不当解雇や未払い残業代、パワハラなど、会社を訴えるべき場面は少なくありません。
しかし、不当な扱いを受け、訴えたいと思うほど追い詰められても、リスクを懸念して行動に移せない方は少なくありません。法的には正当な権利でも、敗訴する可能性、費用の負担、会社による報復や逆恨みなど、懸念されるリスクは数多く存在します。
理解せずに行動してリスクが顕在化すると、後悔する結果になりかねません。会社を訴える前に一度立ち止まり、リスクを把握した上で、できる限り軽減する努力をしておきましょう。また、リスクが高すぎる場合は、訴える以外の解決方法を検討することも可能です。
今回は、会社を訴えるリスクと、少しでも軽減する方法、実際に訴えた場合の結果などについて、労働問題に強い弁護士が解説します。
- 会社を訴える際は、法的・金銭的・事実上のリスクを伴うことを理解する
- リスクを過度に恐れず、正しく把握した上で対策を講じることが重要である
- 裁判に訴えること以外にも、交渉など他の手段で解決できる問題もある
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会社を訴える主な場面

はじめに、どのようなケースで会社を訴えるべきなのかを整理します。
「会社を訴えたい」と感じても、全てのトラブルが必ずしも訴訟に向いているとは限りません。解雇・残業代・ハラスメントなどの労働問題で会社を訴える事例は多くありますが、共通するのは、問題が重大であり、労働者が会社に働きかけても改善が期待できない状況にある点です。
代表的には、次のようなケースで裁判や労働審判に発展しています。
【不当解雇・退職勧奨の場合】
- 明確な理由なく、突然解雇された。
- 能力不足を理由にされたが、改善の機会が与えられていない。
- 拒否したのに、強引に退職させられた。
【未払い残業代がある場合】
- 残業代が一切支払われていない。
- 管理職扱いされているが、実態は一般社員と変わらない。
- 長時間残業が常態化し、健康被害が生じている。
【ハラスメントの場合】
- セクハラで退職を余儀なくされた。
- 上司から日常的に重度のパワハラを受けている。
- 会社に相談しても是正されない。
上記の例を参考に、見極めの重要なポイントは、「労働者が、自力で解決することができるかどうか」という点です。決断に迷う場合、すぐに訴えるのでなくても弁護士に相談すべきです。本解説を参考にすれば、会社を訴える際のリスクを理解し、訴えるべきか、それとも別の手段を選ぶべきかを冷静に判断することができます。
会社を訴える方法
会社への不満が限界に達したとき、司法の力を借りて解決を図ることができます。会社を訴える方法はいくつかありますが、労働者側の立場で特に有効なのは、次の3つです。
民事訴訟で訴える方法
「会社を訴える」という言葉から多くの人が思い浮かべるのが「民事訴訟」です。
民事訴訟は、私人間の紛争について裁判所が法的判断を下す手続きであり、労働問題に限らず、金銭トラブルや契約紛争など、幅広い問題の解決に用いられます。民事訴訟では、訴えた労働者が「原告」、訴えられた会社が「被告」となります。双方が主張を書面で提出し、証拠を示した上で裁判所の審理を受け、最終的には和解や判決による解決が図られます。
民事訴訟で訴える流れは、次の通りです。
- 訴状の提出
- 会社側による答弁書提出
- 準備書面のやり取りによる主張整理
- 証拠の提出(書証・証人尋問など)
- 和解協議または判決
民事訴訟は、解決まで年単位の時間を要することもあるため、請求額が大きいケースや争点が複雑な紛争、会社が全面的に争う姿勢を示していて和解が難しいケースなどに向いています。
「労働問題の種類と解決策」の解説

労働審判を申し立てる方法
労働審判は、労使間の紛争を簡易、迅速かつ柔軟に解決することを目的とし、労働者保護のために設けられた制度です。民事訴訟と並んで、実務上よく利用されている裁判手続きです。労働審判では、裁判官1名と労働審判員2名(労使1名ずつ)が関与し、話し合いによる解決(調停)を重視しつつ、必要に応じて審判を下します。

