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浅野 英之
弁護士
弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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同性からのセクハラの被害にあったら対処法は?慰謝料請求できる?

セクハラというと「女性が被害者、男性が加害者」というイメージの方もいるでしょう。
しかし、こんな典型例に限られるわけではありません。

性(性自認・性的指向)の多様化とともに、LGBTの権利尊重が叫ばれる現代。
LGBTは当然、そうでない人も、同性から性的な嫌がらせをされるケースは決して珍しくありません。
同性間(男性同士・女性同士)のセクハラ問題の理解が大切な時代なのです。

「会社に隠しているが、実はLGBT」という性的マイノリティも少なくないもの。
同性だからといって無神経、無遠慮な性的行為、性的発言は、控えるべきです。
同性からのセクハラ被害はもちろん、同性への不用意な言動がセクハラ扱いされることもあります。

今回は、同性からのセクハラ被害の実態と、いざ同性同士のセクハラトラブルで被害者・加害者となったときの適切な対処法を、労働問題に強い弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • 同性からのセクハラは不思議なことではない
  • セクハラ被害者がLGBTのとき、精神的苦痛は特に深刻化する
  • 同性からのセクハラ被害は少ないため、周囲に理解してもらうため証拠をとるのが大切

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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同性からのセクハラが起こる理由

同性同士(同性間)だと、セクハラにあたる発言や行為が、どこから違法なのか、線引が難しいです。
そのため、異性なら絶対にしないような言動も、同性だとしてしまいがち。
しかし、セクハラはハラスメント、つまり嫌がらせなので、たとえ同性からでも不快に思う内容が多いです。

このように、同性からのセクハラは、被害者が声をあげるシーンが少ないことから、違法性を指摘されることなく続いてしまいがちなのです。
違法なセクハラなら、たとえ同性からでも不法行為(民法709条)であり、慰謝料請求できます。

同性の上司・部下の関係でされると、さらに指摘しづらくなります。
同性からの言動に「セクハラかも」と疑問・不安がある方、ストレスを抱え続けるのはおすすめできません。

同性からのセクハラが問題になるケース

はじめに、同性間のセクハラでよくあるトラブルをもとに、どんな言動が同性からのセクハラなのか解説します。

「男性から女性」がセクハラの典型ですが、「女性から男性」へのセクハラもあります。
そして、異性間だけでなく、たとえ同性間でもセクハラは起こります。

性自認が見た目と違うと(つまり、被害者がLGBTだと)、意図せぬセクハラが起きやすいもの。
性的少数派(性的マイノリティ)でなくとも、同性からベタベタと体を触られたり、必要以上に近い距離で接近されたりするのが不快だという人は多いです。
ハラスメント(嫌がらせ)と感じてしまうでしょう。

同性からの行為だと、性的行動、性的発言だと指摘しづらく、泣き寝入りしがち。
しかし、真面目な性格の人ほど、たとえ同性でも精神的苦痛を受けやすいものです。

被害者がLGBTの場合

性的発言、性的行動の被害者がLGBTだと、同性でもセクハラが成り立つ可能性がとても高いです。

LGBTは、外見と中身が一致しません。
そのため、外見どおりの性別として接すること自体が、セクハラになる危険があります。
外見からすれば同性間(男性同士・女性同士)でも、キスやハグ、からだを触るといった行為が、異性に対するのと同じく性的嫌がらせになってしまうのです。

LGBTの定義は、次の通りです。

  • レズビアン(L)
    女性同性愛者(女性を愛する女性)
  • ゲイ(G)
    男性同性愛者(男性を愛する男性)
  • バイセクシュアル(B)
    両性愛者(男性・女性どちらも愛する性)
  • トランスジェンダー(T)
    性的越境者(自身の性に違和感・嫌悪感を感じる性)

LGBTは性的マイノリティ(性的少数者)の典型例。
しかし、性の多様化によって、さらに複雑な性自認も増加しています。

LGBTがセクハラの被害者となる場合、「身体的性(体が男性・女性のいずれか)」ではなく「性自認(被害者がどんな性だと自認しているか)」で判断するのが基本。
例えば、「身体的性」が男性でも「性自認」が女性ならば、男性からの性的発言、性的行為に嫌悪感を示し、セクハラだと感じることになります。

