今回は、セクハラの相談窓口の種類と相談方法、注意点を解説します。
「セクハラではないか」と疑問があっても、なかなか相談できない方は多いです。社内で相談して解決できるに越したことはありませんが、逆に人間関係が悪くなり、人事評価を下げるなどの報復を受ける危険もあります。
社長がセクハラしてくるので社内に相談先がない
セクハラが止まらない場合にどこに相談すべき?
そもそもセクハラはデリケートな問題で、「人に相談しづらい」性質があります。とはいえ、誰にも相談せずに黙っていては救ってもらえず、権利を侵害され続けてしまいます。泣き寝入りを防ぐには、セクハラの相談先・相談窓口を知っておく必要があります。
セクハラの相談窓口は、セクハラの程度や態様、状況に応じて、ふさわしい相談先を選択するのが重要です。適切な相談先を利用してアドバイスやサポートを受ければ、セクハラ問題の解決に近づくことができます。
- セクハラの相談窓口は複数あり、それぞれ一長一短なので比較検討が必要
- ふさわしい相談先は、そのセクハラの内容や程度、状況によって異なる
- セクハラを弁護士に相談すれば、慰謝料請求をサポートしてもらうことができる
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セクハラとは
セクハラの相談窓口を選ぶには「どのような言動がセクハラに該当するのか」を知る必要があります。セクハラとは、職場における性的な言動による嫌がらせのことです。単純に性的な言葉を浴びせるセクハラ発言だけでなく、性的行為を拒否したのを理由に解雇や異動、減給、降格といった不利益な扱いをすることも広く含みます。セクハラは社会問題化しており、厚生労働省の統計でも、セクハラの相談件数が年々増加していることが分かります。
セクハラは、大きく分けて「対価型セクハラ」と「環境型セクハラ」の2類型あります。
- 対価型セクハラ
性的関係の要求を拒否したら不利益な処分をするセクハラ。キスや性的行為を要求され、断ると報復に異動や解雇、減給などの不利益を受ける、といったケースが典型例。 - 環境型セクハラ
性的発言などで職場環境を悪化させるセクハラ。オフィス内に卑猥なポスターを貼ったり、悪意のある性的な噂を流されたりなどのケースなど。
対価型、環境型、いずれのセクハラも違法であることに変わりはなく、我慢せずに相談窓口に相談して解決を目指すべき重大な労働問題です。セクハラは古くは「男性が女性に対してする違法行為」というイメージがありますが、多様化の進む現代では男性が被害者になるセクハラや、同性同士のセクハラも増加しています。
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セクハラの相談窓口はどこが適切?
次に、セクハラの相談窓口の特徴を、一覧にして具体的に解説します。
セクハラのトラブルにも様々な種類があり、その相談窓口は、セクハラの程度や態様に応じて選択する必要があります。セクハラ相談先の選定の参考にするため、各窓口の特色を理解しましょう。
社内の相談窓口
まず、軽度のセクハラを中心として、社内の相談窓口について解説します。小さい悩みでも放置せず、まずは社内で相談して解決できないか試みてください。
同僚に相談する
最も身近な相談先が、周囲の同僚です。信頼できる同僚に相談すれば、ストレスや苦痛を和らげられますが、ただの愚痴と取られないよう深刻さを伝える努力が必要です。また、同僚に権限がなくセクハラ問題を解決できなかったり、噂が広まって二次被害になったりなどの危険があります。
直属の上司に相談する
直属の上司はセクハラの現場を目撃していることがあります。監督する立場にあるので、軽度のセクハラなら直属の上司に注意してもらうことでストップできるケースもあります。ただし、注意では止まない悪質なセクハラや、直属の上司が加害者のケースなどは、上司への相談では解決できないばかりか、報復人事などによって悪化するおそれもあります。
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人事部に相談する
人事部は、社内の労働者の扱いについて管轄する部署であり、セクハラ問題の相談先として適任です。起こってしまったセクハラの相談だけでなく、予防や再発防止、「加害者との距離を離してほしい」「加害者に懲戒処分を下して欲しい」といった要望も、人事部に伝えるのが適切です。
