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浅野 英之
弁護士
弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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アカハラとは?大学におけるアカデミックハラスメント意味や事例、対策を解説

アカハラは、近年問題視されるハラスメントの一種で、大学や研究機関で起こります。

大学や研究機関は、学生・院生・研究者と教授の身分の差が大きく、ハラスメントの起こりやすい環境です。アカハラの被害を受けても、学内の地位を失うのを恐れて泣き寝入りをするケースも多く、明らかに問題があっても、研究や将来のキャリアのために我慢する人も少なくありません。

しかし、教授をはじめ、高い地位を有する人ほど、自覚なくアカハラの加害者となることがあり、誤りを正す機会がないと、被害は拡大してしまいがちです。アカハラが慰謝料請求に発展したり、被害者・加害者の将来を左右したりといった大きなトラブルになることもあります。

今回は、アカハラの意味や事例、具体的な対策を、労働問題に強い弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • 大学や研究機関で起こるアカハラは、教授などの上位者の不適切な行為
  • 学生・教職員の身分差や閉鎖的環境が原因となって、アカハラが起こる
  • アカハラをなくすには、被害者・加害者・大学などの組織の対策が必要

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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アカハラとは

はじめに、アカハラ(アカデミックハラスメント)の定義や問題点について解説します。

アカハラの定義

アカハラ(アカデミックハラスメント)とは、大学などの教育・研究機関において、教授などの優越的な地位にある人が、学生や教職員に対して行う不適切な言動や嫌がらせを指します。アカデミックな場(教育・研究機関)で起こるハラスメント(嫌がらせ)であり、その典型例が、大学で起こる教授から学生に対するハラスメントです。

アカハラが起こると、被害者の人格や尊厳を傷つけるのはもちろん、研究や学習の意欲を低下させたり、環境を悪化させたりといった不利益が生じます。

アカハラが問題視される理由と背景

大学には、アカハラが起こりやすい背景があります。

優越的な関係を利用しやすい

教育・研究機関では、指導する側とされる側に上下関係が生まれやすいです。

職場のパワハラが職務上の上下関係を背景にするのに対し、アカハラでは、教員の学生に対する成績評価、学位の認定、推薦、研究指導といった権限に基づく優越的な関係が利用されます。地位や権力の差が大きいほどハラスメントが起こりやすいところ、教授と学生の関係は、進路や将来のキャリアに影響する点で、会社の上司と部下以上の格差があります。

なお、教授と学生の間以外にも、教員間(教授と准教授・助教・研究者など)のアカハラも問題視されます。

閉鎖的な環境になりやすい

大学では、ゼミや研究室などの独立性が高く、閉鎖的な環境になりやすいです。

被害者としても、学生としての身分を失ったり、教育機会や研究環境を喪失したりすることを恐れ、教授からのハラスメントを我慢しやすい構造があります。その結果、アカハラが隠蔽されやすく、被害に遭っても相談しにくくなってしまいます。

アカハラと他のハラスメントとの違い

ハラスメントには、アカハラのほかにセクハラ、パワハラなどがあります。

アカハラというのは、「大学などの教育・研究機関で起こる嫌がらせ」という意味で、ハラスメントが発生する「場所」や教授と学生という「関係性」に着目した定義です。

一方で、パワハラは、職場における優越的な地位を利用した嫌がらせ、セクハラは性的な言動による嫌がらせを意味し、いずれも「行為」に着目した定義です。また、暴力まで至らなくても精神的な攻撃や人格否定を行うものを、モラハラと呼ぶこともあります。

アカハラの中でも、優越的な地位を利用して暴言や暴力などに発展するものは「パワハラ」、性的な言動を伴うものは「セクハラ」となり、重複する部分があります。アカハラが問題視される背景と理由」の通り、大学などの閉鎖的な環境で行われる点で表面化しにくく、被害者が我慢することでトラブルが拡大しがちな点に注意が必要です。

