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セクハラの始末書の書き方(文例・書式・ひな形)と注意点

セクハラ問題を起こし、セクハラ加害者となると、セクハラの始末書を提出するよう命じられることがあります。
「始末書」は、労務管理でよく聞く用語ですが、作成を命じられら、その書き方には注意が必要。

相談者

どんな文章で書いていいかわからない

相談者

始末書を書くと不利にならないか不安

こんな法律相談をよく受けます。
セクハラ行為はしてはならない違法行為なのは当然ですが、後悔しても、過去は変えられません。
不利にならない始末書の書き方を理解し、これ以上悪化するのを防ぎましょう。

始末書の書き方をミスしたり、始末書として不十分な内容だったりすれば、反省をきちんと示せず、会社から厳しい処分を下されるなどの不利益があります。

今回は、セクハラで始末書を出すとき、その書式・ひな形のサンプルを示し、始末書の内容、書き方、出し方の注意点を、労働問題に強い弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • セクハラの始末書は、会社に対して反省・謝罪を示し、改善を誓う文書
  • セクハラの始末書は、書式・ひな形のサンプルを参考にしながら自分の言葉で書く
  • セクハラの全部または一部に争いがあるときは、顛末書のみ書く

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目次(クリックで移動)

解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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セクハラの始末書とは

セクハラの加害者には、セクハラの始末書を提出するよう命じられることがあります。
セクハラの始末書とは、セクハラしてしまったことについて反省し、謝罪の意思を示すとともに、「もうしない」という再発防止を誓うといった内容の書面です。

セクハラの始末書には、次に解説する2種類のものがあります。

セクハラ(セクシュアルハラスメント)とは「性的な嫌がらせ」のこと。
男女雇用機会均等法11条では、セクハラは「職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的言動により当該労働者の就業環境が害される事」と定義されます。

業務命令によるセクハラの始末書

セクハラの始末書が命じられる1つ目のケースが、業務命令としての始末書提出命令です。

会社は労働者に、業務命令を下せます。
業務命令は、雇用契約の性質上当然にできることとされていて、法律や就業規則などの根拠はいりません。
(ただし、実際は就業規則に「業務命令権」の定めがある会社が多いです。)

セクハラの加害者に始末書の提出を命令することもまた、業務命令の一環です。
業務命令でされる始末書提出命令は、雇われている労働者であるかぎり拒否できず、正当な理由なく拒むと、業務命令違反となります。
このとき、業務命令違反として、さらに懲戒処分を受けるおそれも。
始末書提出を拒否したことを理由に懲戒処分にすることは、「二重処罰」にはなりません。

スクロールできます
根拠拒否すると二重処罰
業務命令によるセクハラ始末書業務命令権業務命令違反禁止ではない

懲戒処分によるセクハラの始末書

セクハラの始末書が命じられる2つ目のケースが、懲戒処分としての始末書提出命令です。

懲戒処分とは、企業秩序を乱した労働者に、会社が下す制裁(ペナルティ)です。
この懲戒処分のなかに、始末書提出を命じる内容の処分があります。
つまり、懲戒処分のなかで、譴責・戒告と呼ばれる処分が、始末書提出を内容とするものです。
いずれも「非違行為を注意し、将来を改める」という意味があります。

譴責・戒告はいずれも、ごく軽度の懲戒処分なので、軽微な違反に対して課されるのが通常。
そのため、セクハラ事案でも、違法性・悪質性が軽度のものに下されるケースが多いです。

懲戒処分は、懲戒権を根拠にしますが、懲戒権は、就業規則に定められてはじめて行使できます。
はたらいている会社で、懲戒処分をどう行使できるか、就業規則のルールを確認する必要があります。

スクロールできます
根拠拒否すると二重処罰
懲戒処分によるセクハラ始末書懲戒権懲戒権違反禁止される

セクハラの始末書の書式・ひな形【ダウンロード】

セクハラしてしまった方が作成・提出すべき始末書の書式・ひな形を紹介します。
すぐに作らなければならないとき、ぜひテンプレートとして参考にしてください。

始末書の書式、ひな形はあくまでも一般的なサンプル。
起こしてしまったセクハラ事件の実情にあわせた加筆・修正が必要です。

また、セクハラの始末書について会社指定のフォーマットがある場合があります。
セクハラの始末書は、会社の命令にしたがって反省の意思を示す文書なので、指定のフォーマットがあるときはそちらにしたがうようにしてください。

