大人になっても起こるいじめ、それが「職場いじめ」です。
職場は多くの時間を過ごす場所なので、日常的にいじめられるのは非常につらいでしょう。いじめが許されないのは当然ですが、社会に出てもなお理不尽な振る舞いをする人がいます。周囲に相談できず孤立無援だと、退職まで明るみに出ない陰湿な職場いじめもあります。
職場いじめはパワハラの一種であり、違法なハラスメントに該当します。職場いじめを受けたら、拒否の意思を明確に示し、訴訟などの法的手段を講じるといった厳正な対処が必要です。
今回は、職場いじめのよくある事例と対処法、適切な相談窓口について、労働問題に強い弁護士が解説します。
- 職場いじめはパワハラの一種であり、違法行為である
- 職場いじめが起こると被害者は孤立して相談できず、深刻化しやすい
- 職場いじめの証拠を集め、信頼できる上司や社内の窓口、弁護士に相談する
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職場いじめとは

職場いじめとは、職場で発生するいじめのことを指します。
「職場」は、価値観の異なる人が一緒に過ごす場所なので、互いに配慮がなければ人間関係を良好に保てません。特定の人を一方的に攻撃すれば、職場いじめにつながってしまいます。
「いじめ」というと、学校内のものをイメージするでしょう。
しかし実際は、職場でも「いじめ」があり、相談例も少なくありません。「令和6年度個別労働紛争解決制度の施行状況」(厚生労働省)によれば、総合労働相談コーナーに寄せられる労働相談で最も多いのが「いじめ・嫌がらせ」(1位・54,987件)であり、徐々に減少傾向ではあるものの、依然として多い内容です。

職場いじめは、一個人の問題ではなく、社会全体の課題です。多くの人が社外に相談している事実を知り、我慢してはいけません。被害者が子供ではないため「自己責任」とされ、学校のいじめより軽視されやすいのが実情ですが、実際に被害に直面すると、助けを求めるのは大人でも難しいことだと理解できるでしょう。
「労働問題に強い弁護士の選び方」の解説

職場いじめによくある事例

次に、職場いじめの具体的な事例を紹介します。
職場いじめを放置するとエスカレートするため、トラブルが小さいうちの早期発見が重要です。いじめの加害者は「冗談」「からかい」と思っていることもあり、暴力や暴言があるパワハラに比べて問題を認識しにくい面があります。
よくある具体例を知れば、職場いじめかどうかに早期に気付くことができます。
暴言を吐かれる、暴力を振るわれる
直接の暴言や暴力があれば、違法な職場いじめであることに疑いありません。職場いじめで起こる暴力や暴言の特徴は、隠れてこっそり、そして継続的に行われる点にあります。
- 頭や腹を小突かれ続ける。
- 見えないところで足を蹴られる。
- 他の社員の面前で「バカ」「アホ」「間抜け」と侮辱される。
- 妻子や両親など、家族を貶される。
- 「同じミスをしたら殴る」など、仕事の注意を理由に脅される。
- 私物を壊されたり、汚されたりする。
「パワハラにあたる言葉一覧」の解説

無視される、仲間はずれにされる
無視や仲間はずれは、いじめの典型的な手段です。直接的な危害がなくても、精神的な苦痛を与え、業務遂行の支障となります。陰湿である分、防ぎづらく、長期化しやすい傾向にあります。
- 挨拶を返してくれない。
- 目線を合わせてくれない。
- 社員全員に睨まれ、監視されている。
- 集団の会話に入ろうとすると避けられ、解散される。
- 自分にだけ資料が配布されない。
- ファイルの共有先を教えてもらえない。
- 別室や部屋の隅で作業させられる。
- 上司に直接会話してもらえず、他の人を介して指示される。
- 職場の送別会や忘年会に一人だけ招待されない。
- 同期のLINEグループに参加できない。
他の社員とコミュニケーションが取れないと共同作業ができなくなり、集団的な職場いじめから抜け出せなくなります。孤立すると周りの社員に相談しにくくなり、一人で抱え込んで被害を拡大させてしまいます。
「職場で無視されるのはパワハラ」の解説

