労働問題弁護士ガイドとは?

セクハラで訴える流れは?会社が対応してくれないとき裁判すべき理由

今回は、裁判せざるをえないセクハラで、訴える流れについて労働問題に強い弁護士が解説します。

不幸にもセクハラ被害にあってしまった方は、裁判によって慰謝料を請求できます。
このとき、セクハラ加害者はもちろん、会社をもセクハラで訴えられます。
セクハラ加害者に大きな責任があるのは当然ですが、会社もまたセクハラのない安全な環境で働かせる義務(安全配慮義務)に違反しているときはセクハラの責任の一部を担うからです。

しかし、労働者が個人で、セクハラを裁判で訴えるのは、とても難しいこと。

相談者

セクハラで訴えたいけど、裁判は弁護士に任せたい

相談者

セクハラで訴えるのにどんな証拠が必要なんだろう

こんな疑問は、セクハラ裁判を弁護士に相談すれば解決できます。
セクハラの被害者となると、とてもつらいでしょう。
加害者や会社に、慰謝料請求できるときにも、会社から相手にされないと、あきらめてしまいがち。

会社がセクハラを放置し、対応してくれないときほど、強制的な解決には裁判が必要。
会社と加害者を訴える方法で責任追及すれば、根本的な解決が目指せます。

なお、「訴えられた」という加害者の解説は、以下へお進みください。

この解説のポイント
  • 悪質なセクハラは会社に対応してもらいづらく、裁判での解決がおすすめ
  • セクハラで訴えるには、「訴えの提起」から「判決」までの流れを知る
  • セクハラで訴え、裁判を有利に進めるには、証拠の準備が大切

\ 「今すぐ」相談予約はコチラ/

目次(クリックで移動)

解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

\相談ご予約受付中です/

会社が対応してくれないセクハラは、裁判に訴える

セクハラ問題といえども、解決するための方法はさまざま。
基本的には、まずは話し合いを求め、それでも解決しないときに、労働審判、裁判といった法的手続きに移るという流れが通例です。

解決方法のなかでも、裁判は「最終手段」。
セクハラを争う裁判は、事実認定が大変でとても長期間かかるおそれがあるからです。
まずは話し合い、交渉で解決できるならそれに越したことはありません。

しかし、セクハラ被害にあったと会社に相談しても、対応してくれないケースもあります。
会社としても、社内でセクハラのトラブルが起こっているとは認めたくないとか、責任を負いたくないなどの思いから、もみけそうとしたり放置したりするケースも。
「社長がセクハラの加害者」という例もあり、社内の交渉だけでは解決できないセクハラもあります。

セクハラの解決方法
セクハラの解決方法

悪質、かつ、解決困難なセクハラ問題は、裁判に訴えて解決するしかありません。
セクハラ被害にあったとき、裁判に訴えるのがよいか、それとも話し合いの余地があるかは、事案によって検討しなければならず、難しい判断です。
判断を誤って、裁判に訴えるのが早すぎると、結果的に時間とお金を浪費するおそれがあります。

次のような判断基準を参考にしてください。

  • セクハラの回数・期間など
    セクハラの回数が多く、長期間続くほど、裁判による解決に向いています。
  • セクハラの悪質性
    セクハラが悪質で、精神的苦痛が大きいほど、裁判による解決を急ぐべきケースです。
  • セクハラへの会社の対応
    会社がセクハラ予防、再発防止に消極的な場合、裁判に訴えてプレッシャーをかけ、適切な対応を求めます。

なお、セクハラの時効を意識し、早めに訴えるようにしてください。

セクハラを裁判で訴えるべき例

次に、裁判に訴えるべきセクハラトラブルのケースを、例をあげて解説します。

「裁判に訴える」というと、とても深刻で、大げさに聞こえるかもしれません。
しかし、実際には、セクハラ問題で裁判に訴えたほうがよい例は、思いのほか多いものです。

セクハラに耐えきれず退職した例

セクハラに耐えきれず、退職せざるをえないとき、裁判に訴えるべき例の典型です。
退職せざるをえない状況に追い込まれるのは、セクハラが悪質で、被害が大きいと考えられるからです。

裁判に訴えたときには、「耐えきれず退職した被害者の損害は大きい」と考えてもらえます。
裁判であれば、慰謝料とあわせて、本来働けばもらえたであろう給料(逸失利益)も請求できます。