パワハラの相談窓口」「セクハラの相談窓口」の解説

大学で起こるアカハラの具体例

次に、どのような行為がアカハラに該当するのか、アカハラの具体例を解説します。

典型的なアカハラを理解することで、知らずのうちに被害を受けながら泣き寝入りすることのないようにしましょう。また、加害者となる可能性のある教授などの立場にある人も、これらの典型例に該当する言動を行わないよう注意してください。

学習や研究の妨害

学生の本分は勉学にあり、これを妨げるのは嫌がらせであり、ハラスメントです。学習や研究を妨害するアカハラの具体例は、次の通りです。

  • デスクや椅子、実験器具、書籍などを使用させない。
  • 学習の場所を一人だけ隔離する。
  • 理由なく教室や研究室から追い出す。
  • 研究テーマを与えない。
  • 希望しない研究テーマを押し付ける。
  • 研究費を強制的に徴収する。
  • 研究のための出張や学会参加を認めない。

学習や研究を妨害するアカハラは、特に研究室内で起こりやすいです。そして、専門性が高いほど外部からは口出しがしにくく、閉鎖的な環境でチェック機能が働かなくなってしまいます。

教育や指導の放棄

教育・研究の場である大学では、教授は学生を指導する立場にあります。

しかし、アカハラが起こると、本来行うべき適切な教育・指導が放棄され、その結果、学生としても勉学に励むことができなくなってしまいます。

  • 研究に必要なサポートをしない。
  • 正当な理由なく授業をしない。
  • 放任主義で「自分で考えろ」と突き放す。
  • 講義で回答を誤ったことを馬鹿にする。
  • 学生からアドバイスを求められても無視する。
  • 研究成果が出ない責任を学生に転嫁する。
  • 実験の目的を知らせず作業のみを押し付ける。
  • 論文の添削をしない。
  • 特定の学生のみ指導を拒否する。

これらのアカハラは、積極的な嫌がらせ行為がないため見逃されがちです。しかし、消極的な行為(不作為)もまたアカハラに該当します。

パワハラと指導の違い」の解説

アイディアの盗用や研究成果の収奪

研究機関である大学では、研究成果の奪い合いがアカハラに発展することがあります。

指導者としての立場を悪用し、アイディアや研究成果を横取りすることは、違法なアカハラであるのはもちろん、論文の著作権など、他の法律にも違反するおそれがあります。

  • 論文の第一著者を教授にするよう指示される。
  • 論文の著者の順番を勝手に変更される。
  • 研究成果に貢献した研究者の名前を載せない。
  • 未発表の論文を盗用して発表された。
  • アイディアの発案者であることを隠す。
  • 単位を条件に共同研究を強要される。

学生・院生・研究者と教授という立場の差があると、今後も指導を受けたり、研究機会を与えてもらったりするために不当な扱いを我慢してしまうことがあります。しかし、研究成果や実績は正当に評価される必要があり、学内の独自ルールが行き過ぎた強要となれば、違法なアカハラです。

単位取得や卒業・修了の妨害

大学における成績評価、単位認定は、教員の裁量の余地が大きいです。

そのため、この裁量を利用した嫌がらせを行ったり、強要が生じたりすると、アカハラにつながりやすくなってしまいます。

  • 気に入らない学生に単位を与えない。
  • 単位を取得させない理由が説明されない。
  • 他の学生と同程度の点数なのに成績に差がある。
  • 指導教員を変更したら留年させられた。
  • 卒業論文を読んでもらえない。
  • 修了後も「お礼奉公」として実験を手伝わされる。

必要な単位が得られないと進級できず、卒業・修了を妨害されてしまいます。大学の教員は独立性が強く、他の教員や関係者からのチェックも働きにくい環境です。特に、卒論の提出などは指導教員の許可を要するのが慣行とされており、強い権限が与えられているからこそ濫用され、アカハラが起きやすくなってしまいます。

