職場で起こる無視のトラブルは、被害者を精神的に追い込む陰湿ないじめ。
無視され、空気のように扱われるダメージは甚大です。
多くの時間を会社で過ごす労働者にとって、社内のコミュニケーションは必要不可欠。
疎外感を感じれば、仕事への支障だけでなく、人間的な生活を送れる気がしなくなり、会社を辞めて逃げてしまいたくなることでしょう。
この意味で、「無視」には、暴力や言葉によるパワハラを上回る破壊力があります。
チームで働くには協調性が肝心ですが、性格は人それぞれ。
業務に支障のない限り、あくまで職場では無関係なはずです。
仕事でミスをしたなど、非のある状況だとしても、無視を正当化する理由にはなりません。
したがって、職場での無視は、違法なパワハラの可能性が高いです。
より深刻な職場いじめの前兆とも考えられ、早急な対応が望ましいでしょう。
今回は、職場での無視がパワハラにあたる理由と対処法を、労働問題に強い弁護士が解説します。
- 暴力、暴言などの行為を伴わない「無視」もパワハラになりうる
- 違法なパワハラとなる無視とは、本来ならすべき対応を怠っていること
- 職場で無視されるというパワハラの証拠を集めれば、加害者と会社を訴えることができる
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- ブラック上司にありがちなパワハラ
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職場で無視されるのはパワハラにあたる

暴力や暴言だけがパワハラではありません。
「何もしないこと」、すなわち、無視が、パワハラに該当するケースがあります。
職場での無視を「会話拒否ハラスメント」と呼ぶこともあります。
職場での無視がパワハラである理由
パワハラは、①優越的な関係を背景とし、②業務上必要かつ相当な範囲を超えており、③労働者の就業環境を害する言動のことです(労働施策総合推進法30条の2第1項)。
職場で起こる無視は、多くの場合、このパワハラの3つの要件を満たします。
職場での無視のプレッシャーが大きくなるのは、上司や先輩、社長など、強い立場にある人が、より下位の人を無視し、その価値を低いものとして扱うからこそです。
したがって、無視の多くは、職場における優越的な関係を利用しています。
そして、無視することに業務上の必要性はなく、不相当なのも明らかです。
職場での無視は「人間関係からの切り離し」にあたる
「パワハラ」と一言でいっても、その態様にはいくつかの種類があります。
厚生労働省はパワハラを6つに分けて説明しており、これを「パワハラの6類型」と呼びます。
- 身体的な攻撃
- 精神的な攻撃
- 人間関係からの切り離し
- 過大な要求
- 過小な要求
- 個の侵害

このうち、職場での無視は、③人間関係からの切り離しに該当するパワハラ行為です。
③人間関係からの切り離しには、今回解説する無視のほかにも
- 追い出し部屋への隔離
- 仕事外し
- 仲間外し
- 必要な資料を共有しない
- 挨拶しない
- いないところで陰口を叩く
- 悪評を広める
といった例が挙げられます。
(適切な仕事を与えない点で⑤過小な要求、精神的なダメージを与える点で②精神的な攻撃とも重複する行為が含まれます)
厚生労働省の発表する統計によれば「人間関係からの切り離し」は、「精神的な攻撃」「過大な要求」に次ぐ相談件数となっており、多くの労働者が頭を悩ませる問題であることがわかります。

労働問題に強い弁護士の選び方は、次に解説しています。

職場で無視されるパワハラの具体例

次に、よくある職場での無視の具体例を解説します。
心当たりがある人は、「無視されているのではないか」と疑い、注意深く行動してください。
社長や上司からの無視の例
典型例は、社長や上司、先輩など、上位の人からの無視。
上位の人からの低評価ほど伝染しやすく、特に社長からの無視は深刻です。
会社のトップである社長が無視すれば、「無視するのが当然」という雰囲気を醸成します。
他の社員が迎合し、集団で無視され、全社的なパワハラになるのも時間の問題です。
社長や上司、先輩からの無視には、次の例があります。
- 会議に参加しても、発言権を与えられない
- 重要な仕事を任せられず、雑用を押し付けられる
- 自分だけ業務メールを送られない
- 自分だけ仕事を教えてもらえない
- 業務遂行に必要な資料を共有してもらえない
- 仕事を進めるための指示がない
- 書類に決済の印鑑を押してもらえない
- 業務報告をスルーされる
- 電話を取り次いでもらえない
- 部署で開催される飲み会に呼ばれない
同僚からの無視の例
一方で、同僚からの無視もまた深刻です。
同僚や同期は、たとえ仕事がつらくても支え合える大切な仲間のはず。
本来は味方のはずなのに無視され、パワハラされれば、大きな苦痛を味わうでしょう。
同僚からの無視には、次の例があります。
- 挨拶をしても、返事をしてもらえない
- 目線をあわせてもらえない
- すれ違うときに咳払いや舌打ちをされる
- 会話に加わろうとすると、毎回すぐ切り上げられる
- 同期のLINEグループに自分だけ参加させてもらえない
- 上司からの伝達事項を共有してもらえない
- 同期の集まりに呼ばれない
性別問わず、無視は許されませんが、女性社員同士の無視は特にトラブルとなりがちです。
部下からの無視の例
部下から無視されるケースもあります。
たとえ業務では下位の立場にある部下からでも、パワハラが成立する可能性があります。
パワハラが生じる優越的な地位とは、職制上の上下に限りません。
そのため、部下から上司への逆パワハラも違法となる場合があるのです。
部下から無視されるパワハラの例は、次の通りです。
- 上司として尊敬されず、指導を受け入れてもらえない
- 強く注意したら逆ギレされ、翌日から無視された
- 直属の部下が、別の先輩の指示に従い、自分の指示を聞かない
部下からのパワハラで近年増加したのがテクハラ(テクノロジーハラスメント)。
テクハラは、IT機器の扱いが不得手な人に対する嫌がらせです。
一般的に、高齢の上司のほうが、若年の部下よりもITの知識に欠けることが多く、技術的な知識がないことによる優越的な地位を利用するため「部下から上司へ」のパワハラになりやすいのです。
労働問題の種類と、その解決方法についても参考にしてください。

