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セクハラで慰謝料を請求する方法と、慰謝料額の相場

セクハラは、重大な労働問題です。
セクハラが重度だと、強制性交等罪(旧強姦罪)、強制わいせつ罪など犯罪にもなります。

「男尊女卑」の伝統の根深い会社は、セクハラを蔑ろにし、被害者は泣き寝入りでした。
しかし、昨今はセクハラは社会問題化しています。
セクハラに屈せず、慰謝料を請求する方も増えています。

女性が社会で活躍するためにも、セクハラを減らす必要があります。
セクハラしたら制裁が下ると、セクハラの慰謝料請求によって警告する必要があるのです。
ブラックな会社ほど、セクハラを社内で解決するのは困難。
上司に相談しても握りつぶされたり、社長自身が加害者だったりするなら、弁護士に相談ください。

セクハラの慰謝料を請求する方法や、慰謝料額の相場について、労働問題に強い弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • セクハラが不法行為(民法709条)にあたるなら、慰謝料を請求できる
  • セクハラの慰謝料の相場は50万円〜200万円だが、さまざまな考慮要素により増減する
  • セクハラの慰謝料は、直接の加害者だけでなく会社にも請求できる

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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セクハラの慰謝料とは

まず、セクハラの慰謝料についての基礎知識を解説します。

セクハラを理由に、慰謝料を請求しようと考えるとき、「セクハラとはどんなものか」「どのような場合に、慰謝料がもらえるセクハラに該当するのか」といった定義について理解してください。

セクハラの定義

セクハラは、性的な嫌がらせのこと。
セクシュアル・ハラスメントの略称です。

セクハラは男女雇用機会均等法11条で、法律上も次のように定義されます。

男女雇用機会均等法11条

事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

男女雇用機会均等法(e-Gov法令検索)

「対価型」と「環境型」

慰謝料請求の対象となるセクハラは、大きく分けて「対価型」と「環境型」の2つ。

セクハラの2分類
セクハラの2分類

対価型セクハラは、性的行為に対価を要求する違法行為です。
例えば、次のケースがあります。

  • 上司が体を触り、「拒否したら評価を下げる」と脅された
  • 社長が交際を強要し、断ったら会社に居づらくなった
  • 職場のメールでディナーの誘いを頻繁に送り、返信しないと仕事をもらえない

対価型セクハラの多くは、セクハラ加害者が社長をはじめ目上の人でしょう。
社内の地位を利用したセクハラは、断りづらいもの。
被害の声が上がりづらく、「見えないセクハラ(隠れたセクハラ)」になりがちです。
対価型セクハラは、「嫌がる被害者を、無理やり従わせる」ので、慰謝料も高額になります。

これに対し、環境型セクハラは、例えば次のケースで成立します。

  • 社内で、女性社員に見えるように卑猥なポスターを広げた
  • 会社の飲み会で、下品な下ネタばかり言う
  • 会社のルールとして、お茶くみ、コピー取りが女性社員に義務付けられている
  • 女性社員を「ちゃん付け」し、「おばさん」などと呼ぶ

環境型セクハラでは、対価型と違って、特定の被害者に対する行為でないこともあります。
社内の雰囲気がセクハラとなるとき、同僚同士や、部下から上司に対してもセクハラが起こります。
環境型セクハラは不愉快でしょうが、程度の問題であり、慰謝料の算定が困難なケースも少なくありません。

セクハラの慰謝料を請求する根拠

セクハラ加害者に、慰謝料請求する根拠は、不法行為(民法709条)にあります。

民法709条

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

民法(e-Gov法令検索)

セクハラが、不法行為に該当するには、次の要件を必要とします。

  1. 権利侵害(違法性)
  2. 故意または過失
  3. 損害の発生
  4. 因果関係

セクハラが、女性のプライバシー権、性的自由といった権利を侵害するのは明らかです。
そして、多くの場合、加害者には故意または過失があります。
なので、セクハラ被害者が精神的苦痛をはじめ損害を受ければ、不法行為の要件を満たします。

セクハラ問題は、弁護士に相談できます。

労働問題に強い弁護士の選び方は、次に解説します。

セクハラの慰謝料の相場

では、セクハラで慰謝料を請求する場合、慰謝料額の相場はいくらほどでしょうか。
結論としては、セクハラの慰謝料の相場は50万円〜200万円が目安です。

セクハラ被害者側からすれば、高いほどよいというお気持ちでしょう。

しかし、あまりに高額すぎると相手が応じず、裁判所の心証も悪化するおそれがあります。
過去のセクハラの裁判例が参考になりますが、1つとして同じ事情のケースはありません。

