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浅野 英之
弁護士
弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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労働審判の異議申立てとは?手続きの流れ・期間・訴訟移行の注意点を弁護士が解説

労使トラブルを迅速に解決する労働審判ですが、その結果に不服があることもあります。

労働審判に納得がいかない場合に利用されるのが「異議申立て」です。労使いずれかが、告知から2週間以内に異議申立てを行うと、労働審判は効力を失い、自動的に訴訟手続きへと移行します(2週間の期限までに異議申立てをしないと、労働審判が確定します)。

異議申立てにはメリットとデメリットがあり、安易に行うと手続きの長期化や費用の増大につながるため、訴訟に移行した方が有利な結論になる事案かどうかを検討する必要があります。

今回は、労働審判の異議申立てについて、制度の基本から申立てができる期間(期限)、手続きの流れや注意点を、労働問題に強い弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • 労働審判に不服があるとき、2週間の期限内に異議申立てをすることが可能
  • 異議申立てをすると、労働審判は確定せず、自動的に訴訟に移行する
  • 異議申立てをして訴訟に移行する方が有利かどうか、申立前に検討する

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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労働審判の異議申立てとは

はじめに、労働審判と異議申立てについて、基本的な知識を解説します。

労働審判の異議申立てとは、労働審判委員会が下した「労働審判(審判)」に対し、当事者(労働者または使用者)が不服を申し立てる手続きです。異議申立てが行われると審判の効力は失われ、事件は自動的に訴訟手続きに移行します。つまり、異議申立ては、労働審判の結果を受け入れず、訴訟で争う意思を示す意味を有する手続きです。

労働審判の基本

労働審判とは、労使トラブルを、迅速、適正かつ柔軟に解決することを目的とした裁判所の手続きです。解雇や雇い止めを争う地位確認請求や、未払い残業代の請求など、様々な労働問題について判断を下すことができます。

裁判官である労働審判官1名と、労使それぞれの専門家である労働審判員2名で構成される労働審判委員会が、原則3回以内の期日で審理を進めます。まず調停(話し合いによる解決)が試みられ、調停が成立しない場合、事案の実情に応じた解決案として「労働審判(審判)」が下されます。

労働審判の流れ

労働審判の流れ」の解説

異議申立てをすると訴訟に移行する

労働審判委員会の最終判断である労働審判(審判)に対し、当事者(労働者または使用者)のいずれか一方でも異議申立てをすると、審判の効力は失われます。そして、労働審判の申立てがあったときに訴えの提起があったものとみなされ、事件は自動的に訴訟へと移行します(訴え提起の擬制・労働審判法22条)。

労働審判が非公開で迅速な解決を目指す、労働者保護のための簡易な手続きであるのに対し、訴訟は公開の法廷で行われ、より厳格な主張や証拠の提出が求められる正式な裁判手続きです。したがって、訴訟に移行すると、解決までには1年以上の期間を要することも少なくありません。

労働問題の種類と解決策」の解説

労働審判の異議申立てができる期間(期限)

労働審判の異議申立てができる期間(期限)は、審判書が送達された日、または期日において審判の告知を受けた日から「2週間以内」と定められています(労働審判法21条)。この2週間は「不変期間」とされ、当事者の都合で延長することはできません。労使双方に異議申立ての機会を保障するため、審判内容を知った時点から進行します。

この期間内に労使いずれも異議申立てを行わなかった場合、審判は確定判決と同一の効力を持ちます。その内容が法的に確定され、従わない場合は、強制執行による財産の差押えが可能です。そのため、異議申立てを検討する場合は、期限を必ず厳守しなければなりません。

労働審判の異議申立ての手続きの流れ

次に、労働審判の異議申立てについて、手続きの流れを解説します。

労働審判に不服がある場合、異議申立てを経て訴訟手続きへと移行します。異議申立ての手続きもまた、労働審判法に定めがあり、異議申立書の提出から始まり、事件が訴訟に移行し、第1回期日が指定されて訴訟の審理が開始されます。