過剰な要求をされる
過剰な要求をして、無理難題を押し付けるのも、職場いじめに当たります。達成しようもないノルマや仕事量では、どれほど優秀な人でも無気力になってしまいます。
- 一人だけ終わらない量の仕事を任される。
- 未経験の業務なのに指導せず「これくらいできて当たり前だ」と言われる。
- 同じ仕事量、成績なのに、同期と比べて明らかに評価が低い。
- 他の社員が帰るのに「朝までに終わらせるように」と自分だけ残業させられる。
- 「達成できなかったら給料を下げる」と怒鳴られる。
これらの職場いじめの特徴は、他の社員と差別して「能力がない」「やる気がない」と指摘し、周囲に見せつける点にあります。継続されると、周囲の社員も、いじめの対象者を軽視する職場の雰囲気に流されてしまいます。
「ノルマ未達を理由とする解雇」の解説

必要以上に厳しく注意指導される
仕事でミスをすれば、注意されても仕方ありません。未経験の業務や新入社員には指導が必要ですが、度を超えた叱責は職場いじめになります。
- 大声で怒鳴りつけ、厳しく指導する。
- 無意味な反省文を何枚も書かせ、「書き終わるまでは帰らせない」と言われる。
- 必要ないのに人前で怒られる。
- 仕事と無関係な私生活や家族などがミスの原因だと指摘される。
- GPSのついた携帯電話で、行動を24時間監視される。
注意指導による職場いじめは、一度目をつけられると狙い撃ちされ、継続する傾向にあります。誰しもミスはありますが、常に監視されると際立ってしまい、「ミスの多い人」というレッテルを貼られて職場いじめの標的にされます。
「パワハラと指導の違い」の解説

仕事を与えてもらえない
仕事を与えてもらえないと、職場での自分の価値を示すことができません。会社の評価が下がるのはもちろん、自己肯定感も低下します。
- 営業職として採用されたが、雑用しか任されない。
- 「仕事は自分で探すように」と言われ、指示をされない。
- 同期と比べ、与えられる仕事量が圧倒的に少ない。
- 簡単な事務作業のサポートしかさせてもらえない。
- 「女性だから」「男性だから」など不合理な理由でプロジェクトから外された。
職場いじめの加害者は、いじめの対象を軽視し、人格的に否定し、職場で「不要な人物である」という扱いをすることで周囲にも空気を広げていきます。
「仕事を与えないパワハラ」の解説

嫌味や陰口を言われる
嫌味や陰口は表面化しづらいですが、心理的な影響は無視できず、職場いじめに該当します。集団で寄ってたかっていじめるのは、表立っての暴言より精神的被害が大きい場合もあります。
- 仲の良い友人から、職場で悪評を流されていると聞いた。
- 成績が良いのを妬まれ、「女のくせに調子に乗っている」と言われた。
- 「顔で採用されたから営業成績が悪い」などの嫌味な発言をされた。
- 自分の知らないところで「社長と不倫している」と事実無根の噂を流された。
- 不快なあだ名をつけられている。
暴言ほど攻撃的でない発言も、職場いじめになることがあります。嫌味や陰口は、差別的な感情を伴うことが多く、慰謝料請求の対象となります。
「職場のモラハラの特徴」の解説

休息が与えられない
職場いじめの一環として、適切な休息を与えられないこともあります。
- 有給休暇を取得させてもらえない。
- 冠婚葬祭などの予定があるのに休日出勤を命じられる。
- 「無能なのだから」と言われ、休憩せずに働き続けるよう命じられる。
しかし、有給休暇を取得させないことは違法です。休憩にもルールがあり、労働時間が6時間を超える場合は45分、8時間を超える場合は1時間の休憩を取らせる義務があります。

休ませないことが違法でも、職場いじめに遭うと、指示に従わなければさらに理不尽な要求をされます。限界に達する前に、休日手当などの残業代を請求したり、安全配慮義務違反の慰謝料を請求したりすることで会社に被害を知らせるべきです。
「休憩時間を取れなかった場合」の解説