社長に相談する
社長は、会社内の最終決定を行うため、セクハラを相談することも可能です。むしろ、社長に相談して解決できないなら、もはや社内での解決は難しいと考えてもよいでしょう。社長自身がセクハラの加害者である場合や、セクハラの深刻さを理解してくれないと分かった場合は、社外の相談窓口を検討するタイミングです。
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社内のセクハラ相談窓口
社内にセクハラ相談窓口が設置されている会社もあります。会社は労働者を健康的で安全な環境で働かせる義務(安全配慮義務)を負い、特に男女雇用機会均等法11条はセクハラ防止に必要な措置を講じることを義務付けているからです。
男女雇用機会均等法11条1項(抜粋)
1. 事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
男女雇用機会均等法(e-Gov法令検索)
これらの義務からして、会社は、相談を受けた場合には、セクハラ被害の拡大を防ぎ、再発を防止するための対策を実施しなければならず、放置することはできません。また、セクハラ相談をしたことを理由に、解雇などの不利益な扱いをするのも違法です。
「安全配慮義務」の解説
行政機関の相談窓口
社内での解決ができないケースでは、社外の相談窓口を検討します。社外の相談先のなかでも無料で利用でき、費用をかけず手軽に問い合わせられるのが、行政機関の相談窓口です。
労働基準監督署
労働基準監督署は、会社の労働法違反を監督する行政機関であり、相談先として真っ先に思い浮かぶでしょう。労働基準法違反などがあれば、労基署は会社に助言指導、是正勧告などを行い、職場環境を改善するよう働きかけてくれます。
ただし、労働基準監督署に対応してもらえるのは、犯罪となる重度のセクハラに限られます。軽度のセクハラだと労働基準監督署は動かないおそれがあります。窓口で相談は聞いてくれても、会社に働きかけをしてくれないなら解決には繋がりません。
「労働基準監督署が動かないときの対処法」の解説
労働局(雇用環境・均等部(室))
各都道府県に設置された労働局の雇用環境・均等部(室)は、男女雇用機会均等法をはじめとした職場における男女平等の問題を管轄し、行政機関のなかでもセクハラの相談に適しています。刑法違反となるほど重度ではないが、均等法違反となる違法なセクハラは労働局に相談すべきです。
「職場の男女差別の例と対応方法」の解説
警察
不同意わいせつ罪(刑法176条)、不同意性交等罪(刑法177条)といった刑法違反の疑いあるセクハラなら、警察に相談することで対処してもらえます。この程度に至ると、もはや労働問題としてでなく、性犯罪として扱うべきだからです。
警察が犯罪として対応する場合には、加害者を逮捕、送検してもらい、刑事罰を科すといった制裁を与えることができます。
その他の行政の相談窓口
その他の行政の相談窓口も紹介しておきます。受付時間内なら電話で無料相談できるメリットがある反面、軽い相談となって解決に繋がらないおそれがあります。
- 女性の人権ホットライン(法務省)
セクハラ被害により精神的苦痛を負った女性労働者が相談すべき、法務省の管轄する相談窓口。 - こころの耳(日本産業カウンセラー協会)
セクハラ問題について、法的解決より心のケアを優先したい、誰かに相談を聞いてほしいときに利用すべき、職場のメンタルヘルスケアを専門とする相談窓口。 - みんなの人権110番(全国共通人権相談ダイヤル)
セクハラ・パワハラ・職場いじめなど、隣接する労働問題が絡み合うとき、人権一般の相談先として法務省が管轄する相談窓口。
労働組合に相談する
セクハラについて労働組合へ相談することも可能です。労働組合は、労働者によって組織されており、労働問題について支援することができます。セクハラに関する相談についても、団体交渉を使って会社と交渉し、労働者の権利を実現するサポートをしてくれます。
「労働組合がない会社での相談先」の解説
弁護士に相談する
セクハラの相談窓口には、それぞれメリット・デメリットがありますが、最も解決力が高いのは、労働問題に精通した弁護士に相談することです。セクハラトラブルを扱った経験の豊富な弁護士なら、セクハラに該当するかどうか、適切な対処法はどのようなものかといった専門的な判断についても、労働者に代わって検討し、今後の流れを示してくれます。