STEP

異議申立書を提出する

まず「異議申立書」という書面を、労働審判が行った地方裁判所に提出します(140万円以下でも地方裁判所の管轄となります)。

異議申立書の提出は、窓口でも郵送でも可能ですが、審判の送達日または労働審判の告知日から2週間以内に裁判所に到達しなければなりません。書面には、事件番号、当事者名、代理人名などを記載した上で、「審判に不服があるので、異議を申し立てる」という意思を明確に表示します。この段階では、異議申立ての理由を具体的に記載することまでは必要ありません。

STEP

事件が自動的に訴訟に移行する

異議申立書が期間内に裁判所に提出されると、労働審判は効力を失います。

そして、労働審判法22条の規定に基づき、労働審判を申し立てた時点で訴訟が提起されたものとみなされ、事件は自動的に訴訟手続きへと移行します。移行に際し、当事者が改めて訴訟を提起する手続きを行う必要はありません。

労働審判の申立て時に訴訟提起されたものとみなされる結果、提出済の「労働審判申立書」が「訴状」と同視されますが、実務では、訴訟移行時に「訴状に代わる準備書面」という書類を提出し、改めて主張を整理するのが通例となっています。

STEP

第1回口頭弁論期日が指定される

訴訟移行後は、裁判所が第1回口頭弁論期日を指定し、当事者双方に期日呼出状を送達します。労働審判の申立人(訴訟の原告)から提出された訴状ないし訴状に代わる準備書面に対し、労働審判の相手方(訴訟の被告)から答弁書が提出されます。

訴訟では、労働審判での主張を整理し、より詳細な主張を記載する必要があり、準備書面や証拠の提出が求められます。

STEP

通常訴訟の審理が進行する

これ以降は、通常の民事訴訟の手続きと同様に審理が進みます。

月に1回程度の期日が開かれ、当事者双方が準備書面で主張と反論を繰り返し、証拠を提出し合います。訴訟では、労働審判のように期日が3回までという制限はありません。争点が整理できるまで期日が繰り返され、その後に証人尋問や当事者尋問が行われ、最終的には裁判官が和解による解決を試みた上で、判決に至ります。

なお、訴訟と労働審判の審理は区別され、証拠は引き継がれず、主張も出し直す必要があります。ただし、実務では、労働審判で提出した書面や証拠を訴訟でも提出することにより、労働審判での結果は、訴訟でも事実上参考にされます。

労働審判で異議申立てをするメリット・デメリット

労働審判に異議申立てをすることには、メリットとデメリットがあります。

そのため、労働審判で一定の解決が示された際に、異議申立てをして訴訟に移行すべきかどうかは、メリットとデメリットを比較して慎重に検討しなければなりません。労働者にとって重要なのは、「より有利な結論に変更される可能性があるかどうか」という点です。

以下では、異議申立てをするかどうか、その判断基準を解説します。

異議申立てのメリット

異議申立ての最大のメリットは、労働審判の結果を覆せる可能性があることです。

訴訟では、労働審判の限られた時間では伝えきれなかった事実や、新たに見つかった証拠を提出することで、より有利な判決を得られる可能性があります。また、公開の法廷で審理されるため、会社の不当な扱いを社会に知らしめたいと考える人にとっても有効な手段です。

異議申立てのデメリット

異議申立てのデメリットは、期間や費用の負担が増すことにあります。

労働審判が3ヶ月程度で終わるのに対し、訴訟は半年〜1年半以上かかることも珍しくありません。申立手数料(収入印紙代)は労働審判の倍額(実際には、労働審判時に納付した差額を支払う)とされ、弁護士費用についても労働審判より高額の設定とされることが多いです。

長期間の争いを継続することは、精神的負担の増大にもつながります。さらに、訴訟で争った結果が必ずしも労働審判より有利になるとは限らず、逆に不利な判決が下されるリスクもあります。

