セクハラ発言の多くは、加害者が、自分の発言に問題があるとは認識していないことで引き起こされるもの。被害者もまた、セクハラ発言だと気付かないケースすらあります。「どのような言葉がセクハラ発言になるのか」を理解することが、セクハラを防ぐのに重要です。
セクハラが社会問題化し、慰謝料請求や犯罪に発展した事件が多く報道されていますが、始まりは、何気ないセクハラ発言がきっかけとなっていることは少なくありません。
嫌だけど、セクハラ発言かわからないので我慢すべき?
被害者が不快ならどんな発言もセクハラになるのでは?
セクハラ発言への理解のなさが、言葉によるセクハラをますます加速させます。セクハラ発言による被害を減らすには、全ての人が、被害に遭ったらすぐ指摘できるよう、また、加害者とならないよう、セクハラとなる発言の具体例を知る必要があります。
今回は、セクハラになる言葉の例を一覧で紹介し、被害に遭ってしまった方、加害者となってしまった方が、セクハラ発言にどのように対処すべきか、労働問題に強い弁護士が解説します。
- セクハラ発言は、身体的接触がなく軽視されがちだが、違法なセクハラ行為
- セクハラ発言には様々な種類があるが、グレーゾーンもある
- セクハラ発言となる言葉の例を知っておけば、セクハラの防止につながる
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セクハラ発言とは
セクハラは、セクシュアルハラスメントの略であり、職場内での性差別的な発言、性的な言動による嫌がらせのことです。
セクハラには種類がありますが、なかでも最もよく起こるのが「セクハラ発言」、つまり、言葉によるセクハラです。身体的な接触のあるセクハラだけではなく、言葉によるセクハラも不適切であることを理解すべきです。セクハラ発言の段階で被害をストップさせないと、損害賠償の対象となる重度のセクハラや、犯罪に繋がるおそれもあります。
以下では、セクハラ発言の基本的な知識と、その重大性について解説します。
セクハラ発言は「軽度」とはいえない
セクハラにあたる言動には、発言によるセクハラと、具体的な行為を伴うセクハラがあります。ボディータッチや肉体関係の強要といった行為を伴うセクハラが不適切なのは明らかですが、セクハラ発言だと、「言葉だけだから」といって軽視されることがあります。
しかし、セクハラ発言は、決して軽度のセクハラではありません。むしろ、セクハラ発言は、加害者が無意識に起こしてしまいやすいため対策が難しく、被害者すら気付かないうちにダメージを負ってしまうこともあります。発言だけでも、継続的に、執拗に繰り返されれば不快感は増幅し、被害者に与えるストレスや負担は決して軽視できません。
「セクハラ問題に強い弁護士に相談すべき理由」の解説
セクハラ発言の被害者は女性に限らない
「セクハラ」は典型的には、男性から女性への性的な嫌がらせが問題視されがちですが、セクハラ被害は女性に限るものではありません。男性もまた被害者となるケースがありますし、同性同士の性的な嫌がらせや、LGBTに対する性差別的な言動もまた、セクハラ問題の一つです。
男性から女性へのセクハラは、肉体関係の強要のように身体的な力の差を利用する事案をイメージしますが、セクハラ発言は、力の大小にかかわらず行える「言葉の暴力」。そのため、セクハラ発言の被害者は、性別に関わらず発生しています。性的マイノリティに対する性差別、差別発言についても、気付かずに行ってしまう人もいます。
「セクハラの相談窓口」の解説
セクハラ発言になる言葉の例【一覧】
次に、セクハラになる発言や言葉について、具体例や実例をまじえ、詳しく紹介します。長くなりますが、発言集・事例集として、できるだけ網羅的に、一覧で解説します。
執拗に食事へ誘いをかける発言
