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浅野 英之
弁護士
弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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譴責(けん責)とは?その意味と懲戒処分におけるレベル、違法になるケースを解説

譴責は、改善を求めて将来を戒める「懲戒処分」のうち、始末書の提出を伴うものです。始末書は、いわゆる反省文や謝罪文をイメージすればわかりやすいでしょう。単なる注意にとどまらず、書面を提出されることによって、問題の深刻さを認識させるのが主な狙いです。

譴責は、懲戒処分のなかでは軽い部類に属します。それでもなお、労動者の被害は決して小さくはありません。言い分を聞いてもらえず、会社の指示通りの始末書を書くよう執拗に求められるケースもありますが、不用意に従う前に、処分が違法でないかを検討してください。

違法な譴責に正当性はなく、撤回を求めて会社と交渉する必要があります。譴責の理由となる事情、懲戒事由の該当性を確認し、不当な目的がないかどうかも吟味しなければなりません。

今回は、譴責処分の基礎知識について、労働問題に強い弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • 譴責は軽度の懲戒処分だが、始末書の提出を要する点で、戒告よりは重い
  • 事実無根な処分、相当性を欠く譴責は、不当処分であり違法となる
  • 不当な譴責処分を受けたとき、始末書の提出は拒否した上で、弁護士に相談する

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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譴責とは

譴責の意味

譴責(けん責)とは、非違行為を行った際になされる使用者からの厳重注意であって、始末書の提出を伴うものをいいます。この始末書というのは、事実と謝罪を含む文章のことであり、反省文や謝罪文をイメージしてもらえばわかりやすいでしょう。

譴責は懲戒処分の一種であり、そのなかでも軽度の処分です。その目的は、労働者に改善を求め、将来を戒めることにあり、使用者からの制裁(ペナルティ)という側面があります。

譴責処分に相当する不適切行為の例

企業の運営にとって不適切な行為のうち、比較的軽微なものに対して、譴責が選択されます。譴責をはじめとした懲戒処分は、就業規則の相対的必要記載事項なので、どのような場合に譴責が可能かは、就業規則に定めを置かなければ処分を下すことができません。

譴責に相当する不適切な行為には、例えば次のケースがあります。

  • 軽度のハラスメント
    言葉のみによるハラスメントで行動を伴わないもの(セクハラ発言、暴言や悪口など)、軽い職場いじめ、業務指導との区別の際どいパワハラなど
  • 職務怠慢
    仕事を怠ける、業務を放棄する、居眠りする、サボる、遅刻や早退、無断欠勤といったもののうち、注意すれば改善の見込める軽微なもの(度重なる勤怠不良には、より重い処分が検討される)
  • 業務上のミス
    業務におけるミスのうち、軽度の過失によるもので、会社の業務に及ぼす損害が大きくないもの(故意や重過失によるミスには、より重い処分が検討される)
  • 不注意による規則違反
    企業秘密や顧客情報を不注意で外部に漏らす行為、申告忘れによる経費の過剰受給、社内の備品の私的な使用といった軽度の規則違反
  • 職場における不適切な言動
    会社や社長、上司に対する批判、SNSにおける名誉毀損、社内イベントにおける過度な飲酒と不適切行為など

いずれも、注意すれば正すことのできる程度の軽微なものに限られます。

上記にあてはまる行為でも、複数回や長期間続き、何度注意をしても改善されないものや、会社に及ぼす被害が甚大なものなどは、譴責程度では収まらず、より重度の処分となる可能性が高いです。

他の処分と比べた譴責の重さのレベル

譴責は他の懲戒処分と比べると軽い処分だということができます。懲戒処分の内容は、法律に決まりがあるわけではなく会社が定めるものですが、一番重い懲戒解雇から順に、諭旨解雇・諭旨退職、降格、出勤停止、減給、そして戒告・譴責というような定めが一般的です。

つまり、譴責は、懲戒処分のレベルとしては二番目に軽い処分です。会社を辞めざるを得なくなる懲戒解雇や諭旨解雇とは異なり、あくまで在職のまま、改善を求めるものです。

懲戒処分の種類と違法性の判断基準」の解説

譴責と戒告の違い

譴責と同じく、労働者に対して厳重注意を与える懲戒処分に「戒告(かいこく)」があります。譴責と戒告とはよく似ていますが、その違いは始末書の提出の有無にあります。譴責の方が、始末書を提出する分だけ労動者に対する制裁の度合いが強く、一段階重い処分という位置づけです。