異議申立てをすべきケース・すべきでないケース

以上のメリット・デメリットを踏まえ、異議申立てをすべきか検討してください。例えば、異議申立てをすべきケース、すべきでないケースには、次のような例があります。

【異議申立てをすべきケース】

  • 労働審判の事実認定や法的判断に明らかな誤りがある。
  • 労働審判の結論を覆すのに十分な客観的証拠がある。
  • 限られた時間では証拠の検討が不十分であった(複数の証人尋問を希望する場合など)。
  • 請求額が高額で、時間や費用をかけて争う価値がある。

【異議申立てをすべきでないケース】

  • 労働審判の内容が概ねこちらの主張に沿ったものである。
  • 訴訟に移行しても結論が変わらない可能性が高い。
  • むしろ、不利な結論になる可能性もある微妙な事案である。
  • 早期解決を優先したい。
  • 追加の費用がかかると、勝訴しても費用対効果が合わないおそれがある。

ちなみに、労働審判における異議申立ては、取り下げや撤回ができません。一度異議申立てをすれば労働審判の効果は失われ、後の訴訟が不利に進んでも、「労働審判の結果に戻る」ことは認められません。訴訟移行後は「訴えの取下げ」が可能ですが、相手が本案について準備書面を提出するなど手続きが進んだ後は、相手の同意が必要です。

したがって、異議申立てをすべきかは慎重に検討すべきです。判断に迷う場合、状況を踏まえた有利な選択をするには、弁護士への相談が有益です。

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労働審判から訴訟に移行する際の注意点

次に、労働審判への異議申立てを決断した場合の注意点について解説します。

労働審判は話し合いによる柔軟な解決を目指す側面があるのに対し、訴訟はより厳格な手続きです。そのため、同じ感覚で臨むと不利益を被るおそれがあります。

主張と証拠の準備がより重要になる

訴訟では、労働審判以上に、主張を裏付ける客観的な証拠が重視されます。

労働審判でも証拠は重要ですが、期日当日の当事者の発言や、労働審判委員会の心証も結果に影響します。一方、訴訟では、提出された証拠に基づいて厳格に判断される傾向にあります。

そのため、訴訟では、法律構成を準備書面に示し、証拠を網羅的に収集・提出するといった工夫が、労働審判にもまして重要となります。そして、証拠が不十分だと、労働審判の結論が変わらないばかりか、より不利な判決を下されるおそれがあります。

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労働審判の結論が不利に働く可能性がある

労働審判と訴訟の審理は区別され、主張や証拠は引き継がれないのが原則です。

しかし、実務では、労働審判で提出された書面や証拠は、訴訟に移行した際にまとめて提出することが多く、結果として、労働審判の結論は、訴訟に事実上の影響を及ぼします。そのため、労働審判で安易に行った主張や期日当日の発言が、後の訴訟で相手から矛盾点として指摘され、主張の信用性を損なう要因となるおそれがあります。例えば、調停成立のために譲歩案として提示した内容が、訴訟で不利な証拠として扱われるリスクもあります。

したがって、異議申立てをして訴訟で解決することを希望するのであれば、労働審判の段階から、一貫性のある主張を心がける必要があります。

戦略の見直しが必要となる

労働審判から訴訟に移行する場合、戦略の見直しが必要なケースも多いです。

労働審判は調停による円満な解決を目指すことが多いのに対し、訴訟では、判決により法的な権利義務を明確にすることとなります。裁判上の和解も検討されますが、基本的には「勝ち負けが明らかになる手続き」と考えなければなりません。

そのため、これまで労働審判で、調停や和解を前提に進めてきた場合、訴訟に移行した時点で、相手の主張を徹底的に争うべきかどうか、よく検討しなければなりません。また、労働審判では、限られた時間で審理するため、全ての主張と証拠を第1回期日前に出すのが基本ですが、訴訟の場合は、全体の流れを見据えて、主張と証拠の提出タイミングを考える必要があります。

