労働問題弁護士ガイドとは?

退職理由を「自己都合退職」から「会社都合退職」に変更する方法

会社を退職するときに「自己都合退職」、「会社都合退職」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
これは失業保険に関係してくる「離職理由」の大きな2つの分類です。

「自己都合」と「会社都合」は、失業手当の金額が異なります。
さらに、失業保険だけでなく、会社に退職金があるときは、退職金の額も異なるケースが多いです。
労働者は、なんとしても「会社都合」の退職と取扱ってもらえるよう、会社に求めていくべきです。

相談者

会社の事情でやめざるをえないのに自己都合扱いされた

相談者

解雇されたのに、離職票に「自己都合」と書いてあった

こんなとき、「自己都合退職」から「会社都合退職」に変更する方法を知りましょう。

「失業保険をできるだけ有利に受給できるかどうか」の点でいえば、「会社都合退職」だと給付制限期間(2ヶ月間)なく失業手当をすぐに受給でき、かつ、受給額の上限も「自己都合退職」よりも高いというメリットがあるからです。

今回は、退職理由を「自己都合」から「会社都合」に変更する方法を、労働問題に強い弁護士が解説します。

この解説のポイント
  • 自己都合のほうが会社都合より、失業保険の金銭面では有利
  • 会社都合扱いされそうでも、自己都合に変更する方法を知る
  • 退職届を強要されても撤回し、ハローワークに異議を出して自己都合に変えてもらう

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解説の執筆者

弁護士 浅野英之

弁護士(第一東京弁護士会所属、登録番号44844)。
東京大学法学部卒、東京大学法科大学院修了。

企業側の労働問題を扱う石嵜・山中総合法律事務所、労働者側の法律問題を扱う事務所の労働部門リーダーを経て、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。

不当解雇、未払残業代、セクハラ、パワハラ、労災など、注目を集める労働問題について、「泣き寝入りを許さない」姿勢で、親身に法律相談をお聞きします。

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失業保険は「退職理由」によってどう違う?

退職理由には、大きく分けて「自己都合退職」「会社都合退職」があります。

この退職理由の分類の違いが大きく影響するのは、主に次の2つの場面です。
これら2つの場面で、「自己都合か会社都合か」のどちらにあたるかは、労働者にとって大きな金銭的な差を生むこととなります。

  • 失業保険の給付額
    自己都合よりも会社都合のほうが、給付制限期間(2ヶ月間)がなく、受給額の上限も高い
  • 退職金の支給額
    自己都合よりも会社都合のほうが、高い乗率で支給される会社が多い

「自己都合」と「会社都合」にはこんなにも大きな違いがありますから、労働者側の立場としては、離職票に記載してもらう退職理由は「会社都合」であるほうが有利な取り扱いをうけることができます。

※給付制限期間は、2020年10月1日より、「3ヶ月」から「2ヶ月」に短縮された。
なお、2020年9月31日以前の自己都合退職と、過去5年以内に2回以上自己都合退職があったときは、給付制限期間が「3ヶ月」となる。

自己都合と会社都合の違い

真実は「会社都合」の退職であるにもかかわらず、離職票に「自己都合」と書く会社には、

  • 「労働トラブルを隠ぺいしたい」
  • 「会社が責任を負いたくない」
  • 「解雇をしなことを要件とする助成金・補助金を受給している」

といった理由のあることが多いです。

真実は「会社都合」の退職であるにもかかわらず、離職票に「自己都合」と記載されてしまえば、失業手当をすぐに受けることができず、困窮してしまいます。
さらに、本来もらえるはずの失業保険や退職金が満額もらえなくなるという不利益も受けます。

労働者にとって「会社都合」と離職票に書かれたほうがメリットが大きいと解説しました。
金銭的にはそのとおりですが、必ずしもそうでないケースもあります。

「会社都合退職」はとても広く、会社に問題があることを理由とする退職や経営上の都合による退職だけでなく、「解雇」、「退職勧奨」による退職もまた「会社都合退職」です。
そのため、転職先に「会社都合退職」だとを知られたとき、理由をきちんと証明できないと「問題社員だから解雇されたのではないか」と悪いイメージが伝わり、再就職の弊害になってしまいます。

失業保険にさほど頼らず、積極的に転職活動する方のなかには「自己都合退職」を望む方もいます。

自己都合と会社都合の違いは、次の解説をご覧ください。

自己都合退職とは?