責任の押し付け、成果の横取り
会社では、組織が一丸となって業務を遂行し、成果を上げます。しかし、職場いじめの加害者は、成果を横取りし、責任だけを押し付けてきます。
- 上司が監督して防ぐべきミスを、現場の部下のせいにする。
- 評価者が不当に低い評価を付ける。
- 業績が上がった努力を、自分の手柄として社長に報告する。
陰湿な職場いじめほど、押し付けや横取りが周囲に発覚しにくいものです。その結果、加害者が高い評価を受ける一方、被害者は低く評価され、社内での居場所を失ってしまいます。
「仕事を押し付けられた時の断り方」の解説

職場いじめへの対処法・対策

次に、職場いじめの被害に遭ったときの対処法を解説します。
人間関係を円滑にする方法には正解がないものの、職場いじめがエスカレートすると法律問題に発展します。そのため、適切な対策を講じ、被害を食い止める必要があります。
明確に拒絶する
最重要なのは、職場いじめであると感じたら、毅然とした態度で拒絶することです。
被害者の態度が曖昧だと、周囲の社員も雰囲気に流され、職場いじめが当然視されていきます。被害者が黙っていると、会社に発見されるのも遅れてしまいます。反抗しない人ほど職場いじめに遭いやすい傾向があるため、我慢して耐えても解決策にはなりません。
職場いじめの多くは、挨拶されない、ランチに誘われないといった軽度の違和感から始まりますが、放置すればエスカレートします。職場における評価が固定化されると、直接の加害者以外の社員ともコミュニケーションが取りにくくなり、業務への支障につながります。
職場いじめの証拠を集める
次に、職場いじめの証拠を集めることが重要です。
職場いじめが悪化した際、法的な問題として争うには証拠が重要です。いじめの被害は、暴力を伴うパワハラに比べて軽視されやすいからです。証拠がないと、会社も、注意指導や懲戒処分といった対策を講じにくくなります。収集すべき証拠は、例えば次のものです。
- 音声の録音、動画
- 発言内容が記載されたメール、チャット
- 職場いじめの被害者の作成した日記・メモ
- 他の社員の目撃証言
- 医者による診断書
社内外いずれの相談先でも、職場いじめを相談・報告する際には、証拠をもとに説明することが理解してもらうためのポイントです。職場いじめの実情を正確に説明するには、複数の証拠を集めることが重要です。悪質性を理解させるため、反復継続して、日常的にいじめられたという点を証明する必要があるからです。
「パワハラの証拠」の解説

信頼できる上司に相談する
社内に味方がいれば、職場いじめに対抗しやすくなります。
集団でのいじめの被害に、一人で立ち向かうのは難しいでしょう。味方がいないと精神的につらくなるので、信頼できる上司に相談するのが適切な対処法となります。陰湿ないじめの加害者ほど社内の評価を気にすることが多いため、加害の事実を公にすることが有効です。会社組織として対処すれば、職場いじめを根絶できます。
「パワハラの相談を受けたときの対応」の解説

社内、社外の相談窓口を活用する
職場いじめについて、社内、社外の相談窓口を有効活用しましょう。
隠れて行われる職場いじめを、外部から全て把握するのは困難です。社内の相談窓口や内部通報を活用して会社に問題意識を持たせれば、注意指導や懲戒処分、異動といった対処が期待できます。社内の相談では対処が期待できない場合や、報復の危険がある場合、社長が職場いじめを主導している場合などは、社外の相談窓口を活用しましょう。
職場いじめの相談は感情的になりやすいですが、「職場いじめの証拠を集める」で前述した証拠をもとに、客観的な事実を冷静に話すことがポイントとなります。
主な相談先としては、次のものがあります。
会社の相談窓口・人事部
上司からの暴言や不当な叱責、無視や嫌がらせなど、社内で早期に解決できる可能性のあるケースで有効です。ただし、相談窓口が機能していない場合や、加害者が社長や管理職などの場合、適切な対応が期待できません。
労働組合(ユニオン)
会社と団体交渉することで、退職前でも解決可能なケースがあります。社内に労働組合がない場合でも、個人加盟できる合同労組(ユニオン)を活用できます。
労働基準監督署
労働基準監督署は、労働基準法などの法令違反が中心であり、人間関係のトラブルが中心である職場いじめでは動きにくい場合があります。いじめだけでなく、長時間労働や未払い残業代などを伴うケースでは、適切な相談先となります。
労働局の総合労働相談コーナー
全国の労働局・労働基準監督署内に設置された公的窓口であり、労働問題全般について無料で相談可能です。労働局長の助言・指導、あっせん手続きなどの活用も可能です。
みんなの人権110番
差別、虐待、ハラスメントなどの人権問題について相談を受ける窓口で、法務局職員や人権擁護委員が担当します。職場いじめも人権侵害の一種であり、相談の対象となります。
弁護士
職場いじめについて慰謝料請求や労災申請といった法的対処を検討するときは、弁護士に相談するのが適切です。法的なアドバイスを受けられるとともに、会社との交渉を任せ、労働審判や訴訟といった裁判対応の代理人になってもらうことも可能です。
うつ病や適応障害などを発症して出社が不可能なケースや、退職強要を受けて会社に居続けることが困難なケースでは、速やかに相談すべきです。また、法的な対応と合わせ、精神科や心療内科への受診も欠かせません。
弁護士費用に不安があるときは、法テラスの利用も検討してください。
「パワハラの相談先」の解説