犯罪となる悪質なセクハラの例

セクハラ行為が、強制性交等罪、強制わいせつ罪といった犯罪にあたる場合、悪質性は甚大です。
セクハラ加害者を逮捕してもらえるケースです。

このとき、刑事罰があるのはもちろん、裁判で認められる慰謝料も高額です。
犯罪となるセクハラは裁判で訴えるべき例だといってよいでしょう。

継続的なセクハラが止まらない例

セクハラが、複数回、かつ、長期間続くケースは、裁判をしなければ止まらないおそれがあります。
1つの行為は小さくても、継続すればそれだけ精神的苦痛が大きくなり、慰謝料も高額化します。

本来は、セクハラ問題は、会社に相談して、予防策をとってもらうべきです。
しかし、会社が相手にしてくれず、話し合いでの解決が困難なら、裁判に訴えるべき例といえます。

セクハラ加害者の地位、役職が上なほど、会社が対応してくれづらいもの。
不当な権利侵害に、我慢する必要はありません。

セクハラを訴えるときの流れと、訴え方

セクハラ被害者が、加害者や会社に慰謝料請求したければ、裁判手続きの流れを知る必要があります。
そこで次に、セクハラを訴えるときの流れと、訴え方を解説します。

セクハラの訴状を書く

まず、セクハラを裁判に訴えるためには、訴状が必要です。
訴状とは、あなたの受けたセクハラ被害の内容、程度、求める慰謝料など、あなたの要求を示す書面。
訴状と証拠を裁判所に出すことで、訴訟をスタートできます

セクハラの訴状の書き方としては、次のことを記載します。

  • 原告の氏名・住所
  • 被告の氏名(加害者)、法人名(会社)・住所
  • 請求の趣旨(請求する慰謝料の額など)
  • 請求の理由(セクハラの内容、程度など)

セクハラの訴状は、裁判所のサイトにある民事訴訟の申立て書式が参考になります。

セクハラ裁判を提起する

訴状を作成したら、必要書類とともに裁判所に提出して、裁判を起こします。
裁判を起こすことを、法律用語で「訴えの提起」といいます。

訴訟提起のとき、必要となる書類などは、次のとおりです。

セクハラ加害者とともに、働いていた会社を訴えるときは、会社の商業登記簿謄本を提出します。
また、弁護士を依頼するときには、あわせて訴訟委任状を提出しなければなりません。

訴状などの提出先は、被告の住所地(加害者の住所地、もしくは、会社の所在地)を管轄する裁判所です。
請求する金額が140万円以下なら簡易裁判所、140万円を超えるなら地方裁判所に提出します。
東京など、大規模な裁判所には「労働部」が設置され、労働問題に詳しい裁判官により、専門的な審理を受けることができます。

第1回口頭弁論期日

訴状が受理されると、第1回の期日が調整され、原告・被告双方に、期日呼出状が送られます。
第1回の期日は、口頭弁論期日といって、裁判所の法廷で審理が行われます。

被告となるセクハラ加害者や会社には、期日前に訴状が送達され、期日の1週間前を目安にして、答弁書を提出することで反論をします。

弁論準備による争点整理

第1回期日が終わると、2回目以降の期日は、弁論準備期日となるのが一般的です。
弁論準備期日とは、法廷ではなく、裁判官室の隣にある弁論準備室で行われる、より詳細な審理のこと。

セクハラ問題は、プライバシー性が高いため、弁論準備により争点整理することが多いです。
セクハラ被害者、セクハラ加害者の主張、反論を整理し、裁判官が、争いのある点をあきらかにします。

争点整理では、セクハラ被害者と加害者の認識が異なる点をまとめ、証拠の有無を確認します。
裁判所の争点整理に、きちんと協力することで、迅速な救済を目指します。

証拠調べ

争点整理の結果、セクハラの被害者と加害者で、事実関係が争いとなるとき、証拠が必要です。

争いとなった事実について、その事実が存在すると主張する側が証明するのが基本。
したがって「セクハラはなかった」と反論されると、セクハラ被害者側で、証拠を準備しなければなりません。

証人尋問

書証を法廷で取り調べた後、必要に応じて、証人尋問が行われます。

証人尋問は、セクハラの被害者、加害者はもちろん、目撃者の取り調べをするケースもあります。
残念ながら物証の少ないケースでは、証人尋問が特に重要な地位を占めます。

和解

裁判のいずれの段階でも、和解によって解決することもできます。
裁判所は、和解に適していると考えるとき、心証を開示し、当事者に和解を勧めることがあります。

とはいえ、裁判に訴えているセクハラ問題は複雑でしょうから、和解による解決は簡単ではありません。
会社や加害者も、反論が多く、和解の話し合いは難航するおそれがあります。

