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浅野 英之
弁護士
弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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ソーハラとは?SNSを通じた嫌がらせの例と対策を解説

ソーハラは、「ソーシャルメディアハラスメント」もしくは「ソーシャルハラスメント」の略称。SNSの普及によって増加する、現代特有の新たなハラスメント(嫌がらせ)です。

ソーハラは新しいハラスメントで、パワハラやセクハラなどといった昔から問題視されるハラスメントに比べれば聞き慣れず、軽視されがちです。しかし、ソーハラのなかには深刻な事例もあります。被害者である労働者個人からすれば、SNSはプライベートの重要なツールになりつつあります。SNSの重要性が上がる分だけ、ソーハラの精神的ダメージは非常に大きいものとなります。

SNSでの嫌がらせが加速すると、ソーハラのダメージで会社を辞めざるを得ない方もいます。ソーハラで不快な思いをして退職に至ったときは、慰謝料請求すべきケースもあります。

今回はソーハラについて、意味と具体例、慰謝料請求も含めた対策について労働問題に強い弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • ソーハラは、パワハラの一種で、SNSを使った嫌がらせ
  • ソーハラは新しいハラスメントだが、具体例を知れば未然に防止できる
  • 深刻なソーハラ被害を受け続けるときは、慰謝料請求を検討する

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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ソーハラとは

ソーハラとは、ソーシャルメディアハラスメント、もしくは、ソーシャルハラスメントの略称です。つまり「ソーシャル」という部分は、SNSのことを指しており、「ハラスメント」という部分は、職場で起こる嫌がらせ、いじめのことを意味しています。

ハラスメントは、セクハラやパワハラと同様、嫌がらせのことです。したがって、ソーハラを直訳すれば、「ソーシャルメディアを通じた嫌がらせ」という意味になります。

最近出てきた単語なので、聞きなじみがないかもしれません。しかし、あなたも知らないうちにソーハラ被害を受けたり、逆に加害者になったりしている可能性があります。職場で嫌な思いをしたときや、人間関係にトラブルが生じたとき、その原因がSNSにあるケースは最近では思ったより多いです。それらは皆、ソーハラとなってしまっている疑いがあります。

X(旧Twitter)、FacebookやインスタグラムといったSNSを全く利用していないという方はむしろ少ないでしょう。LINEやYoutubeなど、他人とのコミュニケーションの生じるツールやメディアをSNSに含めるならば、更に範囲は拡大します。ソーシャルメディアが人の生活に浸透した分だけ、SNSにおいて上司や会社から嫌がらせを受けたり、不快な思いをしている労働者も増えています。

パワハラがなくならない理由」の解説

よくあるソーハラの例

では、実際に労働者が、社内で苦しむソーハラの具体例について解説します。

ソーハラの基本的な考え方は、パワハラと全く変わらず、広義にはパワハラの一種です。

職場における優越的な地位を利用して嫌がらせをするという構造にあり、そして、ソーハラの場合は、職場内で起こる嫌がらせの手段が、SNSなどのソーシャルメディアを介しているに過ぎません。したがって、ソーハラもまた、パワハラと同じく違法な行為です。

部下のSNSを監視する上司

まず、SNSなどのソーシャルメディアで、部下のアカウントを監視する上司はソーハラです。

Facebookなどの実名登録型のSNSでは、簡単にアカウントを検索されてしまい、監視の被害がよく発生しています。同僚に教えたのが伝わって、会社の噂となってしまう例もあります。

X(旧Twitter)などの匿名型のSNSでも、投稿内容やプロフィール情報から個人を特定されることもあります。特定しようとして過去の投稿を必死にチェックして、アカウントの特定のみならず住所の特定や私生活の詮索にまで発展すれば、ネットストーカーという深刻な問題に発展します。

部下にSNSでつながるよう強要する上司

SNSなどのソーシャルメディアは、個人同士が繋がり、情報共有をして楽しむサービスです。そのため、仕事とプライベートとで人間関係を区別したいと考える人も多いです。つまり、SNS上では、なるべく上司と接点を持たずに、自由に発信したいと考えるケースです。