上司と部下、同僚同士など、食事にいく機会はよくあるでしょうが、誘う際の何気ないやり取りもセクハラ発言になることがあります。社内の人間関係を良くしたいだけで他意はなかったと反論しても、特定の人のみを執拗に食事に誘う言葉は、セクハラ発言になるおそれがあります。
- 「仲良くなるために毎日一緒にランチにいこう」
- 「ディナーデートにいこう」
- 「2人でゆっくりしたいな」
- 「しっぽり一杯いこうよ」
- (相手が断ってきても)「いつなら食事いけるの?」
- (夜遅い時間に)「遅めだけど、今から食事いかない?」
- 「○○ちゃんは特別にランチおごってあげる」
誘われる被害者側からすれば、「性的意図があるのでは」と不快に感じるケースも十分に考えられます。特別扱いされると、(特に社内だと)嬉しいという気持ちよりもむしろ、「見返りを期待されているのでは」「下心があるのでは」という疑惑が強くなってしまいます。
執拗にデートへ誘う発言
社内恋愛から社内結婚へ発展するケースは珍しくないですが、それはうまくいったときの話。嫌がっているのにゴリ押しすれば、いきすぎた好意は、セクハラ発言でしかありません。
- 「土日のどっちかあいてたら会わない?」
- 「今度、温泉デートしよう」
- 「嫁にないしょでしっぽり泊まりにいかない?」
- 「俺とかどう?タイプじゃない?」
泊まりデートに誘う言葉は、性的関係を容易に連想させるセクハラ発言です。既婚者は特に、不倫になってしまうため、社内の人とのデートそのものが不適切です。社長や上司から誘われると、地位や人間関係を理由に、はっきりと拒否できずにエスカレートすることも多いです。
「社内不倫を理由とする解雇」の解説
ボディータッチをまじえた呼びかけ
どれほど仲良くなったと感じても、なれなれしい対応は禁物。相手があわせてくれていたり、愛想よく振る舞っているだけの可能性もあります。
「呼びかけても反応しないので肩を叩いた」「どいてほしかったので腕に触れた」など、接触をする理由付けをする加害者もいますが、節度をわきまえた言葉でも伝えることができます。したがって、ボディータッチをまじえたなれなれしい対応は、セクハラ発言になります。
- 「(肩を組みながら)ねぇねぇ、○○ちゃ〜ん」
- 「(狭いスペースで)ちょっと後ろ通りますね〜」
- 「(ツンツンつつきながら)ねぇ〜聞いてる?」
何気なくしていた言動も、回数が増せば「わざと触られた」と性的意図を感じさせ、不快なセクハラ発言になります。
性的なことを尋ねる質問
性的なことを、異性に対して執拗に質問する人がいますが、セクハラ発言になります。質問形だと、命令口調よりも柔らかく感じて、問題意識を持てなくなっている人は特に注意が必要です。
- 「最近、いつエッチしたの?」
- 「○○ちゃんの初体験はいつ?早い?」
- 「もしかしてまだ処女なの?うぶだね〜」
- 「いつも彼氏とどんなエッチしてるの?」
- 「お前らちゃんと子作りにはげんでるか〜?」
これらの質問はどれも軽い気持ちでされていますが、された側ではたまったものではありません。事実がどうだったとしても答えたくない質問はありますし、「お前に聞かれたくないよ」と心の中で不快感が溜まっていきます。
宴会での卑わいな発言
酒が入ると、下世話な話題や卑わいな発言で盛り上がることがありますが、時と場合をわきまえましょう。仕事に関係する場ではすべきでない話題もあると心得ておいてください。
- 下ネタばかりいう
- 宴会の余興が、全裸になるなど、性的なことを連想させる
- (職場の人のいる席で)「昨日の夜、ワンナイトラブしてさ」
- 「マッチングアプリでやりまくってるよ」
- 「2人で二次会にいって、その後ホテルいこうよ」