労働審判の主な特徴は、次の点にあります。
- 解決の迅速性
原則3回以内の期日で終結し、3ヶ月〜4ヶ月程度で解決を図ります。 - 解決の柔軟性
調停(話し合い)を中心とし、実情に即した柔軟な解決が期待できます。 - 手続の簡易性
証人尋問などの負担が少なく、労働審判員が直接事実を確認します。
これらの特徴から、労働審判は、早期解決を強く希望しており、一定の譲歩をしてでも会社との関係を早く整理したい方に向いています。簡易な手続きではあるものの、裁判官が関与するため、解決の妥当性も担保されています。
また、労働審判で解決できなくても、審判に対して2週間以内に異議申立てをすれば、自動的に民事訴訟へ移行します。そのため、労働者側の立場では、「まずは労働審判から試してみる」といった選択をすることも少なくありません。
「労働審判の流れ」の解説

労働基準監督署を利用する方法
会社を訴える方法として、裁判以外に労働基準監督署に申告する手段もあります。
裁判所が「司法」であるのに対し、労働基準監督署は「行政」の機関であり、主に労働基準法などに違反している企業を監督し、調査や指導、是正勧告をする役割があります。労働基準監督署を利用して労働問題を解決する流れは、次の通りです。
- 労働基準監督署への相談・申告
- 事実関係の確認や調査の実施
- 会社への指導
- 悪質な違反がある場合は、是正勧告や送検
労働基準監督署の利用に適しているのは、未払い残業代などの明確な労働基準法違反があるケースであって、会社に是正を求めたい場合です。ただし、行政機関である労働基準監督署は、民事的な権利を代行する権限(金銭の回収など)がないため、会社が指導や勧告に従わない場合には、民事訴訟や労働審判を行う必要があります。
「労働基準監督署への通報」の解説

会社を訴えるリスク
次に、会社を訴えるリスクについて解説します。
会社を訴えるのは労働者の権利を守る重要な手段ですが、権利を実現するには戦って勝ち取らなければならず、リスクがあることは否定できません。実際は、事案の内容や証拠の状況次第で、労働者にも様々な不利益が生じます。会社の対応が不誠実な場合、予想外のリスクを被ることもあるため、想定されるリスクを把握し、得られる結果と比較して判断することが大切です。
会社を訴える際に検討すべきリスクは、大きく分けて次の3つがあります。

法的なリスク
法的なリスクとは、権利実現が不確実であるという意味であり、裁判や審判の結果が労働者に不利になったり、それによって法的な立場が不安定になったりする危険を指します。
敗訴してしまう
十分に準備しても敗訴の可能性をゼロにはできず、「必ず勝てる裁判」は存在しません。裁判では、真実や正当な主張でも、証拠で立証しなければ認められません。
特に、労働審判では、迅速な解決を優先する一方で、証拠調べに割ける時間が限定され、話し合いによる解決のために労働者も一定の譲歩を迫られることがあります。また、本人訴訟では知識や経験が不足し、敗訴するリスクが一層高まる傾向にあります。
敗訴の危険を少しでも減らすには、労働問題に精通した弁護士に裁判への対応を依頼するのが賢明です。
「裁判で勝つ方法」の解説

会社から訴え返される
労働者が会社を訴える場合、逆に会社から訴え返されるリスクがあります。典型例は、会社が労働者のミスなどを理由に、損害賠償請求の反訴を起こすケースです。
実際に請求が認められるかは別として、訴え返されると防御しなければならず、精神的な負担が増し、費用や時間も余計にかかります。したがって、訴えを起こす前に、会社から訴える口実がないかどうかを注意深く調べておきましょう。
「会社から損害賠償請求されたときの対応」の解説