判決

審理が終結し、和解も難しいときは、裁判所が判決を下します。

判決が確定すると、セクハラ問題に関する権利関係を、終局的に決定します。
原告、被告のいずれも、判決に不服のあるとき、2週間以内に控訴できます。

確定した判決に定められた慰謝料などが払われないとき、強制執行(財産の差押え)することができます。

セクハラを訴えるとき役立つ証拠

セクハラの証拠
セクハラの証拠

セクハラ裁判を有利に進めるため、準備しておきたい証拠について解説します。
継続的なセクハラにあっている最中の方は、今のうちから証拠集めを徹底してください。

セクハラの事実を認めない加害者や会社から、裁判で慰謝料をもらうためには、証拠が重要です。
セクハラ訴訟では、裁判所は証拠を重視しますが、このとき「セクハラがあった」という事実は、セクハラ被害者の側で証明しなければならないのが基本です。

セクハラを裁判に訴えて解決せざるをえないケースとは、話し合いが不調に終わった例。
つまり、加害者や会社が強硬で、セクハラを否認している例も珍しくありません。

セクハラの録音・録画

セクハラは、加害者の発言や行為として行われます。
このとき、客観的な証拠を残す方法は、録音・録画が一番です。

具体的には、ボイスレコーダーやスマホの録音アプリを常備し、セクハラがあったら録音します。
セクハラはいつ起こるかわからないため、セクハラされそうなら常に録音しておくのがよいでしょう。

セクハラ被害者が、加害者の承諾を得ずにこっそり録音しても、証拠として有効です。
むしろ、セクハラするような人が、録音に同意するわけもありません。

ハラスメントの録音は、パワハラと共通の問題ですから、次の解説も参考にしてください。

セクハラ加害者とのメールやLINE

セクハラ加害者との間でやりとりしたメールやLINEも重要な証拠となります。

そのメールやLINEの内容、送信頻度などがセクハラにあたることもあります。
性的表現やひわいな写真を送りつけるケースや、執拗なデートの誘い、交際の強要といった例です。
加害者が、メールやLINEでセクハラしたことを認めて謝罪しているとき、それらも証拠になります。

交渉で一度はセクハラを認めても、裁判に訴えられると怖くなり、否認してくる人もいます。

セクハラ被害者の日記やメモ

セクハラ加害者が、意図的に隠れてセクハラしてくるとき、被害者も証拠を残す努力が必要です。

セクハラ被害者の努力で作れる証拠として、被害状況を日記に書き留めておく方法があります。
このとき、セクハラの事実だけでなく、その他の日常的な出来事も書いておくと、信用性が上がります。

セクハラのあった日だけでなく、その他の日も継続的につけておけば、裁判でも重要な証拠となります。

セクハラの目撃者の証言

セクハラが社内で公然とされていたときは、他の社員が目撃していることもあります。
目撃者の証言は、セクハラ事案において、裁判で重要な証拠になります。
このとき、証人尋問で、セクハラ被害をあきらかにするため、目撃者に連絡し、記憶しておいてもらうなど協力を求めておきましょう。

ただし、セクハラで、会社に対して裁判したいとき、まだ社員として勤務する人の協力は得づらいもの。
目撃者も、我が身のほうが大切ですから、会社を敵に回すあなたに協力してくれない可能性があるからです。

診断書

最後に、セクハラの事実の証拠とともに、セクハラの被害の証拠も大切です。

セクハラを原因としてうつ病、適応障害などの精神疾患にかかったとき、その症状を証明する証拠として、医師の診断書をとっておいてください。
裁判のときになってはじめて診断書をとっても、セクハラ行為に近接した時期の診断書でなければ、その症状の原因がセクハラだとは証明できなくなってしまいます。

証拠がなくてもセクハラで訴えるには

セクハラは、こっそり隠れてされるのが普通なので、証拠が十分に用意できないこともあります。
しかし、セクハラ被害が事実ならば、証拠がないからといって裁判に訴えるのをあきらめる必要はありません。

残念ながら、セクハラは、その性質上証拠に残りづらいもの。
悪質なセクハラ加害者ほど、バレないように陰湿にやろうとするため、「証拠がなければ勝てない」なら、違法性の強いセクハラほど救済が難しくなってしまいます。

証拠がないからと、セクハラ被害をあきらめてはなりません。
証拠がなくても、セクハラで訴えるには、あなた自身の証言がとても大切になります。
証拠があるときはもちろん、証拠がないときは特に、過去の記憶を喚起し、裁判所に説得的に伝えられるよう、入念な準備が必要となります。