セクハラ始末書の書式・ひな形・文例(PDFダウンロード版)

始末書

XXXX年XX月XX日

株式会社○○○○
代表取締役社長 ○○○○ 様

営業部第一課 課長 ○○○○

私は、XXXX年XX月XX日に催された、会社の忘年会にて、○○課社員である○○○○氏に対して、~~~、~~~、~~~という違法なセクハラ行為を行い、もって○○○○氏に対して多大なる精神的苦痛を与えてしまいました。
(※セクハラ行為の内容

今回の私の非常識かつ配慮を欠くセクハラ行為によって、○○○○氏に精神的苦痛を与えたことはもちろんのこと、会社に対しても多大なる迷惑をお掛けしたことを、深く陳謝致します。
(※セクハラ行為に関する反省・謝罪

この度のことを猛省し、セクハラの知識を深め、二度と同様の不祥事を起こさぬよう十分に注意してまいります。
今後は法令遵守を徹底して職務に邁進してまいります。
あらためまして、この度のことは大変申し訳ございませんでした。心からお詫び申し上げます。
(※今後の改善・再発防止

以上

(※形式的な記載事項

セクハラの始末書に記載すべき内容

あなたの気持ちをよく伝えるためにも、セクハラの始末書は自分の言葉で書かなければなりません。
そのため、自分の言葉で正しく記載するため、セクハラの始末書に必ず書くべき内容を解説します。

セクハラの始末書の書式・ひな形のサンプルでイメージがわいても、文面を丸写ししては、起こったセクハラ問題の実情にあわない内容となるおそれがあり、おすすめできません。

セクハラ加害者としての自覚と反省、謝罪、改善の意思がきちんと伝わらないと、懲戒解雇をはじめとした厳しい処分が予想されるケースもあります。
また、セクハラしてしまったことで、今後の評価が低くなってしまうのは避けられません。

セクハラ行為の内容

はじめに、問題とされているセクハラの場面で、どんな行為をしたのか、その内容を記載します。
会社のヒアリングでも「○○さんの尻を触って撫でまわしたと言われていますが、本当ですか?」といったように、一部ないし全部の事情を指摘されていることが多いので、認めるのであればその内容を書きます。

「5W1H」にしたがって、正確に書くようにしてください。

セクハラ行為について自覚を持ち、「どんな行為がセクハラと認定され注意指導されているのか」を理解したと示すことで、今後の改善が可能だと会社に示せるからです。

なお、セクハラ冤罪のケースや、会社の指摘する内容に被害者側の嘘がまざっていると感じるときは、あなたの認める内容に限って顛末書を出すにとどめるという方針がおすすめです。
くわしくは「一部を争う場合「顛末書」を出す」をご覧ください。

セクハラ行為に関する反省・謝罪

セクハラ行為の詳細を記載したら、その行為について、反省と謝罪の意思を示します。

セクハラをしてしまったとき、被害者に対して謝罪の意思を示すのは当然ですが、「始末書」という文書の性質上、迷惑をかけてしまった会社にもきちんと反省、謝罪を伝えるのが大切な内容となります。

社長や人事の方にとって、被害者・加害者の事情聴取(ヒアリング)、懲戒委員会の開催、被害者への配慮としての休職や復職支援、異動、転勤、配置転換など、セクハラ問題が生じなければしなくてよかった業務が多くあることを想像し、おわびを記載してください。

今後の改善・再発防止

始末書で重要なのは、今後同じセクハラ行為を繰り返さないと固く誓い、その再発防止策を約束することです。

始末書を書くケースは、「軽めのセクハラ」に対する「軽度の懲戒処分」がほとんど。
というのも、違法性・悪質性が重度のセクハラなら、始末書でおさまることもなく、懲戒解雇などもっと重度の処分が下されるからです。

つまり、始末書を命じられている時点で、今後もしばらくの間は会社に残り、社員として働きつづけるわけです。
少しでも自身の立ち位置を保持し評価を下げないためにも、今後二度と行わないことを始末書に記載してください。

セクハラ始末書の形式的な注意点

始末書の内容として書くべき事項を解説しましたが、最後に、形式的な記載事項についても解説します。

注意すべきは、始末書は会社に提出する「ビジネス文書」だという点です。
被害者に対して提出する謝罪文とは役割が異なるため、ビジネス文書として体裁を整えたものでなければなりません。

