セクハラ

セクハラの時効は「3年」!時効期間が過ぎたときの対応は?

お問い合わせ

運営元:弁護士法人浅野総合法律事務所

セクハラの被害者となってしまったとき、すぐに拒否をして声を上げ、会社や上司に助けを求めたり、慰謝料請求して救済を求めたりできればよいのですが、強いストレス、精神的苦痛から、なかなか難しい場合もあります。

セクハラ問題は今も昔もニュースを騒がせており、非常に世間的な関心の高い話題ですが、実際に被害者の立場になってしまうと、即座に慰謝料請求へ踏み切るのが困難なことも少なくありません。

セクハラ直後から、セクハラの被害を公にし、会社(使用者)の安全配慮義務違反を問うことが耐えられない場合でも、「セクハラの責任追及をいつまでならできるのか」つまり「セクハラ慰謝料請求の時効」を理解し、その期間内には責任追及をする決断をしましょう。

セクハラ直後の会社の対応の悪さから、退職を余儀なくされてしまうセクハラ被害者もいますが、セクハラの慰謝料請求は「退職後」でも可能です。結論から申し上げると、「セクハラ慰謝料請求の時効」は、次のようにまとめることができます。

慰謝料請求の相手方 慰謝料請求の根拠 慰謝料請求の時効
セクハラ加害者 不法行為(民法709条) 加害者及び加害行為を知ってから3年
会社(使用者) 使用者責任(民法715条) 加害者及び加害行為を知ってから3年
会社(使用者) 安全配慮義務違反 10年

セクハラ問題に遭ったからといって慰謝料請求をしなければならないわけではありません。強制性交等罪(旧強姦罪)のような刑法違反になる重度のセクハラの場合、「そもそも被害を言い出すことが二次被害となる」というケースもあります。

今回は、非常にセンシティブな性的問題について、「セクハラによる慰謝料請求の時効がいつまでか」を労働問題に強い弁護士が解説します。

「セクハラ」の法律知識まとめ

セクハラ加害者に対する慰謝料請求の時効は「3年」

セクハラ被害に遭ったことを理由に、うつ病、抑うつ症、適応障害などのメンタルヘルス(精神疾患)にり患し、セクハラの責任追及(慰謝料請求)にすぐには着手できない方も少なくありません。

セクハラ直後は、「自分が我慢すれば円満に解決するのではないか」、「セクハラと告発しても相手にしてもらえないのではないか」と塞ぎ込み、会社の人間関係を少しでも円滑に進めるために、我慢して泣き寝入りしている人もいます。しかし結局我慢しきれずに退職に追い込まれ、思い直して慰謝料請求したいという場合もあります。

セクハラ加害者に対する慰謝料請求の時効は「3年」とされています。セクハラ直後から期間が経過してしまっても慰謝料請求は可能ですが、いつまでも永遠に請求可能なわけではありません。

チェック
労働問題に強い弁護士の選び方と相談方法│労働問題の得意な弁護士とは?

労働問題に強い弁護士に依頼すれば、話し合いでブラック企業に負けないのは当然、労働審判、訴訟など法的手続を活用し、残業代請求、不当解雇などの労働問題で有利な解決を勝ち取ります。

続きを見る

不法行為の時効「3年」(民法724条)

セクハラ被害者が、加害者に対して行う慰謝料請求・損害賠償請求の根拠は、民法709条に記載された「不法行為」という考え方です。

「不法行為」は、「故意または過失によって、他人の権利または法律上保護される利益を侵害した人に対して、その損害の賠償を請求する」という法的概念です。そのため、不法行為の責任を追及するためには、次の要件を証明する必要があります。

  • 加害者の故意または過失
  • 被害者の権利または法律上保護される利益の侵害
  • 損害の発生
  • 因果関係

セクハラ加害者に対する慰謝料請求もまた、セクハラ行為という故意の行為、発言などによって、セクハラ被害者の性的自由を侵害し、精神的苦痛を与えたことに対する慰謝料請求であり、「不法行為」になります。

不法行為に基づく損害賠償請求の時効は、民法724条で「3年」と定められています。

民法724条(不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)

不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から20年を経過したときも、同様とする。

したがって、セクハラの時効は、基本的にはこの不法行為の時効「3年」が限度となります。

もっと詳しく

民法714条後段に定められている「不法行為の時から20年」は、「除斥期間」を意味するものとされています。

「除斥期間」とは、時効と異なり、「中断」の概念がなく、この期間が経過すると自動的に請求ができなくなります。

セクハラの時効「3年」の起算点

セクハラの時効は「3年」ですが、その起算点もまた、民法724条に定められた不法行為の時効に関する民法のルールに従います。民法724条では、不法行為の時効「3年」の起算点について、「損害及び加害者をしった時」から進行するものと定めています。