加害者が社長や上司だと、社内の相談窓口で解決できないのは当然、悪質な会社では、何度相談しても無視され、セクハラがなくなりません。このようなケースでは、法的に強制力のある手段を講じ、セクハラを根本から無くすしかありません。弁護士に相談すれば、セクハラの慰謝料を請求して交渉することで、これ以上のセクハラをストップできます。セクハラの慰謝料は、直接の加害者だけでなく、相談をきちんと聞かず、防止する努力をしなかった会社にも請求できます。
弁護士は、均等法違反の軽度のセクハラから、刑法違反の重度のセクハラまで、あらゆる相談に対応することができます。セクハラ被害をどこに相談すべきかわからないときは、相談窓口を選ぶためのサポートも可能です。
「労働問題に強い弁護士の選び方」の解説
セクハラ相談の事前準備
セクハラの相談を効果的に実施するには、事前の準備が不可欠です。事前準備を入念にしておけば、相談を有効活用でき、解決までの期間を早めることができるからです。以下では、社内での解決が困難で弁護士に相談すべきケースを想定して、相談前にすべき準備を紹介します。
証拠を収集しておく
セクハラを相談する勇気の出ない方から、「信じてもらえないのでは」という不安を聞くことがあります。セクハラの証拠を用意しておけば、どの相談窓口でもセクハラ被害を真実味をもって説明でき、主張を信じてもらうことができます。また、労働審判や訴訟といった裁判手続きでの解決を望むならば、証拠が最重要だといってよいでしょう。
セクハラ問題の相談前に集めておきたい証拠は、次の通りです。
- セクハラ発言の録音
- セクハラ行為の録画
- セクハラそのものとなるメールやチャットなど
- セクハラの当時に記載した日記やメモ、スケジュール帳
- セクハラを目撃した同僚の証言
- 医師の診断書(セクハラによる精神的被害を示す)
ただし、悪質なセクハラほど隠れてこっそりと行われるものであり、証拠収集は困難です。そのため、セクハラの性質上、証拠が完璧に揃っている人はむしろ少なく、まずは弁護士に相談して、どのようなものが証拠となるか、その集め方についてもアドバイスを受けるのがお勧めです。
「労働問題を弁護士に無料相談する方法」の解説
事実を整理して時系列メモを作成する
過去のセクハラ被害を振り返り、思い出すのは辛いでしょう。しかし、セクハラについて相談し、解決するには、相談先に事実を把握してもらわなければなりません。
セクハラの相談窓口の多くは、相談時間に限りがあります。たとえ無料相談でも、無限に相談できるわけではなく、整理して伝える必要があります。特に、セクハラの被害に遭うと、心身のダメージが大きく、口頭ではスムーズに伝えきることのできない人も少なくありません。このようなとき事実の整理にお勧めの方法は、時系列のメモを作成して経緯をまとめておくことです。
時系列メモに記録しておくべき事情は、次の通りです。
- セクハラの日時・場所
- 加害者の氏名・役職・被害者との関係
- セクハラ発言の内容
- セクハラ行為の態様・回数・頻度など
- セクハラ被害によって心身の不調を生じた時期
- セクハラ後の診療、通院の回数
- セクハラ被害について会社に相談した時期と相談相手
相談したい内容を整理し、要点を明確にしておくことで、具体的に何が問題なのかを弁護士などの相談者に理解してもらえるようにしましょう。合わせて、どのような対応を希望するのかも明確に伝えるのが大切です。
セカンドオピニオンを活用する
セクハラの相談は、一つの相談窓口に相談して終わりにするのではなく、複数の相談先に相談することで、異なる観点からのアドバイスを得ることができます。
前章の一覧のうち、様々な性質の相談窓口を活用するのはもちろんのこと、弁護士に相談する場合は、セカンドオピニオンを活用して複数の弁護士の見解を聞いておくことが、より良い解決を知る助けとなります。
「弁護士を途中で変える方法」の解説
セクハラの相談を弁護士にすべき理由とメリット
セクハラの被害を受けているのに、「他人には相談できない」と感じる方は少なくないようです。それには以下の理由がありますが、いずれの懸念も弁護士への相談なら払拭できます。
相談しても解決ができないのではないか?