具体的な注意点をまとめておきますので、参考にしてください。

  • 文書の題名(タイトル)は「始末書」とする
  • 作成年月日を記載する
  • 作成者の氏名を記載し、末尾に押印する
  • 自身の役職名、肩書を記載する
  • 宛先は社長、もしくは、人事部長宛とする
    (会社の指示があるときは、それにしたがう)
  • パソコンで作成し、A4用紙にプリントする
  • 要点を簡潔に記し、最後に「以上」と記載する
  • 「です・ます」調で丁寧に書く
  • 誤字・脱字のチェックをする

セクハラの始末書の注意点

次に、セクハラの始末書を書くよう指示されたとき、注意すべきポイントを解説します。

セクハラ始末書は、会社が指示をする内容にしたがって書くものなので、それほど長文とはなりません。
しかし、誤った内容の始末書を書けば、その始末書がセクハラ加害者の今後の低評価に直結するといったデメリットがあるため、注意が必要です。

始末書では「今後の改善」が重要

くり返しになりますが、重要なことは、始末書の目的が「今後の改善」にあるということです。
始末書を記載し、一定の制裁(ペナルティ)を受けても、今後も会社に残り続けるならば、会社に対する誠意を十分に示さなければなりません。

今後の改善、再発防止策について、文面が長くなりすぎないよう、許される限り具体的に記載して、「今後は二度とセクハラをしないだろう」と会社に説得的に伝えるのが重要なポイントです。

始末書提出を拒否するとどうなる?

会社に命じられた始末書の提出を拒否してしまうと、不利益があります。

  • 業務命令権によるセクハラ始末書なら、「業務命令違反」
  • 懲戒権によるセクハラ始末書なら、「懲戒権違反」

大筋では認めているのであれば、始末書をきちんと書いたほうがよいでしょう。

とはいえ、セクハラと指摘された内容が事実無根だったり、セクハラ冤罪だったりするときは、会社と争い「セクハラはしていない」と反論すべきケースもあります。
セクハラ始末書を拒否したことで処分を受けたとき、その処分の有効性も含め、労働審判や裁判などで争うことまで覚悟してください。

不当な懲戒解雇について争うとき、次の解説を参考にしてください。

一部を争う場合「顛末書」を出す

セクハラしてしまったこと自体は争わず、謝罪、反省をしている場合でも、事実関係の詳細な部分にまで立ち入ると、被害者の証言と食い違っていたり、会社の処分には不服があったりすることも。
こんなとき、「始末書を書きたくない」と思うことでしょう。

正面きって始末書を書くことには心理的ハードルが高い場合も、何もせず無視したり、反抗的な態度をとったりしては、むしろ悪影響が及ぶ場合もあります。
最悪のケースでは、退職勧奨を受けてしまったり、懲戒解雇されたりなど、不利益な取扱いがあります。

折衷案に、セクハラの始末書は書かずに、事実関係のみを時系列に沿って書いた「顛末書」を提出する方法があります。
顛末書なら、「悪いことをした責任をとる」という意味はなく、認めた事実のみを書くだけだからです。

セクハラが冤罪のときは、対応に注意が必要です。

始末書に書く「進退伺い」とは

「進退伺い」とは、労働者側から会社に対して、反省の態度を示すとともに、「会社を退職しても構わないが、いかがでしょうか。」とお伺いを立てることをいいます。

「進退伺い」を書けば、「退職するか継続勤務するかを会社の一存に委ねる」という最大限の反省を示せます。
セクハラの始末書に「進退伺い」を記載しておいた結果、十分な自省が伝わり、会社から辞めてしまわないよう慰留されることもあります。

ただし、「進退伺い」を出した結果、解雇などの厳しい処分が下され、会社を辞めざるを得なかったときに、「やはりセクハラの事実自体を争いたかった」とならないよう、「進退伺い」を出す前に、心から納得できているか、じっくり検討が必要です。