証拠がないセクハラ事案で、裁判に訴えるため準備すべき点は、次のとおりです。

  • セクハラを受けた当時の記憶を、できるだけ具体的に思い出す
  • セクハラを受けた日時、場所など「5W1H」を意識する
  • セクハラ言動について、詳細に思い出す
  • 当時のカレンダー、スケジュール帳を見て、矛盾がないか確認する
  • 残っている客観的な証拠と矛盾のないよう、記憶を洗い直す
  • セクハラについて思い出したことを時系列でメモにまとめる
5W1Hとは
5W1Hとは

これらの準備はいずれも、証人尋問となったとき、あなたがセクハラ被害について、裁判所に考慮してもらいやすいように証言するための準備です。
客観的な物証がない以上、証言がとても重要となります。
証拠がなくてもセクハラで訴えるには、的確な証言をすることが最重要となるのです。

事実の認識が食い違うケースでは、有利な解決のために次の解説を参考にしてください。

セクハラを訴えるときかかる費用

セクハラで訴えるとき、デメリットとして費用がかかることを理解しなければなりません。
セクハラで訴えるときにかかる費用には、訴訟費用と弁護士費用がありますが、いずれも、話し合いで解決していれば払う必要のなかった費用です。

悪質なセクハラの被害にあい、さらに費用で損してしまわないよう、安く抑える工夫も必要です。

  • 訴訟費用
    裁判に訴えるためには、裁判所に訴訟費用を払う必要があります。
    訴訟費用は、訴える側(原告)が、印紙を訴状に貼り付けて払います。
    セクハラ慰謝料の訴訟では、請求額に応じて手数料額早見表にしたがった額を払います。
    勝訴したときは、判決にしたがい被告に負担させられることもあります。
  • 弁護士費用
    弁護士費用は、弁護士を依頼するときにかかる費用です。
    主に、訴訟を依頼するときにかかる着手金、成功したときかかる報酬金があります。
    セクハラ慰謝料の訴訟では、着手金が請求額の8%、報酬金が獲得額の16%が目安となります。

セクハラで訴えるとき、弁護士に相談すべき理由

最後に、セクハラで訴えるときは、弁護士に相談するのがおすすめです。
弁護士に相談すれば、セクハラの裁判を、有利に解決できるメリットがあるからです。

セクハラ問題を多く解決した弁護士なら、セクハラ慰謝料の相場をよく知っています。
そして、セクハラ慰謝料を増額できるポイントや、役立つ証拠を熟知しています。
弁護士に依頼することで、相場を知り、訴訟を有利に進め、より高い認容額が得られると期待できます。

セクハラが社会問題化し、慰謝料は高額化している傾向にあります。
そのため、セクハラの訴訟では、最近の裁判例の傾向を踏まえた主張をしなければなりません。
さらに、あなたの事案にあわせ、裁判例で参考にされる有利な事情があるときは主張書面に組みこみ、それを基礎づける証拠とともに、しっかりと裁判所を説得する必要があります。

セクハラ訴訟において、裁判例では、慰謝料が高額な事案がある一方、残念ながらセクハラが軽視され、少額の慰謝料にとどまった裁判例もあります。
あなたの事案の深刻さを理解し、裁判所に正しく伝えるのが、弁護士の役割です。

一方で、弁護士に依頼するデメリットは唯一、弁護士費用がかかる点です。
とはいえ労働問題に強い弁護士なら、豊富な経験から慰謝料がどれだけもらえるか予想できますから、弁護士費用を払ったことで損してしまうような提案はしません。

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、悪質なセクハラ問題を、訴えることで解決する方法を解説しました。

違法性の強いセクハラでは、裁判しなければ解決できないこともあります。
このとき、セクハラ被害で訴える流れ、訴える前の準備や、必要な証拠といったポイントを理解することが、有利な解決に直結します。

セクハラ問題のなかには、話し合いで解決できるものもあります。
しかし、強制性交等罪を含む刑事事件にあたりうるセクハラや、会社がまったく対応せずに二次被害が拡大するケースなどでは、セクハラ被害を悪化させないためにも、裁判に訴える方法が、解決策として適しています。

この解説のポイント
  • 悪質なセクハラは会社に対応してもらいづらく、裁判での解決がおすすめ
  • セクハラで訴えるには、「訴えの提起」から「判決」までの流れを知る
  • セクハラで訴え、裁判を有利に進めるには、証拠の準備が大切

\ 「今すぐ」相談予約はコチラ/

よかったらシェアしてください!
目次(クリックで移動)
閉じる