ただし、譴責や戒告といった用語は、法律上の定義が決まっているわけではありません。どのような内容の懲戒を、何と呼ぶかは、会社によって様々であり、始末書の提出を伴うものを「戒告」と読んでいる企業の例もあります。

戒告の意味と労動者への影響」の解説

譴責処分の手続きの流れ

次に、譴責処分が行われる場合の手続きの流れについて、解説します。譴責についての手続きが適正であるかどうか、不当な扱いを受けていないかを知る参考にしてください。

STEP
事情聴取と証拠の収集を行う

まず、譴責になりうる事情が存在する場合、会社は事実の存否を確定すべく、本人や関係者にヒアリングを実施し、証拠を集めます。

調査に時間を要するときは自宅待機を命じられる例もありますが、譴責程度のレベルに収まる場合は、調査中も仕事を続けられるのが一般的です。

STEP
弁明の機会を付与する

懲戒事由に該当すると判断された場合、本人に弁明の機会、つまり言い分を主張できる機会が与えられます。会社は、本人の言い分も踏まえて懲戒のレベルを決定するため、できるだけ軽度の処分となるよう、事実に誤認のある場合は積極的に主張すべきです。

STEP
懲戒処分のレベルを決める

調査と弁明によって得た情報をもとに、類似事例の判断も参考にしながら、会社としていかなるレベルの懲戒を下すのかを決定します。

就業規則で懲戒委員会の開催が定められている場合は、委員会の決議によって処分の重さが決められます。

STEP
譴責処分通知書を交付する

決定された内容は、口頭ではなく書面によって通知されるのが通例であり、譴責処分通知書といった書面が交付されます。書面が交付される理由は、労働者に事の重大さを自覚させ、後に解雇せざるを得ない事態となるときのリスクを軽減することにあります。解雇の前に譴責をして改善の機会を与えていることで、裁判所に、解雇を有効なものと認めてもらいやすくなるからです。

なお、譴責を軽く見て、口頭での告知で済ませようとする会社に対しては、その理由と共に書面で明示するよう労動者側から求める必要があります。

STEP
始末書の提出を命じる

譴責の処分の内容として、始末書の提出を命じて反省を促します。譴責処分通知書において、始末書の提出先、提出期限を定められるのが通例です。

始末書は、謝罪や反省の意味がある文章なので、本人の意思に基づいて、従業員自身が考えるのが適切ですが、会社によっては文書内容の指定があったり、渡された文例通りに記載しなければやり直しをさせたりといったケースもあります。

後述「譴責で命じられた始末書を拒否することができるかについて」の通り、このような始末書の指示は違法の可能性もあり、内容に納得がいかないなら拒絶すべきです。

弁明の機会から解雇までの手順」の解説

譴責処分を受けた場合の労働者側の対応と争い方

労働者の立場で、譴責処分を受けた場合の対応は、次のように進めてください。不当な譴責処分を受けた際の争い方についても解説します。

就業規則上の根拠を確認する

譴責の通知を受けたら、まずは就業規則を確認し、譴責処分の根拠を探してください。使用者には就業規則を周知させる義務があるため、閲覧できないとしたら違法です。会社に開示を請求しても閲覧できないときは労働基準監督署で確認する方法もあります。

感情的にならず、冷静に状況を把握することが、良い解決に繋がります。処分内容や理由については、譴責処分通知書などの文書で確認します。書面に示された理由が曖昧なときは、使用者に質問するなどして具体化していく必要があります。

この段階で確認しておくべきことは、以下の点です。

  • 譴責の理由とされた事実が、真実かどうか
  • 就業規則に譴責について定められているか
  • 就業規則の定める譴責の事由に該当するか

懲戒処分は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは権利濫用として無効です(労働契約法15条)。したがって、確認の結果、譴責の事由に該当しない場合や、譴責とするにふさわしくない程度の行為である場合などは、不当処分として違法になります。

正当な解雇理由の例と判断方法」の解説

譴責が不当処分である証拠を集める

以上の通り、不当な処分であれば、違法であり、無効です。

そして、不当処分であると主張するには、譴責が不当であることを示す事実について、立証するための証拠を集めなければなりません。不当性を示す証拠を一つでも多く集めることが、有利な解決の助けになります。証拠の収集は早期解決にも繋がります。労動者側の反論を支える証拠が充実していると、裁判での有利な結果を予測でき、交渉段階でも会社の譲歩を引き出しやすくなります。

