パワハラというと「上司から部下へのパワハラ」をイメージするでしょう。
上司という優位な立場を利用すれば、パワハラを容易に起こせるからです。
しかし、パワハラはこの典型例に限りません。
「部下から上司へのパワハラ」、つまり「逆パワハラ」もまた、違法に違いありません。
職場の人間関係が複雑化し、権利の保護が進む現代、パワハラも多様化しています。
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部下が言うことを聞かないのはハラスメントでは?
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上司が部下をパワハラで訴えられるのでしょうか?
部下から嫌がらせされたり、いじめを受けたりする上司もいます。
上司も1人の人間、ハラスメントを受ければ傷付きます。
そのため、違法な逆パワハラを受けたら、慰謝料をはじめ損害賠償を請求できます。
今回は、部下から上司へのパワハラ、つまり「逆パワハラ」の具体例や対策を、労働問題に強い弁護士が解説します。
- 逆パワハラは部下から上司への嫌がらせだが、通常のパワハラ同様、違法となる
- 逆パワハラは、一般のイメージと反し、理解されづらく対策が遅れがち
- 社内で相談しても逆パワハラがなくならないとき、証拠を集めて訴えることができる
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逆パワハラとは、部下から上司へのパワハラ
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まず、逆パワハラの定義について解説します。
逆パワハラとは、部下から上司へのパワハラです。
よくあるパワハラは、上司から部下に対して行われるものが主です。
しかし、「逆」と付くのは、これと真逆に、部下が加害者、上司が被害者だという意味。
逆パワハラもまた、通常のパワハラとまったく変わりません。
パワハラは、職場における「優位な立場」を利用して嫌がらせすることですが、この「優位な立場」は、「上司」、「部下」という職場の上下関係によって、必然的に決まるものではないからです。
つまり、職場は、必ずしも「上司が優位」という場面ばかりではありません。
シーンによっては「部下のほうが上司より優位に立つ」ということもありえます。
例えば、次のケースを考えてください。
- 部下のほうが、専門的な知識を豊富に有している。
(例:IT技術、スマホの操作、ゲームの知識など) - 部下のほうが、業務の経験が豊富である。
(例:中途採用の経験豊富な部下) - 部下のほうが、コミュニケーション力がある
(例:会話スキルや同年代により顧客と関係が築きやすい場合など)
これらのケースでは、部下のほうが優位にあります。
上司といえど部下に教えてもらったり、部下のほうが評価が高くなったりします。
「部下から上司へのパワハラ」をイメージしづらいのが、逆パワハラの深刻な問題点。
逆パワハラは気付かれづらく、対策が遅れがちです。
相談されても事後対応されず、二次被害につながる例も少なくありません。
逆パワハラもまた「パワハラ」と理解し、正当な権利を守る必要があります。
労働トラブルに悩むなら、労働問題に強い弁護士の選び方を知ってください。
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逆パワハラの具体例
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逆パワハラはイメージしづらいものです。
理解してもらいやすくするために、逆パワハラの具体例を紹介します。
モンスター社員な部下に責められ、うつになってしまう上司もいます。
よくある逆パワハラの具体例は、次のとおり。
具体例で見れば、部下から上司への行為も、悪質なパワハラの可能性があると理解できるでしょう。
部下の知識・経験が豊富な分野で起こる逆パワハラ
部下のほうが、上司よりも知識、経験が豊富な場合があります。
こんな分野では、部下から上司への逆パワハラが生じやすい状態です。