進路選択の妨害

進路に関する決定についても、アカハラがよく起こります。

  • 就職活動より研究を優先するよう指示される。
  • 合理的な理由なく推薦状を書いてもらえない。
  • 就職に必要な書類の記入を拒否された。
  • 就職活動に不利に働く情報を口外された。
  • 会社に圧力をかけて内定を取り消させた。

本来、進路の選択は学生の自由であり、教員が強い影響を及ぼそうとする行為はアカハラの疑いがあります。

プライベートへの不当な干渉

大学は教育や研究の場であり、教員が学生の私生活へ干渉するのはアカハラです。例えば、次のような行為は、学生が望まないまま行われることが多いです。

  • 指導とは無関係なプライベートのことを執拗に問い詰める。
  • 本人が望まない私生活に関する指導を行う。
  • 交際相手や結婚の予定について尋ねる。
  • 宗教や政治団体への加入を勧誘する。
  • SNSでのつながりを強要する。

大学における教員と学生の関係は、公私が混ざりやすいものです。しかし、教員側が親密さの表れであると考えていても、学生側では苦痛を感じている場合、ハラスメントと評価されます。

会社がプライベート干渉するのは違法?」の解説

不当な経済的負担の強制

本来は大学などが負担する研究費を、学生や教職員個人に支払わせる行為も、アカハラの典型例です。例えば、実験の失敗で生じた損害を補填させたり、研究に必要な機材を私費で購入させたりするケースが挙げられます。

また、指導教員が主催する飲み会への参加を強要し、高額な会費を徴収することも不当な経済的負担に該当します。立場の弱い学生は断ることが難しく、経済的な困窮からその後の研究を断念せざるを得ない事態にもなりかねません。

研究データの捏造や不正行為の強要

学生・院生・研究者などに対し、不正行為を強要することは重大なアカハラです。

期待する実験結果に合わせるためにデータの改ざんや捏造を指示したり、架空の研究費を不正受給させたりといったケースが見られます。逆らえば単位の認定が受けられないなどの不利益を恐れ、違法であることを知りながら不正に手を染める被害者も少なくありません。

不適切な環境や時間帯での指導

常識外の時間帯や不適切な環境で作業をさせることも、アカハラの一種です。

例えば、深夜に何度も研究室に呼び出して長時間の指導をしたり、ホテルに呼びつけて二人きりになったりといった行為は、パワハラやセクハラにも発展します。たとえ教育や研究を口実にしていても、弱い立場にある学生に恐怖感や精神的苦痛を与えることは明らかです。

教授によるセクハラ・パワハラ

一般企業でも起こるハラスメントは、大学内で起こればアカハラとなります。

その中でも特に重大なのが、教授によるセクハラ・パワハラです。教授は、学内でも大きな権限を有し、優越的な地位を利用したハラスメントの加害者となりやすい性質があります。同じ言動でも、教授が行うことで学生に対する大きなプレッシャーとなります。

例えば、暴力、暴言や罵倒、誹謗中傷、人格否定、無視、精神的な攻撃といった行為は、大学内で行われてもパワハラであり、アカハラです。女性学生や女性職員に対する性的言動、食事やデートの誘い、宿泊を伴う出張の強要といった行為は、セクハラであり、アカハラとなります。

違法なアカハラで生じる法的責任

では、アカハラはどのような場合に違法となるのでしょうか。以下では、アカハラが違法なハラスメントとなる理由と、その判断基準について、法的に解説します。

民法上の責任と判断基準

被害者の心身に苦痛を与えるアカハラは、不法行為(民法709条)として違法です。

アカハラが違法かどうかは、優越的な地位にあるか、教育や研究上の必要性があるか、社会通念上相当な行為であるかといった観点から判断されます。大学などにおける教員と学生の力関係からして、教授などが優越的な地位にあるのは明らかです。そのため、指導の範囲を逸脱していないか、言動の程度や頻度が悪質でないかといった点が、違法性を判断する際のポイントとなります。