証拠収集は、譴責の正当性に疑問を持ち始めたタイミングですぐに始めてください。収集すべき証拠がわからない場合、弁護士への相談が有益です。

不当解雇の証拠の種類と集め方」の解説

再度の弁明の機会を求めて反論を伝える

前章で、譴責処分に至る流れのなかで「弁明の機会」が必要と解説しましたが、処分後であっても、言い分が適切に考慮されていない場合は更に弁明を聞くよう要求してください。処分理由に異議のあるときは弁明の機会を求め、自分の立場や見解について意見を伝え、再評価するよう依頼します。

そもそも当初の弁明の機会でしっかりと反論が考慮されていれば、誤った事実をもとに譴責にされることはなかったはずです。譴責処分の理由に誤認や不適切な点があるなら、それは処分を決めた会社側に非があるといってよいでしょう。

反論は、口頭や電話、メールといった軽い手段ではなく、書面で伝えてください。内容証明の方法を利用すれば、どのような反論をしたかを証拠として残すことができます。

反論の際は、真実である部分については嘘をつかず、反省と謝罪の態度を示すのも重要です。明らかに事実である部分まで認めずに言い逃れをしては、保身ととられて評価を下げたり、反論すべき部分の信用性を低下させたりするおそれがあります。

始末書の提出を拒否する

譴責の正当性に疑いがある場合は、争う姿勢を示すべきです。

争う場合、譴責の内容として指示された始末書の提出は拒否すべきです。譴責の理由について不服があるにもかかわらず始末書の提出に応じると、その事実を認めたと評価されるおそれがあり、不当性を争う姿勢とは矛盾してしまいます。

提出を拒否する場合、会社の指定した期限まで待つのではなく「納得がいなかいので始末書の提出は拒否する」と速やかに伝えましょう。拒否の意思表示もまた、証拠に残るよう内容証明など文書で伝えるのがお勧めです。

始末書はあくまで労動者の意思を表示するものなので、明確に拒否したのに何度も始末書の提出を求めるのは不適切です。そのような被害に遭ったら、慰謝料の請求も検討します。執拗に始末書の提出を求めた上司の行為などについて、慰謝料の支払いを認めた裁判例も存在します(東京地裁八王子支部平成2年2月1日判決など)。

譴責処分における始末書の拒否については次章「譴責で命じられた始末書を拒否することができるかについて」で詳しく解説します。

始末書の拒否と強要された時の対応」の解説

弁護士、労働組合、労働基準監督署に相談する

ここまでの対応で、会社が強硬に譴責処分を推し進めてくる場合には、労動者だけでは対応が困難なこともあるでしょう。そのときは、労働法に精通した専門機関にアドバイスを求めるのが有益です。相談すべき窓口には、労働組合、労働基準監督署、弁護士などがあります。

  • 労働組合の支援を受ける
    労働組合に加入していれば、団体交渉による支援を受けられます。社内に労働組合がない場合には、社外にある合同労組(ユニオン)の助けを借りるのが有効です。
  • 労働基準監督署や労働局に相談する
    労働基準監督署や労働局などの行政機関は、企業が労働法に違反しないよう監督する役割を担い、譴責をはじめ懲戒処分の適正性について相談し、意見を求めることができます。ただ、懲戒処分の撤回や慰謝料請求などについて、労動者の代わりに戦ってくれることは期待できません。
  • 弁護士の助言を求める
    労働法に詳しい弁護士に相談し、法的な助言を求めると共に、必要に応じて、弁護士を窓口として会社と交渉したり、労働審判や訴訟などの裁判所を利用した法的措置を講じることができます。

譴責が不当であるときには、弁護士に依頼するのが最も解決力が高くおすすめです。とはいえ、まだ譴責の段階に留まるとき、労動者としても、会社との関係を悪化させてまで激しく争おうという気持ちまでは固まらないことも…。手遅れにならぬうちに軽い無料相談から始めるのもよいでしょう。

「労働問題を弁護士に無料相談する方法」の解説

裁判で訴える

最終手段として、処分が不当であると考える場合は、裁判所に訴訟を提起します。また、労使の紛争については、訴訟よりも簡易な裁判手続として、労働審判を活用することができます。労働審判は、原則として3回までの期日で、迅速かつ柔軟に労働問題を解決できる制度です。

