セクハラ

同意があってもセクハラと言われた上司が知っておきたい5つのこと

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運営元:弁護士法人浅野総合法律事務所

最近は、男性がそれほど気に留めないことでも「セクハラ」と言われて訴えられるケースも増えています。男性労働者からのセクハラに関する法律相談を受けることは、年々増加しています。

そして、ニュース報道などでも分かる通り、相談いただくセクハラ問題の内容に目を向けると、セクハラについての「男性側の認識の甘さ、知識不足」が原因となっているケースも少なくありません。

一方で、双方同意のもとにしたことが、後になって「セクハラだ!」と訴えられ、男性側がいわれのない非難や処分を受けてしまうケースも目にします。男性から女性に対するセクハラでは、「男性が悪い」という社会的な先入観があることも否定できません。

中には、法律相談の最初から、「セクハラと言われてしまったら、男性が罪をかぶるしかないのでしょうか。」とあきらめモードな男性労働者の方もいらっしゃいます。

事後に思わぬ非難や処分を受けないためには、同意を得た行為であっても、セクハラと言われないための細心の注意をしなければなりません。

今回は、「セクハラ」と「(女性側の)同意」の関係に着目し、同意があったのにセクハラと言われてしまったときの対処法について、労働問題に強い弁護士が解説します。

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セクハラとは?

セクハラ(セクシャル・ハラスメント)とは、性的な言動によって相手に不快感を与えることをいいます。「セクハラに対する不快感を訴えたこと」を理由に、労働条件や待遇を不利に変更することもセクハラに含みます。

セクハラの被害者は女性に限られず、男性が被害者になる場合や、同性間での性的な嫌がらせもセクハラになります。最近では、LGBTに関する差別的言動もセクハラと考えられるようになりました。

しかし、「同意を得たのに、後からセクハラと言われた。」という法律相談は、圧倒的に女性がセクハラ被害者となっているケースが多いです。

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セクハラの種類

セクハラには、大きく分けて、「対価型セクハラ」、「環境型セクハラ」の2つのタイプがあります。

ココがポイント

  • 対価型セクハラ
    労働条件や待遇の不利益変更をチラつかせて、性的嫌がらせに対抗できなくするタイプのセクハラです。「セックスしてくれなければ解雇する。」といった言動や、上司の立場を利用して、逆らうことができない部下の体に触る行為がこれに当たります。
  • 環境型セクハラ
    性的な言動以外に、職場環境を悪化させる行為は、環境型セクハラと呼ばれます。例えば、卑わいなポスターを職場に貼り付けたり、デスクの上にエロ本やフィギュアを置くなどして、それを見た他の労働者に性的な不快感を与える行為がこれに当たります。

同意を得た行為が、後にセクハラ問題に発展してしまうのは、特に、具体的な行動(肉体関係、性交渉など)を伴うセクハラのケースが多いといえます。

したがって、特に「対価型セクハラ」において、「同意を得て行っている」と考えている男性上司の方は、女性部下への行為について、細心の注意を払うべきです。

これに対して、「環境型セクハラ」は常時セクハラを行っていることとなりますので、周りの女性社員から文句を言われないからといって、「同意があった。」という反論をすることは困難です。

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セクハラは違法!

性的暴行を伴う場合や、性的発言によって相手をはずかしめ、過度の精神的ストレスを与えるような場合には、その言動は民法上の「不法行為」に該当する可能性があります。

「不法行為」に該当するような過剰なセクハラは明確な違法行為です。

しかし一方で、「性行為を行った。」、「服の下に手を入れて胸を触った。」というセクハラ行為は、同意なく行えば刑法違反となる重度のセクハラですが、完全な同意があれば違法とはなりません。

同意があってもセクハラになる?

セクハラの基礎知識を理解していただいた上で、次に今回の解説のテーマである「同意があってもセクハラになるのか?」という点について、弁護士が解説します。

結論から申しますと、被害者となる労働者の「同意」があればセクハラにはならないものの、本当に「同意があった。」と言える状況かどうかは、非常に判断の難しいところです。

「同意があればセクハラにならないのだから。」という甘い考えで、セクハラにあたりうる行為を平然と行っていては、後から、「同意はなかった。」と言われて責任追及を受けかねません。

セクハラ=「意に反した」性的言動

男女雇用機会均等法は、会社に対して、職場内のセクハラに対策する義務を課しています。その具体的な義務内容について国が定めた指針では、セクハラとは次のように定義されています。

ココがポイント

  • 「職場において行われる労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応により、当該労働者が解雇、降格、減給等の不利益を受けること」
  • 「職場において行われる労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じること」

したがって、セクハラとは、そもそもの定義からして「意に反したもの」であることが必要となります。

つまり、職場で起こる恋愛、肉体関係、性交渉などであっても、当事者の合意の上で自由に行われるものであれば、セクハラにはあたりません。例えば、職場恋愛、自由恋愛によって行われる性交渉などは、セクハラにはあたりません。

同意があれば違法ではない

2つの定義の共通点は、セクハラ被害者の「意に反する性的な言動」を伴うことです。つまり、性的な言動について相手方の同意があれば、セクハラにはならないということです。

「セクハラ」といわれかねない行為であっても、対象者の同意があるということは、相手が不快に感じていないということです。

そのため、性的な関係を持ったり性交渉を行ったりすることや、性的な発言をすることも、相手の同意さえあれば「不法行為」には該当しませんから、違法性もありません。

違法なセクハラ行為ではないということは、会社内でも懲戒処分などの不利益な制裁(ペナルティ)の対象とはなりませんし、被害者となる労働者から慰謝料や損害賠償の請求を受けることもなく、セクハラのいかなる責任も負わないということです。

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同意が無効になるケースがある!