それにもかかわらず、部下にSNSで繋がるよう強要する上司の行為は、ソーハラに該当します。例えば、Facebookで一方的に友達申請してきたり、X(旧Twitter)でフォローしてきたりする例です。職場の人間関係が気まずくなるのが不安で、無視したりブロックしたりすることができず、我慢してコミュニケーションをとってしまう方も少なくありません。

意に反してSNS上で連絡せざるを得なくなるのは、不快なソーハラ被害といってよいでしょう。SNSはプライベートで利用するため、業務時間外の連絡のトラブルにも発展します。

業務時間外のメールの違法性」の解説

SNS上の人間関係を職場に持ち込む上司

SNSなどのソーシャルメディアは、仮想現実であり、そのなかで完結した楽しみがあります。しかし、ソーハラをする上司は、SNS上の人間関係を職場内に持ち込んできます。SNSでのつながりの強要だけでなく、その被害は現実世界にも影響を及ぼしてしまいます。

例えば、Facebookの友達、X(旧Twitter)のフォロワーとなっている部下のみを優遇したり、SNS上で、仕事の重要な情報を共有するよう強制し、SNSで繋がろうとしない社員を排除しようとする、といったケースです。

更には、SNSでブロックしたことを理由に評価を下げるようになれば、不当な評価によって給料が下がるなどの実害が生じます。

不当な人事評価によるパワハラ」の解説

部下のSNSの投稿を逐一チェックする上司

SNSで上司とつながっていること自体、部下にとってプレッシャーが強いはずです。その上に、過去の投稿を逐一チェックされれば、大きなストレスとなります。

SNSを楽しむために、私生活についてのプライベートな情報を投稿する人も多いでしょう。一種の日記のようにして利用している方もいます。しかし、逐一チェックされたり、「いいね」や「ファボ」、「リツイート」といったSNS上のアクションをされると、安心して情報発信することができず、不快な思いをします。

「上司と部下」である以上、現実と同じく、SNS上でも適度な距離感が大切です。全ての投稿に「いいね」するなど、過度なアクションが部下にとってプレッシャーなのは当然です。

部下に「いいね」を強要する上司

「上司から部下へ」のSNS上のアクションがソーハラになるという話をしました。逆に、「部下から上司へ」、SNS上の反応を強要する行為も、ソーハラにあたります。例えば、上司の投稿について「シェア」や「リツイート」といった行為を強要されるケースです。

正当な業務命令であれば従う必要がありますが、あくまで命令が適切な場合に限られます。SNS上の行為は、業務上必要なものとはいえず、上司の投稿にアクションを強要されたなら、ソーハラであることは明らかです。

個人のSNSの業務利用を強要する会社

SNSは、プライベートで楽しむものですが、企業の宣伝にも欠かせない存在となりました。

しかし、公私混同は避けるべきです。プライベートのSNSを、業務に利用するよう強要する会社によるソーハラが増えています。例えば、会社のイベントの「リツイート」「シェア」を強要したり、顧客との連絡をプライベートのLINEでするよう強要したりといったケースは、ソーハラの例です。

ホワイトな会社なら、ソーハラを避けるため、業務用スマホや、SNSの業務用アカウントを作成し、運用するでしょう。しかし、悪質な会社だとその費用すら節約しようとします。

SNS上のプライベート情報を会社でばらす

SNSを利用するとき、プライベートで起こった様々な出来事を投稿します。場合によっては、自分の生い立ちや経歴を書いたり、家族のことを知らせたりするでしょう。そのため、個人のSNSでは、労働者が会社には知られていない個人情報を書くことがよくあります。

職場の力関係によってSNSでつながった上司が、部下のプライベート情報を会社にバラせば、ソーハラと言わざるを得ません。SNS上では公開されている情報でも、会社に知られることまで許容したわけではないからです。