労働審判もしくは訴訟によることで、裁判所において処分が適法かどうか、適正かどうかを審議してもらうことができます。

労動者が裁判で勝つ方法」の解説

譴責で命じられた始末書を拒否することができるかについて

そもそも始末書の提出は法的な義務ではありません。

懲戒権(譴責)や人事権の行使によって、始末書提出を義務付けることはできるものの、拒否は可能であり、拒否しても刑事罰などの法律上の制裁はありません(※ なお、懲戒権は就業規則に定めて初めて会社に与えられますが、人事権は労働契約によって当然に付与されます)。

とはいえ、始末書の拒否にはリスクもあります。少なくとも対会社との関係では、規律に違反する行為と評価されるでしょう。「譴責で命じられた始末書の作成に応じるべきか、拒否すべきか」の選択は、拒否したことによる影響やリスクを理解して決める必要があります。

始末書の提出を拒否するリスクには、次のものが挙げられます。

  • 拒否したことで更に厳しい処分を下される
    始末書拒否を理由に、譴責よりも厳しい処分(場合によっては懲戒解雇など)を下される危険があります。
    なお、始末書の不提出を理由とした処分については裁判例も意見が分かれています。始末書の強制は「個人の意思の尊重」という法理念に反するとして違法とした裁判例がある一方、解雇を有効と判断した例(東京地方裁判所平成23年10月31日判決など)もあるので、慎重に対応する必要があります。
  • 拒否したことで社内の人間関係が悪化する
    始末書を拒否することは社内の人間関係を悪化させます。明確な法律上の悪影響がなくても、事実上の低評価に繋がったり、職場いじめやハラスメントの原因になったりする危険があります。

始末書の提出がたとえ義務だとしても、正当な理由があれば拒否できます。

始末書の拒否に正当な理由がある場合とは、処分の根拠となった内容が事実と異なるケースが典型例です。事実無根の譴責処分に応じる必要はなく、そのような始末書は拒否して争うべきです。

裁判例でも、青森地裁弘前支部平成12年3月31日判決(学校法人柴田学園事件)は、就業規則上の非違行為があったとはいえない場合にまで提出を要求するのは、その趣旨を逸脱するものとして許されないと判断しました。

また、東京地裁平成13年12月25日判決は、始末書不提出などを理由とした解雇について、譴責処分後に、専門家に相談中であるとして猶予を依頼したのに考慮せず、提出を督促し、新たな譴責をした使用者の対応は穏当さを欠くとし、提出拒否には一応説明可能な理由があったことなども考慮し、解雇権の濫用であると判断しました。

以上の裁判例からして、理由のない譴責処分や、それに基づく始末書の提出は、納得がいかないなら断固として拒否すべきです。そして、処分に不当性が疑われるときは弁護士に相談し、相談中であることも会社に伝えておくのがよいでしょう。

始末書の提出を拒否する場合でも、その理由や背景は明確に示し、冷静に対処するのが重要です。弁護士に依頼し、交渉の窓口となってもらえば、追い打ち的に不利益な処分をされる事態を防ぐことができます。

労働問題に強い弁護士の選び方」の解説

譴責処分が違法となる条件は?

次に、譴責が違法と判断されるケースとその条件について解説します。

譴責は、懲戒処分の一環として労動者に大きな不利益を与えるので、法的な規制を受けます。したがって、懲戒権の行使であるとはいえ、違法と判断されるケースがあります。

就業規則に譴責の根拠や事由が示されていない場合

まず、就業規則に根拠や事由が示されていない場合、譴責は違法です。

そもそも譴責を行うには就業規則上の根拠が必要です。裁判例においても「使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことを要する」(フジ興産事件:最高裁平成15年10月10日判決)と判断されており、重要なのは懲戒の種別とその事由の両方を定める必要があるという点です。「懲戒することができる」と定めるのみでは足りず「どのような事由のあるときに譴責処分にすることができるか」を明記する必要があります。

なお、就業規則に定められた労働条件は合理的であり、かつ、その内容が従業員に周知されてはじめて労働契約の内容となりますから、譴責の事由についても、労動者の利益を不当に制限するものについては無効となる可能性があります。