起算点を把握するために重要な「損害」と「加害者」を知ったといえるためには、判例上、次のことが必要であるとされています。

重要判例

  • 最高裁平成14年1月29日判決
    「損害を知った」というためには、不法行為により損害を受けたことを認識していれば足り、具体的な損害額を知ったことは不要。
  • 最高裁昭和48年11月16日判決
    「加害者を知った」というためには、住所氏名を的確に知り、不法行為に基づく損害賠償請求が可能な程度に知ったことが必要。

セクハラの慰謝料請求のケースにあてはめて考えると、セクハラ発言・セクハラ行為を受けて被害者となった時点で「セクハラの直接の加害者を知っている」ことは明らかであり、精神的苦痛を感じれば「損害」を認識したこととなります。

したがって、セクハラ行為の発生時点が起算点となり、そこから「3年」がセクハラの時効となります。

会社に対するセクハラの慰謝料請求の時効は「10年」

セクハラ被害にあってしまったとき、会社によるセクハラの予防策が不十分であった場合や、セクハラ被害を申告した後の会社の事後対応が不誠実であったり、会社の不手際によってセクハラ被害が悪化したりといった事例では、セクハラ被害者は会社に対して慰謝料請求、損害賠償請求を行うことができます。

結論から申し上げると、会社に対するセクハラの慰謝料請求の時効は「10年」であり、セクハラの直接の加害者に対する請求よりも長期間可能です。

会社に対するセクハラ慰謝料請求の根拠

会社は、労働者を雇うにあたっては、会社内でセクハラが起こらないよう社員教育・指導をして予防し、いざセクハラが起こってしまっても悪化したり再発したりしないよう努める義務があります。

この義務を一般的に、「安全配慮義務」、「職場環境配慮義務」と呼びます。セクハラの予防、教育、再発阻止はこの義務の一環として会社が負うもので、その違反は慰謝料請求の対象となります。

また、会社は、雇用する労働者が「業務の執行」において行った行為について、「使用者責任」を負うことが民法715条で定められています。

民法715条(使用者等の責任)
  1. ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
  2. 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
  3. 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

ただし、会社が十分注意していても被害が発生した場合、会社は責任を免れられる場合があります。

例えば、「会社は全く知らなかった」、「私的な恋愛関係で、お互いに好意があった」というケースもあるため、会社が対応すべきセクハラの被害に遭ったと考える場合、セクハラの時効を待つことなく、すぐに会社(社長、上司、セクハラ相談窓口など)に被害相談をし、対応を求めましょう。

安全配慮義務違反の時効は「10年」

会社に対するセクハラの慰謝料請求・損害賠償請求の時効は、「安全配慮義務違反」を根拠にする場合と、「使用者責任」を根拠にする場合とで異なります。

「使用者責任」(民法715条)を根拠に擦る場合、この責任は不法行為の一種ですので、直接の加害者に対する不法行為責任の追及と同様、「3年」の時効が適用されます(民法724条)

これに対して、「安全配慮義務違反」、「職場環境配慮義務違反」は、雇用契約から当然に導き出される債務であるため、一般的な債権の消滅時効「10年」が適用されます。

民法167条(債権等の消滅時効)
  1. 債権は、10年間行使しないときは、消滅する。
  2. 債権又は所有権以外の財産権は、20年間行使しないときは、消滅する。

したがって、セクハラを理由に会社に対して慰謝料請求・損害賠償請求を行う場合には、時効は「10年」となります。

ただし、冒頭でも解説した通り、この時効は、「時効期間内であれば、いつ請求してもよい」と考えて悠長にしていると痛い目を見ます。セクハラ行為発生から長期間経つと、証拠収集が困難になってしまったり、退職してしまったりなどの事情の変化により、法律上は請求が可能であっても、事実上、慰謝料請求が困難になってしまうからです。

会社を退職後でも慰謝料請求できる!