SNS上のプライベート情報を詮索する

実名登録のFacebookなどのSNSでは、本人の意図しない多くの個人情報が流出する危険があります。タグ付けやGPSを利用したSNSの機能によって、知らないうちに大切な秘密がバラされてしまうこともあります。

そのため、プライベート情報を詮索すれば、本人の意図しない情報まで、Facebookから判明してしまいます。しかし、「頑張って検索すればわかる」からといって、上司が部下の情報を詮索するのはソーハラです。

友人関係を徹底的に調べられたり、異性関係を追われたりするのは、誰にとっても不快なことでしょう。

SNSストーカー

SNSには多くの個人情報があふれています。メッセージをやりとりすれば、実際に顔をあわせなくても密接につながるのがSNSのメリットですが、悪用すればSNSストーカーになってしまいます。

SNSストーカーとなった上司は、ソーハラのなかでも特に悪質。上司が、1人の部下のSNSを過度に監視し、つながりを強要するようでは、ネットストーカーまたはSNSストーカーと言わざるを得ず、最も重大なソーハラです。

パワハラの相談先」の解説

職場での上下関係を利用していればソーハラにあたる

次に、自分が加害者になってしまわないために、上司の立場での注意点も解説します。前章の具体例を見て、逆に不安を感じる人もいるでしょう。

相談者

どのような行為がソーハラに当たるのか曖昧だ

相談者

知らないうちにソーハラをしていないだろうか

しかし、たとえ会社の同僚、上司と部下の関係でも、プライベートの仲が良い例は多く、SNSなどのソーシャルメディアも楽しく使えているなら全く問題はありません。

「ソーハラに該当するかどうか」のポイントは「職場の上下関係を利用しているかどうか」という点。職場の上下関係を利用していると、加害者にハラスメントの意図がなくても、被害を受けた人にとっては言い出せず、辛い思いをするからです。

ソーハラはパワハラと同じく、典型的なケースに限らず、被害者となった労働者が不快に思うかどうかによって、違法性が判断される傾向にあります。X(旧Twitter)、FacebookやインスタグラムといったSNSは、私生活での利用がメインでしょう。プライベートでも利用するSNSに、職場の上下関係を持ち込んではいけません。仕事上の力関係をSNS上に持ち込むこと自体が、ソーハラになると心得てください。

一方で、SNSやネット上で不適切な情報発信をする社員もいます。不適切な情報発信は、会社に損害を与える違法行為となる可能性もあり、監督が必要です。

社員のSNSアカウントを発見し、チェックするとき、それが適切な監督なのか、それともソーハラなのかの境界線は、「違法なパワハラと指導の区別」と同じ検討を要します(具体的には、監督の目的があるかどうかと、その目的に対して手段が適切かどうか、といった点から判断します)。

パワハラと指導の違い」の解説

ソーハラの被害にあったときの対策

最後に、ソーハラを受けた際の対策について解説します。

ソーハラは現代型の新たなハラスメントトラブルです。適切な対処を知らない労働者が多いのは当然ですが、防止策を知らない企業もまだまだ多くあります。そのため、ソーハラが疑われるケースでは、対策を会社任せにするのでなく、被害者が率先して対処しなければなりません。

不快なソーハラだと指摘する

ソーハラがまだ軽度のうちは、不快なソーハラだと指摘すればストップすることもあります。ソーハラの加害者のなかには、自分が不快な言動をしているとは気付かず、悪気のない人もいるからです。

例えば、X(旧Twitter)のフォロワーFacebookの「いいね」やは、誰しも増やしたいと思うでしょう。そのような単純な気持ちが、気付かないうちに部下にプレッシャーを与え、強要に繋がってしまっているケースもあります。「シェアしてほしい」といった友達同士なら軽いお願いに過ぎない行為も、上司と部下の関係で、社内で行うとたちまちソーハラとなるおそれもあります。

まずは、ソーハラ被害に遭ったかもしれないと感じる労働者は、ソーハラ加害者の上司に対して、不快だということを明確に伝えてください。直接伝えづらいときは、更に上の上司や社長に伝える手も有効です。面と向かって指摘するのが難しいとき、弁護士に依頼して警告書を送付する方法も検討してください。

