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セクハラ加害者はどのような責任を負う?民事上、刑事上の3つの責任

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運営元:弁護士法人浅野総合法律事務所

セクハラの加害者となってしまったとき、「セクハラ」という違法な行為をしてしまったことによる「責任」を負うことは当然ですが、どのような責任を負うことになるのかは、ケースによって多種多様です。

起こってしまったセクハラ事件の程度、態様、悪質性によって、セクハラ加害者の責任は、次の3つに大きく分けることができます。

ココがポイント

  • 「雇用契約上の責任」(労働者としての責任)
  • 「民事上の責任」(民法違反の責任)
  • 「刑事上の責任」(刑法違反の責任)

最近は、セクハラ問題はニュースでも大きく取り上げられており、これまで放置されてきた飲み会、宴席での「冗談」も、今後はセクハラとして、厳しく責任追及される可能性が高いといます。

今回は、セクハラ加害者が負う、セクハラ行為の「責任」について、「雇用契約上の責任」、「民事上の責任」、「刑事上の責任」の3つに分けて、労働問題に強い弁護士が解説します。

「セクハラ加害者」の法律知識まとめ

セクハラは誰の責任?

セクハラ行為を受けてしまったセクハラ被害者の立場からすれば、「誰がこの責任を負ってくれるのか。」と強い怒りを感じることでしょう。

法的にいえば、セクハラの責任は、第一次的にはセクハラ加害者である上司や同僚などが負うものであるのは当然です。しかし、セクハラ加害者を雇用している会社(使用者)もまた、セクハラの責任追及の対象となります。

これは、労働者をして、「セクハラのない安全な環境で働かせる義務(安全配慮義務)」が会社にはあることと、雇用している労働者のセクハラ行為について使用者責任を負うことが理由です。

「安全配慮義務」とは、労働者に適切な労働環境を提供し、心身の健康や安全を損なわないように配慮しなければならない会社の義務です。セクハラ行為が行われると、精神的なストレスが大きく、場合によっては身体を傷つけられるおそれもあるため、「セクハラの蔓延している会社」が安全配慮義務を果たしていないことは明らかです。

今回の解説では、このセクハラの責任のうち、セクハラ加害者の3つの責任について、弁護士が順に解説していきます。

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セクハラ加害者の民事上の責任

民事上の責任追及の手段は、「民法」という法律に定められています。具体的には、セクハラ加害者は、「不法行為」(民法709条)の責任を負うことになります。つまり、「民法709条違反」ということです。

一般的にいって、民事上の責任は、「金銭的な責任追及」であることが通常です。つまり、いわゆる「(精神的損害に対する)慰謝料」などの損害賠償を請求する方法による責任追及です。

セクハラ加害者の民事上の責任について、その請求方法や相場について、弁護士が解説していきます。

不法行為責任とは?

セクハラ加害者が負う民法上の責任である「不法行為」(民法709条)とは、次の要件を満たす場合に、損害賠償責任を負わせることを内容とするものです。

「不法行為」の責任追及の要件は、次のとおりです。以下の4つの要件を満たした場合には、セクハラ被害者の受けた精神的苦痛について、慰謝料を支払わなければならないという法的責任を負うこととなります。

不法行為の要件

  • 違法行為
    :セクハラ行為は、不法行為の「違法性」を有する行為であることが明らかです。
  • 故意・過失
    :不法行為とされるためには、セクハラ加害者に「故意・過失」がなければなりませんが、セクハラは「故意」であることが通常です。
  • 因果関係
    :セクハラ行為と損害との間に「因果関係」がある必要があります。
  • 損害
    :セクハラ行為を受けた被害者の損害の有無とその内容を、金額で立証する必要があります。

損害の相場は?