就業規則と雇用契約書が違う時の優先順位」の解説

懲戒事由に該当する具体的な事由がない場合

譴責を行う場合は、当然ながら、理由とした事実が存在しなければなりません。

会社が事実を誤認し、例えば「無断欠勤を理由に譴責したが、実際は承諾を得ており無断ではなかった」「部下へのセクハラを理由に譴責したが、部下の虚言だった」という場合、譴責は違法です。

また、譴責の根拠となった事実は、就業規則の懲戒事由に該当していなければなりません。懲戒事由の該当性の判断では、単に形式的に該当する行為というだけでなく、実質的にみても労動者の行為によって企業秩序が乱された、またはそのおそれがあったといえる必要があります。

実際の裁判でも、こうした観点から懲戒処分に関する規程を限定的に解釈して「懲戒事由に該当しない」と判断する例があります。

例えば、倉田学園事件(最高裁平成6年12月20日判決)は、就業規則で無許可のビラ配布を懲戒対象としていたものの、実質的に企業秩序を乱すおそれのない平穏な態様でのビラ配りは、禁止された無許可のビラ配布には該当しないと判断しました。

譴責が相当でない場合

懲戒事由に該当するとしても、その事由が譴責を下すのに相当でなければ、やはりその譴責処分は違法と判断される可能性があります。

例えば、本来ならもっと軽い「戒告」にすべきところを「譴責」にした場合、処分が重すぎることになります。懲戒処分とするまでもなく、注意指導に留めるような事情(軽微で、かつ、初めてのミスなど)に対しては、たとえ軽度の譴責といえど違法と判断される可能性が十分にあります。

懲戒権の濫用に当たる場合

懲戒権は企業経営にとって重要な権利ですが、濫用は許されません。

譴責についても、懲戒権の濫用に当たる場合には違法であり、無効です。労働契約法15条は、労働者の行為の性質、態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、権利濫用として無効となる旨を定めています。

そもそも譴責の前に口頭や文書で注意や指導を行うほうが穏当で、それでも改善が見られない場合に初めて譴責に処する必要が生じます。社長や上司のその場の感情、個人的な好き嫌いで、軽い行為なのにあえて譴責の対象にするといったことは許されません。

譴責は、軽い処分に分類されるので、濫用になるケースが少ないと誤解する人もいます。しかし、「軽い処分だから」と甘く見る会社ほど、少しのことでも槍玉にあげて譴責処分にしてしまい、懲戒権の濫用を招くおそれがあります。

なお、懲戒処分一般に適用される以下の各原則に違反する場合も、違法となります。

  • 不遡及の原則
    懲戒規定の作成または変更時より前の事案に遡って適用してはならない。
  • 類推解釈の禁止
    就業規則上の懲戒規定を類推解釈して、拡張適用することは許されない。
  • 一事不再理の原則(二重処罰の禁止)
    同じ事由について繰り返し懲戒処分を行ってはならない。
  • 平等取扱いの原則
    同程度、同内容の行為については、下す処分の種別や重さも同程度でなければならない。

不当解雇に強い弁護士への相談方法」の解説

譴責処分を下された労働者側の不利益

懲戒のなかでは軽い譴責であっても、被る不利益を考えると放置するのは危険です。

減給や出勤停止とは異なり、譴責は厳重注意を与えるのみなので、処分によって直ちに経済的な不利益を被るわけではありません。しかし、譴責による不利益は、間接的なものまで含めれば、労動者が思うよりも大きいものです。

人事考課に悪影響を及ぼす

譴責によって、人事考課に悪影響が及ぶことがあります。

会社には人事権があり、労動者を評価して、昇格や降格を決めたり、異動させたりします。この人事権の行使において、過去に譴責されたことがある事実はマイナス要素として考慮されます。

譴責されたことをきっかけに社内の評価が低下し、地方に転勤させられたり、閑職への異動を命じられたりするのが典型例。ハラスメント事案で譴責を受けた場合など、「被害者」とされた人との物理的な距離を置くために、納得のいかない人事異動を命じられることもあります。

違法な異動命令を拒否する方法」の解説

出世や昇給、賞与の評価に影響する

一度の譴責で直ちに会社を辞めなければならないわけではないですが、出世コースから外れ、活躍の機会を奪われてしまうことは十分に考えられます。

譴責は、つまり、問題行為をしたという指摘を意味するので、昇給に影響が出ることもあります。昇給に関する事項は、就業規則の絶対的必要記載事項にあたるので、昇給への影響の有無を知りたいときは、就業規則を確認する必要があります。

更に、譴責が賞与の額に影響する可能性もあります。賞与は、残業代のようにその算定方法が法律に定められているわけではなく、能力や業績、貢献度などに応じて会社に裁量の幅があることが多いもの。この場合、譴責をされた事実を減額要素として考慮するのは違法ではないからです。

ボーナスカットの違法性」の解説

退職金への影響はある?