ネット上で反撃する方法は逆効果になるおそれがあるので止めましょう。

ネット・SNSで会社の悪口を書くことの違法性」の解説

被害を特定し、証拠を集める

ソーハラは、SNSなどネット上を中心に隠れて行われるため、証拠に残りづらいです。個人のインスタを監視されたといったソーハラでは、具体的なアクションがない分、被害を特定するのが困難になってしまいます。

このようなケースでも、あなたが不快感を感じたのは、社内でなにかしらの変化があったからでしょう。証拠に残っている部分を少しでも集めておき、ソーハラの被害を特定するようにしてください。ソーハラを会社に相談するときも、証拠を残すため、書面やメールで通知する工夫が大切です。

パワハラの証拠」の解説

ソーハラを社内で解決する方法

ソーハラの問題は、社内で解決できるケースもあります。軽度のソーハラは、慰謝料もそこまで多額にはならず、泣き寝入りしないためには会社に対応を要求すべきです。

会社には、労働者を安全に働かせる義務(安全配慮義務)があり、ソーハラを防止する責任があります。労働者側でも理解し、自身の被害を軽減する対策を求めるために、企業側が講じるべきソーハラの対策についても紹介しておきます。

  • 規程の整備
    SNSポリシーやハラスメント防止規程を作成し、社内に周知する。
  • 社員の研修やトレーニング
    SNSやネット上で禁止される行為の例、違反への制裁について教育し、加害者となる社員を減らす。役職が高く、責任の重い管理職の研修によってルールを徹底すべき。
  • 相談窓口の設置
    ハラスメントを会社に報告できる窓口を設置する。特にソーハラは、匿名の窓口やオンラインフォームが適切。改正労働施策総合推進法(いわゆる「パワハラ防止法」)により、2022年4月から全ての企業でパワハラの相談窓口の設置が義務化された。
  • 調査と再発防止策の徹底
    ハラスメント報告があれば、関係者のヒアリングや証拠収集などの調査をし、再発を防止する必要がある。加害者への注意指導のほか、重度のケースは異動や配置転換、懲戒処分、解雇といった手段を選択する。
  • 弁護士への相談
    ソーハラのような新たな問題について社内の知見が不足するとき、顧問弁護士を依頼するなど外部機関との連携が必要となる。

軽度のソーハラは、会社に注意してもらうことで早期解決を目指すべきですが、会社が適切な対応をしないなら、弁護士から警告書を送ってもらうのが有効です。

ソーハラで慰謝料請求する方法

不快だと伝えてもソーハラがやまず、会社もソーハラの対策をしてくれないとき、弁護士に相談してください。ソーハラは、違法なハラスメントです。不法行為(民法709条)にあたる悪質なケースでは、慰謝料請求ができます。

ソーハラで慰謝料を請求するには、精神的苦痛を感じていることが要件となります。また、不法行為といえるほどの一定の違法性が必要なため、ソーハラのなかでも、悪質な例で検討すべき解決策だといえます。

労災の慰謝料の相場」の解説

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、現代における新たな問題であるソーハラについて解説しました。X(旧Twitter)、Facebook、インスタグラムなど、SNSが流行するほどに、ソーハラの被害は拡大します。

もはや企業経営にとっても、SNS戦略はなくてはならない重要なものとなりました。その分だけ、会社や上司から、SNSを通じた嫌がらせを受ける可能性も高まっているのが現状です。

職場でのハラスメントで不快な思いをしたときは、我慢せず、解決に動くべきです。加害者や会社への慰謝料請求といった法的な対策を検討している方は、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

この解説のポイント
  • ソーハラは、パワハラの一種で、SNSを使った嫌がらせ
  • ソーハラは新しいハラスメントだが、具体例を知れば未然に防止できる
  • 深刻なソーハラ被害を受け続けるときは、慰謝料請求を検討する

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