女性がいる職場では、卑わいな発言は不適切で、セクハラ発言になりやすいもの。その場では笑って過ごしてくれても、当然居心地は悪いでしょうから、異性の立場に立って「その話題は心地よいか」を考えなければなりません。アルコールが入るとつい気が大きくなって、不用意なセクハラ発言をしがちな方は注意してください。
「飲み会でのセクハラ」の解説
職場での下ネタ発言
職場は、仕事をする場所であり、プライベートとは区別する必要があります。多少の私語はあったとしても無駄話は控えるべきで、ましてや、その無駄話が異性にとって不快な言葉だと、セクハラ発言になってしまいます。
- 職場のみんながいる前で、下ネタをいう
- 「昨夜は、女とひと晩中激しかったよ」
- グラビアアイドルのポスターを貼る
- アニメキャラのセクシーなフィギュアを席に置く
職場で公然と、性生活を赤裸々に語ったり、卑わいな発言をしたりすることは、男女いずれでもセクハラ発言。無意識なセクハラ被害を生む典型例なので、注意が必要です。
性的な噂話を広げる発言
痴情のもつれや嫉妬心から、性的な噂話を広げてしまう言葉は、セクハラ発言です。
- 「あいつは浮気しているらしい」
- 「○○くんは社内で何人か食ったってさ」
- 「二股かけてるらしい」
- 「淫乱だ」「ビッチらしい」「酔ったらヤらしてくれるらしいよ」
悪評が社内に流れると、セクハラ被害者は居づらくなりますから、嫌がらせであり、セクハラなのはあきらかです。
「職場いじめの事例と対処法」の解説
性的な魅力をほめる発言
ほめているつもりでも、そのほめ方が性的な方向に向いていると、褒め言葉でも相手を不快にさせるセクハラ発言になります。わざわざ社内で好意を示されても、喜んでくれるとは限りません。
- 「かわいいね」「きれいだね」
- 「色気がある」「セクシーだね」
- 「グラマー」「出るとこ出てるね」「スタイル最高」
- 「○○ちゃんは、いいにおいがするね」
- 「髪がさらさらしていてさわりたくなる」
性別や年齢をことさら指摘する発言
年齢を気にしている人は多いもので、性別の差も相まって「女性だから活躍できていないのでは」といった不安を抱えている人も多くいます。そのため、性別や年齢をことさらに指摘すると、セクハラ発言にあたります。
- 「若い女のくせになかなかやるね」
- 「女みたいな根性なしだな」
- 「女のくせになまいきだ」「男のくせにまったく力がないな」
- 「そろそろはらまないと、高齢出産になっちゃうよ」
「ジェンダーハラスメント」の解説
外見や身体的特徴への発言
外見や身体的特徴のなかには、自分の努力ではどうしようもないものもあります。そのため、外見や身体的特徴についてことさらにとりあげる発言は、不快な思いをさせるセクハラ発言です。
- 「口臭がする」「臭い」「○○菌がうつる」
- 「貧乳」「ペチャパイ」「牛みたいな乳」
- 「スリーサイズ教えて」
- 「おっぱいおっきいね〜、何カップなの?」
- 「安産型でよかったね」
容姿や服装をいじる発言
容姿や服装は、外見や身体的特徴よりは変更しやすいですが、職場でどう見られるかで決めたくないものでしょうから、ことさらに言及すれば、やはりセクハラ発言となります。女性の服装は、趣味嗜好の表れであり、社会人として常識的な範囲であれば、指摘すべきではありません。
- 「スカート短すぎない?パンツみえそうだよ」
- 「おっぱい強調してるね〜」
- 「今日はおめかししてるけど、今夜デート?」
- 「肌荒れひどいけど、寝れてないの?」
- 「最近肌がつやつやしてるけど彼氏とお盛んなの?」
- 「メイクが濃すぎる」
異性に対する差別的な言葉
社内では、異性に対して、敬意をもって接しなければなりません。俗語やスラングのなかには、異性への差別的な意味を持つ言葉もあるため、使わないように気をつけましょう。
- 「おじさん」「おばさん」「ジジイ」「ババア」
- 「デブ」「ブス」「ハゲ」
- 「クソババア」「クソジジイ」
- 「中年おやじ」「頑固親父」