解雇や退職に追い込まれる
訴えたことを契機に職場での関係が悪化し、退職に追い込まれるリスクもあります。
最悪の場合は不当解雇されるケースもあり、働き続けたい人にとって大きな不利益です。在職中に会社を訴える場合、働き続けられなくなる可能性を覚悟しなければなりません。
とはいえ、報復的な解雇や退職勧奨は違法なので、恐れて我慢すべきではありません。訴えたことによって退職を余儀なくされたなら、労働者としての地位に関する別途の紛争を起こすことも検討すべきです。
したがって、「会社を訴えると解雇されてしまうのでは」という相談をされる方もいますが、不当な扱いは断固戦うべきであり、リスクを過大評価してはいけません。
「不当解雇に強い弁護士への相談方法」の解説

金銭的なリスク
金銭的なリスクとは、会社を訴える際にかかる費用のことです。労働審判や訴訟を起こすには費用を要するため、その負担を理解せずに進めると「費用倒れ」となるおそれがあります。
裁判費用がかかるリスク
会社を訴える際、労働審判や訴訟を利用すると、裁判所に納める費用が生じます。
- 申立手数料
民事訴訟や労働審判の申立時に、収入印紙で支払う費用です。具体的な金額は手続きの種類や訴額によって異なります(手数料額早見表)。 - 郵便切手代
裁判所とのやり取りをする書類の送付代を負担する必要があります。裁判所によって扱いが異なりますが、5,000円〜7,000円程度が目安です。
裁判の進行によっては、記録の謄写費用、証人の交通費や日当などがかかることもあります。労働審判に異議を申し立てて訴訟に移行した場合、労働審判で納めた分が訴訟の手数料に充当され、差額を追加で納付します。
勝訴判決を得た場合、民事訴訟法61条によって訴訟費用は敗訴者負担となるため、印紙代などの費用(弁護士費用は除く)は相手方に負担させることができます。また、和解で解決する場合、訴訟費用は各自の負担とするのが通例です。
弁護士費用がかかるリスク
会社への訴えを弁護士に依頼する場合、弁護士費用がかかります。
弁護士費用には法律相談料・着手金・報酬金・日当などがあり、原則として自己負担であるため、勝訴しても相手に請求できないのが基本です(損害賠償請求で勝訴した場合、損害の1割程度を弁護士費用相当額として損害に加算するのが裁判実務です)。

なお、当事務所に相談・依頼する場合の費用については、「労働問題の弁護士費用」をご参照ください。
敗訴すると費用を回収できないリスク
会社を訴える際は、費用対効果を意識して判断する必要があります。
勝訴すれば、回収した金額で採算が合うと見込んでいても、敗訴すると請求が認められないばかりか、支払った費用を回収できなくなります。
そのため、請求が少額だったり、証拠が十分でなかったりするケースでは、たとえ正当な権利があったとしても費用倒れのリスクが高くなってしまいます。特に、民事訴訟が長期化すると、当初の想定よりも費用が嵩むおそれもあります。
会社を訴えるかどうかの判断では、「勝てば回収できるか」だけでなく、「負けた場合にどこまでの損失を許容できるか」も含めて検討することが重要です。
事実上のリスク
事実上のリスクとは、法律上は許されない行為でも、職場で現実に起こる不利益のことを指します。違法行為であっても、実際に行われると労働者にとって大きな負担となります。
職場で居心地が悪くなるリスク
自社の非を認めない企業は、訴えた労働者を「問題社員」「裏切り者」として扱います。
周囲から距離を置かれ、職場に居づらくなり、最悪の場合、退職に追い込もうとしてハラスメントや職場いじめに発展することもあります。
裁判を起こすのは労働者の正当な権利であり、その行使を理由に不利益な扱いをすることは違法です。報復人事、不当な異動、職場いじめなどは、新たな労働問題として争うことができるので、決して屈してはいけません。
在職中に会社と争う場合、このリスクが非常に気になることでしょう。要求する内容の緊急性が低ければ、退職後のタイミングまで争わずに待つ人もいます(例:証拠が手元にそろっており、時効まで余裕がある残業代請求など)。
解決までに時間がかかるリスク
強い決意で会社を訴えた場合、「すぐに解決する」と考えるのは危険です。
労働審判でも、会社が異議を申し立てれば訴訟に移行し、長期化するおそれがあります。民事訴訟は想像以上に時間を要し、第一審で終わらず控訴・上告に進むこともあります。