「自己都合退職」とは、労働者が、自身の真意から、退職の意思表示をして退職をすることをいいます。

家族の都合、自身のキャリアプランなど、その理由はさまざまです。
いわゆる「一身上の都合」という言葉でまとめられるのが自己都合退職だとイメージすればわかりやすいでしょう。

ただし、あくまでも労働者が「真意から」退職の意思表示をする必要があります。
「会社が退職強要をした結果やむを得ず退職届を出した」というのは自己都合退職とはなりません。

自己都合退職のメリット

自己都合退職となると、失業保険や退職金支給額の増額などのメリットを受けることはできません。
そのため、金銭的には会社都合退職よりも劣ることとなります。

自己都合退職のメリットは、「解雇」などの処分を受けた「問題社員」であると、転職先や再就職先にレッテルを貼られない、という点です。

「一身上の都合」による自己都合退職であれば、転職先も、退職理由について採用面接で深堀りして聞いてくるようなことはほとんどありませんし、万が一聞かれたとしても理由付けも容易です。

自己都合退職について、次の解説もご覧ください。

会社都合退職とは?

「会社都合退職」とは、解雇(普通解雇、整理解雇、リストラ、雇止め)や退職勧奨による退職など、会社が労働者に対して働きかけることによって行われた退職のことをいいます。

労使関係において、どうしても労働者が会社(使用者)よりも弱い地位に立たされていることから、会社都合の退職は、基本的には法律や裁判例で厳しく制限されています。

会社は労働者を一方的に辞めさせることはできません。
解雇の場合、解雇に「合理的な理由」があり、「社会通念上相当」でない限り、「解雇権濫用法理」により、権利濫用として違法、無効となります。

解雇権濫用法理とは
解雇権濫用法理とは

退職勧奨についても同様で、会社が一方的な意思によって退職を強要することは違法なパワハラと言わざるを得ません。

会社都合退職のメリット

「会社都合退職」は、以上のように、「労働者保護」の点から厳しい制限がされています。
そして、いざ会社都合により退職となったとき、労働者はさまざまなメリットを享受できます。

そのうち特に大きいメリットが、失業手当(失業給付)を給付制限期間なくすぐに受給できることと、失業保険、退職金が増額されるケースが多いことです。

なお、退職金は、支払が法律上義務付けられているものではありません。
そのため、就業規則、退職金規程、雇用契約書などで約束しなければ、退職金を受けとれません。
会社都合と自己都合とで、どれほど退職金額がことなるかも、会社ごとの退職金規程などによって決まります。

なぜ離職票の退職理由に争いが生じるのか

ここまで、自己都合退職と会社都合退職という離職票の記載によってどんな違いが生じるかを解説しました。

離職票は、会社と労働者が協力してつくるものです。
そのため、離職票の退職理由は、事実にしたがって記載されれば、争いなどおこらないはず。
しかし実際は、労使間で「離職理由」をめぐる争いが多くおこっています。

そこで次に、なぜ離職票の退職理由に争いが生じるのかについて、弁護士が解説します。

退職強要があったケース

労働者側では「会社都合だから有利な取扱いをうけることができる」と考えているケースでは、その労働者の気持ちとしては「退職せざるをえなかった」と考えているわけです。

一方で、会社としては、「明示的に解雇しない限り会社都合とはならない」と考えていることがあります。
こんなときに、労使間のトラブルは激化します。

典型例が、会社が労働者に対して退職を強要しているケースです。

会社側としては、労働者が自主退職したわけですから「自己都合退職」と考える。
一方で、労働者側としては、会社から強要を受けて退職をしたのだから「解雇」と同様に「会社都合退職」ではないか、と考えるわけです。