職場で無視される人の特徴

次に、職場で無視されてしまう人の特徴を解説します。
無視される人の共通点を知れば、対策を立てることができます。
唐突に無視された側は驚くでしょうが、無視の問題には、原因やきっかけがあります。
相手が失礼に感じたり、迷惑に思っていたりする場合、改善すべきポイントがないかを確認してください。
同じミスを繰り返す
何度も同じミスを繰り返せば、指導する側も呆れてしまうでしょう。
「もはやアドバイスしても意味がない」と感じ、無視される危険があります。
精一杯努力しても、改善の兆しが見えないとサボっているようにも見えてしまいます。
「能力不足」のレッテルを貼られると、減給や降格、最悪は解雇されるリスクがあります。
能力不足で解雇されたときの対処法も参考にしてください。
他人の意見に耳を傾けない
他人の意見に耳を傾けないことは、無視されやすい人の特徴の1つ。
自分の意見ばかり押し通そうとすれば、アドバイスしても無駄だと思われてしまいます。
あなたに聞く態勢がなければ、他人も配慮してくれません。
積極的に他の社員から意見を求めるなど、協調性をアピールする手が有効です。
組織として、チームで業務を進める以上、自己中心的な社員は嫌われます。
空気が読めない
その場の雰囲気を考慮せず、思ったことを口走ると、無視されるおそれがあります。
頻繁に繰り返せば「空気が読めない」「KYだ」と評価されるでしょう。
発言する前に、場違いではないか、慎重に検討すべきです。
ただ、場の空気は価値観にもよるため、過度に気にしすぎると、逆にいじめに繋がりかねません。
職場におけるモラハラの対処法についても参考にしてください。
社風に合っていない
「空気が読めない」のではなく、そもそも社風に合っていないケースもあります。
会社の文化や風土に合わない浮いた存在は、嫌われ、無視されがちです。
とはいえ、ブラック企業で、社風そのものが違法なら、合わせるべきではありません。
勤務する会社の社風にどこまで合わすべきかは、「法律違反でないかどうか」という観点からチェックしましょう。
ブラック企業の特徴と見分け方は、次に解説します。
積極的な発言や意見がない
常に後ろ向きの発言ばかりしていることも、無視される人の特徴の1つです。
発言があまりに消極的だと、仕事を任せづらいと思われてしまいます。
自分の意見がないと、次第に相手にされず、軽視され、結果として無視に繋がってしまうのです。
勤務態度を理由に解雇されたときの対応は、次に解説します。