働き方を変更する
職場いじめへの対処法として、働き方を変更する手もあります。
例えば、悪化する前に異動やリモートワークを会社に求める手もあります。職場いじめの特徴は集団で行われる点にあり、距離を置けば精神的苦痛を回避できます。既に悪化しているときは、休職や退職も検討してください。退職時には、会社の対処が適切でないと考えるなら、安全配慮義務違反の慰謝料を請求することも可能です。
法的手段を検討する
職場いじめの加害者には、法的な責任を追及することが可能です。
具体的には、不法行為(民法709条)を理由として慰謝料や損害賠償を請求できます。職場いじめの慰謝料の相場は、50万円〜200万円程度が目安です(ケースにより異なるため、「職場いじめに関する裁判例」を参照してください)。
小さな問題として軽視されやすく、加害者や加担した社員も問題点を自覚できていないおそれがあるとき、法的責任の追及により気付かせることができます。
「労働問題を弁護士に無料相談する方法」の解説

職場いじめの加害者の責任は重大である
違法な職場いじめをした加害者側の責任は、非常に重大です。
まず、不法行為(民法709条)の責任が認められると、慰謝料や損害賠償の請求が可能です。不法行為が成立するには、故意または過失により、権利または法律上保護される利益が侵害され、損害が発生したことが必要ですが、嫌がらせ目的で行われる職場いじめはこの要件を満たします。

直接の加害者だけでなく、見て見ぬふりをした社長や上司、周囲の同僚も、共同不法行為の責任を負う可能性があります。社内でも、企業秩序に違反する行為として、注意指導や懲戒処分の対象となるほか、悪質な場合は解雇を検討されます。被害者は、加害者だけでなく、対策を怠った会社に対しても、使用者責任(民法715条)や安全配慮義務違反の責任を追及できます。
さらに、悪質な態様の職場いじめは、暴行罪(刑法208条)、傷害罪(刑法204条)、脅迫罪(刑法222条)といった刑事責任の対象ともなります。
「懲戒処分の種類と違法性の判断基準」の解説

職場いじめのターゲットになりやすい人の特徴

職場いじめの被害者になりやすい人には一定の特徴があります。いじめが加害者の責任なのは当然ですが、無意識に当てはまっていないかを確認しておきましょう。
同じミスを繰り返す
何度も同じミスを繰り返す人は、周囲にストレスを与え、職場いじめのターゲットになりやすいです。チーム作業の場合は特に、同じミスを繰り返さないよう注意しましょう。
自己主張が苦手である
自己主張が苦手な人も、職場いじめの被害者になりやすいです。
主体的な行動がないことで上司にストレスを感じさせたり、「いじめても報復されなそう」と甘く見られたりするからです。逆に、自己主張が強すぎても、職場の雰囲気に馴染めず、職場から排斥するいじめのターゲットになることがあります。
「協調性欠如を理由とする解雇」の解説

