セクハラ問題の原因が、男性側の認識の甘さにあるケースは少なくありません。
自分としては同意があったと思っていても、女性は不快に感じる例も珍しくないもの。
こんなとき、気に留めていなかったことで「セクハラ」と訴えられるケースがあります。
男性社員からのセクハラについての法律相談は、年々増えています。

円満な恋愛だと思っていたら「セクハラ」といわれた

セクハラといわれたら、男が罪をかぶるしかないのか
双方同意のもとでしたのに、後でセクハラといわれ、男側がいわれない非難を受けるケースも目にします。
こんなとき、厳しい処分を受けてしまうことも。
セクハラ事例では、「男性が悪い」という先入観が社会にあるのは否定できません。
しかし、あきらめるのは早いでしょう。
事後に思わぬ非難や処分を受けぬよう、「同意を得られた」と思っても、細心の注意が必要。
女性側の気が変わっても、セクハラといわれぬ態度が大切です。
今回は、「セクハラ」と「(女性側の)同意」の関係に着目します。
同意があったのにセクハラと言われたときの対処法について、労働問題に強い弁護士が解説します。
- 同意があってもセクハラといわれるのは、男性の勘違いが原因のことも
- 同意があればセクハラではないが、真意からの同意があるか確認を要する
- セクハラといわれたときの対応に備え、同意していた証拠を集めておく
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【セクハラの基本】
【セクハラ被害者の相談】
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- セクハラ加害者の注意点
- セクハラ冤罪を疑われたら
- 同意があってもセクハラ?
- セクハラ加害者の責任
- セクハラの始末書の書き方
- セクハラの謝罪文の書き方
- セクハラ加害者の自宅待機命令
- 身に覚えのないセクハラで懲戒処分
- セクハラ加害者の退職勧奨
- セクハラで不当解雇されたときの対応
- セクハラで懲戒解雇されたときの対応
- セクハラの示談
【さまざまなセクハラのケース】
同意があってもセクハラといわれる理由

セクハラ(セクシャル・ハラスメント)とは、性的な言動によって相手に不快感を与えること。
セクハラは違法であり、不法行為(民法709条)です。
性的暴行や、セクハラ発言でストレスを与えれば、慰謝料請求を受けてしまいます。
しかし、なかには、自分では相手の同意があった(つまり、違法ではない)と考えていた行為が、後からセクハラだと指摘を受けるケースがあります。
その理由は、男性側、女性側のいずれにもあります。

同意で性的関係に至ったが、女性の気が変わった
同意を得たのにセクハラ問題になるのが、性的関係を結んだ後で女性の気が変わったケース。
女性から「やはり、性的関係を結ぶ同意はなかった」といわれ、セクハラ被害を訴えられます。
なかには、男性側は交際しているつもりだった、というものまであります。
しかし、女性の心が変わりやすいと理解し、万全の注意をしなければセクハラトラブルは防げません。
同意を得たと思ったのは男性だけだった
男性側にとって大きな問題なのが、同意を得ていたと思い込んでいたのが男性だけだったケース。
つまり、男性の考えは、思い込みで、勘違いに過ぎなかったというわけです。
女性は実は不快に思っていたり、職場の人間関係を崩したくなくて我慢をしていたりします。
すると、後から、同意がなかったといわれ、セクハラしたと指摘を受けることになります。
同意があればセクハラにはならない

次に、同意があってもセクハラになるのか、という点について解説します。
結論からいえば、「被害者」の側に同意があれば、セクハラにはなりません。
そのため、同意があれば、違法でもありません。
ただし、本当に「同意があった」といえるのか、判断はとても難しいです。
少なくとも、「同意があればセクハラにならない」というだけで突き進むのは甘い考え。
セクハラになる可能性のある行為は、同意があるようにみえてもやらないほうがよいでしょう。
後から「同意はなかった」といわれ責任追及されてはじめて気づいても、残念ながらもう遅いです。
セクハラは、「意に反した」性的言動
男女雇用機会均等法は、職場内のセクハラ対策を義務付けています。
この法律にいうセクハラは、次のように定義されています。
- 職場で行われる労働者の意に反する性的な言動
- 性的な言動への労働者の対応によって、解雇、降格、減給などの不利益な処分を受けること
- 性的な言動により就業環境が不快なものとなり、重大な影響が生じること
以上のことからわかるように、セクハラはそもそも定義からして「意に反したもの」です。
同意があれば、相手の意思には反していませんから、セクハラではありません。
同意があり、セクハラにあたらない行為には、次の例があります。
- 職場恋愛
- 職場結婚
- 自由恋愛でされる性交渉
同意があれば違法ではない