相談者から秘密が漏れて噂になるのでは?
相談したことが仕事の支障にならないか?
数あるセクハラの相談窓口のなかでも、弁護士には他の相談先にはないメリットがあります。悪質性の高いセクハラほど、相談先として弁護士を選ぶのがお勧めです。
弁護士への相談は問題解決力が高い
セクハラの相談窓口のなかでも、解決力が最も高いのが弁護士への相談です。弁護士なら、セクハラ問題について関連する法律に基づき、現状に応じた適切なアドバイスを提供できます。
具体的には、加害者や会社に対する慰謝料請求を手段として、被害回復が可能です。会社が話し合いに応じない場合も、労働審判や訴訟といった裁判手続を駆使し、問題解決をサポートできます。金銭による補償だけでなく、加害者には刑罰による重い制裁を受けてほしいと希望するときにも、弁護士は、労働基準監督署や警察に同行して、適切な処罰をするよう働きかけることができます。
「セクハラの慰謝料の相場」の解説
セクハラ被害者のプライバシーを守ることができる
セクハラは非常にデリケートな問題であり、他人に知られたくないと考えるのは自然です。秘密が漏れたり噂が広まったりすることを心配するのももっともです。同僚や友人に相談するときは、信頼できる人に限るよう、くれぐれも注意が必要です。
弁護士は、法的に守秘義務を負っています(弁護士法23条)。したがって、相談した内容が他人に漏れることはなく、安心して相談することができます。被害者のプライバシーが守られない相談先だとセクハラの二次被害が生じてしまうため、適切ではありません。
「セクハラの二次被害を防ぐ対策」の解説
セクハラから発展した他の労働問題にも対処できる
セクハラについて上司や会社の相談窓口に相談すると、会社から減給や解雇といった不利益な処分を受けるのではないかと恐れる人もいます。これらの処分は理由がなく、違法なのは明らかですが、それでも会社に居辛くなるのを懸念して相談をためらってしまうことがあります。
弁護士は社外の専門家であり、相談することによって職場で不利益を受けることはありません。そして、労働問題に精通した弁護士なら、セクハラ問題の相談に限らず、そこから派生した解雇や残業代、パワハラや労災といった他の問題の相談も聞き、対処することができます。
セクハラを社内で相談して解決できないなら、そもそも会社のコンプライアンス意識は非常に低いといえるでしょう。労務管理のずさんな会社では、セクハラ以外の労働問題が多く隠れている可能性が高いです。
「労働問題の種類と解決策」の解説
まとめ
今回は、セクハラ被害者が利用可能な相談窓口について解説しました。
セクハラは大きな社会問題となっています。その分、セクハラ被害を訴えるための窓口も数多く設置されており、最適な相談先を選ぶのも一苦労でしょう。「相談窓口が多すぎて、どこに相談してよいかわからない」というとき、まずは法律の専門家である弁護士に相談してください。弁護士では必ずしも解決できない相談ケースについては、他の相談先を紹介することができます。
ハラスメント防止委員会を組織し、内部通報窓口を整備するなど、セクハラの根絶に努めるホワイトな会社もありますが、コンプライアンス意識の低いブラック企業だと、残念ながら社長自身がセクハラ体質のこともあります。
社長や上司がセクハラの加害者だと、社内での相談は難しいでしょう。社外に相談先を求めるなら、弁護士への法律相談がお勧めです。
- セクハラの相談窓口は複数あり、それぞれ一長一短なので比較検討が必要
- ふさわしい相談先は、そのセクハラの内容や程度、状況によって異なる
- セクハラを弁護士に相談すれば、慰謝料請求をサポートしてもらうことができる
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【セクハラの基本】
【セクハラ被害者の相談】
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