LGBTなこと自体や、外見と中身が一致しないことを批判されたり、馬鹿にされたり、からかわれたり、性差別を強調されたりといったセクハラ被害にあうおそれもあります。

LGBTが被害者となる同性からのセクハラには、次の例があります。

  • 「オカマ」、「ホモ」など、LGBTを蔑視する呼び名
  • 「男らしくない」、「女々しい」など、性自認に反する行為だと馬鹿にする
  • LGBTに不快感をあらわにする(「気持ち悪い」など)の発言
  • LGBTを理由に労働条件を悪化させる
  • LGBTであることを社内で噂を流す

その他、異性間であればセクハラになる言動が、LGBTでもセクハラになるのは当然です。
どんな言葉がセクハラ発言になるかは、次の解説もご覧ください。

男性同士(男性間)のセクハラ

被害者がLGBTでなくても、同性からのセクハラが違法となるケースは十分あります。
たとえ同性に性的な興味がまったくなくても、同性からキスされたり抱きつかれたり、下半身をしつように触られたりと言った行為は正常ではなく、不快に思う人が多いのは当然です。

しかし、男性同士だと、酒の席や、下ネタなど、ノリで許されてしまう危険あり。
同性から軽いタッチが頻繁にされ、徐々にエスカレートし、いじめにつながる例は少なくありません。

男性同士(男性間)で起こりがちなセクハラは、次の例です。

  • 男性同士(男性間)で、酒のノリで下半身をしつように触られる
  • 男性同士(男性間)で、プライベートの性的な質問を繰り返しされる
  • 男性から、飲み会で全裸の宴会芸を強要される
  • 男性から、罰ゲームで女性社員への告白をさせられる
  • 風俗にいって童貞を捨てるよう命令される

男性同士(男性間)のセクハラでは、「ノリ」がポイントです。
「体育会系のノリ」や「下ネタのノリ」に乗れないと人間関係が築きずらかったり、会社に居づらかったり、最悪は、昇進や出世に影響してしまったりといった理由から、「セクハラなのでは」と思いながらも我慢しがちです。

女性に裸を強要すればセクハラで当然ですが、男性同士だと境界が曖昧になりがち。
しかし、そんなノリになじめない人も多く、不快に思えばセクハラといってよいでしょう。

女性同士(女性間)のセクハラ

女性同士(女性間)でも、セクハラが発生します。

上記のように「ノリ」が重視される男性同士(男性間)のセクハラに比べ、女性同士(女性間)のセクハラは、さらに陰湿な言動になりがちです。
他の社員に見られないようこっそりされる同性からのセクハラは、苛烈ないじめになることも。

女性同士(女性間)で起こりがちなセクハラは、次の例です。

  • 女性同士(女性間)で、胸をしつように揉みしだく。
  • 女性同士(女性間)で、尻をしつこく触り続ける。
  • 女性に対して、性的なことがら(恋愛、彼氏の有無)を追求し続ける。
  • 女性同士(女性間)で、体型(体重、スリーサイズなど)を明らかにするよう強要する。
  • 女性上司から「ヤリマン」、「ビッチ」と噂を流される

同性からのセクハラは、パワハラにもあたる可能性あり

同性からのセクハラが成立しうると解説しました。
しかし、同性からのセクハラが違法かどうかは判断しづらいもの、一方で、「性的な意図」がなくても、ハラスメント(嫌がらせ)で被害者が不快に感じるなら、それはパワハラにあたる可能性もあります。

セクハラは「性的な」嫌がらせ。
しかし、加害者に「性的な」意図がなくても、被害者にとっては「嫌がらせ」には違いないのです。
パワハラは、会社内における優越的な地位を利用した嫌がらせであり、男女問わず成立します。

したがって、同性からのセクハラは、同性からのパワハラとも指摘できます。
性的マイノリティであることを社内で隠している場合など、同性からの違法行為について「セクハラだ」と訴えるのが難しい場合や、恥ずかしい場合、言い出しづらい場合には、パワハラ問題として相談する手も有効です。