- 「お局さん(おつぼねさん)」
私生活に踏み込む発言
職場と私生活は区別すべきで、プライベートな話題には慎重であるべきです。職場で私生活について発言する言葉、特に、プライベートな性生活についての言葉は、セクハラ発言になります。
- 「昨日嫁といっぱつやってさ」
- 「俺はいままでたくさんエッチしてきたから」
- 「彼氏いるの?」「彼氏とは毎晩してるの?」
- 「いつ結婚するの?」「子どもほしいなら早く結婚しなきゃ」「まだ結婚できないの?」
- 「30歳すぎて結婚してないなんで、どこかおかしいところあるんじゃないか」
- 「子ども生む予定あるの?」
性生活の詮索については、男女によって不快に感じる度合いが異なります。そのため、相手の性生活を探る言葉はもちろん、自分の性生活をひけらかすのもセクハラ発言になります。
「会社のプライベート干渉の違法性」の解説
性的な冗談、性的ないじり
冗談をいったりいじったりすることは、人間関係を円滑にするために大切な側面はあります。しかし、性的な観点からする冗談やいじりは、セクハラ発言となってしまいます。
- 「イライラしてるけど、生理?(笑)」
- 「○○さんの説教は、更年期障害だな(笑)」
- 「俺と性欲発散しない?(笑)」
ちゃん付け、くん付け
職場の人間関係は、友達とは違いますから、気安すぎると不用意な発言をまねきます。女性社員への「ちゃん付け」、男性社員への「くん付け」はいずれも敬称として適切でなく、相手を軽んじる発言。被害者が不快に思えば、セクハラ発言となります。
- ちゃん付け、くん付けをする
- 「事務のおねーちゃん」、「お茶くみの女の子」
職場で異性を呼ぶとき、上司や同僚だけでなく、部下でも、尊敬をこめて「さん付け」にしてください。このような呼び方は、昔は許されたかもしれませんが、男尊女卑的なイメージがあります。世代間ギャップが、「ちゃん付け」「くん付け」というセクハラ発言の原因となることもあります。
「職場の男女差別の例と対応方法」の解説
【加害者側】セクハラ発言をしないための対応と回避策
セクハラ発言によるトラブルは、加害者側の無自覚、無意識によって引き起こされることが多いです。セクハラ発言による問題を深刻化させないためにも、対応と回避策を解説します。
どこからセクハラ発言なのか、グレーゾーンに注意
セクハラ発言は、身体的接触によるセクハラよりも、「どこからセクハラか」という境界線が曖昧になりやすい性質があります。
身体的接触があれば、「触ったらセクハラ」というように、誰でも明確に判断できる基準があります。これに対して、セクハラ発言の場合、時と場合によっては、同じ言葉が発されてもセクハラに当たらない場合があります(例:ほめ言葉が、嫌いな人に言われればセクハラ発言、好きな人に言われれば嬉しく感じるケース)。つまり、違法とされるセクハラ発言の周辺には、広いグレーゾーンがあり、判別が非常に困難なのです。
とはいえ、曖昧だからといって「グレーゾーンを狙って、できるだけセクハラ発言にならないよう、際どい発言をしよう」といった意識では、トラブルを拡大してしまいます。できる限りの安全策を取って、セクハラ発言に当たらないように注意するのが正しい対処です。「かわいいね」「きれいだね」などといった好意の示しすぎも、「気持ち悪いと思われる可能性があるのでは」といったリスクを回避する意識をもって行動をすべきです。
「労働問題を弁護士に無料相談する方法」の解説
セクハラ発言にならない言いかえ表現を知る
セクハラ発言に該当しないようにするには、社会人マナーとしてふさわしい言いかえ表現を知っておくのも大切です。明らかな性差別発言は別として、セクハラ発言のなかには、ほんの少しの配慮によって、適切な言い方に変えられるケースもあります。
セクハラ発言にならないための適切な言いかえ表現には、次の例があります。
