスメント行為は隠れておこなわれることが多いもの。
退職前にハラスメント行為の録音・録画、ハラスメント内容が記載されたメールやLINEなどの証拠を収集しておいてください。

正当な理由のある自己都合退職だと主張する

退職をするのに「正当な理由」がある場合は、たとえ自己都合退職だったとしても、すぐに失業保険をもらえます。
正当な理由のある退職は、ハローワークでは「特定理由離職者」という取扱いになるからです。

「特定理由離職者」となる正当な退職理由には、両親の死亡や病気、扶養のため、妊娠・出産・育児のためなど、家庭の事情を理由とする退職も含まれます。

失業保険がすぐにもらえる正当な退職理由は、かなり幅広く認められていますので、以下の解説を見て、あてはまるものがないかどうか検討してください。

特定受給資格者・特定理由離職者とは?

特定受給資格者・特定理由離職者とは?

労働者が退職するとき、会社としてはその離職理由を「自己都合」としたいことには多くの理由があります。

「自己都合」とすることで「会社は悪くない」と主張して労働トラブルを回避したい、というのが主な理由。
その他にも、助成金や補助金をもらっている場合、「解雇など、会社都合となる退職がないこと」が要件となっているケースもあります。

弁護士浅野英之

労働者側では、こんな会社の事情に左右されることなく、すぐに失業保険をもらえる方法を知っておきましょう。

さきほど解説した「自己都合退職でも、すぐに失業保険をもらう方法」の4つはいずれも、法律用語でいえば「特定受給資格者」、「特定理由離職者」の要件を満たす退職理由となります。
そこで、この2つにあてはまるための詳細な要件や方法を知っておくことが、失業保険で不利にならないための近道となります。

特定受給資格者とは?

特定受給資格者とは、倒産や解雇など、会社側の事情によって退職を余儀なくされた人のことです。

特定受給資格者にあたるのは、次の場合です。

Ⅰ 「倒産」等により離職した者
① 倒産(破産、民事再生、会社更生等の各倒産手続の申立て又は手形取引の停止等)に伴い離職した者
② 事業所において大量雇用変動の場合(1 か月に 30 人以上の離職を予定)の届出がされたため離職した者及び当該事業主に雇用される被保険者の 3 分の 1 を超える者が離職したため離職した者
③ 事業所の廃止(事業活動停止後再開の見込みのない場合を含む。)に伴い離職した者
④ 事業所の移転により、通勤することが困難となったため離職した者

Ⅱ 「解雇」等により離職した者
① 解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇を除く。)により離職した者
② 労働契約の締結に際し明示された労働条件が事実と著しく相違したことにより離職した者
③ 賃金(退職手当を除く。)の額の 3 分の 1 を超える額が支払期日までに支払われなかった月が引き続き2 か月以上となったこと、又は離職の直前 6 か月の間に 3 月あったこと等により離職した者
④ 賃金が、当該労働者に支払われていた賃金に比べて 85%未満に低下した(又は低下することとなった)ため離職した者(当該労働者が低下の事実について予見し得なかった場合に限る。)
⑤ 離職の直前 6 か月間のうちに 3 月連続して 45 時間、1 月で 100 時間又は 2~6 月平均で月 80 時間を超える時間外労働が行われたため、又は事業主が危険若しくは健康障害の生ずるおそれがある旨を行政機関から指摘されたにもかかわらず、事業所において当該危険若しくは健康障害を防止するために必要な措置を講じなかったため離職した者
⑥ 事業主が労働者の職種転換等に際して、当該労働者の職業生活の継続のために必要な配慮を行っていないため離職した者
⑦ 期間の定めのある労働契約の更新によリ 3 年以上引き続き雇用されるに至った場合において当該労働契約が更新されないこととなったことにより離職した者
⑧ 期間の定めのある労働契約の締結に際し当該労働契約が更新されることが明示された場合において当該労働契約が更新されないこととなったことにより離職した者(上記⑦に該当する者を除く。)
⑨ 上司、同僚等からの故意の排斥又は著しい冷遇若しくは嫌がらせを受けたことによって離職した者
⑩ 事業主から直接若しくは間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した者(従来から恒常的に設けられている「早期退職優遇制度」等に応募して離職した場合は、これに該当しない。)
⑪ 事業所において使用者の責めに帰すべき事由により行われた休業が引き続き 3 か月以上となったことにより離職した者
⑫ 事業所の業務が法令に違反したため離職した者

特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準(厚生労働省)

特定理由離職者とは?