同性からのパワハラにあたる言動

同性からのしつようなデートの誘い、肉体関係の強要は、性的意図があるならセクハラです。
一方で、上司・部下の関係を利用して強要されれば、パワハラにもあたります。

セクハラであれパワハラであれ、いずれも不法行為(民法709条)であり違法です。
そのため、慰謝料請求の対象となります。
ハラスメントを放置し、泣き寝入りする必要はありません。

同性からのパワハラが違法となる基準

同性からのパワハラが違法かどうかは、指導の目的があるかどうかで判断します。
指導の目的があり、その手段が相当であれば、適切な業務命令ないし注意指導であり違法ではありません。

注意指導とパワハラの区別

ただ、同性からのセクハラを疑われるようなケースは、指導の目的などないと明らかなケースが多いため、違法の可能性が高いと考えてよいでしょう。
性的意図のある行為は、同性間でも、業務上必要だとは到底いえません。

パワハラと指導の区別は、次の解説をご覧ください。

同性からセクハラ被害を受けたときの対応

同性からのセクハラの被害にあったとき、どう対処すべきか解説します。
同性でもセクハラが成立しうると理解できれば、同性からのセクハラも異性からのセクハラと同じ対処法が有効だと理解いただけるでしょう。

拒否の意思を示す

同性からのセクハラは、異性から受ける場合に比べ、意外性の高いもの。
被害者の側では「まさか、同性からセクハラされるとは思わなかった」と考えるでしょうし、加害者の側でも「まさか嫌だと思っているとは知らなかった」という場合が多いです。

そのため、異性間で起こるセクハラにもまして「拒絶の意思を示す」のが重要です。
きちんと不快感を伝えなければ、同性からの言動がセクハラにあたるとは理解してもらえません。

周囲に相談する

同性からのセクハラでも、相談先は、まずは会社内の相談窓口がよいでしょう。
同性からのセクハラだと、周りもあなたの精神的苦痛やストレスを理解してくれていないことも。

事前に、頻繁に相談しておくことで、セクハラ被害なのだと理解してもらいやすくなります。

同性からのセクハラは、噂が誤解を生みやすいもの。
相談を受けたときの対応にも万全の注意が必要となります。

録音する

誰も見ていないところでこっそり行われるのは、同性からのセクハラも同じです。
労働審判や裁判で慰謝料請求しようとしても「証拠がない」というケースもあります。

同性からのセクハラは、異性間のセクハラに比べて少ないもの。
証拠がまったくないと、「同性からセクハラを受けるのは通常ありえない」と、推測でセクハラを否定されてしまいかねません。

同性からのセクハラに悩むなら、まずは録音の準備をし、セクハラを証拠化してください。

弁護士の相談する

悪質性の高い問題は、社内での解決には限界があることもあります。

同性からのセクハラでも、重度のセクハラや、しつように続くセクハラ、社長が加害者のセクハラなどでは、会社もまともに対応してくれないおそれがあります。
このとき、弁護士に相談するのがおすすめです。

弁護士に労働問題を相談するとき、選び方にも注意が必要。
次の解説もあわせてご覧ください。

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、同性からのセクハラも違法であることを解説しました。
同性間(男性同士・女性同士)でセクハラされ被害者となったら、我慢せず周囲に相談しましょう。

同性間だとセクハラの判別は難しいもの。
相談しても「考えすぎ」、「気にしすぎ」と軽視されはしないかと不安に思うでしょう。
LGBTなど性的マイノリティで、オープンにしていないと同性からのセクハラを訴えるのは勇気がいります。

社内では解決できない深刻な問題なら、弁護士にご相談ください。
同性からのセクハラでも、違法、不当な扱いは明確に拒絶しなければなりません。

この解説のポイント
  • 同性からのセクハラは不思議なことではない
  • セクハラ被害者がLGBTのとき、精神的苦痛は特に深刻化する
  • 同性からのセクハラ被害は少ないため、周囲に理解してもらうため証拠をとるのが大切

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