自身の誤りを認めない
固定観念や偏見があり、誤りを認めない人は、職場いじめの被害者になりがちです。周囲の意見を柔軟に受け入れなければ、「話が通じない」といったマイナスな印象を持たれます。職場の人間関係を保つには、様々な価値観があることを受け入れるのがよいでしょう。
優秀であり、業績が良い
優秀な人であっても、嫉妬や怨恨から職場いじめの被害に遭うことがあります。特に、会社から高く評価されていると、その裏にある努力には目を向けられず、周囲の反感を買って「調子に乗っている」などと足を引っ張られるケースが見られます。
職場いじめをする人の特徴
逆に、職場いじめをする人の特徴についても解説します。
自分が当てはまる場合、無意識・無自覚のうちに職場いじめに加担していないか、これまでの言動を見直してください。なお、労務管理が正しく行われず労働者にストレスを与えたり、問題を相談・報告する体制がなかったりなど、職場環境の問題がいじめを加速させるケースもあります。
ストレスや不満が溜まっている
職場いじめをする加害者にも、ストレスや不満が溜まっていることがあります。私生活だけでなく、会社に不満がある場合、イライラのはけ口として立場の弱い相手に攻撃的な態度を取るケースが見られますが、いじめを正当化する理由にはなりません。
自分の立場や優位性を誇示したい
職場での優位性を示したい気持ちから、部下や同僚を見下したり、威圧的な態度を取ったりする人もいます。会社や周囲の評価を気にする人に見られる特徴で、人前で叱責したり必要以上に命令口調になったりといった職場いじめを引き起こします。
「みんなの前でミスを指摘されるパワハラ」の解説

他人の気持ちに対する共感が乏しい
相手がどれほど傷ついているかを想像できず、強い言葉や嫌がらせを繰り返す人もいます。
このような職場いじめは、指導を名目に行われたり、「冗談」「からかい」といった程度の認識しかないこともありますが、受け手が苦痛を感じれば、違法な職場いじめとなる可能性があります。
不安や弱さを抱えている
職場いじめの加害者は一見強気に見えますが、実際は強い不安や劣等感を抱えることがあります。気の小さい人ほど、自信の無さを隠すために他人を攻撃しやすいからです。特に、成果が重視される職場だと、上位の役職者がプレッシャーを感じていじめをするケースがあります。
「パワハラが発生する原因」の解説