指導の目的がなかったり、特定の学生に対して嫌がらせをする意図があったり、教育や研究といった目的に対して不相当な言動であったりするとき、違法なアカハラと評価されます。

不法行為に該当する場合、アカハラの被害者は加害者に対し、不法行為に基づく慰謝料や損害賠償を請求できます(実例は「アカハラで慰謝料を請求した事例」参照)。

大学側の責任(使用者責任・安全配慮義務違反など)

アカハラは、加害者だけでなく大学側に法的責任が生じる場合もあります。

大学と教員は雇用関係にあるため、職務を行う際に学生に損害を与えた場合、不法行為の使用者責任(民法715条)を負う可能性があります。また、大学と学生は雇用関係にはないものの、適切な環境で教育・研究に専念できるよう配慮する義務(安全配慮義務)が生じ、アカハラを知りながら放置し、相談体制を整えなかった場合、同義務の違反として損害賠償を請求することも可能です。

ハラスメントが社会問題化する昨今、大学としても、ハラスメント防止規程を作成して周知したり、教員にアカハラに関する研修を行ったりといった対策を講じる必要があります。

学内における教員の責任(懲戒処分など)

大学がアカハラを認定した場合、加害者である教員には学内での処分が下ります。

具体的には、私立大学では就業規則やハラスメント防止規程などに基づいた懲戒処分や解雇など、国公立大学の場合は公務員としての懲戒処分が検討されます。指導教員としての権限を悪用して学生に不利益を生じさせた場合、教育者としての適格性を問われ、重い処分となる傾向があります。

悪質なケースでは、学内処分にとどまらず、社会的な信用を失って研究の続行が難しくなるなど、教員側にも影響が生じるため、場合によっては不当処分として争われることもあります(実例は「アカハラを理由とする処分の有効性が争われた事例」参照)。

アカハラによる刑事責任

度が過ぎたアカハラは、刑事責任が生じることがあります。

具体的には、アカハラの内容や態様によって、相手に怪我を負わせる暴行罪(刑法208条)や傷害罪(刑法204条)はもちろん、精神的に追い詰める脅迫罪(刑法222条)や、大勢の前で人格を否定するような発言は名誉毀損罪(刑法230条)に問われる可能性があります。

アカハラを受けた被害者側の対策

次に、アカハラを受けた被害者側の対処法を解説します。万一の際に冷静に対応するためにも、学生・院生・研究者といった立場の人は、正しい対策を理解しておいてください。

アカハラの証拠を集める

アカハラ被害の責任を追及する場合、証拠収集が最優先となります。

アカハラを受けた直後は、動揺してしまうでしょうが、感情に任せた行動はおすすめできません。アカハラに無自覚な加害者ほど、感情的に対応するとエスカレートする危険もあります。客観的な証拠によって被害を示すことで、その責任を追及しやすくなります。

アカハラに該当する音声の録音、メールやチャットの文面の写し、目撃していた他の学生の証言などを必ず保存しておきましょう。大学や研究室は閉鎖的な環境であり、人間関係が密であるために周囲の人もアカハラの証言をしてくれない危険があります。

パワハラを録音する方法」の解説

大学の窓口に相談する

証拠の収集が完了したら、まずは大学の窓口に相談しましょう。

多くの大学は、社会問題化したアカハラの被害を受けた学生や教職員のための専門の相談窓口を設けています。教授が優越的な地位を濫用してハラスメントを行った場合でも、大学に相談することで事実確認や調査が進み、必要に応じて教授への指導が行われたり、学長や学部長などの上位者への申し送りをしてもらえたりといった対応が期待できます。