職場で無視されてしまった場合の対処法

次に、職場で無視されたときの適切な対処法を解説します。
会社で無視されても、生活を守るために我慢している人もいます。
しかし、割り切って我慢するのは、むしろ悪手なこともあります。
無視の問題は表面化しづらく、エスカレートして職場いじめに発展する危険もあるからです。
「無視」であることを確認する
無視は、具体的な行動を伴わず、気付きづらいケースもあります。
後ろめたい点やトラウマがあると「無視された」という思い違いを抱く人もいます。
そのため、無視の被害にあったら、まずは、本当に「無視」であることを確認してください。
相手に「無視しよう」という意図があるなら、パワハラの一貫だといってよいでしょう。
これに対し、単に存在に気づいていないだけなら無視ではありません。
過剰な反応がかえって逆効果なこともあります。
無視されたことの証拠を残す
無視であると明らかになったら、無視された証拠を残すようにします。
将来、労働審判や訴訟で争うなら、証拠がとても大切だからです。
「無視」とは「すべき対応をしない」ということですから、無視の証拠を残すには「本来すべき対応とはどのようなことか」という点に着目するのがよいでしょう。
例えば、次の証拠が有用です。
- 職場で無視されている様子の録音、録画
- 返信のない業務メール
- 無視されたときの状況を詳細に記録したメモ
- 職場の無視を目撃した社員の証言
- 会社に相談した経緯、記録
- 医師の診断書
無視することによるパワハラは、暴力や暴言と異なり、表立った行為がありません。
このとき、その証拠を残すには、無視のきっかけを探るのがよいでしょう。
例えば、自分の失礼な発言やミスに、相手が過剰に恨みを抱いているなら、そのことの証拠を残すことで、無視することが違法なパワハラであると示すことができます。
パワハラの証拠の集め方は、次の解説をご覧ください。
仕返しはせず、自分を責めない
自分に非があるなら、謝罪し、反省すべきです。
しかし、無視という態様によって分からせようとするのは適切ではありません。
また、職場で無視されたとして、「こちらも無視する」といった仕返しは禁物です。
報復をすれば、無視という幼稚な手段に出た相手と同じ土俵に立ってしまいます。
その結果、あなたもまた、他の社員や会社からの評価を落としかねません。
納得はいかないでしょうが、仕事で成果を上げることが、周囲の信頼を勝ち取る近道となります。
無視をしてくる社員のために貴重な時間を費やすのは止めましょう。
ストレスに耐えきれないなら、思い切って退職し、転職するのも選択肢の1つです。
退職時に損しないために、退職したらやることも参考にしてください。
周囲の人に相談する
無視をやめてほしいとき、張本人と腹を割って話せるのが理想。
しかし、直接の話し合いによる関係修復は、困難なこともあります。
このとき、一人で抱え込むのではなく、必ず周囲に相談しましょう。
会社全体で無視されているのでなければ、親身に相談に乗ってくれる人がいるはずです。
軽度のハラスメントならば、適切に注意指導してもらえれば止むでしょう。
そのため、まずは上司や社長など、周囲の人に相談して解決を目指します。
弁護士に相談する
しかし、現実には、社内での解決は困難なこともあります。
職場で無視され、精神が限界なら、無理に歩み寄る必要はありません。
上司や社長など、相談すべき先の人が、無視の加害者となっているケースもあります。
このようなとき、労働審判や訴訟などに発展し、パワハラの慰謝料を請求するといった解決策を考えるならば、早い段階で一度、弁護士に相談すべきです。
労働問題を弁護士に無料相談する方法は、次に解説します。

職場で無視されたら訴えることができる?訴える方法も解説

最後に、職場での無視がひどく「訴えたい」と考える方に向けて、訴える方法を解説します。
職場での無視は、人間不信に陥らせる卑劣な行為であり、制裁を下されるべきです。
無視するというパワハラに対し、裁判で慰謝料を請求することで、職場での無視によって受けた精神的苦痛を埋め合わせると共に、無視してきた人に対し、その責任を示すことができます。
実際、社内で相談しても、速やかに対処してもらえないケースもあります。
厚生労働省の調査結果によっても、パワハラを知った後の勤務先の対応として「特に何もしなかった」とする割合が47%を占め、1位となっています(令和2年度 職場のハラスメントに関する実態調査報告書)。

被害を訴えても、非協力的な会社が、解決の困難さに拍車をかけています。
このとき、会社は労働者の労働環境を整備し、安全を守る義務があることから、この安全配慮義務への違反を理由に、損害賠償を請求する方法によって、会社の責任を追及することも検討してください。
職場で無視する人を放置すれば、会社はこの義務に違反し、損害賠償を請求できます。
パワハラを訴えるとき、なによりも証拠が大切です。
証拠の集め方は、前述「無視されたことの証拠を残す」をご参照ください。
また、複数人に無視されると責任の所在が曖昧になりがちですが、「誰が主導したか」を証拠により明らかにする必要があります。
ただ、無視している証拠を集めるのは簡単ではありません。
無視以外にもパワハラが行われたなら、加害者側のハラスメントについての悪意を示せるため、それらの証拠も合わせて集めておく必要があります。
職場での無視はあくまで氷山の一角で、他にもパワハラが横行しているケースは多いものです。
労働者が裁判で勝つ方法と、証拠集めのポイントについても参考にしてください。

まとめ

今回は、職場での無視について、労働者が知るべき知識を解説しました。
職場における無視は、他人を尊重するという基本的なマナーを欠く不適切な行為。
実際に暴力や発言を伴わずとも、違法なパワハラになるのは当然です。
職場での無視がパワハラとなるとき、加害者はもちろん、防止しない会社にも責任があります。
「自分のせいだから」と一人で背負い込み、我慢しすぎるのは禁物です。
ただし、無視は、具体的な行動を伴わない分、問題性が見えづらい難点があります。
「パワハラだ」と指摘しても、「無視はしていない」と反論され、逃げられることもしばしば。
大切なのは、無視が限度を超えてないか、客観的な視点でチェックすることです。
職場での無視に、労働者が1人で立ち向かうのは骨が折れます。
「無視によるパワハラをされた」という適切な証拠を集めるため、早めに弁護士へ相談ください。
- 暴力、暴言などの行為を伴わない「無視」もパワハラになりうる
- 違法なパワハラとなる無視とは、本来ならすべき対応を怠っていること
- 職場で無視されるというパワハラの証拠を集めれば、加害者と会社を訴えることができる
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【パワハラの基本】
【パワハラの証拠】
【さまざまな種類のパワハラ】
- ブラック上司にありがちなパワハラ
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- パタハラ
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- 仕事を押し付けられる
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