- 食事へ誘うなら「みんなで食事にいきましょう」
- どうしても聞かなければならないプライベートに関する質問は、育休・産休など、法的な制度のために必要であることを前置きする
- ほめるときは、外見・容姿ではなく、仕事ぶりやがんばり、態度をほめる
- 男性、女性のどちらかにしか通用しないほめ言葉は使わない
また、発言と共にする行動にも配慮が必要です。用事があるときなれなれしくさわるのでなく、相手の正面に回ること、声をかけ、相手の考えを聞くことといった誠実な態度を心がけましょう。
「セクハラの加害者の対応」の解説
【被害者側】セクハラ発言を受けたときの対処法とかわし方
セクハラ発言の実例を知れば、言葉によるセクハラの被害を我慢せずに済みます。セクハラ発言の標的にされてしまったとき、被害者がどのように対抗すべきか、もしくは、かわして受け流すべきかを解説します。
セクハラ発言を明確に拒否する
セクハラ発言の問題点は、発言した加害者が、セクハラだとはあまり認識していないこと。早いうちに被害者の側から、不快であると強く伝え、気付かせなければなりません。
セクハラ発言を放置すれば、被害は加速し、「あの子は(性的な話題は)問題ないのか」と思われ、周囲の社員にも無自覚なセクハラ加害が広がってしまいます。強く指摘するのは辛いでしょうが、冗談っぽく伝えるだけではふざけていると思われ、正確に伝わらないこともあります。上下関係や職場の雰囲気が理由で直接伝えるのが困難なら、弁護士を通じて警告を送る方法もあります。
「労働問題に強い弁護士の選び方」の解説
会社・加害者に慰謝料を請求する
セクハラ発言は、被害者の名誉を害し、精神的な苦痛を与える違法行為です。社内で話し合ってもセクハラ発言がストップしなければ、社外で、すなわち、裁判所で解決するほかありません。
セクハラが不法行為(民法709条)なら、これによって受けた名誉侵害や精神的苦痛は、慰謝料を請求できます。また、性的関係を強要されるなどして身体的ダメージを受けたとき、治療費などの損害も賠償請求できます。
このとき、直接の加害者の責任はもちろん、会社の責任も問うことができます。セクハラ対策が不十分なものだと、安全配慮義務違反を理由に、会社にも損害賠償請求できるからです。事前のセクハラ防止だけでなく、横行するセクハラ発言を放置していたことや、相談窓口に連絡したのに、注意指導するなどセクハラ発言を止める努力をしなかったことなども、会社の責任は重大です。
「セクハラの慰謝料の相場」「安全配慮義務」の解説
セクハラ発言が罪になるなら、告訴する
無理やり性交渉をすれば不同意わいせつ罪(刑法176条)、不同意性交等罪(刑法177条)になりますが、セクハラが発言だけにとどまるケースでも、罪になるレベルの悪質なものもあります。言葉によるセクハラでも、名誉毀損罪(刑法230条)、侮辱罪(刑法231条)といった犯罪になる可能性があるからです。また、執拗なセクハラ発言をともなう言動は、つきまとい行為としてストーカー規制法違反となり、警察に対処してもらえるケースもあります。
刑事処罰を望むときは、警察と協力し、被害届を提出したり、告訴したりする方法がおすすめです。
「犯罪になるセクハラの対応」の解説
セクハラ発言となる言葉への対応の注意点
最後に、セクハラ発言となる言葉に対処するとき、注意しておくべきポイントを解説します。
セクハラ発言を防止するのは会社の義務
男女雇用機会均等法という法律は、職場におけるセクハラ対策措置を会社の義務としています。講じるべき具体的なセクハラ対策は、いわゆるセクハラ指針(厚生労働省「労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針」)に詳しく定められています。
男女雇用機会均等法11条