特定理由離職者は、解雇のように会社側の事情で一方的に雇用契約を終了させられたわけではないものの、労働者を保護すべき理由によって退職した人のことです。

特定理由離職者の要件は、次のとおりです。

【1】労働契約期間が満了し、かつ次の更新がないことにより退職(更新を希望したが更新できなかった場合)(特定受給資格者【2】8または9に該当する場合を除く)
※「契約の更新をする場合がある」とされている場合

【2】以下の正当な理由のある自己都合退職

・体力の不足、心身の障害、疾病、けが、視力、聴力、触覚の減退等による離職

・妊娠、出産、育児等により離職し、雇用保険の受給期間延長措置を受けた人

・父または母の死亡、疾病、けがのため介護するため離職(家庭の事情が急変した場合)

・配偶者又は扶養すべき親族と別居生活を続けることが困難となり離職

・次の理由により通勤が困難になって離職

(a)結婚により住所が変わったため退職
(b)育児に伴う保育所、その他これに準ずる施設の利用又は親族への保育の依頼
(c)事業所が通勤困難な場所へ移転したため退職
(d)自分の意志に反して引越しが必要になり退職
(e)鉄道やバス等の交通手段の廃止又は運行時間の変更により退職
(f)会社の指示による転勤や出向に伴う別居の回避のために退職
(g)夫(または妻)の転勤、出向または再就職に伴う転居のために退職

・その他、上記「特定受給資格者の範囲」の【2】の11に該当しない企業整備による人員整理等で希望退職者の募集に応じて退職した者

特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準(厚生労働省)

特定受給資格者・特定理由離職者の優遇

特定受給資格者、特定理由離職者のいずれかにあたるときは、その優遇は「給付制限期間がない」というだけにはとどまりません。

失業保険をもらうための雇用保険の加入期間は、「自己都合退職」の場合には12か月(1年間)必要となるのが原則です。
しかし、特定受給資格者、特定理由離職者だと、賃金支払いの基礎となった日が11日以上ある月が「6か月」あれば、失業保険をもらえます。

簡単にいうと、「6か月」雇用されつづければ、失業保険をもらえる、という手厚い保護を意味しています。

特定受給資格者・特定理由退職者となるための手続き

自己都合であっても、特定理由離職者にあたる場合であれば、給付制限期間なく、退職後にすぐに失業保険をもらえることをご理解いただけましたでしょうか。

ただし、労働者が、特定理由離職者であるかどうかは、ハローワーク(公共職業安定所)が判断します。

そのため、特定理由離職者と判断してもらい、少しでも早く失業保険を受領するためには、ハローワークに対して、自己都合退職であっても特定理由離職者であると認めてもらわなければなりません。

ハローワークに、特定理由離職者であると認めてもらうためには、医師の診断書など、必要となる証拠を収集するようにしましょう。

まとめ

浅野総合法律事務所
浅野総合法律事務所

今回は、会社から「自己都合退職」といわれてしまったときでも、失業保険をすぐにもらうための方法について、弁護士が解説しました。

「労働者が失業保険をすぐにもらうことができるかどうか」という問題は、労働者側にとっては深刻で、死活問題ですが、会社側には軽く考えられてしまいがち。
「労働トラブルを隠したい」、「リスクを負いたくない」といった会社側の都合に左右されず、正当な権利をしっかり主張しましょう。

退職せざるをえなくなり、失業保険でおこまりの方は、ぜひ一度、当事務所へご相談ください。

この解説のポイント
  • 離職理由には、会社都合と自己都合がある
  • 会社都合のほうが、退職後すぐに、できるだけ多くの失業保険をもらえる点で有利
  • 会社に自己都合だといわれても、すぐに失業保険をもらえる4つの方法を理解する

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