今回は、部下からパワハラだと言われた時の適切な対応を、労働問題に強い弁護士が解説します。
「最近の若者は…」とグチればおじさん臭くなりますが、いつの時代も部下への不満は尽きません。しかし、若い部下もまた「上司の考えについていけない」と不満を募らせます。上司の厳しい指導は、時として根性論、精神論になりがちです。このようなとき、部下への指導がいきすぎるとパワハラと言われてしまいかねません。
世代ギャップがあって、うまく部下を指導できない
パワハラだと騒がれて、モンスター化してしまった
上司と部下では、考えが違うのは当然。部下のなかには我慢の足りない人もいて、注意指導は不可欠です。パワハラと言われるのをおそれて指導がおろそかになると、上司の役割を果たせなくなってしまいます。
指導に問題がなくても、少しでも厳しいと過剰反応し「パワハラだ」と騒ぐモンスター社員もいます。上司の側でも、パワハラだと言われたときの対処を知り、防御しなければなりません。
- パワハラ騒ぎの理由は、世代差や、職場内の地位の差から生まれる考え方の違い
- パワハラと言われたら、まず会社に報告し、指示をあおぐ
- パワハラと言われ、会社も味方してくれなければ、弁護士に相談して会社と戦う
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なぜパワハラと言われるのか、パワハラ騒ぎの起こる理由
なぜ、あなたはパワハラと言われてしまうのか。常識にしたがって指導をしただけと思っても、突然「それ、パワハラですよ」と指摘され、慌てて弁護士に相談する人は、思いのほか多いです。
古代エジプト時代から、「最近の若い者は…」と嘆かれていた、という逸話もあるように、年齢差によって仕事への姿勢、考え方が異なるのが、パワハラトラブルが起こる原因の1つです。
社会問題化して「パワハラ」という言葉が有名になり、ますますその傾向は加速。ブラック企業が増加する頃、それと共に個人の権利意識が増長しはじめました。新入社員、若手社員の立場にある人は、なにげない考えから、ちょっとした不快感を「パワハラ」という言葉で表しがちです。
個人の権利意識の高まりが、パワハラ騒ぎを起こすモンスター社員を生んでいます。そのことを、年長の上司はよく理解しておかなければなりません。パワハラ騒ぎと、正しい権利主張とは、隣りあわせにあるのです。
個人の権利は尊重しなければなりません。会社や上司の力で、弱い立場にある部下を抑え込むのは問題があります。
しかし一方で、厳しい注意や、業務に必要な指導と、パワハラを混同するのもまた問題だと言わざるを得ません。
「パワハラの相談先」の解説
パワハラと言われたときの適切な対応
次に、パワハラだといって騒ぎ立て、上司を責めるモンスター社員への対応について解説します。
パワハラと言われたときの問題は、まずはその場で部下から言われるケース。しかし、社長や人事から呼び出しをくらい、
君からパワハラを受けたといっている社員が、大勢いる
一緒に働きたくないといわれているから、辞めてほしい
など、逆に問題社員扱いされてしまうこともあります。このようなケースは最終段階で、かなり深刻です。そこまで行く前に、まずは「パワハラだ」と言われた直後の対応を知りましょう。
上司としてふさわしい態度か、自省する
まず、残念ながらパワハラと言われたら、上司としてふさわしい態度だったか振り返ってください。
パワハラかどうかは、法的な観点から客観的に判断すべきです。勝手な判断で、「指導に問題なかった」「あいつがモンスター社員だ」など決めつけるのはよくありません。自制心がないと、自身のパワハラ行為、問題行動に気づけなくなってしまいます。
パワハラにあたるかはともかく、パワハラだと言われたこと自体に、上司としてふさわしくない言動がなかったか、反省してみてください。
「ブラック上司の特徴と対策」の解説
パワハラと言われたらすぐ会社に報告する
次に、上司の立場で部下を注意したり、指導、教育したりする行為は、あなた個人の問題ではありません。業務の範囲内でしているのなら、あなたの行為は、会社の行為の一部です。
そのため、会社の業務でした注意指導がパワハラだといわれたら、すぐに会社に報告してください。会社は、あなた個人よりは労働問題に詳しいことが多く、相談に乗ってくれるでしょう。顧問弁護士がいれば、パワハラにあたるかどうか、専門的なアドバイスを聞くことができます。