以上のとおり、職場内で部下に対して性的発言をしたり、性交渉を行ったりすることは、「セクハラ上司」と行動は同じではあるものの、対象者の同意があれば、セクハラにはなりません。

しかし、「同意があるからセクハラではない。」という言い訳をそれほど強いものだと考えると、痛い目を見ることとなりかねません。

「性的な行為」は非常に重要なものである一方で、上司・部下など、職場の上下関係があることから、「同意できない。」ということを毅然とした態度で表明し、セクハラをはっきり断れる方ばかりではないからです。「身体を許すこと」の同意は、それほど重く考えられているというわけです。

「同意がある。」と思って行っていた行為が、同意が無効であると判断されて、セクハラ行為となってしまうおそれも十分にあるのです。

真意に基づく同意が必要

セクハラにならないための対象者の「同意」同意とは、相手方の「真意に基づく同意」であることが必要であるとされています。

つまり、相手が心から同意をしている、と言える状況でなければならないということです。

職場の上下関係を利用して圧力をかけるなど、「真意に基づく同意」があったとは考えられないケースでは、例え対象者が表面上は同意していたとしても、違法なセクハラ行為となってしまうケースも十分にあります。

同意が無効になるケースとは?

表向きは同意があっても違法なセクハラ行為となってしまいかねないケースとして、上司と部下の関係など、職場上の上下関係を利用して、同意をするよう圧力をかけるケースがあります。

また、二人きりの状況で性的行為を迫られ、恐怖を感じて「同意」せざるを得なかった場合なども、同意があったとしても違法なセクハラ行為にあたる可能性が高いといえます。

このように、外部の事情が影響して「同意を強いられた」というケースでは、「真意に基づく同意」があったとは言えず、同意は無効になってしまうからです。

なお、必ずしも「上司と部下」という職場上の上下関係がなくても、「同意を強要された。」として同意が無効となってしまうケースも少なくありません。セクハラ被害者の心理として、「職場の人間関係を少しでも壊したくない。」、「居心地が悪くなるのは困る。」という考えが働き、同意をしたかのように見えてしまうことがあるからです。

社内恋愛が将来セクハラになってしまわないために

セクハラ行為は社会問題化しており、ボーダーレス社会、ジェンダーフリーが叫ばれる現代において、絶対に行ってはならない違法行為です。

しかし、職場恋愛は、自由恋愛であれば否定されるべきいわれはありません。社内恋愛は、業務に支障のない限り、原則としては自由です。

職場で恋愛をしていて、将来「同意がなかった。」としてセクハラになってしまうのではないかと心配な方は、次の解説を参考にして、慎重に注意しながら進めるようにしてください。

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相手の意思を確認する

性的言動について「同意」があればセクハラとはならないものの、この「同意」とは「真意に基づく同意」である必要があることは、さきほど解説したとおりです。

すなわち、セクハラではないと言うためには、心から同意をしていなければなりません。強引に進めてしまえば、同意を得てしたつもりが、あとで「セクハラだ!」と訴えられる可能性も少なくありません。

セクハラにならないためには、心から同意しているかどうかを相手にきちんと確認することが必要です。

このとき、社長、管理職、上司など職場上優位な立場にある場合には、特に入念な確認が必要となります。

外部の状況にも気を配る

性的言動について「同意」をもらう際には、外部の状況にも気を付ける必要があります。社内恋愛、職場恋愛が、他の同僚に迷惑をかけている場合、「企業秩序違反」として会社から制裁(ペナルティ)を受けてしまうおそれもあります。

上司と部下の関係上「断れない」という印象を相手に与えてしまったり、二人きりの状況で相手が恐怖を感じてしまったりすれば、「真意に基づく同意」があったとは言えなくなる可能性が高まります。

そうした事態を避けるためには、同意を得るときの状況や、自分と相手との立場の違いを考慮して、「断っても大丈夫」と相手に思わせ、相手を安心させる工夫をすることが大切です。

アフターフォロー

以上の注意を尽くした上でもなお、「万が一」ということはあり得ます。同意があってもなお不安をお感じの場合には、あとから相手に確認してみることをオススメします。

直接本人に聞きづらいときは、相手の同僚や仲の良い別の上司に相談してみるのも手です。結局、相手が不快に感じていたという場合には、セクハラとして問題となるおそれも十分にあります。

アフターフォローの結果、セクハラとして謝罪と、示談交渉を検討すべき状況であるかどうかは、非常に判断の難しい問題ですから、労働問題に強い弁護士に、お早目に法律相談ください。

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既婚者は特に注意!