セクハラには、「対価型」と「環境型」があります。
2つの共通点は、セクハラ被害者の「意に反する性的な言動」をともなうこと。
つまり、性的な言動について相手方の同意があれば、セクハラにはなりませんし、違法にもなりません。
セクハラに似た行為でも、同意があるなら、相手は不快に感じていないということです。
このとき、性的な関係をもったり性交渉したり、性的な発言やプライベートな発言をしても、相手の同意さえあれば「不法行為」(民法709条)にもあたらず、違法性はありません。
違法なセクハラ行為ではないので、懲戒処分などの不利益な処分の対象にもなりません。
慰謝料や損害賠償を請求されることも、刑事罰を受けることもなく、いかなる責任も負いません。
セクハラ加害者の負う責任の種類は、次の解説をご覧ください。

同意が無効だと、セクハラになる

以上のとおり、対象者の同意があればセクハラにはなりません。
性的発言や性交渉は、相手が嫌ならセクハラですが、嫌でないなら許されるわけです。
しかし「同意があるからセクハラではない」という弁明は、それほど強くはありません。
これをタテにとって自由奔放に振る舞えば、痛い目を見ることもあります。
同意が無効だと、セクハラになってしまうからです。
同意が無効になると、同意があると思ってしていた行為はすべて、同意がなかったことになりすべて違法なセクハラ行為になるおそれがあります。
真意に基づく同意が必要
「同意」というのは、真意に基づくものである必要があります。
わかりやすくいえば、「心から同意していなければならない」という意味です。
真意に基づく同意でなければ、その同意には意味はなく、やはりセクハラで違法だということになります。
性的関係は、女性にとってとても重要なものの1つです。
そのため、そんな重要なことについての同意は、軽々しくはとることができません。
「身体を許すこと」の同意は、それだけ重く考えられているのです。
上司・部下など職場の上下関係があると、セクハラを断りづらいという被害者の心理を理解してください。
「同意できない」と毅然と表明し、はっきり断れる人ばかりではありません。
職場の上下関係を利用して圧をかければ、「Yes」といわせても真意に基づく同意とは到底いえません。
このとき、表面上は同意していても、違法なセクハラになってしまいます。
同意が無効になるケースの例
表向きは同意があっても違法なセクハラになりかねないケースには、次の例があります。
- 上司から部下へ、職場の地位を利用してデートに誘う
- 二人きりの状況で、性的関係を迫られ、恐怖から同意した
- 同意しないと、労働条件を悪化させられそうだった
こんなケースは、「同意を強要されていた」といえます。
そのため、真意に基づく同意だとは到底いえず、同意は無効になってしまいます。
上司・部下の関係でなくても、同意の強要にあたり、同意が無効となるケースは少なくありません。
セクハラ被害者の心理として、「職場の人間関係を少しでも壊したくない」、「居心地が悪くなるのは困る」という考えがあり、同意をしたかのように見えてしまうことがあるからです。
同意がなかったと言われてセクハラにならないための注意点

セクハラが社会問題化して久しく経ちます。
ボーダーレス社会、ジェンダーフリーが叫ばれる現代、絶対してはならない違法行為です。
しかし一方で、職場恋愛なら自由にしてよいはずで、自由恋愛を否定されるいわれはありません。
社内恋愛は、業務に支障のない限り、自由なのが原則
職場で恋愛でも、将来「同意がなかった」といわれセクハラになるのが不安な方、以下のステップを理解し、慎重に進めるようにしてください。
相手の意思をよく確認する
性的言動に同意があればセクハラにならないものの、同意は「真意に基づく同意」の必要ありと解説しました。
つまり、セクハラではないと反論したいなら、心からの同意を確認しなければなりません。
強引に進めてしまえば、同意を得ていたつもりが、あとでセクハラと訴えられる可能性も少なくありません。
セクハラにならないために「心から同意しているかどうか」を相手にきちんと確認するのが大切です。
外部の状況にも気を配る
性的言動について同意をもらうときは、外部の状況にも気を付けてください。
社内恋愛が、他の社員に迷惑だと、同意があっても企業秩序違反のペナルティを受けるおそれがあります。
そして、職場環境を悪化させると、被害者もまたその当事者となってしまいます。
いづらくならないようにと思ったり、恐怖を感じたりすれば、つい従ってしまう人もいます。
そうした事態を避けるには、同意を得るときの状況や、自分と相手との立場の違いを考慮して、「断っても大丈夫」と相手に思わせ、相手を安心させる工夫が大切になります。
アフターフォローする
注意を尽くした上でもなお、「万が一」ということはあり得ます。
同意があっても不安を感じるなら、あとから相手に確認してみるのがおすすめです。
直接本人に聞きづらいときは、相手の同僚や仲の良い別の上司に相談してみるのも手です。
結局、相手が不快に感じていたという場合には、セクハラとして問題となるおそれも十分あります。
アフターフォローの結果、相手が不快に感じていたと明らかになったら、セクハラとして対処が必要。
このとき、謝罪したり、示談交渉をしたりといった事後対応を検討してください。
既婚者は手を出さない
「職場恋愛・社内恋愛は自由が原則」と解説しました。
しかし、このことは会社に迷惑をかけず、業務に支障のない場合に限ります。
たとえ自由恋愛でも、社内のことですから、会社に迷惑なら許されないセクハラとなる危険があります。
この意味では、既婚者は、注意が必要です。
既婚者が、他の異性と肉体関係を持てば、不倫となり、配偶者から慰謝料請求を受けてしまうからです。
このとき、慰謝料請求は、不倫した本人だけでなく、不倫相手にも降りかかってきます。
自分が既婚者だと、社内で不倫をすれば、不倫相手となった社員に迷惑をかけます。
自分が未婚でも、既婚者に手を出せば、同じような混乱を社内に巻き起こします。
このとき、そんな損をする不倫交際に「完全に同意してもらう」ことは難しく、たとえ同意が得られたと自分では思っても、後から無効と判断されてしまう可能性が高いです。
同意があったのにセクハラと言われたときの事後対応