セクハラ被害者になってしまったことや、その後の会社の調査が不適切で二次被害を負ってしまったことが原因で、セクハラ直後に退職してしまうセクハラ被害者も残念ながら少なくありません。

セクハラ被害を訴える前に退職してしまった場合には特に、セクハラの時効に注意しなければなりません。

セクハラ被害で苦しむ中の退職ですと、退職についての手続もままならないケースも少なくありません。少しでも有利な退職ができるよう配慮してもらい、特に、社会保険、雇用保険、税金などをはじめとした退職手続きは滞りなく行いましょう。

セクハラの時効「3年」過ぎてもあきらめない方法

セクハラ被害直後は、セクハラ被害について深く考えるとフラッシュバックしてしまったり、精神的苦痛が大きくそれ以上進めることができない場合もあります。

不幸にもセクハラ被害にあっても、時効期間が経過してしまったらセクハラ被害の慰謝料請求はできません。セクハラの時効が満了してしまった後でも、あきらめずセクハラ問題を解決するための方法を、弁護士が解説します。

セクハラの時効を中断する

消滅時効の一般的な考え方に「時効の中断」があります。時効期間が迫っている場合でも、この「時効の中断」を行えば、更に時効期間を延長させることができます。

民法147条では、「請求」、「差押え、仮差押え又は仮処分」、「承認」が時効の中断事由として定められています。ただし、ここでいう「請求」は、口頭や書面による請求ではなく、裁判による請求を意味するものとされています。

なお、口頭や書面による請求は、法律上は「催告」といい、催告後6か月以内に訴訟提起をすれば、消滅時効は完成しないものとされています。

悔しい思いをしないため「請求の意思表示」だけでも早めにしましょう。「請求の意思表示」を行うときは、後に証拠が残るよう、内容証明郵便で行うことがお勧めです。

「セクハラ加害者を知らなかった」と主張する

不法行為の時効「3年」は、「加害者を知った時点」を起算点としてスタートします。つまり、「セクハラ加害者を知らなかった」のであれば、時効はそもそも進行しません。

嫌がらせメール、嫌がらせ電話などによるセクハラを受け、そもそも加害者が誰かを知らなかったというケースが「セクハラ加害者を知らなかった」ケースとして時効期間経過後であっても慰謝料請求できることは当然です。

しかし、判例(最高裁昭和48年11月16日判決)では、加害者が誰かは知っていたけれど、その住所や氏名を知らず事実上慰謝料請求が困難であったというケースも、「加害者を知らなかったため、時効は進行していない」と主張できるものと判断しています。

「セクハラ損害を認識していなかった」と主張する

不法行為の時効「3年」は、「損害を認識した時点」を起算点としてスタートします。つまり、「損害を認識していなかった」のであれば、セクハラの時効はそもそも進行しません。

単純なセクハラ行為の場合には、行為時点で損害を認識していたと考えがちですが、セクハラ行為の結果、うつ病、抑うつ状態、適応障害などのメンタルヘルス(精神疾患)にり患してしまった場合には、損害が遅れて生じることも多くあります。

時効期間を経過してしまったけれどもセクハラの責任追及を行いたいケースでは、このように損害が遅れて生じていれば、「まだセクハラ損害を認識していなかったから、時効は進行していない」と主張することができます。

刑法上の責任を追及する

セクハラの時効は、あくまでも「セクハラの慰謝料請求・損害賠償請求」、すなわち、「民事責任」の追及に適用されるものです。

セクハラ加害者の責任には、「民事責任」以外に「刑事責任」、「雇用契約上の責任」が存在します。つまり、強制性交等罪(旧強姦罪)、強制わいせつ罪などの刑事罰に処せられたり、会社内で懲戒解雇などの処分を受けたりといった責任追及には、民法上の消滅時効の適用はなされません。

そのため時効期間の経過後も、過去のセクハラ問題について十分な証拠がある場合、労働基準監督署への相談、是正指導の要求、内部通報窓口への通報などの対処が検討できます。

チェック
セクハラ加害者はどのような責任を負う?民事上、刑事上の3つの責任

セクハラの加害者となってしまったとき、「セクハラ」という違法な行為をしてしまったことによる「責任」を負うことは当然ですが、どのような責任を負うことになるのかは、ケースによって多種多様です。 起こってし ...