セクハラが社会問題化し、ニュースでも頻繁にとりあげられ、ケースによっては過労死、過労自殺などの原因ともなるような場合も出てきたことから、セクハラの慰謝料は、高額化する傾向にあります。

「損害」としては、精神的損害に対する慰謝料が主となりますが、ケースによっては、セクハラによって退職せざるを得なくなった場合の、逸失利益(働き続ければ得られたであろう給与など)も、賠償責任に含まれることがあります。

セクハラ被害者が治療を余儀なくされたり、妊娠してしまって堕胎費用がかかったりといった場合には、治療費、診断書作成費などの実費も、セクハラ加害者が支払うべき損害に含まれます。

セクハラ加害者の刑事上の責任

刑事上の責任追及の手段は、「刑法」という法律に定められています。具体的には、強姦罪、強制わいせつ罪、名誉棄損罪、侮辱罪など、加害者が行ったセクハラ行為の種類に応じてさまざまです。

セクハラ問題について、刑事上の責任追及を行うケースとは、民事上の責任追及に比べて、非常に悪質であったり、継続的に何度も行われていたりといったケースに限られます。

セクハラ問題の被害者となり、生命の危険を感じるようなケースでは、早めに警察などの捜査機関に対して、被害届を提出したり、告訴をしたりといった行動を行うべきです。

逆に、非常に悪質なセクハラの加害者と疑われている場合には、単に会社に対して反論をするにとどまるのでは、捜査機関(警察・検察)から逮捕され、身柄拘束を受けてしまうおそれもあります。

強制性交等罪(旧強姦罪・準強姦罪)

セクハラ加害者が、セクハラ被害者の意思に反して肉体関係(性交渉)を持つといった悪質なケースでは、「強制性交等罪」という、非常に重い犯罪となり、刑事責任を負うこととなります。性犯罪の中で最も重い罪です。

「強制性交等罪」にあたる場合には、「5年以上の有期懲役(刑法177条、178条2項、179条2項)」の法定刑が科されます。

強いお酒をたくさん飲ませて、よくわからない状態のまま無理やり性交した、というケースでは、「準強制性交等罪」となり、強制性交等罪と同様の刑事責任を負うこととなります。

もっと詳しく

「強制性交等罪」は、昔は「強姦罪」と呼ばれていましたが、女性だけでなく男性も被害者となることを示すため、刑法改正(2017年(平成29年)6月16日可決・同年6月23日公布・同年7月13日施行)により名称が改められることとなりました。

強制わいせつ罪

強制性交等罪ほどの重度の違法性を有するセクハラ行為でなかったとしても、性交にまでは至らなかったとしても、セクハラ被害者の意思に反して性的な行為を行った場合、「強制わいせつ罪」の刑事責任を負うこととなります。

例えば、セクハラ被害者の意思に反して、腰を触ったり胸を揉んだりといった行為は、強制わいせつ罪の疑いがあります。

これに対し、行為態様が軽度である場合、例えば、服の上から肩を触るといったセクハラ行為である場合には、刑事上の責任を追及されるほどの違法性がないケースもあります。

「強制わいせつ罪」にあたると判断された場合には、「6ヶ月以上10年以下の懲役刑」の法定刑が科せられます。罰金刑はありません。

暴行罪・傷害罪

セクハラ行為を行う際に、暴行、脅迫といった違法行為を利用したり、セクハラ行為の際にケガを負わせてしまった場合には、暴行罪、傷害罪などの刑事責任を負うケースもあります。

強制性交等罪の結果として傷害を負わせたり、死なせてしまったりした場合には、「強制性交等致死傷罪」となり、更に重い刑事責任を負うこととなります。

暴行罪・傷害罪にあたるセクハラ行為をしてしまったとき、次の刑罰が科せられます。

暴行罪 2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料
傷害罪 15年以下の懲役又は50万円以下の罰金

名誉棄損罪・侮辱罪

セクハラ行為の中には、ここまでに解説したような具体的な行動を伴う場合だけでなく、発言によるセクハラも多くあります。

発言だけだからといって、そのセクハラ行為が、刑事上の責任にあたらないかというと、そうではありません。セクハラ行為によってセクハラ被害者の人格を否定したり、名誉を棄損したりした場合、刑事責任を負う可能性があります。