ここまでは、セクハラに同意があったらどうなるかと、後からセクハラと指摘されないための対策でした。
しかし、十分な努力を尽くして同意を得ても、後からやはりセクハラといわれることがあります。
痴情のもつれや個人的な恨みから、女性にセクハラ被害を訴えられたという相談は残念ながらあります。
以下では、同意があったのにセクハラと言われたとき、その事後対応について解説します。
セクハラの事実そのものを争う
まず、同意があるのに「セクハラだ」と責任追及を受けたら、セクハラの事実そのものを争う手があります。
つまり、セクハラといわれた言動が、そもそも存在しない、もしくは、(仮に同意がなくても)セクハラにあたらないという反論のしかたです。
相手のなすがままにセクハラだと認め、いわれのない賠償請求や処分を受ける必要はありません。
そもそも、セクハラの責任追及をする側に、その言動を具体的に立証する責任があります。
セクハラに当たるかどうかの判断は、「一般的な感じ方・受け取り方」が基準です。
被害者からみた判断にはなりますが、決して「不快に思ったら全部セクハラ」ではありません。
被害妄想が強かったり、性的言動に過敏すぎたりといった場合、それが一般的な常識からしてもセクハラなのかどうかは、裁判所に決めてもらうべきです。
しばしば、セクハラでは被害者と加害者の意見が食い違うことがあります。
対応について、次の解説も参考にしてください。
同意があったことを証明する
一般常識からしてもセクハラにあたりかねない言動だったら、次に、同意の有無について検討します。
本解説のとおり、慎重な配慮をして、真意による同意を得たにもかかわらずセクハラの責任追及を受けたときは、同意があったことを強く主張しましょう。
ただし、このとき、同意があったと主張する責任は、加害者とされた側にある点に注意が必要です。
セクハラ慰謝料の請求などで、同意があったと示す証拠には、次のものが考えられます。
- 同意したやりとりの発言の録音
- 相手も性的関係を望んでいたことを示すメール、LINEのやりとり
- 自由恋愛を楽しんでいたと示す写真、デートの記録
- 性交渉した後もホテルに宿泊した証拠
- 事後も関係が円満だったことを示す証拠
企業の独自ルールに注意する
証拠をそろえ、真意に基づく同意があったと証明できれば、いわれのない非難や責任から逃れられます。
これにより、慰謝料請求をはじめ、法的な責任はなかったことになります。
ただ、「同意があれば違法でない」というのはあくまで法律の問題。
大手企業には、同意の有無にかかわらず、社内ルールとして、職場での性的関係を禁じる会社もあります。
このとき、素行不良と評価され、社内風紀を悪化させると注意され、懲戒処分を下されるおそれがあります。
企業独自のルールがあるとき、相手の同意があっても社内処分を受けることがあります。
特に、管理職や既婚者は厳しくみられるため、十分注意しなければなりません。
社内恋愛による解雇について、次の解説もご覧ください。

まとめ

今回は、同意があったと思っていたら、突然セクハラだといわれたときの対応を解説しました。
職場における恋愛、部下との性交渉などは、相手の意に反したセクハラとなりがちです。
自分は同意があったと思っていても、職場内の行為については厳しくみられてしまいます。
安易に同意があったと思わず、慎重な行動が求められます。
特に、社長や管理職など、他の社員の模範となる立場の方は注意してください。
同意があるように思えても「真意だろうか」、「セクハラにならないだろうか」と疑う姿勢が大切です。
- 同意があってもセクハラといわれるのは、男性の勘違いが原因のことも
- 同意があればセクハラではないが、真意からの同意があるか確認を要する
- セクハラといわれたときの対応に備え、同意していた証拠を集めておく
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【セクハラの基本】
【セクハラ被害者の相談】
【セクハラ加害者の相談】
- セクハラ加害者の注意点
- セクハラ冤罪を疑われたら
- 同意があってもセクハラ?
- セクハラ加害者の責任
- セクハラの始末書の書き方
- セクハラの謝罪文の書き方
- セクハラ加害者の自宅待機命令
- 身に覚えのないセクハラで懲戒処分
- セクハラ加害者の退職勧奨
- セクハラで不当解雇されたときの対応
- セクハラで懲戒解雇されたときの対応
- セクハラの示談
【さまざまなセクハラのケース】