被害者とされる人から相談があってからあなたが報告するのでは、パワハラをしたのに隠していたように思われ、イメージがよくありません。被害者とされる人から相談があってからあなたが報告するのでは、パワハラをしたのに隠していたように思われ、イメージがよくありません。
「パワハラ冤罪の対応」の解説
会社の事情聴取に協力する
パワハラだと言われた社員がいるとき、会社は報告を受けたらすぐに、事実関係の調査をすべきです。事情聴取でヒアリングを丁寧にし、本当にパワハラがあったかを確認するのが会社の義務だからです。
このとき、会社に味方してもらうにも事情聴取、ヒアリングにはきちんと応じるのが大切です。一方で、パワハラだと執拗に主張するモンスター社員を、あなた個人が力で押さえつけれようとすれば、ますます反発され、取り返しのつかない事態になってしまいます。
「懲戒処分の決定までの期間」の解説
会社に味方してもらう
業務として部下を指導し、パワハラだと言われたなら、会社に味方してもらう手が有効です。このとき、あなたの注意指導に問題ないのにパワハラだと騒ぎたてるモンスター社員が相手なら、会社がしっかり対応し、被害者ヅラする人にさらなる注意をしてくれます。
会社は、労働者を安全に働かせる義務(安全配慮義務)があります。安全配慮義務は、新入社員や若手社員だけのものではありません。上司の立場にある労働者も当然、その安全は守られる必要があります。自己中心的な労働者から「パワハラだ」という言いがかりをつけられ、精神的苦痛を負うケースでは、会社にしっかり義務を果たし、あなたの立場を守ってもらう必要があります。
「パワハラの相談を受けたときの対応」の解説
パワハラにあたるか慎重に見極める
以上が、パワハラだといわれたときの緊急対応だと理解ください。これら直後の対応が終わった後ではじめて、パワハラにあたるかどうか、慎重に見極めましょう。緊急対応が終わった後であれば、ゆっくり時間をかけ、パワハラだったかどうかを熟考できます。
パワハラにあたるかは、業務上の必要性、相当性があるかどうかで判断します。
モンスター社員からパワハラと騒がれ、嘘だろうと思っても、立ち止まり慎重に考えてください。「パワハラかどうか」が微妙で、軽度な事例では、「伝え方の問題」なのも珍しくありません。このとき、今後はあなたの伝え方も改善していくべきです。
「仕事ができないから指導をした」という考えはパワハラ被害を生みがちであり、改めた方がいいかもしれません。
仕事ができるかどうか、能力評価は会社がすることです。本当に仕事ができない人なら、会社が解雇し、クビにしてくれるでしょうが、あなたがパワハラして追い出してよい理由にはなりません。パワハラにあたる可能性があるなら、たとえ相手が部下でも、真摯に謝罪すべきです。
「パワハラと指導の違い」の解説
すぐパワハラと騒ぐ人の特徴
上司の立場に立ったとき、自分の指導に問題なくても、パワハラトラブルとなってしまうこともあります。このようなとき、「自分は被害者だ」と主張する人は、すぐパワハラと騒ぐモンスター社員かもしれません。
すぐパワハラと騒ぐ人には、次の特徴があります。このような特徴のある人に注意指導するときは、特に配慮が必要となります。
- パワハラと注意指導を区別せず、すべて「パワハラ」
- パワハラ騒ぎを頻繁に起こす
- パワハラされたといって仕事をサボる
- 労働法にはやたらと詳しい
- 交換条件でさらに権利行使しようとしてくる
- パワハラする上司に報復する
- パワハラに対抗する団結だとして、他の社員を巻き込む
- 社内で相手にされないと、ネット上で誹謗中傷する
一方で、自分がパワハラだと言われたら、反省も必要です。「本当にパワハラかどうか」はともかくも、言われる原因を作れば、あなたにも問題の一因があります。上司の立場なら、パワハラと言われないよう注意をするのもふさわしい態度の一つです。
「労働問題に強い弁護士の選び方」の解説
パワハラだと騒ぐ部下に、どう対応したらよいか
パワハラだと言われても、自分の行為が正当な指導だと自信があるなら、毅然とした対応を要します。パワハラだとすぐに言いがかりをつける社員は、ことさらに問題を拡大しようとします。このようなとき、上司の立場では冷静に対処しなければなりません。
パワハラと言われても、冷静に指導し続ける
自己中心的な正義を振りかざし、「パワハラだ」と騒ぎたてるモンスター社員。こちらも大声をはりあげ、怒鳴りちらして注意すれば、労働問題は激化してしまいます。このような冷静さを欠く対応では、「やはりパワハラ上司だった」と言われてもしかたありません。