会社がどこまで争うかは、労働者にはコントロールできない事情です。転職後も紛争が継続していると、業務に集中できなくなるおそれもあるため、早期解決を優先する場合、ある程度は妥協して、和解を選択するケースもあります。
和解で終了させる場合こそ、相場を下回る不利な条件で妥協しないよう、弁護士と相談しながらメリット・デメリットを比較しましょう。
「残業代請求の和解金の相場」「解雇の解決金の相場」の解説


精神的な負担が増えるリスク
労働問題が裁判に発展すると、相当なストレスとなるでしょう。
職場で抱えていた不満や被害を解消するために訴えたのに、書面や証拠の準備、期日対応、会社とのやり取りなど、かえって疲弊してしまうケースもあります。弁護士に依頼すれば手続きの負担を大きく軽減できるので、一人で抱え込まず、専門家のサポートを受けながら進めることが、事実上のリスクを抑えるポイントとなります。
会社を訴えるリスクを抑えるためのポイント

次に、会社を訴えるリスクを可能な限り抑えるためのポイントを解説します。
会社を訴えることにはリスクを伴いますが、恐れてばかりではいけません。訴えることで逆に損をしないために、リスクを正しく理解し、適切な対策を講じることが重要です。
当事務所では、数多くの労働問題を取り扱ってきた経験を踏まえ、想定されるリスクを正確に伝え、依頼者が後悔なく決断できるようにすることを心がけています。
まずは交渉から始める
会社の責任を追及する場合、最初から訴訟に踏み切るのはリスクの高い行動です。
比較的リスクを抑えやすい方法として、交渉による解決を目指す手があります。交渉なら、裁判手続きに比べて短期間で、柔軟な解決が期待できます。
ただし、労働者自身で交渉しても、無視されたり、感情的な対立に発展したりして、かえって深刻化する危険があります。交渉にもリスクがあるため、弁護士を窓口とするのがおすすめです。弁護士名義での通知は、「応じなければ訴訟も辞さない」というプレッシャーとなり、実際に訴える前段階であっても効果的です。
訴えるタイミングと手段を慎重に見極める
会社を訴えるリスクは、「いつ、どのような手段を選ぶか」でも変わります。
具体的には、在職中に訴えるか、退職後まで待つか、労働審判や民事訴訟、労働基準監督署のうちどの手段を利用するかといった選択により、リスクの程度が異なります。自身の希望や状況に合わない手段を選ぶと、不要なリスクを抱えかねません。
リスクを最小限に抑えるため、状況に適したタイミングと手段を選ぶ必要があります。実例として、早期解決を重視して労働審判で訴え、退職を前提とした金銭交渉を進めるケースがあります。一方、復職を目指して時間をかけて解決したい方は、訴訟提起を選択すべきケースがあります。
当事務所でも、費用倒れのおそれが強い場合、弁護士に依頼して裁判で訴えるのではなく、まずは無料で利用できる労働基準監督署への相談をおすすめするケースもあります。
証拠を十分に確保してから動く
会社を訴える上で、「証拠がない」というのは大きなリスクとなります。
裁判所では、正当な主張でも、証拠のない事実は認められないおそれがあるため、労働審判や訴訟で訴えても敗訴するリスクが高いからです。したがって、労働契約書やタイムカード、メールやチャットの履歴、業務指示書、録音、診断書など、抱える労働問題に応じた証拠を十分に確保してから動くことは、敗訴や費用倒れのリスクを大幅に下げることにつながります。
ただし、「証拠が集まってからしか動かない」というのは、逆に手遅れになるリスクもあります。証拠収集の段階から弁護士に相談し、バランスの取れた行動を心がけるべきです。
過度にリスクを恐れない
会社を訴えるリスクを解説しましたが、リスクを恐れて行動を起こさないことも、必ずしも安全とは言えません。過度に我慢すると、時間が経過し、泣き寝入りになるおそれがあるからです。
一定のリスクを許容することが、より大きな不利益を回避するためのリスクヘッジとなる場合もあります。会社を訴えるという行動を起こすなら、リスクをゼロにすることはできず、それ以上のリターンがあるかどうかを検討した上で、覚悟をもって踏み出す必要があります。
弁護士への依頼には費用がかかるものの、節約して自ら交渉や訴訟を行うのは、さらにリスクの高い決断となります。費用面が不安だからといって自己判断で進めるのではなく、無料相談を活用するなどして専門家のアドバイスを得ることが重要です。
「労働問題を弁護士に無料相談する方法」の解説