一方で、組織内の解決では迅速に動いてもらえずにアカハラが放置されたり、教授に忖度して公平な処分がなされなかったりするリスクがあります。

外部機関に相談する

学内で解決できないときは、外部機関への相談を検討してください。

強度のアカハラで速やかに対処する必要がある場合や、学長や学部長などの上位者によるアカハラの場合などは、学内での解決が困難なことがあります。相談したことでかえって不利益な扱いを受けたり、大学や研究室で孤立させられたりする被害の例もあります。

アカハラをなくすために活動するNPO法人(特定非営利活動法人アカデミック・ハラスメントをなくすネットワーク(NAAH)など)への相談のほか、教職員間など、労働問題の側面があるケースでは、労働基準監督署や労働局への相談も有効です。

労働基準監督署が動かないときの対処法」の解説

弁護士に相談する

アカハラ被害を法的に解決することを希望する場合、弁護士への相談がおすすめです。

アカハラで訴え、慰謝料や損害賠償を請求するには、弁護士の助力が欠かせません。交渉で解決しない場合、訴訟手続きのサポートも可能です。特に、教授をアカハラで訴えるケースは、自身の学内での地位に不利益が生じるおそれもあるため、法律知識に基づいた丁寧な対応が必要です。

弁護士を通じて要求を伝えることで、加害者にも大学側にも、誠実に対応してもらえる効果が期待できます。

労働問題に強い弁護士の選び方」の解説

アカハラ加害者となった教員側の対策

逆にアカハラの加害者となった人の対応についても解説します。

自分にその意図がなくても、指導に熱が入り過ぎたり、法律知識の理解がなかったりしたことが原因で、「アカハラである」という指摘を受けてしまうことがあります。

大学に報告して調査に協力する

アカハラであるという指摘を受けたら、速やかに大学に報告しましょう。

指導をめぐって学生や教員と言い争いになったり、立場を利用したハラスメントであると指摘されたりしたとき、隠蔽するのはおすすめではありません。被害者が申告した場合にはいずれ発覚し、その際には隠したことが不利に扱われるおそれがあるからです。

アカハラの問題は複雑なので、自己判断は避けましょう。教育・研究に必要な指導であったといった言い分があるケースほど、速やかに報告し、調査に協力すべきです。

アカハラしたとは認めない 

アカハラの処分を受ける前には、学内の調査委員会が開かれることが多いです。

自分が違法なアカハラを行ったと考えていないのであれば、調査段階で「アカハラである」と安易に認めてはいけません。被害申告の内容が事実でない場合はもちろん、事実関係に争いがなくても、指導の範囲であると考える場合には、反論が必要となります。

学生が留年・退学などの深刻な被害に遭ったケースほど、被害者の言い分が信用され、アカハラと認定されやすくなってしまいます。学内でアカハラと認定されると、被害者から責任追及をされ、慰謝料や逸失利益など、多額の損害賠償を請求されることもあります。

被害者からは都合の良い事実のみ告げられていたり、嘘や誇張があったりする例もあります。加害者とされた側でも時系列で整理し、証拠を収集するなど、誤りを正す努力が欠かせません。

セクハラ冤罪」「パワハラ冤罪」の解説

被害者と示談交渉する

アカハラの事実について認めるときは、被害者に謝罪し、示談する対応が適切です。

被害者がこれ以上の処分を求めないことは、学内で有利に働くだけでなく、民事上の被害について解決し、刑事処罰の可能性を低くする効果もあります。

示談をする際は直接の接触を避け、弁護士に依頼するのが適切です。これまでの大学や研究室での人間関係が密であると、「自分が話せば分かってくれるのではないか」と考える加害者もいますが、被害者は「会いたくない」と思っている人がほとんどであると考えるべきです。

セクハラの示談の流れと示談金の相場」の解説

不当な処分は争う

アカハラを理由に不当な処分を下されたら、大学と争うことが可能です。

事実でない理由に基づく処分や、行為に対して重すぎる処分は、たとえ形式的に学内の規程に違反したとしても、不当処分として有効性を争うことができます。懲戒処分には「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が必要であり、これらの要件を満たさない場合には不当処分として違法・無効となるからです(労働契約法15条)。