長期雇用、年功序列の慣行なら、勤続をかさねるごとに知識、経験が増すことになります。
しかし、働き方が多様化し、転職はごく当たり前に。
その結果、中途採用が増え、部下のほうが知識、経験が豊富なのは珍しくありません。
これにより起こる逆パワハラは、例えば次のケース。
- 上司がパソコンに疎く、初期設定をすべて部下がやっている
- IT技術の豊富な部下が上司に「こんなこともわからないのか」と発言する
- 年配の上司の聞き間違いを指摘して怒鳴る
- 部下が上司を「無能だ」とかげで馬鹿にする
時代とともに、仕事に必要なスキルは変わっていきます。
若い部下のほうが、新しいスキルを身に着けているケースも多いものです。
部下が上司の言うことを聞かない逆パワハラ
部下が上司を馬鹿にしはじめると、言うことを聞かなくなります。
上司の業務命令が正当なのに、部下が従わないなら、逆パワハラのおそれがあります。
これにより起こる逆パワハラの具体例は、次のようなもの。
- 残業して早く終わらせるよう指示しても、すぐ帰ってしまう
- 上司の指示を無視して業務を進める
- 会社のやり方に従わない、独自の方法で仕事をしようとする
問題なのは、前章のとおり能力、知識に差があるケース。
必ずしも上司の命令に従わずとも、部下が成果を出し、さらに上司が軽視されてしまいます。
なお、上司の業務命令が違法なら、従う必要はありません。
違法な業務命令を拒否すべきケースは、次に解説します。
「パワハラで訴える」という逆パワハラ
パワハラが上司から部下に対して起こりがちなのは、部下のほうが弱い立場にあるからです。
しかし、職場の地位が下だからといって、弱い立場だとは限りません。
労働者保護が進むと、「過保護」になり、権利が保障されすぎていることもあります。
部下が、労働者としての権利を主張しすぎる結果、逆パワハラになる例があります。
それが、部下が「パワハラで訴える」といって、上司が萎縮してしまうケースです。
- 上司の厳しい注意に対し、「パワハラだ」と騒ぎ立てる
- 指導されたくないので「パワハラで訴え、責任追及する」と怒鳴る
- 「会社に内部通報する」と脅す
- 上司への嫌がらせ目的で、部下が注意指導を無視する
部下が権利を主張しすぎ、逆パワハラが起きると、注意指導がやりにくくなります。
上司が萎縮し、消極的になれば、職場の秩序は乱れます。
結果、部下が育たず、ミスも増え、会社の不利益となります。
パワハラだと言われたときの対応も参考にしてください。
部下が集団でする逆パワハラ
部下が弱い立場なのは、あくまで「1対1」の話です。
部下が集団になり、協力すれば、上司よりも強い立場になるケースはよくあります。
問題のある部下が、他の社員をも巻き込んで、逆パワハラを起こす例です。
部下が集団でする逆パワハラの例は、次のケース。
- 部下が、集団で上司の悪口をいう
- 上司を仲間外れにし、会話に参加させない
- 部下全員が、嫌いな上司の指示を集団で無視する
- 上司の身体的特徴を馬鹿にしたあだ名(ハゲ、デブなど)をつける
- 部下が結託し、会社に上司の評価を下げる嘘をつく
また、集団的な逆パワハラは、会社の内部だけにはとどまりません。
例えば、会社の近隣へのビラまき、ネット上の誹謗中傷などによる逆パワハラの例もあります。
集団を巻き込んで行うほど、逆パワハラが上司に与えるダメージは深刻です。
ネット・SNSで会社の悪口を書くケースは、次に解説します。
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逆パワハラを受けたときの対策
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次に、逆パワハラを受けたときの対応を解説します。
部下から逆パワハラを受けた上司は、適切な対策を知る必要があります。
逆パワハラもまた「パワハラ」の一種なので、直後の対応もまたパワハラと同じことがいえます。
逆パワハラの証拠を集める
逆パワハラの対策でも、証拠集めが重要なのは、通常のパワハラと同じです。
どんな対策をとるにせよ、まず逆パワハラを受けたと説明するため、証拠が必要だからです。
逆パワハラが隠れてこっそりされるなら、パワハラの録音が大切な証拠となります。