パワハラだと言ってくる部下に問題があるとき、指導の必要性は高いですが、あくまで冷静に進めましょう。指導をくり返すほどパワハラと言われやすくなるので、揚げ足をとられても問題ないほどの慎重さが不可欠。このときの注意指導では、次のポイントを押さえてください。
- 上司の主観ではなく、客観的に注意する
- できていない点を、数字などで可視化して指摘する
- 具体的な改善策を提供する
- 改善がみられたら評価する
「パワハラにはパワハラで対抗」というのは、問題ある対応です。「目には目を、歯には歯を」とはいいますが、パワハラ同士がぶつかっても、いずれも違法となるだけで、あなたの行為が許される理由にはなりません。
このとき、会社はもちろん弁護士も、どちらの味方もしづらくなってしまいます。
「部下から上司へのパワハラの違法性」の解説
仕事で必要な我慢を教える
パワハラ騒ぎを起こす新入社員、若手社員のなかには、仕事の不快さをすべて「パワハラ」という言葉でくくり、異議を申し立てる人もいます。しかし、部下が不快に感じたらすべてパワハラかというと、決してそうではありません。新入社員、若手社員など経験の少ないうちほど、強い指導が必要なケースも多いと教育しなければなりません。
仕事をしていれば、誰しもストレスを感じたり、不快に思うことがあります。未熟さやミスを指摘され注意されれば、気持ちいいわけはありません。しかし、これらは、業務上必要で、かつ、相当な範囲であれば、当然に我慢すべきことであり、パワハラではありません。
「労働問題を弁護士に無料相談する方法」の解説
会社が味方になってくれないときは弁護士に相談する
パワハラの訴えがあがっても、きちんと調査、確認するのが会社の役目です。パワハラがなかったと判断するなら「被害者」に注意指導してトラブルを収めるべきです。
しかし、このような役割を果たしてくれない会社もあります。モンスター社員が騒ぎたてると、事なかれ主義の会社ほど、「被害者」の味方になってしまいがちです。会社のためを思って注意指導、教育したのに、突然はしごをはずされた気分になることでしょう。
部下側の言い分が認められ、「パワハラ上司」扱いされる次のケースもあります。
- 以前から、社内で厳しい上司として有名だった
- あなたの注意指導がパワハラだという被害報告が、他にもある
- 以前に、あなたに対する不快感が理由で退職したいといった社員がいる
- 実は、一度だけ、感情的になって怒鳴ってしまったことがある
モンスター化した社員の言い分が認められ、会社が被害者の肩を持つと、パワハラを理由に懲戒処分になったり、最悪は解雇されたりと、不当な処分を受けるおそれがあります。
しかし、会社がパワハラ認定しても、まだあきらめるのは早いです。そもそも会社が、労働法の知識なく、不適切な扱いをしてしまっている例もあるからです。パワハラしていないなら、モンスター社員となった部下だけでなく、会社とも戦わねばなりません。
パワハラを理由に解雇されたら、不当解雇を主張し、撤回を求めて争いましょう。交渉に応じてもらえないときは労働審判、裁判で戦う必要があります。そのため、会社の事実調査が不十分なケースなど、誤った認定で「パワハラ上司」扱いされそうなら、早めに弁護士に相談してください。
「不当解雇に強い弁護士への相談方法」の解説
まとめ
新入社員、若手社員など、まだ経験の少ない部下がモンスター化したときの対処を解説しました。
部下がモンスター化すれば、指導に反発され「パワハラだ」と言われます。しかし、部下にパワハラだと言われようが、上司として職場での役割を果たすためには、注意指導を進めなければならないシーンも多いです。
話し合いで納得すればよいが、個人の権利意識が高まる昨今、冷静に応じてもらえないことも。上司1人の力で収まらないとき、会社を味方につけることが一番です。会社も味方になってくれず、パワハラだと訴えられたら、事実と法律に基づいて、法的に解決するしかありません。このとき、弁護士のサポートを求めるのが有益です。
- パワハラ騒ぎの理由は、世代差や、職場内の地位の差から生まれる考え方の違い
- パワハラと言われたら、まず会社に報告し、指示をあおぐ
- パワハラと言われ、会社も味方してくれなければ、弁護士に相談して会社と戦う
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【パワハラの基本】
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