ここまでの解説で、「職場恋愛(社内恋愛)は原則として自由だ。」と申し上げました。

しかし、これは会社や他の同僚に迷惑をかけず、業務に支障のない場合に限ります。たとえ自由恋愛といえども、会社の内部で行うことである以上、会社に迷惑をかければ、許されないセクハラ行為となってしまう危険が高まります。

この点で、既婚者の方は特に注意しなければなりません。既婚者が、他の異性と肉体関係(性交渉)を持った場合、不倫(不貞)となり、配偶者から慰謝料請求を受けてしまうおそれがあるからです。

そして、この慰謝料請求は、不倫(不貞)を行った本人だけでなく、不倫相手に対しても行うことができます。そのため、会社内で不倫を行えば、不倫相手となった社員に迷惑をかけますし、そのような損を被るおそれのある不倫交際について「完全な同意をとる」ことは難しい、と判断されてしまう危険もあります。

同意があったのにセクハラと言われたら?

ここまで、性的な言動に対して相手の同意があった場合の法的扱いや、後からセクハラと言われないための対策について解説してきました。

しかし、努力を尽くして同意を得たにもかかわらず、痴情のもつれなどの個人的な恨みから、後になって「セクハラだ!」と訴えられてしまった、というご相談を受けることも残念ながらあります。

そこで、以下では、同意があったのにセクハラと言われてしまった場合の対処法について弁護士が解説していきます。

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セクハラの事実を争う

まず、同意があったのに「セクハラだ!」と責任追及を受けたとき、「セクハラの事実そのものを争う。」という手が考えられます。「セクハラだ!」と言われたこちらの言動がそもそもセクハラに当たらないような場合も少なくありません。

相手のなすがままに「セクハラを行った。」と認めてしまい、いわれのない賠償請求や処分を受ける必要はありません。そもそも、セクハラ行為であると主張する側に、その言動を具体的に立証する責任があるからです。

セクハラに当たるかどうかの判断は、相手の受け取り方が重要になりますが、その際の判断基準は「一般的な感じ方・受け取り方」です。

相手の被害妄想が強い場合や、相手が性的な言動に対して過敏過ぎる場合など、相手の訴えが真実と異なる、とお感じであれば、労働審判や訴訟などの場できちんと争うべきです。

同意は証明が必要

一般的に見て、セクハラにあたってしまうような言動があったことが明らかな場合には、次に「同意があった。」という主張が可能であるかどうかを検討します。

ここで解説しているように、慎重な配慮の上で、「真意による同意」を得たにもかかわらずセクハラの責任追及を受けているような場合、「同意があった。」ことを主張すべきでしょう。

性的言動について同意があったという事実は、慰謝料、賠償請求や処分を受けた側で証明しなければなりません。

同意を証明する方法

性的言動への同意があったことを証明するためには、同意があったことを裏付け、あるいは同意があったと考えられるような証拠を揃える必要があります。

口頭で弁解しているだけでは、会社や裁判所に信用してもらうことは難しく、法的手続では「証拠」が求められます。

同意に関する二人のやり取りを録音したり、メールやLINEのトーク内容を保存したりしておけば、後々争われたときに役立ちます。

自由恋愛、職場恋愛によって交際を継続していたのであれば、交際中にとった写真、デートに行った記録などが、性的言動への同意があったことの重要な証拠となります。

企業の独自ルールにご注意

証拠を揃えて「真意に基づく同意」があったことを証明できれば、いわれのない非難や責任から逃れることができます。

ただし、上場企業など、大手の企業の中には、同意の有無に関わらず、職場における性的な言動を禁じている所もあります。

性的な言動をすること自体が素行不良や社内風紀の悪化行為であると見なされ、人事考課に影響したり、懲戒処分を受けたりする可能性も否定できません。

そうした企業独自のルールがある場合には、相手方の同意があっても社内処分を受ける可能性もあるため、特に上司、管理職の立場にある人は、十分注意しなければなりません。

「セクハラ問題」は弁護士にお任せください!

今回は、同意があったと思っていたのに「セクハラだ!」と言われてしまったときの対処法について、弁護士が解説しました。

特に職場における恋愛、部下との性交渉などを行うという場合には、相手の意に反した性的言動が違法なセクハラ行為として厳しく取り締まられることが明らかな以上、安易に同意があったと思わず、慎重に行動することが求められます。

社長、管理職という、他の社員の模範となるような立場にあるのであれば、たとえ同意があったとしても、「セクハラになるのではないか?」と強く疑っておく方がよいとすらいえます。

いわれのないセクハラ被害を訴えられてお困りの労働者の方は、労働問題に強い弁護士にお早めに法律相談ください。

「セクハラ加害者」の法律知識まとめ

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弁護士浅野英之(弁護士法人浅野総合法律事務所 代表)

弁護士浅野英之(弁護士法人浅野総合法律事務所 代表)

弁護士法人浅野総合法律事務所(東京都中央区銀座)の代表弁護士(第一東京弁護士会所属)。 不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、近年ニュースでも多く報道される労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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