訴訟以外の解決方法を検討する
会社とのトラブルは、必ずしも訴訟で解決しなければならないわけではありません。
本解説のように、会社を訴えることによる費用や時間、精神的負担といったリスクを抑えるため、労働局のあっせんや労働組合による団体交渉など、訴訟以外の解決方法も検討できます。
労働局のあっせんは、専門家が第三者として間に入り、話し合いによる解決を目指す制度です。手続きは簡易で、非公開で進められるメリットがある一方、会社に参加する義務がなく、誠実に応じない場合は解決できません。また、労働組合に加入して団体交渉を申し入れる方法もあります。個人でも加入できる合同労組(ユニオン)を利用すれば、労働者一人で会社と交渉する場合よりも、対等な立場で解決を目指しやすくなります。
信頼できる弁護士に依頼する
会社を訴えるリスクを抑える上で重要なのが、信頼できる弁護士に任せることです。
当事務所の弁護士は、メリットだけでなく、デメリットやリスクも包み隠さず説明し、依頼者が納得できる判断を下すためのサポートを心がけています。会社を訴えるのはリスクを伴うのが現実ですが、正しい知識を得れば、過度に恐れる必要はありません。
労働者のみで訴えることも可能ですが、弁護士を活用した方が良い結果につながるでしょう。労働問題は専門性が高く、経験の差が結果に直結するため、解決実績の豊富な弁護士に相談し、将来起こり得るリスクについて事前にアドバイスを受けてください。
「労働問題に強い弁護士の選び方」の解説