懲戒解雇だと、退職金の減額ないし不支給とする条項を定める規程例もありますが、軽度の処分である譴責においてまでこのような条項を定めることは通常ありません。

とはいえ、退職金への影響が全くないわけではありません。譴責による影響で給料が下がってしまえば、退職金の算定基礎となる基本給が減り、結果として退職金額が少なくなるおそれがあります。

例えば、勤続年数に比例して定額で支払われる退職金なら譴責の有無は影響しませんが、在職中の役職や等級などによって金額が変動する場合には事実上影響してしまいます。

退職金を請求する方法」の解説

転職の際にマイナスはある?

譴責は企業秩序に違反したという否定的な評価の表れです。軽い処分とはいえ、転職先によってはマイナスに評価する人もいるでしょう。もちろん、再就職先に譴責された事実を知られなければ、警戒されるリスクはなくなりますが、面接時の質問や前職関係者の聴取などによってバレてしまう可能性も否定はできません。

面接官から「譴責などの処分を受けたことがあるか」と質問されたら、「ある」と答えるしかありません。会社には調査の自由が保障され、その反面、労働者には真実を告知する義務があります。後から嘘がバレると、経歴詐称として深刻なトラブルに発展しかねません。なお、労働者から自発的に譴責の事実を伝える義務まではないと理解されています。

以前は採用にあたり、前職での仕事ぶりや成績まで細かく気にする会社もありました。しかし、個人情報やプライバシーへの意識の高まりから、そのような調査は減少傾向にあります。転職も一般化していることから、懲戒解雇のように重度の処分はともかく、譴責レベルの問題ならば、ある程度は許容してくれる企業も増えています。

懲戒解雇が再就職で不利にならない対策」の解説

譴責についてのよくある質問

最後に、譴責についてのよくある質問について回答しておきます。

譴責されたことを社内に公表されたら違法?

譴責処分が下されると、その事実が社内に公表されることがあります。処分内容を公表することは、企業秩序の維持と再発防止に効果的です。ただその一方で、譴責の対象者のプライバシーを侵害したり、名誉を毀損したりするおそれがあります。

社内公表の利点があることから一律に禁止なわけではないものの、報復や見せしめ目的がある場合には違法となり、争うべき場合もあります。

譴責されたことは履歴書に記載しなければいけない?

履歴書の賞罰欄というものがありますが、ここにいう「罰」は、確定した有罪判決だとされます。つまり、刑事罰を受けたことを意味します。譴責は、使用者から受けた社内の制裁に過ぎませんので「罰」には含まれません。したがって、譴責された事実は、履歴書に記載しなくても構いません。

譴責のように軽い懲戒処分は、あくまで社内での改善を求めるもので、転職する場合にまで法的な影響のあるものではないのが基本です。

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、懲戒処分の1つである譴責について解説しました。

譴責は、懲戒処分としては比較的軽いものの、考課や賞与に悪影響を及ぼします。使用者は「処分のレベルが軽いから」と甘く見る傾向にあり、悪用され、濫発されると違法な譴責が生じやすくなってしまいます。

譴責もまた、懲戒処分の一種である以上、適正な手続きが保障されており、濫用的な行使は制限されます。譴責の通知を受け取ったなら、その理由に誤りがないかをご確認ください。そして、不当な処分だと考える場合は、始末書の提出は拒否すべきで、直ちに弁護士にご相談ください。

譴責処分を「小さな労働問題」と捉えて対応を怠ると、更に重い処分に繋がり、最終的には解雇されて会社を辞めざるを得なくなる危険もあります。不安な方は、早期の相談をお勧めします。

この解説のポイント
  • 譴責は軽度の懲戒処分だが、始末書の提出を要する点で、戒告よりは重い
  • 事実無根な処分、相当性を欠く譴責は、不当処分であり違法となる
  • 不当な譴責処分を受けたとき、始末書の提出は拒否した上で、弁護士に相談する

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