大学や組織が取り組むべきアカハラ防止策

被害者・加害者の個人の努力だけでは、アカハラの問題を根本的に解決することはできません。アカハラを未然に防止するには、大学や研究機関といった組織全体での取り組みが不可欠です。

研修を通じてアカハラへの理解を深める

無自覚なアカハラを防ぐために、研修を通じて理解を深める方法が有効です。

アカハラを未然に防ぐには、当事者となる教員や学生が正しい知識を身に付ける必要があります。特に、加害者となりやすい教授の地位にある人には、定期的に研修を実施し、「どのような言動がアカハラに該当するか」「アカハラと指摘されたらどう対処すべきか」といった点について、事例を交えて学ぶ機会を設けることが大切です。

定期的な周知と実態調査を行う

大学内でのアカハラを未然に防ぐために、定期的な周知と実態調査をしましょう。

ハラスメント防止に関する基本方針や相談窓口の情報は、学内掲示板などで学生と教職員の双方に周知し、「アカハラは許さない」という大学の姿勢を明確に示す必要があります。研究室などの閉鎖的な環境でアカハラを我慢する人がいる場合、無記名のアンケートによる実態調査が有効です。

外部機関と連携して相談・対応体制を整備する

アカハラを早期に発見して対処するために、相談体制の整備が欠かせません。

大学や研究機関などの組織内に、アカハラに関する窓口を設置し、相談者のプライバシーを守りながら中立的に相談できる体制を整備すれば、大きな問題になる前に察知することが可能です。また、実際に窓口にアカハラの相談があったら、事実関係を把握するための調査チームを作り、丁寧に対応することが求められます。

法律知識に基づいてアカハラの調査をするには、法律の専門家である弁護士に協力を求めることが有効です。特に、閉鎖的な環境で判断されやすい大学内のアカハラでは、外部の専門家の関与が、公平・公正な解決につながります。

労働問題を弁護士に無料相談する方法」の解説

アカハラに関する裁判例

最後に、アカハラについて判断された裁判例について解説します。

アカハラで慰謝料を請求した事例

アカハラで慰謝料を請求した事例では、被害者と加害者の争いとなります。

神戸地裁姫路支部平成29年11月27日判決

兵庫教育大大学院の学生が、ゼミの教授と大学に対して損害賠償請求した事案で、教授の不法行為責任が認められ、100万円の慰謝料の支払いが命じられました。

教授が、原告の修士論文を理由も告げずに突き返す一方で、他のゼミ生には「私が今日一日書いてあげましょう」などと差別的な扱いをした点が問題視されました。また、カウンセリングを優先するよう示唆して希望する講義の受講をあきらめさせた点、「あんたは発達障害だよ」「いい精神科知ってますよ。教えてあげようか」などの人格否定を行った点なども、違法行為と認定されました。

大阪地裁平成30年4月25日判決

関西大学大学院の学生が、指導担当教授に対して損害賠償請求した事案で、慰謝料60万円の支払いが命じられました。

学内のバイトの交通費が支給されないことを問題視して労働組合活動をしていたものの、教授から、活動をやめないと希望のフィールドワークを白紙にすること、指導教員を降りることを告げられ、組合の脱退を余儀なくされたと主張しました。裁判所はこの主張を認め、教授の労働組合に関する言動は違法であると判断しました。

また、修士論文執筆のために、遠隔地に滞在するフィールドワークに従事していたものの、研究手法や指導教員の変更を伝えたことを理由に一方的に中止された点についても、教育を受ける権利を侵害する違法があると判断されました。

高松高裁令和2年11月25日判決

准教授が教授から受けたパワハラについて、大学に損害賠償請求をした事案で、慰謝料10万円の支払いが命じられました。

本事案では、研究室の運営上の准教授の提案を非難した、「あんたは非常識だ」「こんなことだから他大学に転出できないんですよ」「早くどこかの職を探して、ここを出て行けばいいじゃないですか」といった教授の発言が問題視されました。