逆パワハラの被害を明らかにするため、「5W1H」を意識し、メモにまとめておきましょう。
![5W1Hとは](https://roudou-bengoshi.com/wp-content/uploads/2022/04/5w1h.jpg)
証拠集めでは、「部下の正当な権利主張」との区別が必要です。
つまり、部下の言動が「正当な権利主張」の程度を超えて悪質だと、証明しなければなりません。
ハラスメントの証拠集めについて、次に解説します。
会社に相談する
次に、逆パワハラを受けたと会社に相談しましょう。
社長や人事、パワハラ相談窓口などが、適切な相談先となります。
ただし、逆パワハラは、一般のイメージと逆なため理解してもらいづらいことも。
「上司がしっかりすべき」など、逆に注意されてしまう会社だと、適切な対応は期待できません。
パワハラの相談窓口は、次に解説しています。
逆パワハラだと認定してもらう
会社に逆パワハラだと認定してもらえれば、被害の救済を受けられます。
この認定のため、証拠が大切なのは当然です。
逆パワハラだと認定してもらえれば、加害者である部下に、会社が注意をしてくれます。
また、被害がこれ以上拡大しないよう、部下を異動させる対策もあります。
さらに、逆パワハラの程度がひどく、しつこく繰り返されるケースは、懲戒処分や解雇も検討されます。
弁護士に相談する
弁護士なら、逆パワハラの事例でも、その問題性をよく理解してくれます。
法律相談し、弁護士から会社に、警告を発してもらう手が有効です。
逆パワハラは、社内で相談しても理解されづらいもの。
「上司が部下からパワハラされる」とは誰にも理解してもらえず泣き寝入りしている方もいます。
パワハラが社会問題になった当初は、誰も想定しませんでした。
それでも、現在では、部下から上司への逆パワハラは、よく相談を受けるケースとなっています。
自分の扱いが逆パワハラか疑問なら、弁護士の無料相談が活用できます。
部下からの逆パワハラで訴える
逆パワハラといえど、我慢すればうつ病や適応障害など、大きな損害を負ってしまいます。
社内で解決できないとき、労働審判、訴訟など法的手続きに訴えて、責任追及する必要があります。
会社が適切な事後対応をしないなら、安全配慮義務違反の責任があります。
部下だろうと上司だろうと、職場での安全は保障されなければなりません。
労働審判なら、簡易かつ迅速に、逆パワハラ対策を怠った会社の責任を追及できます。
労働審判でも解決できないなら、訴訟へ進みます。
また、会社の責任だけでなく、逆パワハラした加害者も同時に訴えたいときも、訴訟が最適です。
労働問題の解決方法は、次の解説をご覧ください。
![](https://roudou-bengoshi.com/wp-content/uploads/2018/04/soudan-4-300x169.jpg)
まとめ
![弁護士法人浅野総合法律事務所](https://roudou-bengoshi.com/wp-content/uploads/2022/03/asanosougou-zentai.jpg)
今回は、逆パワハラの違法性と対処法について、具体例をまじえて解説しました。
パワハラのうち多数は、上司から部下に対して行われます。
しかし「部下だから弱い」というのは誤りで、少なくともすべてのケースがそうではありません。
IT企業など、最先端の知識、経験が重要視される会社は増え、働き方も多様化。
社会的な流れが、部下から上司への逆パワハラを増加させているのです。
部下から嫌がらせにあっているのは、まったく恥ずかしいことではありません。
逆パワハラの被害に、適切に対応し、正当な権利を主張しないとエスカレートします。
加害者や会社に、慰謝料をはじめ責任追及したいとき、ぜひ一度弁護士に相談ください。
- 逆パワハラは部下から上司への嫌がらせだが、通常のパワハラ同様、違法となる
- 逆パワハラは、一般のイメージと反し、理解されづらく対策が遅れがち
- 社内で相談しても逆パワハラがなくならないとき、証拠を集めて訴えることができる
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