離職票に虚偽の記載をするケース

さきほどのケースは、そもそも事実関係について自己都合か会社都合か、評価の争いがあるケースでした。
しかし、これ以外にも労働トラブルとなるケースがあります。

それは、会社が勝手な判断で「自己都合退職」と離職票に記入してしまったのが原因で争いとなるケースです。
なかには、虚偽だとを知りながら、悪意をもって離職票に記載する会社もあります。

特に、「解雇をしない」ことを条件とする助成金・補助金を受給している場合には、会社としては「自己都合退職」にせざるを得ない、という事情があるケースも少なくありません。

不当な「自己都合退職」を争う方法

最後に、本来は離職票に「会社都合」と記載しなければならないケースで、ブラック企業から「自己都合」という取扱いを受けてしまったときの対処法について、弁護士が解説します。

労働者側にとって「会社都合」の方がメリットが大きいことから、真実は「会社都合」であるのに「自己都合」とされてしまった場合、不当な取り扱いに甘んじるべきではありません。

「会社都合」と記載されると、「問題社員だから解雇されたのではないか」というイメージを抱かれて就職に不利だと考える方もいます
しかし、「会社都合退職」は、必ずしも「問題社員」だという意味ではありません。

退職届を出さない

会社側からどれほど強く退職を迫られても、退職届を出してしまえば「自主退職」といわれるおそれあり。
悪質な会社だと、「自己都合で退職します」と書かれた退職届を差し出し、署名を迫られることも。

「会社をやめてほしい」とお勧めをすることは、退職勧奨といって適法におこなえる行為ですが、労働者が「退職せざるを得ない」と考えるほどにまで強く説得を重ねた場合には違法な「退職強要」となります。

退職勧奨と退職強要の違い
退職勧奨と退職強要の違い

そのため、自分の意思で辞めるのでない限り、会社から強く求められたとしても決して退職届を出さないことが、「会社都合退職」となる近道です。

会社側から違法な退職強要を受けたら、パワハラにもあたります。
ボイスレコーダーで録音するなどの方法で、証拠収集をすべきです。

退職届の撤回・取消し

万が一、会社の強いプレッシャー、脅しに応じて退職届を出してしまった場合には、すぐに撤回、取消しをしなければなりません。

時間が経過してしまえば、退職届の撤回、取消しは、より困難となります。
撤回、取消しするためには、退職届を要求する際に、会社側に脅し、強要などの不適切な点があったことを証明できるとよいでしょう。

退職届を出してしまったとき、撤回の方法は次の解説をご覧ください。

離職票の記載を争う

以上のように会社から不当に強要されて退職したケースでなくても、会社の判断によって離職票に「自己都合退職」と記載されてしまうケースが、労働トラブルに繋がります。

そこで、真実の退職理由とは異なる退職理由を記載されてしまったときは、ハローワーク(公共職業安定所)に対して「異議申立」ができます。
また、「会社都合退職」なのに「自己都合」とされて、退職金を不当に減額されたときは、労働審判や訴訟などの方法で退職金請求できます。

スムーズに離職票を発行してもらうため、次の解説もご覧ください。

まとめ

弁護士法人浅野総合法律事務所
弁護士法人浅野総合法律事務所

今回は、実際には解雇、退職勧奨、退職強要など、「会社都合」による退職であるにもかかわらず、会社の一方的な考えで「自己都合退職」とされてしまうケースで、退職理由の訂正を求める方法を解説しました。

会社側のミスや誤記であれば訂正することは簡単です。
しかし、なかには労働者に嫌がらせをしてやろうという悪意のあるブラック企業もいます。
こんなとき「自己都合」を「会社都合」にあらためさせるには、会社との争いが必要なこともあります。

退職理由の修正を拒否されたとき、正当な権利を実現したいなら、ぜひ弁護士に相談ください。

この解説のポイント
  • 自己都合のほうが会社都合より、失業保険の金銭面では有利
  • 会社都合扱いされそうでも、自己都合に変更する方法を知る
  • 退職届を強要されても撤回し、ハローワークに異議を出して自己都合に変えてもらう

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