類似のケースからどの程度の慰謝料を請求すべきか知るため、参考となる裁判例を説明します。

【70万円】東京地裁平成29年9月22日判決

東京地裁平成29年9月22日判決の事案は、

  • 口論の際に、右手を伸ばして被害者の右胸の下部を、下から持ち上げるように触った
  • 自分が使用した歯間ブラシを洗わせた

というケースで、セクハラの慰謝料71万7630円を認めました。

【120万円】東京地裁平成30年1月16日判決

東京地裁平成30年1月16日判決の事案は、

  • 6年以上にわたり、高い頻度で接触したり、卑猥な発言をしたりといったセクハラを繰り返した
  • 胸をもむしぐさ、ワンピースのファスナーを下ろすしぐさ、実際に下ろす行為、エレベーター内で自身の頭や顔を被害者の顔付近に押し付けるなどの行為
  • 被害者から、強い言葉で叱責、拒絶されたにもかかわらずセクハラが継続された
  • 「自身と被害者との信頼関係、仲の良さに甘えてしたいたずら行為だ」というなど、セクハラ行為後の反省がうかがわれない

というケースで、セクハラの慰謝料120万円を認めました。

【280万円】東京地裁平成27年8月28日判決

東京地裁平成27年8月28日判決の事案は、

  • 「明日の手術の説明をする」という口実で被害者の着衣をまくりあげた
  • ブラジャーをめくり、乳房に聴診器をあてた
  • 「導尿するために尿道を確認する」という口実でパンツを脱がせ、陰部に指を挿入した

というケースで、セクハラの慰謝料280万円を認めました。

適正な慰謝料額に疑問なら、弁護士の無料相談が活用できます。

セクハラの慰謝料額の判断基準

セクハラの慰謝料の相場が50万円〜200万円だとして、その幅のある解決事例のなかでどれくらいの金額になるのかは、さまざまな考慮要素、判断基準によって決められています。

裁判例で、セクハラ慰謝料を決定するにあたり、重要な判断要素となった事情を解説します。

セクハラの回数・頻度

セクハラが何度も繰り返されるほど、その違法性は強度となります。
そのため、回数・頻度の多いセクハラほど、請求すべき慰謝料は増額されます。

1回ずつは軽度のセクハラでも、何度も繰り返されれば、その分精神的苦痛は大きくなります。

セクハラの態様・悪質性

セクハラの態様が悪質であるほど、セクハラの慰謝料は増額されます。

セクハラの態様が軽度だと、「女性蔑視の発言をした」「下ネタを社内で公然と話した」という程度にとどまり、社内で解決すべきケースもあります。
一方で、重度だと、強制性交等罪、強制わいせつ罪などの犯罪にあたります。

セクハラ加害者の社内での立場

セクハラは、社内の立場が上位の者が、その権力を利用して行うことがよくあります。
このとき、立場が下の被害者が、社長や上司のセクハラにあらがうのは困難です。

そのため、セクハラ加害者の社内での立場が高いほど、請求すべき慰謝料は増額されます。

セクハラ加害者となったときの対応は、次に解説しています。

セクハラ後の被害者の退職

セクハラによって被害者の負った損害が大きいほど、より多額の慰謝料を請求すべきです。
労働者として、最も大きな損害は「会社を退職せざるをえない」ということ。
つまり、セクハラを受けて、被害者が退職を余儀なくされると、慰謝料は増額されます。

なかでも、精神的苦痛によりうつ病、適応障害にかかると、働きたくても働けません。
将来の逸失利益の請求も含め、損害賠償の額はとても大きな金額になります。

退職時に交わすべき退職合意書について、次に解説しています。

セクハラ後の反省・謝罪・被害回復

セクハラの後の加害者の態度もまた、慰謝料額に大きく影響します。

セクハラは悪いことですが、加害者が真摯に反省し、謝罪したり、示談金を払って示談したりなど、被害回復を図っていたケースでは、その分だけ慰謝料額が低減する可能性があります。

セクハラ後の正しい対応のうち、謝罪、示談について次に解説しています。

セクハラの事後対応の適切さ

後に解説のとおり、セクハラの慰謝料は、会社にも請求できます。
このとき会社が、セクハラの再発防止の措置を適切にしたかが、慰謝料の相場に影響します。

セクハラの防止のため、会社は、事情の調査、加害者の注意指導、異動による接触の回避、再発防止のための教育といった措置を高じなければ、労働者の安全は守れません。

セクハラの慰謝料を請求するための証拠

セクハラで慰謝料を請求する場合、まずは交渉による解決を目指します。
しかし、話し合いで解決しないときは、労働審判、訴訟で慰謝料請求をします。
このとき、裁判所での法的手続きなので、証拠が最重要視されます。

証拠のない慰謝料請求は、たとえセクハラが事実でも、認められないおそれがあります。

セクハラ被害を受けたのに、「十分な証拠を準備していなかった」というだけでセクハラを認めてもらえず、慰謝料の請求が否定されてしまったのでは「泣きっ面に蜂」です。

セクハラそのものが認められないだけでなく、「ちょっと肩を触っただけだ」「胸には手を触れていない」などと、事実とは違った加害者側、会社側の反論を許しかねません。

セクハラの慰謝料を請求する側、つまり、被害者側が、立証責任を負います。
証拠の準備は、労働者側でしておかなければなりません。
セクハラの立証に役立つ証拠には、例えば次のものがあります。