裁判所は、教授が一定の影響力を有し、相対的に優位な立場にあったこと、職位に関する発言であったことなどを考慮し、人格と尊厳を侵害する違法な行為であると認定しました。

アカハラを理由とする処分の有効性が争われた事例

次に、アカハラを理由とする処分が争われた事例では、加害者と、処分を行った大学などの組織との争いとなります。

東京地裁平成31年4月24日判決

アカハラを理由とする懲戒処分(減給)の無効確認を請求した事案です。

教授の学生に対するメール送信が、大学が懲戒事由と定める「信用失墜行為」に当たるか、当たるとしても処分が重すぎるのではないかが争点となりました(送信されたメール例:「卒研も学内外活動も金魚のフン」、「このオオバカモノ。大バカ野郎」、「お馬さんがいます。鹿さんもいます」など)。

裁判所は、暴言ともいえる人格否定の言葉を繰り返し使用している点などを踏まえ、懲戒事由に該当し、相当性も認められると判断し、教授の請求を棄却しました。

東京地裁令和元年5月29日判決

アカハラを理由とする懲戒処分(減給)の無効確認を請求した事案です。

女子学生らに対するアカハラ、セクハラ、パワハラが問題となり、裁判所は、准教授が行った以下の行為をハラスメントであると認めました。

  • レポートの採点者でないのに、学生に対して「不本意な最終結果となっています」とメールを送ったこと
  • 特定の学生のみに、試験の結果が悪く単位を取得できないので再試験を受けるようメールを送ったこと

裁判所は、「不見識であったり、手法として甚だ不適切な行為」であり、女子学生が不快の念から就学にも支障を来した点を指摘し、懲戒処分を有効と判断しました。

東京地裁令和2年10月15日判決

教授が、労働契約上の地位にあることの確認を請求した事案で、留学中の学生に対して行った以下の行為がアカハラに該当するかが争点となりました。

  • 「あなたの人生は終わっている」「あなたのお先は真っ暗だ」「あなたは奴隷と一緒である」旨の発言
  • 隣の部屋に下級生がいるのに、下級生にお願いして卒論の書き方を聞いてくるように発言した事実
  • 学生のバイトに関する「小金を稼いで遊んでいるに違いない」旨の発言

裁判所は、懲戒事由に該当するものの、教授の言動と学生の再留年の因果関係が明らかでなく、懲戒処分歴もないことから、処分は相当性を欠き無効であると判断しました。学生にも指導を要する問題行動があった点も指摘されています。

【まとめ】アカハラについて

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、アカハラの意味や事例、対策について、詳しく解説しました。

大学や研究機関は、一般的な会社にもまして上下関係が生まれやすくハラスメントが起こりがちです。学生・院生・研究者と教授との間には、大きな身分の格差があります。そして、閉鎖的になりやすく、被害を受けても相談しにくいと感じる人が多いのも特徴です。

一方で、アカハラの加害者の中には、ハラスメントに無自覚な人もいて、拒絶の意思を明確に示さなければ、問題であることすら伝わらないおそれもあります。

アカハラが裁判所で争われる例も多く、実際に違法なハラスメントと認められた裁判例も存在します。大学などの教育機関で起こるからこそ、将来のキャリアにも影響しかねない重大な事態であるため、被害に遭ったら、証拠を集め、速やかに対応すべきです。

被害者・加害者いずれの立場に立たされたとしても、アカハラの問題を軽視せず、速やかに弁護士へ相談するのがおすすめです。

この解説のポイント
  • 大学や研究機関で起こるアカハラは、教授などの上位者の不適切な行為
  • 学生・教職員の身分差や閉鎖的環境が原因となって、アカハラが起こる
  • アカハラをなくすには、被害者・加害者・大学などの組織の対策が必要

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