セクハラ始末書と、似た文書の違い

セクハラ問題において登場する文書のなかで、始末書と間違えやすい以下の文書について、それぞれの意味や、性質の違いを順に解説しておきます。

他の文書との違いを理解すれば、セクハラの始末書にどんな内容を書くべきか、よりわかりやすく理解できるからです。

セクハラの始末書と、謝罪文の違い

セクハラの始末書と、謝罪文とは異なります。

セクハラの謝罪文とは、セクハラ加害者の反省、謝罪の意思を「被害者に対して」伝える性質の文書です。
これに対し、セクハラの始末書は、(その根拠が業務命令権であれ、懲戒権であれ)「会社に対して」反省の意思を示し、今後の改善を誓うという役割があります。
つまり、セクハラの謝罪文は、反省文に近い性質を持ちます。

セクハラの始末書と謝罪文とは、出す相手が違い、目的も異なるため、記載内容を変える必要があります。
いずれの文書も「セクハラを認め、反省の意思を示す」という内容は同じでよいですが、セクハラの謝罪文では被害者への配慮に重点が置かれる一方で、セクハラの始末書では今後の改善、再発防止を誓う点が重要になります。

参考に、セクハラの始末書と謝罪文の違いを、わかりやすく表にまとました。

スクロールできます
相手目的内容
セクハラの始末書会社今後の更生を誓う再発防止が重要
セクハラの謝罪文被害者謝罪の意思を示す被害感情への配慮が重要

セクハラの始末書と、顛末書の違い

セクハラの始末書と、顛末書は異なります。

セクハラ問題を起こした人が命じられる顛末書は、会社に提出する文書という点では始末書に似ていますが、始末書とは目的、意味が異なります。

セクハラの始末書には、「セクハラの事実を認め、反省・謝罪し、将来を戒める」という意味があるのに対して、顛末書は単に「顛末」、つまり、事実関係の一部始終を書いたのみの文書です。
つまり、顛末書には、反省や謝罪の意味は含まれません。

顛末書は、事実を報告させるという点で「報告書」、もしくは、念を押すのみの目的で使われるとき「念書」と呼ばれることもあります。

参考に、セクハラの始末書と顛末書の違いを、わかりやすく表にまとめました。

スクロールできます
相手目的内容
セクハラの始末書会社今後の更生を誓う反省・謝罪の意思を含む
セクハラの顛末書会社事実関係を報告する事実関係のみ記載する

会社から「セクハラの始末書を提出せよ」と命令されたとき、「セクハラかどうか」など内容面に争いがあるときは、反省、謝罪をあらわすセクハラの始末書でなく、顛末書にとどめる方針とするケースがあります。
これにより、会社と敵対的になりすぎず、しかしセクハラについては争う余地を残すことができます。

セクハラの始末書と、合意書の違い

最後に、セクハラの始末書と、合意書も異なります。

セクハラ問題で書くべき合意書とは、会社や被害者との話し合いのすえに、労働問題について決着がついたとき、その解決内容を証拠に残すために作成される文書です。
合意書には、謝罪文言などが書かれることはありますが、主な内容としては、慰謝料の支払い、守秘義務条項、清算条項などが重要です。

また、合意書は、加害者から一方的に出すものではなく、会社や被害者との合意で作成するもので、双方がサインして成り立つ文書です。

参考に、セクハラの始末書と顛末書の違いを、わかりやすく表にまとめました。

スクロールできます
相手目的内容
セクハラの始末書会社今後の更生を誓う一方的に反省を示す
セクハラの合意書合意セクハラ問題の解決合意した解決内容を示す

セクハラで慰謝料が問題となるケースでは、被害者の立場ではもちろん、加害者の立場でも、合意書を交わしてから慰謝料の授受をするようにします。

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、セクハラ加害者の立場で、会社から指示を受けるおそれのある「始末書」の内容、書き方、デメリットや注意点などを解説しました。
セクハラの始末書を書かねばならないとき、書式・ひな形のサンプルもぜひ参考にしてください。

始末書は、会社への反省の意思を示す役割があるとともに、制裁(ペナルティ)の一環である懲戒処分(譴責・戒告)の内容となることもあります。
今回紹介した書式・ひな形を参考に、実情にあわせた始末書を作り、セクハラ問題の解決に努めてください。

状況によっては、始末書を出すことが不利にならないか不安を感じるときは、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

この解説のポイント
  • セクハラの始末書は、会社に対して反省・謝罪を示し、改善を誓う文書
  • セクハラの始末書は、書式・ひな形のサンプルを参考にしながら自分の言葉で書く
  • セクハラの全部または一部に争いがあるときは、顛末書のみ書く

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