  • セクハラ発言の録音
  • セクハラ行為の録画
  • 防犯カメラの映像
  • 被害者の毎日つけていた日記・メモ
  • メール、LINE、メッセージ
  • 目撃した社員の証言
  • 医師の診断書

(参考:パワハラの証拠について

セクハラ行為そのものの証拠だけでなく、負った損害の証拠として、診断書も準備してください。

セクハラの証拠は、直後でなければ収集できないものもあります。
その重要性からして「労働審判や訴訟になったら集めよう」というのでは遅いでしょう。
セクハラの慰謝料を請求した後では、相手も警戒し、良い証拠をとれないおそれもあります。

労働審判や裁判に勝つための証拠について、次に解説します。

セクハラの慰謝料を請求する相手方

セクハラを止めるにも、慰謝料請求が有効です。

やめるよう強く要求しても、セクハラの自覚すらない加害者もいます。
会社に相談してもセクハラが止まらないなら、我慢せず慰謝料を求めるのが効果的。
このとき、慰謝料請求の相手方は、セクハラの直接の加害者だけでなく、会社も含まれます。

会社は、労働者の健康を害さぬよう、職場環境に配慮する義務があります(安全配慮義務)。
セクハラで心身を害してしまう職場は、この義務が果たされていません。

また、会社は「事業の執行」でされた不法行為について「使用者責任」を負います(民法715条)。

遅くとも相談を受け、セクハラを認識したら、被害防止を真剣に取り組まねばなりません。
会社への慰謝料請求は、「対応せねば、責任追及される」と示すのにとても有効です。
長く放置するほど、より高額の慰謝料を払わねばならないと理解すれば、すぐ対応してくれるでしょう。

業務にともなってセクハラ被害を受けたら、労災(業務災害)です。

労災の慰謝料について、次に解説します。

セクハラの慰謝料を請求する方法

セクハラの慰謝料を請求するとき、どんな手順で進めたらよいかを解説します。
会社や加害者の対応が誠実なら、話し合いで解決できるかもしれません。
しかし、セクハラする人、セクハラが横行する会社に、正しい対応は期待できません。

労働者側で、裁判所における法的手続きまで念頭に置いて、早めに進めましょう。
なお、社内での問題解決が困難なら、弁護士のサポートが有効です。

セクハラの解決方法
セクハラの解決方法

【内容証明】でセクハラ慰謝料を請求する

セクハラの慰謝料を請求したいとしても、すぐに裁判に訴えるのは得策ではありません。
証拠が十分にあれば、交渉で、責任を認めさせることができるケースもあります。

会社に顧問弁護士がついている場合など、相手も弁護士のサポートを受けているなら、予想されるセクハラの慰謝料の相場について、法律に即したアドバイスをもらっていることでしょう。
このとき、裁判に進む強い覚悟を示せば、説得し、交渉での解決も期待できます。

交渉は、内容証明による通知書を送ることで開始します。

加害者が責任を認めてくれるよう、セクハラの日時、場所、具体的な内容を詳しく書きます。

【労働審判】でセクハラ慰謝料を請求する

話し合いによる解決が困難な場合には、裁判所に訴えるしかありません。

まずは、労働者保護を目的とした簡易な制度である、労働審判を利用します。
労働審判は、訴訟の審理期間が長くなってしまうのに考慮し、スピード解決のために設けられた手段。

労働審判では、話し合いが重視されるため、セクハラ問題についても解決に至ることができます。

【訴訟】でセクハラ慰謝料を請求

交渉、労働審判のいずれでも解決しないなら、訴訟で請求をします。

例えば、加害者がセクハラの事実を完全に否定するケースは、労働審判では限界があるでしょう。
また、労働審判は、会社との争いの場なので、直接の加害者の責任は追及できません。
労働審判では、事実認定の機会が少なく、証拠があまりないと事実と異なる認定をされてしまいます。

セクハラ被害者が死亡してしまい、遺族が会社に慰謝料を請求したいケースなど、処罰感情が強い場合にも、協議(話し合い)や労働審判での迅速な解決は困難でしょう。

労働問題の解決方法について、次に解説します。

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、セクハラの被害者が慰謝料を請求できることについて解説しました。
セクハラの慰謝料額の相場を理解し、損しないよう請求してください。

セクハラの被害を受け、少しでも多くの慰藉料をもらいたいなら、すぐに対応が必要。
被害を受けた直後から証拠を集め、会社と加害者のそれぞれに、慰謝料を求めましょう。
円満解決できず、会社の対応が悪いときには、弁護士の助けが有効です。

セクハラの慰謝料請求をしても、会社が応じず放置され、さらに不当な処分を受けるなら、労働法の専門的な知識をもとに、弁護士が解決することのできる労働問題です。

この解説のポイント
  • セクハラが不法行為(民法709条)にあたるなら、慰謝料を請求できる
  • セクハラの慰謝料の相場は50万円〜200万円だが、さまざまな考慮要素により増減する
  • セクハラの慰謝料は、直接の加害者だけでなく会社にも請求できる

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