会社を訴えた結果どうなる?会社に与えるダメージは?
最後に、会社を訴えた結果としてどうなるのか、会社への影響について解説します。
会社を訴えることにはリスクがある一方、得られる利益もあります。労働者側のリターンは、裏を返せば会社側にとってのダメージとなります。リスクと結果を比べ、結果が上回ると判断できる場合こそ、会社を訴えるべき場面だといえるでしょう。
公平な判断に基づく解決が期待できる
会社を訴えることで、裁判所という中立な第三者からの公正な判断を得られます。
労使の交渉では、労働者の方が弱い立場に置かれやすく、不当な解決を押し付けられたり、我慢して泣き寝入りしたりするケースも少なくありません。しかし、労働審判や訴訟などの裁判手続きでは、法律に基づく正しい判断が下されます。
理不尽な扱いをされていた労働者にとって、正当な権利を回復するため、会社が誠実な協議を拒否している状況でも、法的手段を講じることで解決への道を開くことができます。
金銭的な被害を回復できる
会社に違法性が認められれば、金銭的な補償を得ることができます。
訴えて勝利した場合、未払いとなっていた金銭について遅延損害金や付加金といった追加の請求ができるケースもあります。会社を訴えた結果として得られる金銭には、次のものがあります。
- 慰謝料などの損害賠償
セクハラ・パワハラなどについて会社の使用者責任や安全配慮義務違反が認められた場合に、その賠償を得ることができます。 - 未払い残業代
法定労働時間を超えた時間や休日、深夜に働いた場合、本来支払われるべき残業代が未払いとなっていれば、残業代や付加金、遅延損害金などを得ることができます。 - 解雇に関する金銭的な補償
争った結果、不当解雇が無効とされた場合、解雇期間中の賃金(バックペイ)を得られます。復職でなく金銭解決を選ぶ場合は、解決金の交渉が可能です。 - 退職金の支払い
不本意な退職であっても、規程に従った退職金を請求することができます。
労務管理の杜撰な会社では、複数の労働問題が重なって起こることがあり、その結果、相当額の支払いを受けられるケースもあります。
会社に対応を迫ることができる
会社を訴えると、会社側は裁判への対応を余儀なくされます。
裁判では、対応しなければ敗訴する危険があるので、交渉に誠実に向き合わなかった会社も、提訴をきっかけに初めて真剣に対応するケースも珍しくありません。労働者の立場では、これまで軽視されてきた問題を取り上げさせる効果があります。
会社は、事実関係の調査や書面の作成、弁護士との打ち合わせなどに人員と時間を割かなければならず、安易に放置できなくなります。
職場環境が改善される
労働者が会社を訴えたことを機に、社内体制や職場環境が改善されることもあります。
特に、残業代未払いのように全社的な法律違反があったケースでは、同様の不満を抱えていた他の従業員の問題も表面化しやすくなります。こうした労働問題について会社が改善を怠れば、集団的な訴えが起こり、企業に高額の金銭支払いが命じられる危険があるからです。
自分一人の問題解決にとどまらず、同じ立場の労働者が不利益を受けにくくなることも、訴えることを決断した労働者にとって好ましい結果の一つといえるでしょう。
企業の社会的評価に影響する場合もある
労働問題は、企業における法令遵守の姿勢が問われる分野です。
社会的にも厳しい目で見られ、訴訟で敗訴したり、行政から指導を受けたりすることで違法行為が明らかになれば、企業の社会的信用が低下する可能性があります。商品・サービスの購買意欲が低下したり、取引停止となったり、上場企業では株価の下落を招いたりします。働き方を改善できなければ求職者からも敬遠され、持続的な成長は困難になってしまいます。
労働者が意図していなくても、「不当な扱いは許さない」という社会的な動きの中で、結果として労務管理を見直さざるを得なくなることも少なくありません。
「ブラック企業の特徴と見分け方」の解説

【まとめ】会社を訴えるリスク

今回は、会社を訴えた場合に生じ得るリスクや結果、具体的な訴え方について解説しました。
労働問題に直面すると、金銭面だけでなく精神面や将来の生活にも大きな不利益を受けてしまいます。一方で、労働者側が「訴える」という強い手段に出ない限り、会社が自主的に課題に向き合い、改善することは期待できないことも少なくないのが実情です。
訴えることは、不誠実な会社の責任を問う有効な手段となります。しかし、リスクを十分に把握せずに進めると、費用や時間の負担が増大するのはもちろん、会社からの報復など、不当な扱いを受け、職場での立場や生活に支障が生じる危険も否めません。
「訴えるべきかどうか」と迷うときこそ、自分の状況に合った方法を冷静に選ぶことが重要です。リスクを正確に理解すれば、事前に対策を講じたり、別の解決手段を模索したりすることも可能です。判断に迷う場合は、労働問題に精通した弁護士に相談してください。
- 会社を訴える際は、法的・金銭的・事実上のリスクを伴うことを理解する
- リスクを過度に恐れず、正しく把握した上で対策を講じることが重要である
- 裁判に訴えること以外にも、交渉など他の手段で解決できる問題もある
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