弁護士に相談する

労働審判に異議申立てを行うタイミングでは、必ず弁護士に相談しましょう。

法律の専門的な知識をもとに弁護士にアドバイスをもらうことで、訴訟の結論を予測し、「異議申立てをする価値があるかどうか」を判断する必要があります。また、異議申立て後の訴訟は、労働審判よりも複雑な手続きなので、有利に進めるには弁護士のサポートが不可欠です。

自分一人で労働審判を進めてきた方は、訴訟移行のタイミングで弁護士への依頼を検討してください。また、労働審判の結果に納得いかない場合、これまでの方針を見直して有利な解決を目指すために、弁護士変更も含めて検討した方がよいでしょう。

異議申立ては2週間という短い期間で行う必要があるため、直前になって焦らないよう、「不利な労働審判が下されそう」という段階で法律相談を行うのが適切です。

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労働審判の異議申立てに関するよくある質問

最後に、労働審判の異議申立てに関するよくある質問に回答します。

異議申立書に理由を書く必要がある?

法律上、異議申立書に異議の理由を記載することは義務付けられていません。

単に「労働審判に対して異議を申し立てる」という意思表示が記載されていれば、申立ては有効です。したがって、理由を何も書かずに提出しても問題ありません。ただし、訴訟移行後の審理を円滑に進めるために、異議の理由については、その後に提出する「訴状に代わる準備書面」に詳細に記載しておくのが実務では通例です。

異議申立ての取下げはできる?

労働審判の異議申立ては、取下げや撤回ができないこととされています。

法律に直接の定めはないものの、異議の撤回を自由に認めると、相手の利益を不当に害するからです。異議は双方から可能なので、「既に異議申立てされたので、自分は出す必要がない」と考えて2週間経過した後、異議を取下げられると、異議申立権を失ってしまうという不都合があります。

一方、異議申立てによる訴訟移行後、事件を終了させたい場合、「訴えの取下げ」が可能です。ただし、相手が本案について準備書面を提出するなど、手続きが進行した場合は、同意なく取り下げを行うことはできません。

労働審判の異議申立てにかかる費用は?

労働審判の異議申立ての手続き自体に、新たな手数料や収入印紙は不要です。

したがって、異議申立ては無料で行うことができますが、訴訟手続きに移行するにあたり、通常訴訟の手数料(収入印紙代)が必要となります(手数料額早見表)。労働審判の申し立て時に収めた手数料は控除し、差額を払います(労働審判の手数料は、訴訟の手数料の半額と定められており、労働審判申立時と同額を納めることになります)。

また、弁護士への依頼は手続きごととなっていることが多く、引き続き訴訟段階の弁護を依頼する場合、改めて着手金が発生します。

異議申立て時の時効の考え方は?

労働審判の異議申立てにより、申立時に訴訟提起されたものとみなされるため、消滅時効との関係では、裁判上の請求等による時効の完成猶予及び更新(民法147条)の効果は、労働審判の申立て時に発生し、訴訟の終了時まで時効の完成が猶予されます。そして、確定判決を得た場合、そこから新たに10年の時効が更新されます。

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【まとめ】労働審判の異議申立て

弁護士法人浅野総合法律事務所
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今回は、労働審判における異議申立ての手続きについて解説しました。

労働審判の内容に納得ができないとき、異議申立ての手段が有効です。異議申立ては、告知から2週間以内に行うことで審判の効力を失わせ、訴訟に移行させる効果があります。訴訟は、労働審判に比べて厳格に審理されるため、解決までの期間が長く、費用や労力の負担も増大します。

そのため、異議申立てを行うかどうかは、審判の内容、手持ちの証拠、訴訟に伴うデメリットを総合的に考慮して、今後の見通しを予想しながら検討しなければなりません。

異議申立ての期間は告知から2週間と短いため、限られた時間の中で後悔のない判断をするために、速やかに弁護士に相談することをおすすめします。

この解説のポイント
  • 労働審判に不服があるとき、2週間の期限内に異議申立てをすることが可能
  • 異議申立てをすると、労働審判は確定せず、自動的に訴訟に移行する
  • 異議申立てをして訴訟に移行する方が有利かどうか、申立前に検討する

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