続きを見る

セクハラ時効前に証拠を収集する

セクハラの被害直後となると、精神的負担は重く、まずは退職と、セクハラの今後の損害拡大を防ぐことを重視する場合が多いかと思います。

セクハラの時効(加害者に対する請求「3年」、会社に対する請求「10年」)が経過していなければ、後からでも慰謝料請求できますが、注意しておかなければならないのは「セクハラの証拠収集」です。

セクハラ加害者や会社が、セクハラの事実を否定してきたり、セクハラの行為態様を争って来たりしたとき、慰謝料請求・損害賠償請求を確実なものにするためには、労働審判・訴訟(裁判)による解決が必要であり、この際、証拠がとても重要だからです。

証拠がなければ請求できない

セクハラ被害にあったことは非常に悲しいことですが、労働審判、訴訟などで救済を求める場合、証拠がなければ、そのセクハラ発言、セクハラ行為を認定してもらうことすらできません。

セクハラ証拠がなければ、たとえセクハラの時効前だったとしても、慰謝料が請求できないこともあるのです。特に、セクハラは隠れて行われることがほとんどで、証拠が少ないケースばかりです。

その少ない証拠も、時間の経過とともに失われていきますから、「セクハラの時効まではまだ余裕がある。」と甘く考えることなく、証拠収集は迅速に動かなければなりません。

時効前に収集すべき証拠

セクハラは、二人きりの密室など、証拠の残りにくい形で行われますから、数少ない証拠を丁寧に集めていく姿勢が大切です。

セクハラ被害を立証するために役立つ証拠として、次のようなものが考えられます。

  • セクハラ発言を録音したデータ
  • セクハラ行為を録画したデータ
  • セクハラ発言・行為の現場に居合わせた同僚の目撃証言
  • セクハラ被害者がセクハラを記録したメモ、日記、スケジュール帳
  • セクハラ直後に治療した記録、カルテ、診断書

セクハラによる精神的苦痛に苦しみながら証拠収集するのが困難な場合、弁護士にご相談ください。

「セクハラ」の法律相談について

退職前にセクハラ証拠を集める

特に、セクハラ直後に、耐えかねて退職してしまうケースでは、在職中でなければ入手できない証拠が得られなくなり、慰謝料請求するとき会社に要求しなければならないケースもあります。

セクハラ後の苦しい状態では、精神的負担の解消を重視するのは当然ですから、今回解説した証拠は、「セクハラの時効までに集めればよい。」と考えるのでなく、耐え切れなくなる前に日常的に入手しておく努力をすべきです。

「セクハラ問題」は弁護士にお任せください!

今回は、昨今特に問題となるセクハラ問題について、「慰謝料をいつまで請求可能なのか」という点、つまり、「セクハラ慰謝料請求の時効」について、その期間と起算点、対応を弁護士が解説しました。

セクハラの時効期間は原則「3年」です。また、会社を相手にする場合、雇用契約の付随的義務である「安全配慮義務違反」を根拠に請求すれば「10年」が時効と考えることができます。

慰謝料請求の相手方 慰謝料請求の根拠 慰謝料請求の時効
セクハラ加害者 不法行為(民法709条) 加害者及び加害行為を知ってから3年
会社(使用者) 使用者責任(民法715条) 加害者及び加害行為を知ってから3年
会社(使用者) 安全配慮義務違反 10年

しかし、たとえ時効期間が満了していなかったとしても「証拠が既に消滅してしまった」という場合には慰謝料請求が認められないおそれもあります。時効期間は、あくまでも「最悪、この期間内であれば請求できる」という意味の期間であり、「その期間の経過までは悠長に構えていてよい」期間ではありません。

セクハラ被害で精神的苦痛を負うと、慰謝料請求をすぐに行うのは難しいでしょうが、できる限り早く、慰謝料請求の意思表示だけでもしておくことが、セクハラの時効問題を回避するのに最適です。セクハラ被害に苦しみ、時効期間の経過、証拠の消滅にお悩みの労働者は、労働問題に強い弁護士に、お早めに法律相談ください。

「セクハラ」の法律知識まとめ

お問い合わせ

運営元:弁護士法人浅野総合法律事務所
  • この記事を書いた人
  • 最新記事
弁護士法人浅野総合法律事務所

弁護士法人浅野総合法律事務所

弁護士法人浅野総合法律事務所(東京都中央区銀座)は、代表弁護士浅野英之(日本弁護士連合会・第一東京弁護士会所属)をはじめ弁護士5名が在籍する弁護士法人。 不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、近年ニュースでも多く報道される労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。 「労働問題弁護士ガイド」は、弁護士法人浅野総合法律事務所が運営し、弁護士が全解説を作成する公式ホームページです。

-セクハラ
-, , , , , , ,

お問い合わせ

© 2020 労働問題の法律相談は弁護士法人浅野総合法律事務所【労働問題弁護士ガイド】