職場いじめに関する裁判例

最後に、職場いじめに関する裁判例を解説します。どのような言動が、職場いじめとして違法となるのかを判断する際の参考にしてください。
暴言や暴行による職場いじめの事例
東京地裁平成22年7月27日判決
上司の部下に対する以下の行為について、140万円の慰謝料の支払いが命じられました。
- 12月から翌6月頃にかけ、強風設定の扇風機を当てた。
- 「馬鹿野郎」「給料泥棒」「責任を取れ」「てめえこの野郎」「お前の責任をどうとるんだ馬鹿野郎」と叱責した。
- 「給料をもらっていながら仕事をしていませんでした」との文言で、始末書を提出させた。
- 「君の後ろには君だけではなく、君の家族の姿が見えてしょうがない」と発言した。
- 風邪を引いてマスクをしたのに対し「君らの気持ちが怠けているから風邪を引くんだ」と発言した。
- 被害者の配偶者に言及し「よくこんな奴と結婚したな、もの好きもいるもんだな」と発言した。
名古屋高裁平成20年1月29日判決
以下の暴行、暴言によって被害者が妄想性障害に罹患したケースで、第一審では慰謝料として約500万円、控訴審では約230万円の支払いが命じられました。
- 被害者の胸倉をつかんで頭部や背部を壁に多数回打ち付けた。
- 顔面に頭突きをした。
- 精神病であるのを認識しながら「いい加減にせいよ、お前」「おー、何を考えてるんかこりゃあ」「ぶち殺そうかお前。調子に乗るなよ、お前」と声を荒らげて発言した。
東京地裁平成17年10月4日判決
社員間で行われた以下の暴行や謝罪強制が不法行為にあたるとし、直接の加害者だけでなく、会社の使用者責任、代表者の共同不法行為責任を認めました。
- 会話練習の際に、怒号を発して、紙筒様の物で頭部を強く約30回殴打した。
- クリップボードの表面と側面を使って、ある程度力を込めて頭部を約20回殴打した。
- 商品取置きに関する問題に激昂し、被害者の大腿の外側膝付近を3回にわたって強く蹴った。
- 虚偽の電話連絡について怒鳴りつけて叱責した。
- 左頬を手拳で数回殴打し、右大腿部を膝を使って蹴り、頭部に対して肘や拳骨で殴打した。
裁判所は、各暴行ごとに10万円〜100万円の慰謝料を認定し、加えて、入通院慰謝料約100万円が相当であると判断しています。さらに、加害者は刑事責任を問われ、暴行罪として罰金30万円の刑罰に処せられました。
嫌味や陰口による職場いじめの事例
東京高裁平成24年11月29日判決
長時間の面談や人格否定的な発言を伴う退職強要について、慰謝料20万円の支払いが命じられました。認定された発言は以下の通りです。
- 「いつまでしがみつくつもりなのかなって」「辞めていただくのが筋です」「懲戒免職とかになったほうがいいんですか」
- 「1年を過ぎて、OJTと同じようなレベルしか仕事ができない人が、もう会社はそこまでチャンス与えられないって言ってるの」「もう十分見極めたから」
- 「懲戒になると、会社辞めさせられたことになるから、それをしたくないから言ってる」
- 「この仕事には、もう無理です。記憶障害であるとか、若年性認知症みたいな」
東京地裁平成19年10月15日判決
上司の以下の言動が原因で精神障害を発症して自殺に至った事案で、裁判所は業務起因性を認める判断をしました。認定された発言は以下の通りです。
- 「お前、対人恐怖症やろ」
- 「病院の訪問をせずに給料を取るのは給料泥棒だ」「病院を回っていないならばガソリンの無駄だ」
- 「存在が目障りだ、居るだけでみんなが迷惑している」「おまえのカミさんも気がしれん、お願いだから消えてくれ」
- 「何処へ飛ばされようと俺は甲野は仕事しない奴だと言いふらしたる」
- 「肩にフケがベターと付いている。お前病気と違うか」
「過労死で弁護士を探している方へ」の解説

過度な指導による職場いじめの事例
東京高裁平成17年4月20日判決
上司の部下に対する以下の言動について、裁判所は、指導や叱咤激励として許容される限度を逸脱していると評価し、損害賠償請求を認めました。
- 「意欲がない、やる気がないなら、会社を辞めるべきだと思います」というメールを、被害者と職場の同僚数十名に送信した。
- 「あなたの給料で業務職が何人雇えると思いますか。あなたの仕事なら業務職でも数倍の実績を挙げますよ」という記載があった。
仲間はずれによる職場いじめの事例
東京高裁平成5年11月12日判決
高校の教諭を被害者とした職場いじめの事案です。
仕事外しや職員室内での隔離、第三職員室への隔離、自宅研修といった過酷な処遇が認定されています。エスカレートした結果、13年間もの間、一切の職務を奪い、放置し、退職を待つだけであったとされ、「懲戒解雇以上に過酷な処遇」とも評価されています。
裁判所は、不法行為の成立を認め、600万円の損害賠償を命じました。
「裁判で勝つ方法」の解説

【まとめ】職場いじめについて

今回は、職場いじめに関する基本的な法律知識を解説しました。
職場いじめは、労働者の働くモチベーションを奪い去っていきます。職場では仕事に集中すべきですが、いじめの対象となるとそれどころではありません。エスカレートした職場いじめは、労働者の心身の健康に甚大なダメージを与えます。
職場いじめはパワハラに該当し、違法なハラスメントとなります。また、「いじめ」と明確に言えるケースばかりでなく、いじめかどうかが分かりにくいものもあり、被害者は我慢してしまいがちです。職場いじめは決して許されるものではありません。いじめに加担した加害者や周囲の社員だけでなく、適切な対処を怠った会社の責任も追及すべきです。
職場いじめに遭ったら、相談をためらうべきではありません。一人で抱え込まずに、速やかに弁護士に相談してください。
- 職場いじめはパワハラの一種であり、違法行為である
- 職場いじめが起こると被害者は孤立して相談できず、深刻化しやすい
- 職場いじめの証拠を集め、信頼できる上司や社内の窓口、弁護士に相談する
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