具体的には、性的な発言によってセクハラ被害者を傷つけた場合に、名誉棄損罪、侮辱罪などの刑事上の責任が生じます。

名誉棄損罪、侮辱罪にあたると判断されたセクハラ加害者は、次の刑事責任を負います。

名誉棄損罪 3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金
侮辱罪 拘留又は科料

軽犯罪法違反

セクハラ行為が、ごく軽微であるからといって、刑事上の責任を負わないと安心するのは早計でしょう。

刑事上の責任の中には、「刑法」に定められたものだけに限らないからです。軽犯罪法や、各都道府県の条例にも、性的な迷惑行為に対する刑事上の責任が定められています。

セクハラ加害者の雇用契約上の責任

セクハラ加害者は、会社内でも、その雇用契約上の責任を負います。

「雇用契約上の責任」とは、セクハラという違法な行為を行ってしまったことによって、会社内で、処分、制裁(ペナルティ)を受ける責任のことをいいます。

セクハラ加害者が負うべき雇用契約上の責任は、民法、刑法はもちろんのこと、労働基準法(労基法)などの労働法にも記載はされていないものの、会社(使用者)との間で雇用契約を締結することで、当然に負うべき責任です。

「雇用契約上の責任」は、労働者が会社の秩序を乱したことに対する責任である「懲戒処分」が、その主たるものとなります。懲戒処分は、就業規則に定められていますので、確認するようにください。

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懲戒解雇

会社がセクハラ加害者に対して与える「雇用契約上の責任」のうち、最も重いものが、「懲戒解雇」です。

「懲戒解雇」は、雇用関係において「死刑」にも例えられるもので、現在の仕事を解雇によって辞めなければならないだけでなく、経歴にも大きなキズをつけ、再就職、転職すら困難にしてしまう、非常に重い責任です。

強姦罪、強制わいせつ罪などの重度の刑事上の責任を負うような、犯罪行為となるセクハラを行った加害者に対しては、雇用契約上の責任についても「懲戒解雇」とする例が多くあります。

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諭旨解雇・諭旨退職

懲戒解雇ほど重度の責任ではないものの、「会社を退職することを前提とした懲戒処分」という点で、諭旨解雇、諭旨退職も、非常に重い責任追及となる懲戒処分です。

一般的に「諭旨解雇」、「諭旨退職」といわれる懲戒処分の方法は、退職をうながした上で、これに応じない場合に「解雇」「退職」扱いとする処分のことをいいますが、細かい規定は、会社の就業規則の定め方によります。

懲戒解雇による責任追及と比べて、退職に応じれば経歴にキズがつかなかったり、退職金が支給されたりといった点が異なります。

出勤停止・停職

「出勤停止」、「停職」という雇用契約上の責任追及の方法は、いずれも、就業規則に定められた一定期間の間、労働者を会社に来させないようにする懲戒処分を意味しています。

セクハラ行為が、会社を辞めさせるほど重度の違法性を有する行為でなかったとしても、大きな責任を与えたいといった場合に、会社が責任追及手段として利用するのが、「出勤停止」、「停職」です。

減給

「減給」による雇用契約上の責任追及は、金銭的な制限があることから、金銭的なダメージをあたえるというよりは、「懲戒処分」という責任追及をされた、という意味が大きいと言えます。

退職を前提とした懲戒解雇、諭旨解雇、諭旨退職などとするほどではないものの、ある程度重度の責任追及が必要なセクハラ行為に対しては、「減給」を行う会社が多くありあmす。

なお、減給の上限は、「1回あたり、平均賃金の1日分の半額」とされています。

けん責、戒告

懲戒処分による責任追及の中で、軽度のものが、「けん責(譴責)」、「戒告」です。いずれも、会社からセクハラ加害者に対する注意指導的な意味を持ちます。

会社には雇用され続けることができ、始末書を提出するなどして注意の意味を示す懲戒処分です。

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今回は、近年特に問題となっているセクハラ問題について、セクハラ加害者の責任を、「民事上の責任」、「刑事上の責任」、「雇用契約上の責任」の3種類に分けて解説しました。

責任追及の方法と、その種類、性質による違いをしっかり理解しておくことによって、万が一セクハラの被害者となってしまったときにも、セクハラ問題の解決のための理解が深まります。

セクハラの被害にあってしまった労働者の方、責任追及を検討されている方は、労働問題に強い弁護士に、お早目に法律相談ください。

「セクハラ加害者」の法律知識まとめ

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弁護士浅野英之(弁護士法人浅野総合法律事務所 代表)

弁護士浅野英之(弁護士法人浅野総合法律事務所 代表)

弁護士法人浅野総合法律事務所(東京都中央区銀座)の代表弁護士(第一東京弁護士会所属)。 不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、近年ニュースでも多く報道される労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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