1. 事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
2. 厚生労働大臣は、前項の規定に基づき事業主が講ずべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(次項において「指針」という。)を定めるものとする。
男女雇用機会均等法(e-Gov法令検索)
発言によるセクハラは、加害者が無意識に、しかも連続して行うケースが多く、監視が難しいです。周囲は、軽い言動だろうと気に留めていなくても、本人は傷ついていることも。セクハラ発言のケースこそ、日頃からの「セクハラ発言は絶対に許さない」という指導、教育、啓発が重要です。
セクハラ発言は、対価型か、環境型か
男女雇用機会均等法、セクハラ指針は、セクハラを「対価型」、「環境型」の2種類に分類しています。
セクハラの2分類は、どのような行為がセクハラか理解するための分類で、いずれもセクハラ対策の必要性は変わりません。
- 対価型セクハラ
解雇や減給など、労働条件の不利益な変更をチラつかせ、性的な発言やボディータッチに逆らえないようにしたり、性的関係を強要したりするセクハラ(性的関係を拒まれたことへの報復として、セクハラ被害者の労働条件を、実際に不利益に変更することも、対価型セクハラの一種) - 環境型セクハラ
職場内に卑わいなポスターを貼ったり、わいせつな物を持ち込んだりして、快適な職場環境を害するタイプのセクハラ
発言によるセクハラでも、その発言が、肉体関係など「見返り」を求めるものなら「対価型」、被害者の労働環境を悪化させるセクハラ発言なら「環境型」にあたります。
いずれもセクハラであることに変わりなく、違法です。どちらかの類型にしっかりとはあてはまらないセクハラ発言も、性的な不快感を与えればセクハラのおそれがあります。
「労働問題の種類と解決策」の解説
まとめ
今回は、発言によってされるセクハラ、つまり、セクハラ発言について、具体的な発言や言葉を一覧にして紹介しました。セクハラ発言の被害を受けた方はもちろん、セクハラ加害者だと指摘されてしまった方も、自身のケースがセクハラ発言なのか、判断する参考にしてください。
セクハラになる発言の例を列挙すればきりはなく、今回示した例もあくまで「氷山の一角」といってよいでしょう。その周辺には広いグレーゾーンが存在しますが、典型例を知れば、「無自覚なうちにセクハラ加害者になってしまった」「不快だがセクハラ発言かどうか不明なので我慢してしまった」といったトラブルを減らすことができます。
セクハラ発言による被害を減らすには、意図しないセクハラを生み出す可能性のあることをよく認識し、振る舞いに気をつけなければなりません。セクハラ発言が、もっと深刻な被害の始まりになりかねないことをよく理解し、初期の段階で弁護士に相談するようにしてください。
- セクハラ発言は、身体的接触がなく軽視されがちだが、違法なセクハラ行為
- セクハラ発言には様々な種類があるが、グレーゾーンもある
- セクハラ発言となる言葉の例を知っておけば、セクハラの防止につながる
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【セクハラの基本】
【セクハラ被害者の相談】
【セクハラ加害者の相談】
- セクハラ加害者の注意点
- セクハラ冤罪を疑われたら
- 同意があってもセクハラ?
- セクハラ加害者の責任
- セクハラの始末書の書き方
- セクハラの謝罪文の書き方
- セクハラ加害者の自宅待機命令
- 身に覚えのないセクハラで懲戒処分
- セクハラ加害者の退職勧奨
- セクハラで不当解雇されたときの対応
- セクハラで懲戒解雇されたときの対応
- セクハラの示談
【さまざまなセクハラのケース】
パワハラ発言になる言葉についても参考にしてください。